2023年12月29日
H納め ~静かなる日々~
タイトルを見て、良からぬ想像をした人はいませんか?
「H」 とは、僕が通っている呑み屋の頭文字です。
日々の暮らしの中で、頑張った自分へのごほうびとして与えているルーティン。
かれこれ15年以上も続いています。
2023年も残り少なくなりました。
今年は、思いのほか忙しい年でした。
サプライズあり、出会いあり、飽きることのない充実した一年だったと思います。
まだ年内にやるべき仕事は残っているのですが、ここらで小休止。
昨日は一日オフにして、自分へごほうびを上げることにしました。
まずは映画。
カンヌ国際映画祭で、主演の役所広司さんが最優秀男優賞を受賞した 『PERFECT DAYS』。
監督はドイツの名匠、ピム・ベンダース。
トイレ清掃員の男の日常を描いた人間ドラマです。
古いアパートに一人で暮らし、同じ時間に目覚めて、仕事道具を積んだ車に乗り、洋楽のカセットテープを聴きながら、いくつもの公衆トイレを黙々と丁寧に清掃して回る毎日が、淡々と描かれています。
大きな事件は起こりません。
ドラマチックな展開もありません。
同じルーティンを繰り返しているだけの日々。
「何が楽しくて生きているのだろうか?」
そんな疑問は、映画を観ているうちに消えていました。
いつしか、彼のような生き方を 「うらやましい」 と思っている自分がいたのです。
舞台は日本の東京。
登場する主要人物もすべて日本人。
なのに、どこか古い洋画を見ているような懐かしさを覚えました。
映画館を出ると、僕は主人公のように風呂屋へ向かいました。
湯に浸かり、外を眺めると、青空が見えました。
主人公の平山は、仕事の合間や休憩の際に、よく空を眺めます。
そして木々の間からこぼれる光を、フィルム式のコンパクトカメラに収めていました。
「こもれび」 です。
僕もまた、湯舟の中で木漏れ日を探していました。
湯から上がり、その足で 「H」 の暖簾をくぐりました。
カウンターに座れば、黙っていてもおしぼりと生ビールが出てきます。
「ジュンちゃん、一年間、お世話になりました」
「こちらこそ、いい一年をありがとうございました」
そう言うと、僕はグラスをひと息で飲み干しました。
「もう一杯」
「この後は何にする? 焼酎? ウィスキー?」
「う~ん、焼酎からのウィスキー、締めに日本酒で」
いつもの僕のルーティンが始まりました。
そして、これが今年の “H納め” となりました。
ママ、常連客のみなさん、来年もよろしくお願いいたします。
よい(酔い)お年をお迎えください。
Posted by 小暮 淳 at 11:19│Comments(0)
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