2020年04月21日
旅のめっけもん (最終回)
●旅のめっけもん 「蛇木(へびき)の滝」
不思議な滝である。
何が不思議なのかといえば、これは果たして “滝” なのか? という疑問が湧いてくる滝である。
対岸の岩壁上に立って、眺めれば眺めるほど、その思いは強くなっていった。
宿から数百メートル下流、国道299号の道路端に 「蛇木の滝」 の案内板がある。
地元では “奥多野のナイアガラ” と呼ばれるほどの有名な滝だというので、行ってみた。
駐車場に車を停めると、轟々(ごうごう) と勇壮な水の音が鳴り響いている。
心躍らせて、川岸まで駆け寄って、驚いた。
これが滝?
滝の定義は定かではないが、どう見ても砂防堰堤(えんてい) である。
神流(かんな)川の本流が川幅いっぱいに、そのまま約9メートル下の滝つぼへと水煙を上げながら落下している。
コンクリートで造られた人工の滝であるが、では景観的にはどうなのか? と問われれば、これが文句なしに美しい!
滝の周辺は 「蛇木渓谷」 と呼ばれる景勝地で、奇岩群が約900メートルにわたり続いている。
その自然の渓谷美と妙に溶け込んでいるから、これまた不思議である。
岩壁の上から覗き込めば、滝つぼ近くに釣り人の姿が見える。
ヤマメやアユなど、渓流釣りのメッカとしても有名のようだ。
<2006年7月 向屋温泉>
●旅のめっけもん 「忠治の岩屋」
『赤城の山も今宵限り……、可愛い子分のてめえ達とも別れ別れになる首途(かどで) だ』
江戸後期の侠客(きょうかく)、国定忠治は実在の人物ではあったが、謎の部分も多い。
講談や芝居でお馴染みの名台詞も、後世に脚色されたものだが、いずれにせよ 「群馬を代表する人物」 のアンケートでは、今でもダントツの人気である。
宿の前に、広い駐車場がある。
不動大滝への登山道は、ここから始まる。
忠治が隠れていたといわれる岩屋も、その途上にある。
片道約1時間……
徒行を思いあぐねていると、宿の主人が 「途中まで車で行ける」 と教えてくれた。
前不動駐車場から約20分で、滝沢不動堂へ。
ここからは岩場あり、丸太橋ありと沢歩きが楽しい。
約10分で、滝との分岐点に。
そこから、ひと登りで 「国定忠治のかくれ岩」 に着いた。
天保11(1840)年の11月から信州路へ国越えするまでの3ヶ月間、忠治がここで子分たちと過ごしたという岩屋だ。
階段を恐る恐る下りてみるが、中は真っ暗で何も見えない。
洞窟内は太陽電池による照明が点灯するらしいが、「来場者人数により点灯しない場合もある」 との看板を見つけた。
ひんやりと、吐く息だけが白く見えた。
分岐にもどり、わずか5分で不動大滝に着いた。
<2006年8月 忠治温泉>
このカテゴリーでは、ブログ開設10周年を記念して不定期連載をした「源泉ひとりじめ」 に併載されていたショートコラムを紹介してきました。
ご愛読いただき、ありがとうございました。
Posted by 小暮 淳 at 11:41│Comments(0)
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