2019年09月23日
3つの御霊
「お父さん、大丈夫?」
「なにが?」
「マロがいなくなって、ボケちゃうんじゃないかと思って」
「オレは、まだ、そんな歳じゃないよ!」
マロの訃報を知って、夜遅く、長男が仕事の帰りに寄ってくれました。
「だって、毎日、マロの散歩をしていたの、お父さんじゃん」
「散歩だけじゃない。食事もおやつもあげてたし、一緒に昼寝もしていた」
「だから心配なんだよ。おじいちゃんとおばあちゃんもいなくなっちゃったし……」
「だ、か、ら! オレは、そんな歳じゃないって言ってるだろ!」
と大声を上げて否定をしたものの、なんとも言えない寂寞感に包まれました。
心配してくれる息子の気持ちは、よく分かります。
親を気遣ってくれる優しい子であります。
でも僕には、まだまだ、やらねばならないことが、たくさんあるのです。
今日は彼岸の中日です。
オヤジとオフクロが眠る霊園へ、墓参りに行って来ました。
思えば、不思議な光景です。
半年前までは、この墓は空っぽだったのです。
30数年前にオヤジが、将来のためにと買ったまま、ずーっと長い間、入る人はいなかった墓です。
それが今年になって、両親が2人とも続けて入ってしまうとは……。
「ほら、大きいジイジとバアバに、手を合わせなさい」
墓参に同行した長女が、孫に線香を手渡しました。
「そうだ、運動会のかけっこで2位になっんだろう! 報告しなくっちゃ」
そう言って、僕も孫と一緒に線香を墓前に手向けました。
<オヤジ、オフクロ、みんな元気にやってるよ。ただ、マロが死んじゃった。そのうち、そっちへ行くからさ。また可愛がってあげて。>
今年は3つも御霊(みたま)を見送ったのですね。
人生は予期せぬことが起きるものですが、こんなにもいっぺんに御霊を見送ることになるとは、思いも寄りませんでした。
これも運命だと、受け入れるしかありませんね。
「おとう、大丈夫?」
水桶を手にして歩いていた長女が、振り返って言いました。
「なにが?」
「おじいちゃんとおばあちゃんの介護が終わったと思ったら、マロまで逝っちゃうんだもの。ボケちゃうんじゃないの?」
「お前まで、言うか! まだオレは、そんな歳じゃないって!」
「ジイジは、だいじょうぶだよね。ぼくとあそぶから」
「そーだよ、今度、釣りに行こうな!」
「ワーーーイっ!」
そう言って走り出した孫に向かって叫ぶ、長女の声が霊園に響き渡りました。
「こらーーー!! お墓で走っちゃダメでしょーーーーーう!!!!」
暑さ寒さも彼岸まで。
かたわらで、雨に濡れたススキの穂が揺れていました。
Posted by 小暮 淳 at 19:22│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
マロパパ先生
お彼岸の真っ只中ですね・・・。今夜は、旧友たちと飲みまくっていました。
少しだけ遠い地です。夜空を見上げて、時間の変遷に思いを馳せていました。
ご両親、マロさんの旅立ち、先生やご家族さまにしかわからないいろいろなことがあると思いますが、お酒の魔力でどうか安らかないい時間をお過ごしされますように・・・。わたしも、今夜は、亡き夫をしのぶ静かな秋の夜なり、です。。。
ムクより
お彼岸の真っ只中ですね・・・。今夜は、旧友たちと飲みまくっていました。
少しだけ遠い地です。夜空を見上げて、時間の変遷に思いを馳せていました。
ご両親、マロさんの旅立ち、先生やご家族さまにしかわからないいろいろなことがあると思いますが、お酒の魔力でどうか安らかないい時間をお過ごしされますように・・・。わたしも、今夜は、亡き夫をしのぶ静かな秋の夜なり、です。。。
ムクより
Posted by ムク at 2019年09月24日 01:28
ムクさんへ
ありがとうございます。
昨晩は酒処「H」にて、常連さんたちに、心を癒やしていただきました。
誰もマロに会ったことがないのに、みんなマロのことを知っているんです。
「マロって、いいやつだったよな」
だなんて……。
本当にマロは、みんなに愛され、しあわせな犬生だったと思いました。
マロを知っているすべての人に、感謝とお礼を申し上げます。
ありがとうございます。
昨晩は酒処「H」にて、常連さんたちに、心を癒やしていただきました。
誰もマロに会ったことがないのに、みんなマロのことを知っているんです。
「マロって、いいやつだったよな」
だなんて……。
本当にマロは、みんなに愛され、しあわせな犬生だったと思いました。
マロを知っているすべての人に、感謝とお礼を申し上げます。
Posted by 小暮 淳
at 2019年09月25日 10:24
