2024年10月23日
円相 ~たかが丸、されど丸~
あまり人気がないのでしょうか?
平日の夕方ということもありましたが、上映5分前だというのに劇場に観客は、ポツンと僕一人だけ……
「こりゃいい、ひとり占めじゃないか!」
と客席の中央でデーンと大股開きで、くつろいでいると、上映ギリギリになって、若い女性が一人入って来て、一番後ろの席にポツネンと座りました。
ふたり占めも悪くありません。
映画 『まる』 を観てきました。
地味な作品なので賛否分かれるかもしれませんが、僕は嫌いじゃありませんね。
地味だけどキャストが、いいんです。
主人公を演じる堂本剛の隣人を綾野剛、アパートの大家を濱田マリ。
そして脇を、柄本明、吉田鋼太郎、片桐はいり、小林聡美らのベテランが固めます。
だから堂本剛と綾野剛のドタバタ劇も、安心して観ていられるんですね。
こんなストーリーです。
美大卒だがアートで身を立てられず、人気現代美術家のアシスタントをしている男・沢田。
ある日、通勤途中に事故に遭い、腕のケガが原因で職を失ってしまいます。
部屋に帰ると、アリが一匹。
そのアリに導かれるように描いた○ (まる) が知らぬ間にSNSで拡散され、正体不明のアーティスト 「さわだ」 として一躍有名になってしまいます。
そして、彼の絵は、「さわだの円相」 として美術館に展示されるほどのブームを起こします。
「円相」 とは、禅における書画の一つ。
図形の丸 (円形) を、一筆で描いたものです。
「円」 は丸くて角がなく、終わりも始まりもない形。
最高の悟りをあらわす究極の形なんですね。
沢田は現代美術界の寵児として、もてはやされます。
しかし、一方では、
「ただの丸じゃねーか!」
「誰だって描けるよ」
と否定派も多く、ついにはネット上には “偽さわだ” が何人も現れ、世の中は 「まる」 だらけになります。
僕なんて、ちょっと身につまされてしまうわけです。
“創作” に手に染めた者は、必ずや通る “真偽” との葛藤です。
それは本物か? 偽物か?
自分は本物か? 偽物か?
創作や表現に携わっている人には、観ていただきたい映画です。
(監督・脚本は、『かもめ食堂』 『彼らが本気で編むときは、』 の荻上直子監督)
Posted by 小暮 淳 at 11:55│Comments(0)
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