2022年06月13日
読者様は神様です
数年前のさる会合の席でのこと。
年配の男性に声をかけられました。
「私は小暮さんの文章が好きでしてね。表現がいい」
唐突に褒められると、こちらも構えてしまいます。
「はっ? ……ああ、ありがとうございます」
とりあえず、お礼を言いました。
すると男性は、なんと20年以上前に書いた処女エッセーのタイトルを言いました。
それ自体が驚きだったのですが、さらに男性はエッセーの中の一節をそらんじました。
「『小さな雨が降っていた』、あの表現は感動しました」
そう言われても、書いた本人が忘れています。
後で読み返してみると、その言葉が収録されているのは、女子少年院をルポした章でした。
重苦しい取材を終えて、建物の外へ出た時の描写です。
「読んでいて、“小さな雨” が見えたもの。“小雨” ではなかった」
御見それしました!
著者が気づいていない所に、読者は気づいていたんですね。
深い! 深すぎる!
ピーンと背筋が伸びた瞬間でした。
これは、さる講演会でのこと。
講演終了後、何人かの著書を持参した読者に、サインをしている時でした。
30代とおぼしき男性は、手にしたバッグを開けて、中を見せてくれました。
おったまげーーー!!!
ビッシリと僕の著書で埋まっています。
「すごいね」
「ええ、全部持っています」
そして、こんなことを言いました。
「先生の本には、たびたび同じ温泉宿が出てきます。その宿を見つけて、読み比べるのが好きなんです」
ゲッ、マニアック~!
そんな読み方をしているの?
読者の深層心理とは、複雑で奥が深いものですね。
これまた、ピーンと背筋が伸びてしまいました。
いやはや、なんとも、著者冥利に尽きるエピソードではあります。
ただただ、感謝!
そして、読者様は神様です。
Posted by 小暮 淳 at 12:03│Comments(2)
│著書関連
この記事へのコメント
小暮先生
自分も読み比べします。
それから、宿泊前にじっくり読んで泊まったり、逆に先入観なく自分でどう感じるか試すため、本文は読まずに泊った後に読みなおしたりしています。
その時に応じてるルールはありませんが、いろいろなことやってます。
一つだけ決まっていることがあります。先生の本に載っている宿に行くときは必ずこう言います。
「自分は温泉好きで小暮淳さんの温泉の本を参考にして、今日、泊まりにきました。どうぞよろしくお願いします」
追伸
先日ずっと前から行きたかった牛伏山のふもとにある小さな宿に泊まってきました。
自分も読み比べします。
それから、宿泊前にじっくり読んで泊まったり、逆に先入観なく自分でどう感じるか試すため、本文は読まずに泊った後に読みなおしたりしています。
その時に応じてるルールはありませんが、いろいろなことやってます。
一つだけ決まっていることがあります。先生の本に載っている宿に行くときは必ずこう言います。
「自分は温泉好きで小暮淳さんの温泉の本を参考にして、今日、泊まりにきました。どうぞよろしくお願いします」
追伸
先日ずっと前から行きたかった牛伏山のふもとにある小さな宿に泊まってきました。
Posted by センネンボク at 2022年06月13日 20:39
センネンボクさんへ
やはり読者様は神様ですね。
頭が下がります。
ありがとうございます。
ついに、行かれましたね。
復活の宿に!
若き主人に、エールを捧げます。
やはり読者様は神様ですね。
頭が下がります。
ありがとうございます。
ついに、行かれましたね。
復活の宿に!
若き主人に、エールを捧げます。
Posted by 小暮 淳
at 2022年06月14日 10:32
