2022年10月03日
ぐんま湯けむり浪漫 (22) 高山温泉
このカテゴリーでは、2017年5月~2020年4月まで 「グラフぐんま」 (企画/群馬県 編集・発行/上毛新聞社) に連載された 『温泉ライター小暮淳の ぐんま湯けむり浪漫』(全27話) を不定期にて掲載しています。
※名称、肩書等は連載当時のまま。一部、加筆訂正をしています。
高山温泉 (吾妻郡高山村)
村民待望の天然温泉が湧いた!
四方を緑の山々に囲まれ、雄大な自然と大地の恩恵に育まれてきた高山村。
戦国時代には交通の要所として各所に城が築かれ、近世になると越後と江戸を結ぶ三国街道の宿場として大いににぎわった。
明治22(1889)年、中山村と尻高村が合併して、現在の高山村が誕生した。
近年は、村内を横断する国道145号が 「日本ロマンチック街道」 に設定されたこともあり、観光エリアとしての発展が目覚ましい。
県立ぐんま天文台やゴルフ場、キャンプ場など、自然と調和した多くのリゾート施設に、四季を問わず県内外から観光客が訪れている。
多くの施設がある高山村だが、温泉はなかった。
待望の天然温泉が湧いたのは平成になってから。
国の 「ふるさと創生資金事業」 により掘削したところ、泉温約65度、毎分約50リットルの無色透明の温泉が湧出した。
村民からの要望を受け、平成4(1992)年、村営温泉施設 「いぶきの湯」 がオープンした。
建物は木造平屋建て、約170平方メートル。
浴室は内風呂のみだが、天窓のある吹き抜け構造になっているため、開放感がある。
何よりも泉質の良さが評判になった。
「よく温まり、アトピー性皮膚炎や腰痛に効く」
と口コミで広まり、村内はもとより隣接地域からのリピーターが年々増え、最初の5年間で37万人以上の入場者があったという。
まだ県内でも日帰り温泉施設が少なかった時代のこと。
その評判は県境を越えて、遠方からも多くの浴客が訪れるようになった。
温泉施設がある人気の 「道の駅」
山間の小さな施設は、ひと昔前の共同湯の面影を残している。
入り口前には飲泉所があり、湧き出したままの熱い源泉を飲むことができる。
泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉。
口に含むと、かなり塩辛い。
「熱くないと、常連さんに叱られます」
と、古参の従業員が笑った。
浴槽の湯の温度は、常に43度を保っている。
この入った時に、ガツンとくる浴感が、高山温泉の魅力なのだという。
また、その効能の多さから 「病も治す神の霊泉」 とまで呼ばれ、地元の人たちに愛され、憩いの場として親しまれている。
平成8(1996)年7月、住民の福祉向上と村の観光の目玉にすることを目的に、「いぶきの湯」 から源泉を引いた日帰り温泉施設 「ふれあいプラザ」 が新たにオープンした。
一風変わったとんがり屋根の建物は、「日本ロマンチック街道」 にちなんだ洋風なデザイン。
外壁は石造りという珍しさも手伝って、たちまち評判になった。
隣接地には、宿泊施設としてのコテージも増設された。
平成26(2014)年には温水プールを農産物の直売所に全面改築し、道の駅 「中山盆地」 としてリニューアルオープン。
その後、大型遊具や健康器具が設置された公園や絶景の足湯も施設内に完成し、子どもから大人まで楽しめる施設になった。
「景色が素晴らしく、温泉施設が充実している」
という利用者の意見が多く、関東甲信越の 「道の駅」 173駅の中で、2018年度は人気投票15位に選ばれた。
平成にできた新しい温泉は、雄大な自然の下、歴史を刻んでいく。
<2019年9月号>
Posted by 小暮 淳 at 11:55│Comments(0)
│湯けむり浪漫