2022年09月26日
温泉はラーメンである
さるイベント会場でのこと。
客席で座っていると、いきなり司会者が、こんなことを言い出しました。
「今日、この会場に、温泉ライターの小暮淳さんがお見えになっています」
驚いたのなんのって!
受付で、正体がバレてしまったようです。
司会者に半強制的に促され、その場で起立! 礼! 着席!
まったくもって恥ずかしい体験でした。
そんなことがあったからでしょうか?
イベント終了後、会場を出ようとした時、ひとりの初老の婦人が近寄って来ました。
そして、僕に、こう言ったのです。
「一番いい温泉は、どこですか?」
自己紹介もなく、あいさつもなく、唐突にであります。
「失礼な!」
と思った気持ちをグッと、こらえました。
実は、講演会やセミナーなどの質疑応答の場で、一番多い質問なんです。
でありながら、最大の難問でもあります。
いつも僕は、質問者が納得するような回答ができずに、話をごまかしてしまいます。
でも、考えてみてください。
“一番いい” って、主観ですよね?
定義も基準もありません。
「いい」 と思えば、いい温泉だし、「いや」 と思えば、それは悪い温泉、または嫌いな温泉ということになります。
だから僕は、この質問をされると、必ず、話を 「ラーメン」 に例えます。
「どこのラーメンが一番、おいしいですか?」
と……
そう訊かれたら、どう答えますか?
ただ単に、“おいしい” だけでは、情報が足りないですよね。
しょうゆ味なのか? みそ味なのか? 塩味なのか? とんこつ味なのか……
麺も種類があります。
細麺なのか? 中太麺なのか? 太麺なのか? ちぢれ麵なのか……
また、こってり系なのか? あっさり系なのか?
さらに細かいことをいえば、この “ラーメン” という、くくりの中には、インスタントの袋ラーメンやカップラーメンは、含まれているのだろうか?
そう考えると、玉石混交すぎて、回答に窮するのであります。
ということで僕は、ラーメンのたとえ話をしたあとに、
「もうすこし、温泉の種類かエリアを絞り込んでいただけますか?」
と、お答えしました。
すると初老の婦人は、
「あの……、もう結構です」
と、そそくさに僕の前から姿を消してしまいました。
ちょっと大人げが、なかったですかね?
でも、無礼だったのは、その婦人の方ですよ。
結局、最後まで名前も身分も告げませんでしたもの(笑)。
Posted by 小暮 淳 at 12:24│Comments(0)
│温泉雑話