2021年07月31日
野外映写会の夜
<神社の境内や小学校の校庭に、大きなポールが二本立てられ、その間に真っ白な映写幕が張られた。幼い私はワクワクしながら、まだ陽の沈まぬうちに敷かれたゴザの最前列に陣取ったものだ。>
(拙著 『上毛カルテ』 第一章 「まちとのコミュニケーション」、「スクリーンよ、永遠なれ」 より)
夏=子どもの頃の思い出=昭和の風景
そもそもが “昭和大好き人間” なのですが、夏になると、より昭和が恋しく感じるのは、子どもの頃の思い出が夏休みに集中しているからかもしれません。
午前中、「朝顔の観察日記」 からはじまり、宿題のドリル……
午後は、友だちが迎えに来て、プールへ……
帰りに飲んだラムネの味も忘れられません。
そんな夏休みの最大のイベントは、町内の鎮守様の境内で開催される 「野外映写会」 でした。
子どもにとって、街の映画館は、まだ高嶺の花でした。
高校生や大学生のお兄さんやお姉さんがいる子は、加山雄三の 「若大将シリーズ」 やザ・タイガースなどのグループサウンズの映画を観に連れて行ってもらえましたが、ほとんどの子の場合、映画館は未体験の “大人の世界” でした。
それが年に一回、子供会主催による子どもたちのための 「野外映写会」 が開かれたのです。
もう、その日は朝からワクワク、ドキドキが止まりません。
「今年は、どんな映画を観られるんだろう?」
どの子も親に持たされた蚊取り線香とうちわを手に、まだ陽の高いうちから神社に集まって来ます。
どんな映画だったのか?
実は、よく覚えていません。
最初は、交通安全の啓もう映画だったような気がします。
そして、低学年用の短編アニメーションが何本か上映されました。
鮮明に覚えているのは、『少年猿飛佐助』。
調べてみたら昭和34(1959)に作られた “日本最初の大型長篇漫画” とのことです。
とにかくキャラクターの顔が、怖いんです!
主人公の猿飛佐助しかり、登場人物の目が、みんなつり上がっているんです。
極めつけは、「夜叉姫」 という妖怪。
口が裂けた鬼のような夜叉姫が出てくると、なかには泣き出す子もいました。
あの夏から半世紀以上が過ぎました。
今は簡単に毎日、ユーチューブで映画が観られてしまいます。
便利になったぶん、あのワクワクやドキドキはありません。
やっぱり、昭和の空気感って、独特のニオイがありましたよね。
今年の夏もコロナで、お祭りや花火大会は軒並み中止のようであります。
ますます大好きな昭和のニオイが遠ざかって行ってしまうようで、さみしい限りです。
<蚊取り線香と団扇を手にしての帰り道、振り返ると鎮守の森が白く浮かび上がっていて、なんとも幻想的な夏の夜だった。>
Posted by 小暮 淳 at 12:25│Comments(0)
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