2022年01月09日
ブレーキを踏めない
医学博士の養老孟司・著 『ヒトの壁』 が売れているそうです。
養老先生と言えば、2003年に 『バカの壁』 という本が400万部を超える大ベストセラーになりました。
当時、僕も読んだ記憶があります。
確か、買って読んだような……
記憶を頼りに、書架を端から探してみました。
すると、ありました!
新潮新書の 『バカの壁』。
さて、どんな内容だったっけ?
本の数だけは読んでいるのですが、読むそばから忘れてしまうのが、僕の読書の悪い所です。
ということで気になり、20年ぶりに読み返してみました。
学術的で、凡人には理解困難な個所も多いのですが、文章は読みやすく、サラっと2時間ほどで読み終えてしまいました。
人間の脳には、“バカの壁” があるんですね。
天才と凡人、軍隊と身体、宗教と洗脳……
さまざまな場面での人間の脳の有り様を示しています。
なかでも僕が一番興味を抱いたのは、「キレる脳」 です。
このブログでも何度か触れてきましたが、突然、コンビニやスーパーマーケットのレジで大声を上げてキレ出す “オジサン” たち。
中高年、しかも圧倒的に男性が多い。
一般的には、脳の老化が原因だといわれていますが、はて、どこが、どのように変化してしまったのでしょうか?
その答えが、この本にありました。
<結論から言えば、脳の前頭葉機能が低下していて、それによって行動の抑制が効かなくなっている、ということなのです。>
実は、この現象は、必ずしも老化だけが原因ではないようで、実験によれば、昔の子どもと今の子どもを比較しても、今の子どものほうがキレやすいことが分かっています。
興味深いのは、アメリカでの調査結果です。
衝動殺人の犯人の脳を調べてみると、前頭葉機能が落ちていたそうです。
つまり脳から見て、「抑制が効いていない」 「我慢ができない」 ということです。
一方、連続殺人の犯人の脳は、前頭葉機能が落ちていなかったといいます。
これは、警察に捕まらずに犯行を続けているということは、判断力が正常であるという証拠です。
では、連続殺人犯は、どこが普通の人と違うのでしょうか?
脳が教えてくました。
偏桃体という善悪の判断をつかさどる部分の活性が高く、活発化しているそうです。
この極端な脳の違いを持つ殺人犯について、先生は、分かりやすく次のように説いています。
<自動車に例えれば、この偏桃体は社会活動に対するアクセルで、前頭葉はブレーキにあたります。衝動殺人は、このブレーキが踏めない、すなわち前頭葉がうまく機能していない人が行う犯罪。その逆で、連続殺人はアクセルの踏み過ぎ、つまり偏桃体が活発に働きすぎて犯してしまう。>
では、どうしたら防げるのか?について、この後、延々と記されています。
で、僕は思いました。
みなさんも “ブレーキ” と聞いて、ピンときませんか?
そうです、高齢者による車の暴走事故です。
本来なら危険を察知したら、ブレーキを踏みます。
が、事故を起こしている高齢者たちは、みんなブレーキを踏んでいないんです。
いえいえ、脳科学的にいえば、“踏めない” んですね。
いや~、脳って面白いですね。
あらためて養老先生のファンになりました。
さっそく 『ヒトの壁』 も買ってこようっと!
Posted by 小暮 淳 at 12:56│Comments(0)
│読書一昧