2021年07月19日
酒井正保先生のこと
<きっかけは13年前に、さかのぼる。当時、私は群馬県内で無料配布されていた生活情報誌の編集人をしていて、毎月、一号一話、編集後記の代わりにコラムを連載していた。タイトルは 『編集長がゆく』。県内で起きている不思議な現象や奇妙な習慣、荒唐無稽な伝説を追って、その謎を解き明かす旅に出ていた。>
『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) 「まえがき」 より
このコラムを執筆するにあたり、参考にさせていただいた文献が、民俗研究家・酒井正保先生の著書の数々でした。
酒井先生の著書との出合いは、さらに十数年前にさかのぼります。
<民話や伝説に興味を抱くようになったのは、フリーランスのライターになってまもなくの頃。編集を手がけた 『前橋めっけ ~ぼくら、ふるさと探検隊~』(前橋法人会) という小冊子との出合いでした。前橋市に生まれ育ちながら、見るのも聞くのも初めての摩訶不思議な風習や慣習が残されていることを知りました。しかも、それらは何百年も前から伝わる民話や伝説に端を発しているものが多いのです。>
『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) 「あとがき」 より
群馬県前橋市という一地方都市限定の “謎学本” の編集を任されたのです。
「あとがき」 にも書きましたが、この土地に生まれ育ちながらも正直、民話や伝説には無縁の生活をしていました。
そんな手探りでの取材活動の折に出合ったのが酒井先生の著書でした。
『前橋昔がたり』 (朝日印刷)
『前橋とその周辺の民話』 (朝日印刷)
前橋市在住の酒井先生ならではの緻密な取材で集められた、実にコアでマニアックな本でした。
もう僕は夢中になって、先生の他の本も読み漁りました。
そして、「いずれ先生のように、地元に根付いた民話や伝説をテーマに本を書いてみたい」 と思うようになったのであります。
僕は一度だけ、先生にお会いしたことがあります。
といっても、講演会という一方的な場での面識ですが……
当時、すでに先生は80歳を過ぎていましたが、その雄弁に語る民話や伝説の奥深さに、グイグイと引き込まれたことを覚えています。
(当ブログの2011年2月26日 「民話に魅せられて」 参照)
そんな先生が、今年も新著を出版したという新聞広告を目にしたので、速攻、購入しました。
『心に残る上州の伝承民話を訪ねて』 (上毛新聞社)
昨年も 『上州の方言と妖怪の民俗を訪ねて』 (上毛新聞社) を出版していますから、2年続けてということになります。
確か先生は、90歳を過ぎられているはずです。
いったい、そのバイタリティーは、どこから湧いてくるのでしょうか?
そう思ったら、がぜん、僕にも勇気と希望が湧いてきました。
だって、先生の歳まで、まだ30年もあるのですから!
まだ書ける、まだまだ書ける!
酒井先生、いつまでもお元気で、まだ眠っている民話や伝説を掘り起こしてください。
次回の新著を楽しみにしております。
Posted by 小暮 淳 at 11:12│Comments(0)
│謎学の旅