2020年12月03日
丸尾康弘展 『今、こどもたち』
<拝啓 ひと雨ごとに秋の気配が深まるこのごろ、ご健勝のことと存じます。今年は新型コロナウィルスの影響も大きくいろいろな面で自粛せざるを得ない事態となっていますが、お元気でしょうか。>
手紙は、そんな丁寧な時候のあいさつから始まっています。
<10月10日から桐生の大川美術館で個展を開催する運びとなりました。今年の春、渋川市美術館で開催致しました 「今、こどもたち」 展をこの展示会で再現します。また違った空間で、新作も含めた展示を観ていただけたら幸いです。>
丸尾さんとの出会いは、かれこれ30年前になります。
当時、彼は榛名山中に自宅兼アトリエを構えて、畑をしながら創作活動をしていました。
彼は、木彫作家です。
当時、僕はタウン誌の記者をしていました。
熊本県生まれ、なのに東京で創作活動を続けるかたわら、喫茶店のマスターや土木作業員などの職を転々としていた彼は、突然、群馬に移り住みます。
その経緯が面白くて、話を聞きたくなり、取材に訪ねたのが出会いでした。
※(出会いについては、当ブログの2013年4月6日 「山が私を呼んでいる」 参照)
「あっ、会期が終わっちゃう!」
と、あわてふためいた僕は、今日、桐生市まで行って来ました。
ご本人には会えませんでしたが、その代わり22点におよぶ木彫の子どもたちと遊んできました。
<自分のこどもたちのために小さな動物のおもちゃを木彫でつくってプレゼントしたことがありました。こどもたちはとても喜んでくれました。それまでは主に石彫による抽象作品を制作していましたが、このおもちゃの木彫をきっかけに、家族をモデルにした木彫作品を制作するようになりました。> (パンフレットより)
彼の作品は、息子や娘、孫たちがモデルのようですが、ちっとも “可愛く” ありません。
逆に、不気味だったり、怖い顔をしています。
(中には、腕の先がなかったり、牙が生えている子も)
みんな、何かの不安におびえているように見えます。
<こどもたちはこれから先、いろんなことを経験します。「これから」 の時間がいっぱいあります。それはもちろん楽しいこともあるけど、これから先どうなっていくのか、不安の方が大きいのではないかと。自分にこどもや孫が生まれたとき、その未来に期待するとともに、この子たちがこれから歩んでいく先は、どうなっていくのだろうという不安も生まれ、それが 「こどもたち」 の作品の少し苦しんでいるような、思い通りにいかない不安な気持ちを抱いているような表情につながっています。> (同)
あれから30年……
再会するたびに少しずつ作品は変化していますが、彼の生き方は、あの時のままです。
また今回も、ブレずに生きる “強さ” を感じました。
手紙には、こんな一文が添えられていました。
<桐生に住んで18年になりますが、大川美術館で個展が出来るとは想像もしておりませんで、大変嬉しく思っております。>
もちろん、僕も嬉しいです!
丸尾さん、おめでとうございます。
次回の作品展を楽しみにしています。
丸尾康弘展 『今、こどもたち』
●会期 開催中~2020年12月13日(日)
●入館料 一般1,000円 高大生600円 小中生300円
●開館 10:00~17:00 (月曜休館)
●会場 大川美術館 (群馬県桐生市小曽根町3-69) TEL.0277-46-3300
Posted by 小暮 淳 at 18:21│Comments(0)
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