2022年08月10日
Bちゃんの机
<13年前のメールアドレスに返信しています。届くのでしょうか?>
先月、突然、懐かしい友人からメールが届きました。
<27年ぶりに日本で暮らし始めています。お時間があったら、一度お会いしたいと思って連絡しました。>
今から27年前。
僕は36歳、彼は29歳。
僕は雑誌の編集者、彼は広告代理店のデザイナー。
仕事で出会い、意気投合して、プライベートでも杯を重ねるようになりました。
僕は彼のことを、親しみを込めて 「Bちゃん」 と呼んでいました。
(Bは名字の頭文字です)
ある日突然、彼は30歳を目前にして、僕に、こう言いました。
「俺、イギリスに行く」
「行くって、旅行?」
「いや、向こうで働く」
「働くって……」
「このままじゃダメだと思うんだ。向こうでデザイナーとしての力を試してみたんだよ」
かくして彼は、妻と子を日本に残したまま、渡英しました。
(後にイギリスに呼び寄せました)
あれから27年。
一時帰国の際に、電話で話したことはありましだか、タイミングが合わず27年間、一度も会えずじまいでした。
そして、ついに昨日、懐かしい友人との再会を果たしました。
「分かるかな? 俺、だいぶ老けたよ」
「こっちなんて、白髪の老人だよ。会って驚くなよ」
でも、心配は無用でした。
高崎駅改札口を出た途端、すぐに分かりました。
「Bちゃん!」
「ジュンちゃん!」
それから僕らは、27年間の空白を埋めるように、呑んで、語り、笑い合いました。
「そういえば、Bちゃんがイギリスに立つ前に、机をもらいに行ったよね」
「あれ、まだ使っているの?」
L字型をした大きなデザイナーズデスクです。
椅子に座ると、正面と左脇にテーブルがあり、執筆作業とパソコン操作が同時にできる優れものです。
「もちろん! 現役だよ」
「ということは、ジュンちゃんが今までに出した本は、すべて、その机で書いたってこと?」
「そうだよ」
「エーーーッ、うれしいなぁ~!!!」
そういうことなんですね。
今日まで一度も思ったことはありませんでしたが、僕は27年間、Bちゃんと離れて暮らしていましたが、ずーっとBちゃんからもらった机で作品を創り続けていたのでした。
「ありがとうね。今日の僕があるのはBちゃんのお陰だよ」
「ジュンちゃんは、相変わらず大げさだな~(笑)」
あっという間の再会でした。
また会うことを誓い合い、2人は駅へと向かいました。
なんとか最終電車に間に合うことができました。。
Posted by 小暮 淳 at 12:04│Comments(0)
│つれづれ