2022年09月05日
永遠の夏休み ~stand by me~
夏になると、読みたくなる小説があります。
毎年、ふっと思い出し、書庫に駆け込み、ひと通り探してみるのですが、見当たりません。
「確か、あったはずなのに……」
そう、一人ごちながら、あきらめてしまうのが常でした。
でも、今年は違いました。
「絶対、あるはず!」
と信念をもって、徹底的に探しました。
でも、見当たりません。
ここまで探して見つからないと、例年のように、あきらめられません。
「見つからないということは、ないんだ!」
と、探すことをあきらめた僕は、書店に直行しました。
そして、数十年ぶりに、本と再会しました。
湯本香樹実・著 『夏の庭 ─ The Friends ─ 』 (新潮文庫)
物語は、小学6年生の仲良し3人組男子の、ひと夏の経験です。
1人が、祖母の葬式に参列してきた話をするシーンから始まります。
「人は死ぬと焼かれるんだ」 「一時間後には骨になるんだ」 「その骨を、みんなでお箸でつまんで、骨壺に入れるんだ」
2人は、本物の 『死んだ人』 を見たことのある友人に羨望を抱き、嫉妬します。
そして、それが、夏休み最大の課題となりました。
人は死んだら、どうなるのか?
この目で、見てみたい。
ある日、3人は、近所の婦人たちが話していたうわさ話で盛り上がります。
「あそこのおじいさん、もうじき死ぬんじゃないかって言ってた」
だったら、そのおじいさんの死ぬ瞬間を見てやろう!
そして、3人のひと夏の冒険が始まります。
まさに、日本版 「スタンド・バイ・ミー」 なのであります。
この小説が書かれたのは、平成4(1992)年ですから、僕は、すでに大人でした。
なのに、強烈な印象を残しているのは、完全に忘れてしまっていた小学生時代の瑞々しい感性が、読後によみがえって来たからであります。
“夏休み” という甘酸っぱい響きと、“冒険” という心くすぐる体験。
そこに、“死” という未知への恐怖が加わり、少年たちの夏は、一気に盛り上がります。
同時に、僕の中に眠っていた少年も目覚め、彼らと一緒に、ひと夏の冒険をするのでした。
「これで、今年の夏休みも終わったな」
それが、今回の読後の感想であります。
ちなみに本作品は、平成5(1993)年に日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞。
また映画・舞台化もされ、世界10ヵ国以上で翻訳され、同9(1997)年にボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ミルドレッド・バチェルダー賞に輝いています。
ご興味を抱いた方には、一読をおすすめします。
ひと足遅れの夏休みを体験をしてみては、いかがですか?
Posted by 小暮 淳 at 13:02│Comments(0)
│読書一昧