2023年11月02日
牧水が呑んだ酒
『よき酒とひとのいふなる御園竹 われもけふ飲みつよしと思へり』
歌人の若山牧水 (1885~1928) は、生涯に約9,000首の歌を残しています。
うち300首以上、酒の歌があるといわれています。
酒豪で知られる牧水です。
朝二合、昼二合、そして夜六合。
一日合計一升を呑み続けたといいます。
では、どんな酒を呑んでいたのか?
牧水ファンとしては知りたいところですが、歌の中で呑んだ酒の銘柄が詠まれているのは、ほんの数銘柄だけ。
その中に、「御園竹 (みそのたけ)」 があります。
長野県佐久市にある明治元(1868)年創業の武重本家酒造の酒です。
長野県佐久市といえば、大正11(1922)年10月14日に、著作 『みなかみ紀行』 で最初に泊まった場所です。
当然、その晩、牧水は地元新聞社の人たちと酒盛りをしています。
もしかして、呑んだの酒は 「御園竹」 ?
かもしれないし、違うかもしれない。
でも、牧水が “よき酒” と歌に詠んだほどの酒なのだから、呑んだ可能性は高いのでは?
だったら我も呑みたい! 一度、呑んでみたい!
『われもけふ飲みつよしと思へり』
と言ってみたい!
呑みたい! 呑みたい! 呑みたい! 呑みたい! 呑みた~い!!
と叫び続けていたら、言葉は言霊(ことだま)となり、天を駆け巡り、願いが叶ったのであります。
「だったら小暮さん、御園竹を買いに行きましょう」
と奇特な方がいました。
「えっ、いいんでか?」
「ええ、車も出します。お酒も買って差し上げますよ」
そんな、うまい話が世の中に転がっているはずがありません。
きっと、この話には裏がある。
絶対に、タダで酒が呑めるわけがないのです。
半信半疑、恐る恐る訊いてみると……
「で、条件は?」
「はい、うちの新聞に連載をお願いします」
なーんだ、やっぱり、タダ酒じゃないんだ。
でもね、あこがれの酒が呑めて、それが仕事になるんなら、願ったりかなったりであります。
しかも、牧水の足取りを追うのであれば、酒だけじゃない。
温泉だってめぐることになる。
おお~、これって一石二鳥、いやいや三鳥、四鳥にも化ける話じゃないですか!
温泉大使として、地酒大使としての本領発揮ということになります。
ということで昨日は、秋の信濃路を紅葉を愛でながらドライブ旅行してきました。
そして、念願の 「御園竹」 をゲット!
昨晩は、牧水に成り切って、“よき酒” に酔いしれましたとさ。
めでたし、めでたし。
『よき酒とひとのいふなる御園竹 われもけふ飲みつよしと思へり』
Posted by 小暮 淳 at 10:24│Comments(0)
│取材百景