2024年05月06日
そのとき鹿はどこへ行く
『ドライブ・マイ・カー』 は、観てないんですけどね。
濱口竜介監督がテレビ番組か何かで、自身の作品のことを、こんなふうに言っていたんですよ。
「1回では分からないけど、3回観たら分かる映画だと言われた」
ああ、『怪物』 (是枝裕和監督) みたいな映画なのかな?
でも監督自身が言うのも変だなって……。
だったら、この目と心で観てから判断しよう!
ということになり、『悪は存在しない』 を観てきました。
<長野県、水挽町(みずびきちょう)。自然が豊かな高原に位置し、東京からも近く、移住者は増加傾向でごく緩やかに発展している。代々そこで暮らす巧(大美賀均)とその娘・花(西川玲)の暮らしは、水を汲み、薪を割るような、自然に囲まれた慎ましいものだ。しかしある日、彼らの住む近くにグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナ禍のあおりを受けた芸能事務所が政府からの補助金を得て計画したものだったが、森の環境や町の水源を汚染しかねないずさんな計画に町内は動揺し、その余波は巧たちの生活にも及んでいく。> (チラシより)
チラシには、こんなコピーが添えられています。
《これは、君の話になる》
《観る者誰もが無関係でいられない、心を揺さぶる物語》
実際、映画を観ていて感じたのは、終始 「誰かに見られている」 ような感覚です。
長まわしのカメラワークのせいかもしれませんが、ときどき、「あっ?」 という映像が入ります。
「今のシーンって、誰から目線なの?」
映画は、観た人のものです。
監督が何を言いたいかを見つけ出すものではありません。
素直に観たままを感じればいいわけです。
だとすれば、僕が感じた “目線” は、自然だったのかもしれません。
巧は東京からやって来た芸能事務所の社員に、こう言います。
「あそこは鹿の通り道だ」
もしグランピング場ができれば……
「そのとき鹿はどこへ行く?」
この言葉が、小骨のように心のどこかに刺さったまま、映画はクライマックスを迎えます。
そして、あの衝撃的なラストシーンは、観る者の度肝を抜きます。
途方もない余韻に包まれて、終演後、しばし席を立ちあがることができませんでした。
文句なしに、面白かった!
●第80回ヴェネチア国際映画祭 銀獅子賞(審査員グランプリ)/国際批評家連盟賞
●第67回BFIロンドン映画祭 最優秀作品賞
●第16回アジア太平洋映画祭 審査員特別賞
●第15回ウランバートル国際映画祭 観客賞
●第28回ケララ国際映画祭 最優秀作品賞
Posted by 小暮 淳 at 12:00│Comments(2)
│シネマライフ
この記事へのコメント
「カムイのうた」で泣いてきました。
今回も映画紹介ありがとうございます。
小暮さんの映画紹介に惹かれます。観てきます。
今回も映画紹介ありがとうございます。
小暮さんの映画紹介に惹かれます。観てきます。
Posted by まいちゃ at 2024年05月08日 17:55
まいちゃさんへ
『カムイのうた』 観ましたか!
泣けたでしょう!
『悪は存在しない』
ぜひ、観てください。
素晴らしい映画です。
『カムイのうた』 観ましたか!
泣けたでしょう!
『悪は存在しない』
ぜひ、観てください。
素晴らしい映画です。
Posted by 小暮 淳
at 2024年05月08日 22:22
