2023年01月29日
吟遊詩人の夜
悪い魂なんてない
悪い考えがあるだけだ
弱い魂なんてない
弱い考えがあるだけだ
お前の魂は
何も諦めてなんかいない
そんな器用に出来てない
恐れるモノは何もない
いいから
泳ぎたいように 泳げ!
踊りたいように 踊れ!
ブギー!ブギー!ブギー!
“尊敬する人” には、まま出会うことがあります。
でも、“嫉妬する人” と会うことは、稀なことです。
尊敬は、芸術、芸能、文学、音楽に限らず、作品に触れたときに抱く感情です。
でも嫉妬は、その人の生きざまに触れたときに、湧き上がる情熱です。
昨晩、久しぶりに魂が震えました。
その人の名は、シンガーソングライターの西山正規さん。
友人に誘われて、前橋市の 「クールフール」 というライブハウスへ行ってきました。
ライブハウスへ行くなんて、何十年ぶりのことでした。
でも、そこは、まるで時が止まってしまっているかのよう。
薄暗く、大音響の中に立ち込める煙草の煙……
その秘密めいて、不良っぽい雰囲気が、一気に僕の五感をあの頃に引きずり込みました。
西山正規さんは、東京都出身。
歳は、たぶん50代の後半。
「一度、見てください」
見る? 聴くじゃなくて、見るなの?
友人に誘われた意味は、彼がステージに立った瞬時に分かりました。
絶叫とも、雄叫びともつかぬ奇声を上げると、エレキギターをかき鳴らしながら、激しく語り始めました。
♪ 悪い魂なんてない! 悪い考えがあるだけだ! ♪
独唱パンク?
時に彼は床に寝転がりながら、客席のイスに飛び乗りながら、ギターをかき鳴らし、叫び続けるのです。
その姿は、吟遊詩人のよう。
あ! あああああ……
胸が痛いのです。
彼の言葉が、防御する間もなく、とがったキリの先のように刺し込んできます。
え? なんだろう、この息苦しさは?
いつから僕は言葉を、こんなにもオブラートにくるんで生きるようになってしまったのだろうか?
時に彼は、放送コードに引っかかりそうな言葉を発します。
でもそれは、誰もが心に隠し持っている凶器なのです。
その凶器が、オブラートの被膜を少しずつ、はがしていくのです。
ライブ終了後、僕は年甲斐もなく、彼に嫉妬していました。
カッコイイとも違うし、あこがれとも違います。
理想でもないし、羨望でもありません。
ただ単に、彼の “生きざま” への素直な感情でした。
「カンパーイ!」
彼が僕のテーブルに来ました。
「アニキ、ありがとう!」
いつしか彼は、僕のことを、そう呼んでいました。
初対面なのにね。
ステージとのギャップに、ちょっぴり “萌え~” とした夜でした。
Posted by 小暮 淳 at 13:06│Comments(0)
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