2013年03月18日
カンガルーの肉と中国語
先週、オーストラリアへ短期留学をしていた長男が、帰って来ました。
午前0時20分。
駅のバスターミナルに、成田空港からの直行バスが着きました。
僕は、この時間まで、酒を飲まずに我慢していたのであります。
いえいえ、我慢というよりは、息子と一緒に帰国を祝う “乾杯” の時を、今か今かと待っていたのです。
「よう、お帰り!」
僕は息子の姿を見つけて、手をあげました。
ん?
なんだかヘンだ。
近づいてくる息子の顔が、どこか違う・・・
ヒゲだ、ヒゲがある!
我が息子のヒゲ面なんて、生まれて初めて見たので、驚くやら、おかしいやら。
鼻の下と、あごの下に、なんとも似合わないヒゲを蓄えての、登場であります。
でもね、分かります、分かります。
男の子は、みんな大人ぶりたい時、自分を変えてみたい時っていうのがあるんですよ。
そのチャンスが、しばらくの間、人前から姿を消せる海外旅行だったりするのです。
思えば僕も、海外旅行のたびに、ヒゲを生やして帰って来ましたものね。
※(当ブログ「カテゴリー」内、「ちょっとインドまで①」参照)
「どうだった? 楽しかったか?」
車の中で声をかければ、
「ああ、帰りたくなかった」
とは、コイツも僕に似て、放浪癖があるのかもしれない。
話を聞けば、どうもガールフレンドができたらしい。
「おお、金髪か~?」
と、父は期待したのだが、そうではなかった。
息子と同じ学校に来た、台湾からの留学生だという。
「おお、チャイニーズか!」
それも台湾と聞いて、僕は勝手に、昔見た映画 『キョンシー』 に出てきた、テンテンという美少女を思い描いていたのであります。
「昔、お父さんが風呂の中で教えてくれた中国語が、役に立ったよ」
えっ、なんのこっちゃ?
「イー、アール、サン、スウ ・・・だよ」
イー、アル、サン、スーは、中国語の1、2、3、4のことだ。
それでも思い出せない。
「風呂の中でか?」
「そうだよ。お父さんが中国へ行って来たとかで、毎日、風呂の中で数えさせられた。中国語で10まで数えたら、出ていいって」
「そんなこと、あったっけかなぁ~」
と、僕は、なんだかおもはゆい。
記憶の中からは、すっかり消えてしまっている。
「それが役に立ったのか?」
「ああ、彼女に最初に会ったときに、中国語で1から10まで言ってやったんだよ」
「で、その娘は、なんだって?」
「発音がいいって、ビックリしていた」
そーか、そーか、小さいときに風呂の中で教えた中国語が、思わぬところで役に立ったとはね。
つくづく、人生に無駄はないと思いました。
深夜1時、帰宅。
「これはお母さん、これは姉ちゃんち。これは、おばあちゃんとおじいちゃん。これは○○(妹)・・・」
と、みやげ物をリビングに広げ出した。
「お父さんには、これ」
と手渡されたのは、ジャーキーの袋だった。
カンガルーの絵が描いてある。
「カンガルーの肉か?」
「うん、おいしくないけどね。酒のつまみ」
そう言って、ヒゲ面の顔が笑った。
「まずは、乾杯だ! お帰り」
「ああ、ただいま」
カンガルーの肉をかじりながら、久しぶりに親子で酒を飲みました。
「確かに、おいしいものじゃ、ないな」
ビーフジャーキーのほうが、数十倍も、うまい。
でもね、これは、息子から僕へのメッセージなのかもしれないって思ったんですよ。
“これからも、カンガルーのようにピョンピョン飛び跳ねて、いい仕事をしてください” てね。
おい、息子よ。
次は、なんの肉を買ってきてくれるんだい?
Posted by 小暮 淳 at 18:46│Comments(0)
│つれづれ