2022年12月02日
今の姿をさらしたい
「はい、これで」
カウンターの上に、そっとカードを差し出しました。
「今日は “映画の日” ですので、必要ありません」
と、差し戻されてしまいました。
うれし恥ずかしシニアカードは、60歳以上の割引特典です。
本来ならば、1,200円で映画が観られるのですが、昨日は “映画の日” だったのですね。
シニアカード < 映画の日
ということで、さにら200円も安く、1,000円で映画を観てきました。
『土を喰らう十二ヵ月』
監督・脚本:中江裕司
主演:沢田研二
えっ、沢田研二? 大丈夫なの?
と思った人は、きっと僕だけではなかったと思います。
往年のジュリーは、カッコよかった!
小学生の時に、初めて買ったレコードは、ザ・タイガースの 『モナリザの微笑』 でした。
ソロになってからも、出す曲出す曲が大ヒット!
そして大人の魅力も増して、セクシーな歌手でした。
「ジュリ~~~!!」
とドラマの中で、樹木希林が壁のポスターに向かって叫ぶシーンも有名になりました。
でも晩年のジュリーは……
まあ、みなさんも、ご存じのように、だいぶ恰幅(かっぷく)が良くなられ、かつてのスターの面影は、だいぶ薄れてしまいました。
そのジュリーこと沢田研二が、主役だというで大変興味がありました。
「昔の沢田研二を期待していると思いますが、今の私は、こんな姿です」
監督が出演交渉に行くと、そう応えたそうです。
ただ監督は、「絶対に沢田さんだ」 と決めていたようです。
理由は、ただ一つ!
60代後半で、色気のある人。
沢田研二は役の設定よりも少し上だと思いますが、色気のある人には違いありません。
そして、配役が決まった時、監督に、こう言ったといいます。
「今の姿を画面にさらしたい」
その言葉どおり、ありのままの老いた沢田研二が映し出されていました。
もう、そこに居るのは歌手のジュリーではなく、俳優、沢田研二でした。
原作は、水上勉の 『土を喰らう日々 ―わが精進十二ヵ月―』
原作は料理エッセイですから、ストーリーはありません。
脚本では、多少のフィクションを加えながらもカメラは、たんたんと原作に忠実に、十二ヵ月の季節を追い続けます。
<長野の山荘で暮らす作家のツトム。山の実やきのこを採り、畑で育てた野菜を自ら料理し、季節の移ろいを感じながら原稿に向き合う日々を送っている。時折、編集者で恋人の真知子が、東京から訪ねてくる。食いしん坊の真知子と旬ものを料理して一緒に食べるのは、楽しく格別な時間。悠々自適に暮らすツトムが、13年前に亡くした妻の遺骨を墓に納められずにいる…。>
(パンフレットより)
観終わっての印象は、音楽が少ないということでした。
川の音や鳥の声、川のせせらぐ音、雪を踏みしめる足音……
家の中では、竈(かまど)の薪のはぜる音や釜が吹く音、野菜をきざみ、炒める音……
「あ、こんな音だったんだ」
と、改めて日常の中で聞き逃していた音だったことを知りました。
料理の指導は、料理研究家の土井善晴が行い、劇中の料理の多くを沢田研二自身が実際に作ったといいます。
物書きって、いいな~。
僕も、物書きで良かったな~。
どんなに歳を重ねても、衣食住のすべてが言葉として、つむげるのですから。
老いることへの勇気をもらった映画でした。
そして、
太ったジュリーも、い~んです!
Posted by 小暮 淳 at 14:12│Comments(5)
│シネマライフ
この記事へのコメント
映画の後に「H」に行きましたね?
居ながらにして今の世の中、
こうして人の行動が解てしまうのですね。
なるほど、コワいコワい(笑)
居ながらにして今の世の中、
こうして人の行動が解てしまうのですね。
なるほど、コワいコワい(笑)
Posted by T課長 at 2022年12月02日 16:06
T課長さんへ
えっ、確かに行きましたが、昨日は常連客ばっかりだったし……
いや、2人ほど、初顔がいたかな……
でも、写真は撮られていないし……
SNSには、上げられていないと思うんだけど……
どうして、分かったんですか?
えっ、確かに行きましたが、昨日は常連客ばっかりだったし……
いや、2人ほど、初顔がいたかな……
でも、写真は撮られていないし……
SNSには、上げられていないと思うんだけど……
どうして、分かったんですか?
Posted by 小暮 淳 at 2022年12月02日 23:06
COCOさんの報告です。
Posted by T課長 at 2022年12月02日 23:59
小暮先生。自分も先日見に行きました。
ずっと前ですが、水上勉さんの本を読んでましたので、映画でどんな風に描かれるのか楽しみで、見に行きました。
ずっと前ですが、水上勉さんの本を読んでましたので、映画でどんな風に描かれるのか楽しみで、見に行きました。
Posted by センネンボク at 2022年12月03日 20:46
センネンボクさんへ
ですね。
原作はエッセイですから、映画にするのは難しかったと思います。
でも、しっかり “大人の映画” に仕上がっていました。
若い人には退屈な映画かも知れませんが、個人的には十分楽しめた作品でした。
ですね。
原作はエッセイですから、映画にするのは難しかったと思います。
でも、しっかり “大人の映画” に仕上がっていました。
若い人には退屈な映画かも知れませんが、個人的には十分楽しめた作品でした。
Posted by 小暮 淳 at 2022年12月04日 13:24