2020年07月18日
さらば還暦オババ
ふだん、僕は、マンガというものは読みません。
思い返しても、習慣的に読んでいたのは20代までで、それ以降の新しいマンガは、まったく知りません。
でも、だからといって家に、まったくマンガ本が無いというわけではありません。
かつて息子がいた部屋には、「ドラゴンボール」 や 「ワンピース」 などの人気マンガが全巻揃って、今でも置かれています。
では、僕が所有してるマンガは?
10代に揃えた、ちばてつやの 「あしたのジョー」 と手塚治虫の 「ブラック・ジャック」 のみです。
ということで、このコロナ自粛で時間を持て余していたこともあり、読書の合間に 「ブラック・ジャック」 を読み返し始めました。
「ブラック・ジャック」 は、1973年11月から 「週刊少年チャンピオン」(秋田書店) で連載が始まり、再連載が終了した1983年10月まで全242話が掲載されました。
膨大な量ですが、毎日数話ずつ、気晴らしに読んでいます。
で、今読むと、半世紀近くも前に描かれたマンガですから、時代背景の違いに違和感を感じる場面というのが、多々見受けられます。
なかでも、今、この歳で読むと、かなりショッキングな話があったので、ご紹介します。
『二つの愛』 というタイトルの作品です。
ストーリーは、こうです。
ある日、日本一といわれる寿司職人のタクやんという青年が、交通事故に遭い、両手を失ってしまいます。
加害者のトラック運転手の男が謝罪に訪れると、タクやんは告訴を取り下げて、こう言います。
「ぼくの手になって、寿司を握ってくれ」 と……
タクやんには、どうしても自分の握った寿司を食べさせたかった人がいました。
それは、故郷で暮らす母親です。
その夢を実現させるためにも、タクやんは男に、寿司の握り方を教えます。
やがて二人三脚で修業を積んだ末に、男は、タクやんが握った寿司と遜色のない寿司を握れるようになります。
そして二人は、タクやんの夢をかなえるために、母親の待つ故郷へ向かいます。
まあ、話の内容は、心温まるいい話なんです。
後半は、ブラック・ジャックの活躍もあり、感動的なエンディングを迎えます。
が、問題は、ここで描かれている母親なんです。
「おふくろの還暦祝いに」 とか、「目が悪くて見えない」 とか、「おっかさんの年では、もうすぐ寿司が食べられなくなる」 といったタクやんの言葉が、随所に出てきます。
読んでいて僕は、イヤ~な予感がしていました。
案の定、描かれていた母親は、ヨボヨボの腰が曲がった “おばあさん” なのであります。
「えっ、還暦っていったよね。だったら60歳のはず。なんで、こんな年寄りなんだよ」
と、思わず突っ込みを入れてしまいましたが、よくよく考えてみれば、このマンガは半世紀前に描かれたんですよね。
日本人の平均寿命だって、今よりは、だいぶ若かったはずです。
※(ちなみに1970年の平均寿命は、男69.31歳、女74.66歳でした)
「サザエさん」 の波平さん、ふねさんだって、あれで50代なんですからね。
さらに古いことを言えば、民話の 「姥捨山」 では、60歳になった年寄りは、山に捨てられてしまったのですから、時代とともに世の中も変わりました。
ああ、よかった!
今の時代に還暦を迎えられて!
もし手塚先生が存命だったら、“還暦女性” のキャラクターを描き替えたかもしれませんね。
Posted by 小暮 淳 at 17:47│Comments(0)
│つれづれ