2022年06月17日
女たちの無念が咲かせた花しょうぶ
「いずれ菖蒲 (アヤメ) か杜若 (カキツバタ) 」
といえば、区別がつきにくいことの例え。
転じて、どちらも優れていて、優劣がつきにくいときに使う言葉です。
確かに素人目には一見、見分けがつきません。
さらに、ややこしいのは、菖蒲という字は 「ショウブ」 とも読むことです。
アヤメとカキツバタを見分けるのでさえ難しいのに、ショウブまで加わると、三つ巴の難解となります。
ただし一度覚えると、見分け方は意外に簡単なようです。
まず、見られる場所が違います。
アヤメは陸地、ショウブは水辺、カキツバタは水の中。
そして、開花時期も異なります。
カキツバタは5月中旬、アヤメは5月中~下旬、ショウブは6~7月中旬。
ということは、今の時季に見られるのは、ショウブである可能性が高いということになります。
ところが、これまた、ややこしい。
今の時期、花を咲かせているのは、正しくはショウブではなく、「ハナショウブ」 といわれる別品種だということ。
一般に、端午の節句に風呂に入れるショウブとは、まったくの別物です。
ちなみに菖蒲湯のショウブはサトイモ科 (もしくはショウブ科) で、ハナショウブはアヤメ科です。
そんな予備知識を入れ込んでから、さっそく行って来ました。
「赤堀花しょうぶ園」 (伊勢崎市)
まさに、今が見頃。
紫や白、黄色の2万5000株のハナショウブが咲き誇っていました。
えっ、観光なのかって?
まさか! 仕事ですよ、仕事!
業界でいうところのロケハン (ロケーションハンティング) です。
ライターの僕にとっては、取材の一環であります。
というのも、僕は昨年1月から伊勢崎市の民話を集めて、紙芝居にして上演する活動を行っています。
※(当ブログのカテゴリー 「神社かみしばい」 参照)
ここ 「赤堀花しょうぶ園」 は、約800年前の農業用水路跡で国指定史跡 「女堀」 です。
平成元(1989)年に伊勢崎市が公園として整備し、ハナショウブを植栽しました。
僕の目的は、ハナショウブではなく、史跡のほうであります。
そして、ここには、女たちが一夜で掘ったという伝説が残されています。
ところが水は最後まで流れず、未完の水路で終わりました。
咲き誇る美しいハナショウブの花々は、何千、何万という女たちの無念が咲かせたように思えてなりません。
だから僕は、この話を後世に伝え残したいと思います。
※正確には、花びらの付け根で見分けます。
アヤメは網目柄、ハナショウブは黄色い模様、カキツバタは白い筋があります。
Posted by 小暮 淳 at 12:45│Comments(0)
│取材百景