2020年05月31日
一湯良談 (いっとうりょうだん) 其の十三
『裸の大将が愛した湯』
大正13(1924)年のこと。
谷川岳を望む利根川沿いの田んぼに、冬でも雪解けが早く、稲が枯れる場所があった。
不思議に思った初代の深津謙三さんが原因を探ろうと掘ったところ、温泉が湧き出たという。
湯小屋を建て、しばらくは無料で村人に開放していたが、昭和2(1927)年に 「辰巳館」 を開業した。
現主人の深津卓也さんで4代目になる、上牧(かみもく)温泉(みなかみ町) で一番古い旅館だ。
源泉の温度は約41度。
ややぬるめだが、弱アルカリ性の湯が肌にサラリとまとわり付く。
泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉。
保温と保湿に優れているため 「化粧の湯」 と呼ばれ、昔から美肌効果のある温泉として親しまれてきた。
ここに名物風呂がある。
何が名物かといえば、“裸の大将” で知られる放浪の画家、山下清の絵が浴室の壁一面に描かれているのだ。
上牧温泉という自然に恵まれた静かな土地に、清の素朴で素直な人柄が、ぴったり合ったのだろう。
昭和30年代に何度となく、辰巳館を訪れている。
同36(1961)年の春。
大峰山の大峰沼に出向いて下絵を描き、2ヶ月かけて貼り絵を仕上げた。
その原画をもとに、特殊なモザイクガラスを使い作製した大壁画が 『大峰沼と谷川岳』 である。
完成時には、清自身が署名部分のタイルを貼った。
自らの視力の低下と闘いながら、情熱を傾けて完成させた本邦唯一の作品で、晩年の傑作といわれている。
見れば見るほど、不思議な絵である。
大峰沼にあるはずのないボートや居るはずのない釣り人の姿が描かれている。
また紅葉に包まれた晩秋の山の中なのに、描かれている人たちは、みんな半袖の夏服を着ている。
これらはすべて、清独自のユニークな発想によるものだ。
さらに、この壁画の中には、清自身が描かれているという。
やさしい化粧の湯に抱かれながら、裸の大将を探してみるのも一興である。
<2013年5月>
Posted by 小暮 淳 at 11:48│Comments(2)
│一湯良談
この記事へのコメント
お久しぶりです。
本当にコロナコロナと・・・・・食傷気味ですね
コロナよりコロナを伝えるテレビのワンパターンに
まいってしまいます。
私は西部劇の追っかけをしています。
先日は「ガンヒルの決闘」をみました。
高校3年生の時新宿の映画館で「三大決闘」を
100円で見たことを思い出しました。
「ゴーストタウンの決闘」、「OK牧場の決闘」の
三本立てでした。
ちょっと話題が古すぎてごめんなさい!
本当にコロナコロナと・・・・・食傷気味ですね
コロナよりコロナを伝えるテレビのワンパターンに
まいってしまいます。
私は西部劇の追っかけをしています。
先日は「ガンヒルの決闘」をみました。
高校3年生の時新宿の映画館で「三大決闘」を
100円で見たことを思い出しました。
「ゴーストタウンの決闘」、「OK牧場の決闘」の
三本立てでした。
ちょっと話題が古すぎてごめんなさい!
Posted by 気まぐれ爺さん at 2020年05月31日 15:08
気まぐれ爺さんへ
お久しぶりです。
お元気そうで、何よりです。
若い頃に観た映画は、またこの歳になって観ると、思い出も重なって感動もひとしおですよね。
「007」や「ランボー」など、今観てもワクワクしてしまいます。
お久しぶりです。
お元気そうで、何よりです。
若い頃に観た映画は、またこの歳になって観ると、思い出も重なって感動もひとしおですよね。
「007」や「ランボー」など、今観てもワクワクしてしまいます。
Posted by 小暮 淳
at 2020年06月01日 09:24
