2020年10月01日
温泉考座 (33) 「守りたい入浴マナー」
日帰り温泉施設の浴室には、「体を洗ってから入りましょう」 と注意が書かれています。
これは何百人と入る公衆浴場でのマナーであり、源泉かけ流しの温泉では、必ずしも当てはまりません。
特にアルカリ性の温泉には、石けん同様の洗浄効果があるため、体を洗ってしまうと洗い過ぎになり、かえって肌が乾燥してしまうことがあります。
湯に体を慣らす程度のかけ湯だけで十分です。
また、「温泉成分が流れてしまうから、最後はシャワーを浴びないほうがいい」 と、そのまま湯から上がって行く人を見かけますが、これもすべての温泉に当てはまることではありません。
塩素消毒がされている浴槽の場合は、シャワーで洗い流したほうが賢明です。
肌の弱い人は、塩素が投入されていない源泉かけ流しでも、酸性やアルカリ性が強い温泉では洗い流すことをおすすめします。
入浴マナーで温泉宿の主人たちが嘆いているのが、入浴セットの持ち込みです。
最近は、“湯ガール” と呼ばれる若い女性たちが、山奥のいで湯にまで出没しています。
彼女らはシャンプーやボディーソープを持参して、ところかまわず体を洗います。
ご存じの人もいると思いますが、昔ながらの湯治を目的とした浴場には、基本的には洗い場がありません。
浴場は、あくまでも “湯を浴(あ)む” ところであり、体を洗うところではないからです。
洗い場がないということは、そのための排水機能が施されていません。
「若い女性が来ると、あとの掃除が大変なんです。浴室が泡だらけで、排水口に長い髪の毛が詰まってしまう。おまけにインターネットには 『露天風呂内がない』 だの 『シャワーがない』 だの 『ボディーソープが置いてない』 だの、散々な悪口を書かれてしまう。たまったもんじゃない」。
こんなふうに立腹されている主人もいました。
主人の意見には同感ですが、そんなとき私は、こう言葉を返します。
「これはブームですから必ず去ります。ブームが去ったとき、本当に温泉が好きな人たちがやって来ますよ」 と。
<2013年12月18日付>
Posted by 小暮 淳 at 13:29│Comments(0)
│温泉考座