2022年11月27日
ぐんま湯けむり浪漫 (26) 妙義温泉
このカテゴリーでは、2017年5月~2020年4月まで 「グラフぐんま」 (企画/群馬県 編集・発行/上毛新聞社) に連載された 『温泉ライター小暮淳の ぐんま湯けむり浪漫』 (全27話) を不定期にて掲載しています。
※名称、肩書等は連載当時のまま。一部、加筆訂正をしています。
妙義温泉 (富岡市)
修験者が集まる霊峰の麓
上毛三山の一つ、妙義山 (1104m) は、言わずと知れた群馬を代表する名山だ。
白雲山、金剛山、金鶏山の三峰からなり、その山容は中国の水墨画を思わせるような奇岩や奇石が連なる独特の景色をつくり上げている。
香川県の寒霞渓(かんかけい)、大分県の耶馬渓(やばけい)とともに日本三大奇勝に選ばれている。
「妙義」 の名の由来といわれている妙義神社が主峰、白雲山の東麓に鎮座する。
創建は宣化天皇2(537)年と伝わり、平安、鎌倉時代は波己曾(はこそ)神社と称していた。
元禄15(1702)年の 『妙義大権現由来書』 によれば、「寛弘3(1006)年に比叡山十三代座主尊意僧正がこの山に住み、悪魔を降伏し仏法を守って衆生を済度するために妙義権現と名付けた」 とある。
以後、この山は 「妙義」 とされ、修験道の山として広く崇敬されるようになった。
妙義山は奇岩の山ゆえ、修験者のみならず、諸大名や文人墨客らも訪れるようになった。
門前の参道脇には宿屋やみやげ物屋が立ち、現在でも観光客やハイカーたちが訪れている。
かつて昭和の時代、ここには鉱泉が湧いていた。
登山口、ハイキングコースの起点ということもあり、往時は多くの登山者でにぎわった。
名峰と平野を望む美肌の湯
妙義温泉は平成時代に、妙義山東麓で掘削により湧出した温泉である。
現在、2つの施設が営業をしている。
「妙義グリーンホテル&テラス」 の創業は、平成6(1994)年。
併設されているゴルフ場の宿泊施設としてオープンした。
「ゴルフをされるお客さまの宿泊は3割、7割は温泉目当てのお客さまです」
と、支配人の鬼形正人さん。
オープンから温泉の評判が広まり、今では “西上州の名湯” との呼び声まである。
富岡市や安中市などの近隣からのリピーターが多いことでも人気のほどが分かる。
また一昨年、屋外にテントを張ったプライベートな宿泊スペース 「グランピング」 が誕生。
大自然が味わえると、都会から若者やファミリー層がやって来るようになった。
源泉は、ナトリウムイオンが海水の10倍という二酸化炭素を含む炭酸水素塩・塩化物温泉。
美肌効果があるとされるトロリとした独特の浴感が、愛され続けている理由のようだ。
なによりも奇岩が林立する妙義山の絶景を眺めながらの入浴は、ここでしか味わえない唯一無二の時間といえるだろう。
一方、平成12(2000)年にオープンした 「妙義ふれあいプラザ もみじの湯」 は、日帰り入浴施設。
「妙義山パノラマパーク」 と呼ばれる360度の大パノラマで妙義山を望める人気のエリアにあり、周辺には妙義神社、道の駅、美術館などが点在する。
ここの売りは、妙義山を背に眼下に広がる関東平野を一望する景観にある。
ロビーや露天風呂からは富岡や安中の市街地はもとより、高崎観音山や群馬県庁、遠く筑波山までを見渡すことができる。
富岡製糸場をイメージしたレンガ調の浴室と、妙義山の岩肌をイメージした白亜の浴室は、週ごとに男女が入れ替わる。
山桜、新緑、紅葉と四季折々に装いを変える妙義山。
訪れるたびに、自然の美しさに気づかされる。
<2020年2・3月号>
Posted by 小暮 淳 at 17:13│Comments(0)
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