2020年10月28日
温泉考座 (41) 「北に名湯 南に薬湯」
「なーんだ、ここは沸かし湯か!」
時々、温泉場で、こんなことを言う人を見かけます。
決まって年配の男性です。
“沸かし湯” とは、温度の低い温泉を加温して使用していることを指す言葉です。
この人たちは、本物の温泉は、すべて温かいものだと思い込んでいるようです。
しかし現在の温泉法では、温度が25度以上あれば無条件に 「温泉」 と認める一方、温度にかかわらず定められた成分が基準値以上含まれている場合も 「温泉」 と認めます。
このあたりが、年配の人たちには誤解を招きやすいのでしょう。
なぜなら昔 (戦前) は、地中から湧き出る泉は飲用を除き、すべて 「鉱泉」 と呼んでいました。
そのうち温かいものを 「温泉」、温度の低いものを 「冷泉」 (冷鉱泉) と呼び分けていたからです。
群馬県は、赤城山―榛名山―浅間山の火山ラインを境にして、北側の山岳部には温度の高い温泉が湧き、南側の平野部では温度の低い温泉が湧いています。
例外を除いて、火山帯のない平野部に高温泉が自然湧出することはありません。
平成以降、ボーリング技術が飛躍的に進歩し、大深度掘削による平野部の温泉が急増しました。
地温は100メートル深くなるごとに2~3度ずつ上昇しますから、平均地温が15度だとしても1,000メートル以上掘れば、40度以上の温かい温泉を掘り当てることができるのです。
温泉法では25度以上あれば 「温泉」 と認められますから、日本中どこでも温泉が湧いてしまうことになります。
そんな現代において、わざわざ加温してまで入る冷鉱泉の存在は見逃せません。
県の南部には開湯から何百年と経った今でも、その効能を求めて遠方より多くの人が訪れている薬湯が点在します。
坂口温泉 (高崎市) 、猪ノ田温泉 (藤岡市) などは、昔から 「薬師の湯」 と呼ばれ湯治場として親しまれてきました。
医学が発達していなかった時代のこと。
万病を治してくれる薬師の湯は、人々のよりどころだったに違いありません。
だから私は、冷鉱泉のことを 「沸かし湯」 だなんて言えません。
群馬は、「北に名湯あり、南に薬湯あり」。
そう思っています。
※坂口温泉は現在、休業しています。
<2014年3月5日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:15│Comments(4)
│温泉考座
この記事へのコメント
イヤー本当に勉強になります。
ところで、旅館の温泉に入ると脱衣場の隅っこや入口の少し暗い感じのところに小さな文字で書いてあるのをよく見かけますが、難しくてちゃんと読んだことがありません。そこで小暮さんに提案なのですが、各宿泊施設にもっと見えるところに、わかりやすく、イラストなどを交えて「北に名湯南に薬湯」の
ポスターを群馬県の温泉旅館に掲示してもらったらいかがでしょうか?
殆んど知らない人ばかりですよ!
「そうだったの!」、「じゃーまた来よう」・・・・なんてなるんじゃないでしょうか?自分たちだけ知っていて満足していませんか?
群馬県人は少しPRが不足してますよ!
ところで、旅館の温泉に入ると脱衣場の隅っこや入口の少し暗い感じのところに小さな文字で書いてあるのをよく見かけますが、難しくてちゃんと読んだことがありません。そこで小暮さんに提案なのですが、各宿泊施設にもっと見えるところに、わかりやすく、イラストなどを交えて「北に名湯南に薬湯」の
ポスターを群馬県の温泉旅館に掲示してもらったらいかがでしょうか?
殆んど知らない人ばかりですよ!
「そうだったの!」、「じゃーまた来よう」・・・・なんてなるんじゃないでしょうか?自分たちだけ知っていて満足していませんか?
群馬県人は少しPRが不足してますよ!
Posted by 気まぐれ爺さん at 2020年10月28日 14:01
気まぐれ爺さんさんへ
温泉分析書のことですね。
おっしゃる通り、字が小さいうえに、見にくい所に貼ってあることが多いですね。
ズバリ! こういう宿は、湯に自信のない宿です。
逆に自信のある宿は、堂々と分かりやすく表記したものを掲示しています。
実は今、温泉の情報開示が求められています。
都合の悪い情報は隠す、悪しき慣習は一日も早く是正すべきだと思います。
一朝一夕には解決しませんが、少しずつ啓もうしていきたいと思います。
ご意見、ありがとうございました。
温泉分析書のことですね。
おっしゃる通り、字が小さいうえに、見にくい所に貼ってあることが多いですね。
ズバリ! こういう宿は、湯に自信のない宿です。
逆に自信のある宿は、堂々と分かりやすく表記したものを掲示しています。
実は今、温泉の情報開示が求められています。
都合の悪い情報は隠す、悪しき慣習は一日も早く是正すべきだと思います。
一朝一夕には解決しませんが、少しずつ啓もうしていきたいと思います。
ご意見、ありがとうございました。
Posted by 小暮 淳 at 2020年10月28日 20:25
こんにちは
加温を否定する人も 減少して温泉なんてお風呂の延長線上になった感があります
身近な資源を活用出来ないのは 先人に申し訳無い。
赤城の地獄谷温泉跡でも見に行こうかな
加温を否定する人も 減少して温泉なんてお風呂の延長線上になった感があります
身近な資源を活用出来ないのは 先人に申し訳無い。
赤城の地獄谷温泉跡でも見に行こうかな
Posted by momotaka at 2020年10月30日 12:20
momotakaさんへ
お久しぶりです。
相変わらず、精力的に動いていますね。
それにしても赤城の地獄谷温泉跡とは、マニアックです。
でも、消えた温泉探しは、魅力があります。
ぜひ、「群馬の消えた温泉マップ」 を作ってください!
お久しぶりです。
相変わらず、精力的に動いていますね。
それにしても赤城の地獄谷温泉跡とは、マニアックです。
でも、消えた温泉探しは、魅力があります。
ぜひ、「群馬の消えた温泉マップ」 を作ってください!
Posted by 小暮 淳 at 2020年10月30日 19:14