2021年07月12日
奇特な読者
雑誌に連載したエッセイが、初めて出版されたのは平成9(1997)年でした。
あれから24年……
今までに僕は、15冊の本を著しました。
「どこのどんな人が本を買ってくれているのだろうか?」
本を出版するたびに、人知れず思います。
かなうことなら、僕の本を買ってくださった方全員の顔を見て、直接お礼を言いたい!
筆者ならば誰もが、そう思っているに違いありません。
本は通常、書店やネットで販売されます。
よって、どこでどんな方が僕の本を買ってくださったかは、ほとんどの場合、分かりません。
例外を除いては……
その例外とは?
著者が直接、本を手売りする場合です。
いわゆる講演会やサイン会の会場ということになります。
最近はコロナの影響もあり、屋内のイベントは、ことごとく中止になっているため、読者とお会いする場は、ほとんどありません。
そんな中、唯一、僕には読者と出会える場があります。
毎月1回、群馬県伊勢崎市の伊勢崎神社境内で開催している 「神社かみしばい」 です。
この会場では、紙芝居の原作となった僕の著書や作画を担当したイラストレーターの作品を販売しています。
ほとんどの場合、紙芝居の上演を観覧した帰りに、興味を持たれた方が “おみやげ” 感覚で買われて行かれます。
が!
昨日は違いました。
「読者」 が 「著書」 を 「購入」 しに来てくれたのです。
その男性 (推定60代) は、今年のはじめに一度、会場に訪れています。
そのとき、声をかけていただき、僕の著書を見て、
「小暮さんの本は、全部持っています」
と言ってくださったのです。
「全部ですか!?」
と驚く僕に、
「『上毛カルテ』 も持っています」
これにはビックリ!
この 『上毛カルテ』(上毛新聞社) こそが、24年前に出版した処女エッセイなのです。
「ただ、どうしても手に入らなかった本が1冊あるんですよね。えーと……、なんて言ったかな~? サイ、サイ……」
「『ヨ―! サイゴン』 ですか?」
「それそれ、それだけは、どこを探してもなかった」
そりゃ~、無いはずです!
『ヨ―! サイゴン』 は、平成11(1999)年に自費出版したベトナム旅行記なんです。
自費出版ゆえ、書店には並びませんでした。
でも、うれしいですね。
そこまで僕の著書について知っているなんて!
「分かりました。まだ在庫がありますから、次回からここで販売します」
あれから数か月。
昨日、その男性は訪れました。
そして、感慨深そうに本を手にして、
「これで、すべて揃いました」
そう言って、代金を払ってくださいました。
ありがとうございます。
心より感謝いたします。
著者冥利に尽きた一日でした。
Posted by 小暮 淳 at 10:29│Comments(0)
│神社かみしばい