2017年11月29日
下仁田温泉 「清流荘」⑩
<紅梅が咲いていた。冬木立の中で、そこだけ明かりが灯っているようだった。橋の向こうに、宿が見えた。田舎の親戚を訪ねるみたいで、なんだか懐かしい気持ちになった。>
なぜか、このところ下仁田温泉づいています。
9月、10月と訪ねたばかりなのに、昨日また行って来ました。
でも今回は取材ではありません。
僕が講師を務めるNHKカルチャーの野外温泉講座です。
この講座で下仁田温泉を訪ねるのは、8年ぶりのことでした。
冒頭の一文は、2005年の冬に、初めて下仁田温泉の一軒宿 「清流荘」 を訪ねたときに、雑誌に書いた記事の書き出しです。
あれから何度となく、いえいえ、何十回と訪ねているかもしれません。
春夏秋冬、さまざまな彩りで旅人を迎えてくれる西上州の秘湯です。
季節は晩秋。
今年は遅く色づいたというモミジが、今が盛りとばかりに目が覚めるようなグラディーションを見せています。
「先生、見てください。こっちの景色を!」
露天風呂から受講生の一人が、宿を見下ろすようにそびえる里山を指さしました。
燃えています。
過ぎ行く季節を惜しむかのように、全山紅葉の絶景を描いています。
「先生、こちら側の景色もいいですよ」
もう一人の生徒さんが、中庭の大きなモミジの木を指差しました。
「綺麗ですね。ちょうど光がさして、色が鮮やかです」
「これって、“インスタ映え” って言うんでしょう!」
オジサンたちが、ドッと湯舟の中で笑いました。
湯上がりは、地産地消の山里料理をいただきました。
もちろん、ビールもいただきました。
「先生、どうぞ。やっぱり、この景色には熱燗でしょう!?」
あららら、いつの間に頼んだのか、徳利がズラリ並んでいました。
「ほら、キレイどころ、先生にお酌して!」
そう言われて、隣の席に座っていたYさんは、
「あら、気づきませんで。先生、おひとつ、どうぞ」
と、シナを作って、徳利の首をつまんでくれました。
う~ん、確かに40年前ならば、キレイどころだったかも知れませんね(失礼)。
午後は、みんなで7000坪を誇る敷地内を散策。
風もなく、天高く青天の小春日和。
笑い声が、こだまのように山あいに響いていました。
のどかな、のどかな、湯けむり散歩を楽しみました。
Posted by 小暮 淳 at 12:53│Comments(0)
│温泉地・旅館