2018年03月02日
猪ノ田温泉 「久惠屋旅館」⑩
なんだか今年は、猪ノ田(いのだ) づいています。
1月に新年会で訪ねたばかりなのに、また今週も行ってきました。
でも、何度訪ねても飽きないのが、猪ノ田温泉なのであります。
僕が講師を務めるNHK文化センターの野外温泉講座も、今年で10年目を迎えます。
この講座では、県内外の名湯・秘湯をめぐっています。
今回は、西上州の名薬湯といわれる猪ノ田温泉(藤岡市) の一軒宿 「久惠屋旅館」 を訪れました。
なぜに名薬湯なのか?
歴史は古く、江戸時代にまで起源はさかのぼります。
源泉の湧き出し口に野天の湯舟があり、地元の湯治場として利用されていました。
ゆで玉子のような腐卵臭がすることと、卵の白身のようなトロンとした肌触りから 「たまご湯」 と呼ばれ親しまれていました。
明治初期には 「皮膚病に効く」 という評判が高まり、県内はもとより東京方面からも医者に見放された患者が療養にやって来るようになったといいます。
大正時代になり旅館が建てられ、戦前までは大いににぎわっていましたが、戦後になって経営が悪化し、昭和40年代に廃業してしまいました。
その後しばらくの間、源泉は森の中で眠ったままでした。
昭和58年(1983)年、地元で牛乳販売店を営んでいた先代主人が、現在の旅館を再建しました。
肌にまとわりつくような湯のやわらかさから “絹の湯” と呼ばれ、ふたたび傷ややけど、アトピー性皮膚炎に効く薬湯として、全国からうわさを聞きつけた湯治客が訪れています。
「わー、これ白鵬じゃない?」
「そうだ、白鵬だよ!」
宿に到着するなり、玄関ロビーで喚声が上がりました。
そーなんです!
ここは平成24年に地方巡業で藤岡市を訪れた際に、横綱・白鵬が泊まった宿なんです。
壁に貼られた写真には、大広間で白鵬と一緒に若女将とお子さんたちが写っています。
「まだ性格が良かった頃の白鵬だね」
受講生の言葉に、大爆笑が起こりました。
「あっ、本当だ! タマゴの白身のようですね」
「体をさするとローションのようにツルツルします」
湯舟の中では、口々に感想が飛び交いました。
これぞ、生きた温泉講座です。
群馬県内には、まだまだ知られざる名湯や秘湯がたくさんありますよ!
今年も、楽しく温泉めぐりをしましょうね。
Posted by 小暮 淳 at 12:31│Comments(0)
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