2020年09月30日
公開講座のお知らせ
例年だと、バスで温泉地をめぐるカルチャーセンター主催の野外講座も含め、年間20~30回の講演やセミナーの講師を行っているのですが、今年はコロナ禍の影響で3月以降の開催は、すべて延期または中止となってしまいました。
それでもポチポチではありますが、先月から定員の人数を下げて、 “3密” を避けながらの新スタイルによる講演やセミナーが開催されつつあります。
僕の場合、講話のテーマが 「温泉」 や 「民話」 ということもあり、対象は公民館主催による地域限定であったり、企業や団体主催による社員や関係者限定での開催がほとんどです。
よく 「どうしたら小暮さんのお話を聴けますか?」 と訊かれるのですが、「ぜひ、主催者となって呼んでください」 としか答えられません。
でも稀に、一般公開で、しかも参加費が無料という講演やセミナーが開催されることがあります。
この度、このコロナ禍でありながらも、一般公開に踏み切ってくださった殊勝な公民館さんがありました!
そこは、高崎市の矢中公民館です!(拍手)
定員は30人と少人数ですが、居住地域も年齢も問いません!(素晴らしい)
ただし先着順です。
当日参加も可能ですが、心配な方は事前申し込みをお勧めします。
一応 「シニアライフアップ講座」 と銘打ってありますが、温泉はシニア世代だけのものではありません。
ので、若い方でも大歓迎です。
また、「市内在住者」 とも記載されていますが、これも “建前” とのことなので、申し込み時にご相談ください (と公民館の担当者が言ってました)。
ということですので、お時間がある人、温泉に興味がある人は、ぜひ、ご参加ください。
たっぷり2時間、面白くて、ためになる温泉雑学をお話しします。
お待ちしています。
(マスク着用で、お越しください)
「シニアライフアップ講座」
湯の国ぐんま!温泉パラダイス
●日時 10月9日(金) 午後1時30分~3時30分
●会場 高崎市矢中公民館 2階ホール
●対象 市内在住の方 (市外者は要相談)
●定員 30人 (先着順)
●参加費 無料
●講師 小暮 淳 (温泉ライター)
●申込 矢中公民館窓口で受付 (電話申込可)
群馬県高崎市矢中町153 TEL.027-352-8671
、
2020年09月29日
殺害現場はココだ!
「ああ、その話ね。聞いたこと、ありますよ。昔、といっても私が、ここに嫁に来た頃だから、戦後まもなくだけど……。地元の人から事件のことを知ってからは、怖くてね。あの場所だけは避けて通っていましたよ」
畑仕事をしていた老婆が、手を止めて話してくれました。
「あの場所? 知っているんですか!?」
僕は十年近く前から、ある殺人事件に興味を抱き、コツコツと資料を集めてきました。
その事件とは?
明治31(1898)年12月16日、夜7~8時頃。
群馬県の旧子持村(現・渋川市) 北牧字羽黒の路上で発生した殺人事件です。
医師の吉原玄宅さんが、往診へ向かう途中、何者かに襲われ、手斧で滅多打ちにされ、殺害されました。
これだけなら通り魔による犯行にも思えるのですが、その後、犯人は奇妙な行動をとります。
その足で医師宅へ行き、留守をしていた奥さんを殺害。
家の中を物色して、金品を奪っています。
村中が大さわぎとなり、消防団総出となって八方手を尽くしましたが、犯人は見つかりませんでした。
ところが……
この事件は、あっけない終焉を迎えます。
翌日の葬儀に刑事が張り込んでいると、参列者の中に手をケガしている者を発見。
問い詰めたところ、いとも簡単に犯行を自供したといいます。
なーんだ、どこにでもあるような殺人事件じゃないかと思いましたか?
だったら僕も興味など持ちませんし、躍起になって120年以上も前の事件の資料を集めたり、現場になんて出かけませんって!
ミステリーは、その医師の死後に起きたんです。
※(詳しくは、当ブログの2020年9月4日 「殺人事件の被害者が神になるとき」 参照)
僕は昨日、もう居ても立ってもいられなくなり、長年、調べた資料を握りしめて、3つの現場を訪ね歩いてきました。
まず墓所。
立派な屋根付きの祠の中に墓石がありました。
次に、殺害された医者の住居跡。
これは、「たぶん、このあたり」 という現地の人の証言に留まりました。
そして、殺害現場。
これは、難儀しました。
なにせ現場の住所が、旧地名ですからね。
役場の支所を訪ね、現在の “どこ” に当たるのかを調べました。
ところが、だいたいの場所は分かったものの、“字” のエリアは広い!
田畑が残る場所でしたが、住宅も点在しています。
何よりも聞き込みをしたところで、そんな昔の事件を知っている人なんていません。
(実際、役場の人は、誰一人知りませんでした)
ところが!
突然、取材の神様が舞い降りて来たんです!
近くで畑仕事をしていた老婆に声をかけると、ピンポイントの場所を教えてくれました。
それが冒頭に記した一文です。
そして行ってみると、そこは交通量の多い国道の一角でした。
殺害現場は判明しました。
ところが僕の心の中は、スッキリしません。
まだモヤモヤと何かが、くすぶっています。
それは犯人の “素性” と “動機” です。
葬儀に参列していたということは、顔見知りだったのか?
目的は、殺害なのか金なのか?
そこで読者のみなさんに、お願いがあります。
この事件の詳細を知っている人がいたら、ご一報ください。
俗に 「吉原玄宅夫妻殺害事件」 と呼ばれていますが、まだまだ解明されていない謎の多い事件です。
120年前の地方の田舎町で起きた事件ゆえ、すでに覚えている人もいませんし、残された資料の数も少なく、難儀をしています。
もし、ご存じの方がいましたら、ご協力をお願いいたします。
2020年09月28日
温泉考座 (32) 「変わらない四万の魅力」
<四万(しま)には、コンビニがありません。四万には、信号機がありません。四万には、歓楽施設がありません。>
これは2011年9月に出版した拙著 『あなたにも教えたい四万温泉』 の冒頭の文章です。
私と四万温泉との付き合いは20年以上になります。
「四万温泉の本を書こう」 と思ったのは、あるイベントがきっかけでした。
2000年4月、群馬県が 「ぐんま温泉紀行」 と題して、ペア2千組を県内19ヶ所の温泉旅館に優待するというキャンペーンをしました。
全国から5万通を超える応募があり、このとき四万温泉が 「泊まりたい温泉」 の1位にりました。
常に人気投票で1位となっていた草津温泉がダントツと予想していただけに、誰もが驚きました。
何よりも驚いたのは、四万温泉の人たちでした。
「地元の我々には分からない四万の魅力を、よその人たちは気づいているのではないか」 「だったら四万の良さを外の人たちに教えてもらおう」 と、その年の10月に四万温泉協会主催による 「探四万展(さがしまてん)」 というイベントが開催されました。
県内外から画家、イラストレーター、彫刻家、カメラマンなど12人のアーティストを集めて、四万温泉をテーマにした作品作りを依頼。
私もコピーライターとして参加しました。
シンポジウムも開催され、参加者からは 「このままの自然を大切にしてほしい」 「不便なところが四万の良さ」 「地元の人との触れ合いがある」 など、さまざまな意見が出されました。
また来場者から寄せられたアンケートで一番多かった声が 「何もない良さ」 でした。
言い換えれば、大温泉地のような歓楽施設やコンビニがなく、自然と環境を邪魔するものがないから、純粋に湯を楽しめる温泉地だということです。
四万温泉には宿が37軒(※)あり、源泉が43本(※)湧いています。
そして何百年もの間、湯とともに暮らしてきた人たちがいます。
“何もない” のではなく、人々の “湯がある” ことへの畏敬の思いが、変わることのない四万温泉を守り継いでいるのだと思います。
※現在、宿は35軒、源泉は42本(うち38本が自然湧出)。
<2013年12月11日付>
2020年09月27日
宮子の浦島太郎
<伊勢崎市宮子町を流れる広瀬川に架かる 「竜宮橋」 のたもとに、「竜神の森」 と呼ばれる小高い岩山があり、竜神様が祀られている。この岩山の下には深い淵があり、竜宮城へつながっているという。>
(『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』 より)
一昨年、僕は群馬県内の民話や伝説の舞台を集めた 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) という著書を出版しました。
発売当初から新聞やラジオなど各メディアが取り上げてくださったおかげで、話題となり、書店での売り上げも好調のようです。
特にコロナ禍の自粛影響もあり、手軽に身近な謎をめぐることができるガイド本として注目されたようで、出版元からは 「今年の春から急に売れ出した」 との報告もいただきました。
また昨年秋頃からは、民話をテーマとした講演依頼が入るようにもなりました。
長年、「温泉」 をテーマとした講演活動は続けてきましたが、まさか、「民話」 をテーマに話をするようになるとは……
人生は、いつ、なにが、どうなるのか、まったくもって予測不能であります。
先月、高崎市内の某公民館にて、「民話と伝説の舞台」 を演題としたセミナーがあり、僕が講師として招かれました。
本来は地域在住の高齢者向けのセミナーだったのですが、コロナの影響により年齢が下げられ、一般向けとなったため、受講者の年齢は幅広く、市外からの参加者もいました。
その中に一人、県外から参加してくださった僕と同年配の男性がいました。
とはいっても、素性を明かせば、僕の高校時代の同級生です。
以前、このブログにも登場したことのあるチンドン屋の座長さんであります。
※(2020年3月23日 「紙芝居がやって来た!」、2020年6月10日 「コロナ太郎に負けるな!」 参照)
なぜ、彼は遠路はるばる県外から僕のセミナーに参加したのか?
その答えは、セミナー終了後にありました。
「ジュン、久しぶり」
「今日はありがとう。よく来てくれたね」
「このあと、どこかで話せるかな?」
ということになり、ランチがてら近くのファミレスへと向かったのでした。
そして、そこで出た話題が、冒頭に記した伊勢崎市内に伝わる浦島太郎伝説でした。
伊勢崎は、彼が生まれ育った故郷なのです。
彼いわく、「ぜひ、この話を紙芝居にしたい」。
あれから1ヶ月……
僕と彼は、ひそかにメールのやり取りを続けました。
そして一昨日、作画を担当するイラストレーターを伴い、3人で現場の下見に行ってきました。
おりしも台風の影響で、関東地方は朝からあいにくの雨です。
しかも、僕らが竜宮の森に着いた時には、より雨足が激しくなっていました。
「こりゃ、なんだか、我々の訪問をはばんでいるようだな」
と、不安顔の彼。
だから僕は、言ってやりました。
「竜神様は、水の神様なんだよ。伝説でも、この森の上を竜が舞い、雷鳴がとどろき、激しい雨を降らせているんだ」
「だったら、これは歓迎されているのか?」
「そうだよ」
そして僕らは、森の中にある浦島太郎が祀られている龍神宮へ向かって歩き出しました。
謎学の旅は、つづく……
2020年09月26日
温泉で免疫力アップ!
誰が、こんなにも長引くと予想したでしょうか?
新型コロナウイルスと人類の闘いは、長期戦になりそうです。
まさに、「ウイズコロナ」 の新しい生活です。
なかなか終息しないのなら、コロナと付き合っていくしかありません。
でも、誰もが感染したくはありません。
それゆえ予防に躍起になり、予防しない人たちを攻撃する人たちまでが現れるのです。
だったら、予防も大切ですが、コロナにかからない “体” を作ることのほうが、より有効だと思うのです。
そうです!
本来、人間が生まれながらに持っている免疫力を高めればいいのです。
その一つの方法として、僕は古来、日本人が行っていた “湯治” を推奨しています。
この半年間、中止か延期になっていた講演やセミナーが、ここに来て、一気に戻ってきました。
ついに、みなさん、しびれを切らしたようです。
ただ、以前のようにはできません。
あくまでも 「3密」 を避けての開催となります。
消毒や換気の徹底は、もちろんのこと、コロナ前との最大の違いは、「定員」 です。
ソーシャルディスタンスを保つため、聴講者の人数は半分となります。
コロナ禍の募集の場合は、それで済みますが、コロナ前に決定していた場合、人数を半分にすると不公平が生じます。
たぶん、これは主催者側の知恵か、または苦肉の策なのでしょうね。
半分の人数の講演を、2回に分けて開催するというスタイルが定着しつつあります。
ま、講師としては、手間は倍になりますが、そのぶん講師料も2倍になるわけですから、今までのキャンセル分が取り返せるというものです。
ここに来て、「同じ内容で、2回、お願いします」 という依頼が、増えています。
ということで昨日も、高崎市内の某公民館にて開催されたセミナーに講師として招かれて、講話をしてきました。
今回のテーマは、「温泉」。
当然ですが、講話の冒頭は、新型コロナウイルスの話題から始まりました。
コロナ禍の温泉地の様子や旅館の対応などを話した後、通常の講話に入りました。
温泉の成り立ち、温泉地の歴史、正しい入浴法やマナー、ルールから群馬県内の温泉の特長に至るまで、たっぷりと2時間、お話してきました。
そして何よりも僕が伝えたかったのが、湯治文化の見直しです。
コロナ禍の今だからこそ、コロナにかからない体づくり、いわゆる “未病” のための免疫力アップが有効だと!
それには、“湯力(ゆぢから)” のある本物の温泉を見極める目が必要となります。
そのために僕は、これからも講演活動を続けていきたいと思います。
2020年09月24日
ネット弁慶とムシ若丸
あれから、もう1年が経ったのですね。
いえいえ、ご家族にとっては、一日千秋の思いで、娘の帰りを待ち続けていた長い長い1年だったことでしょう。
昨年の9月21日、山梨県のキャンプ場で小学1年生の女児が、こつ然と姿を消した行方不明事件です。
昔から子供が姿を消す事件というのはありました。
「神隠し」 とか、「天狗の仕業」 とか言われてきましたが、実際には、そんなことはありません。
大人の場合ならば、自らの意思での失踪も考えられますが、この事件の場合、場所は山の中です。
幼い子供が、自分の考えで姿を消したとは考えられません。
必ず、どこかに犯人がいます!
女児のゆくえも気になりますが、悲しいのは、ネット社会での誹謗中傷です。
人は、なにゆえに、そこまで残酷になれるのでしょうか?
警察や消防、自衛隊などが延べ約1,700人を投入した捜索は、手がかりを得られないまま、不明から1年を待たずに打ち切られてしまいました。
その間、女児の母親は、平日は住まいのある千葉や東京でビラを配り、週末は片道3時間をかけて山梨県のキャンプ場に通い、ボランティアらと捜索を続けていました。
ところが年が明けて3月になると、この新型コロナの影響でビラ配りや現地に行くことを自粛せざるを得なくなってしまいました。
そこで頼ったのが、ツイッターやインスタグラムといったSNS (インターネット交流サイト) でした。
ところが……
SNSに取り組むと、母親を中傷するコメントが届くようになりました。
「早く自首しましょう」 「お前が犯人だろ」 「殺すぞ」
最後の殺人予告ともとれるコメントを書いた男は、その後、脅迫容疑で逮捕されています。
俗にいう、“ネット弁慶” と呼ばれる輩たちです。
家の中でばかり強がっていて、外では意気地のない人のことをいう 「内弁慶」 をもじった言葉のようですが、いわゆるネットの中だけで、攻撃的な発言を繰り返す人たちのことを指す造語です。
どうしてネットの中では、そのように人格が豹変してしまうのでしょうか?
これは車の運転にもいえることですが、“顔” が見えない匿名性が、自分を実像より大きく見せたがるのかもしれませんね。
ふだんはおとなしかったり、意見を言わない内向的な性格の人が、陥りやすいようです。
ネット弁慶の特徴について、識者による、こんな分析がありました。
① 「話し言葉」 と 「書き言葉」 の言葉遣いが違う。
② リア友 (現実の友達) よりネトモ (ネット上の友達) のほうが圧倒的に多い。
③ リア友とネトモの中に共通の人物が少ない。
④ 正義感が強く、誤りを指摘しないと気が済まない。
⑤ 人の役に立ちたいが、目立ちたくない。
⑥ 自分の能力に見合った待遇を受けていない(と思っている)。
⑦ 大勢でいるより、一人のほうが好き。
ま、早い話が、視野と行動範囲が狭く、でも正義感だけは強い、ネットの中でしか意見を言えない、まさに “ネット弁慶” という言葉がピッタリの人間像が浮かび上がってきます。
でもね、統計によれば、ネット弁慶といわれるよな誹謗中傷を書き込む人の割合というのは、全体の1~2%なんですって。
だったら、そんな輩は断然、無視すべきです!
ネット弁慶には、“ムシ若丸” で対応しましょう!
ただ、ネット弁慶のみなさん、度が過ぎると脅迫容疑で逮捕されますよ。
匿名だと思っているのは、自分だけですからね。
必ず、捕まります!
女児の1日も早い救出を、心より祈っています。
2020年09月23日
温泉考座 (31) 「目で楽しむ変わり湯」
「昭和50年代、にごった湯は汚いと敬遠されたことがあり、温泉をろ過して使おうかと考えたこともありました。今となれば、かたくなに守り通して良かったと思います」
そう語ったのは、赤城山のふもとに湧く梨木温泉 (桐生市) の一軒宿 「梨木館」 の女将、深澤正子さんでした。
茶褐色のにごり湯は、今でこそ温泉ファンに人気がありますが、「お湯が腐っている」 「浴槽の掃除をしていない」 と、客に理解してもらえない時期があったといいます。
二つと同じ温泉はありません。
温泉法で定められた泉質名が同じでも、何種類もの成分が溶け込んでいるため、色もにおいも異なります。
硫黄成分が多いと乳白色ににごり、鉄分が空気に触れると茶褐色や赤褐色に変色します。
またカルシウムやマグネシウムの含有によっては、光の加減や時間の経過で黄緑色や深緑色に見える温泉もあります。
私は色を変える温泉のことを 「変わり湯」 と呼んで楽しんでいます。
鳩ノ湯温泉 (東吾妻町) の一軒宿 「三鳩樓(さんきゅうろう)」 の湯は、何度訪ねても色が違います。
白かったり、黄色くなったり、青くなったり、季節や天候によって毎日色を変えます。
「まれに無色透明になる」 と、主人の轟徳三さんは言いますが、私はまだ見たことがありません。
滝沢温泉の一軒宿 「滝沢館」 の露天風呂の湯も色を変えます。
源泉の温度が約25度と低いため、浴槽に満たしてから加温しますが、最初は無色透明、しばらくすると黄褐色になり、やがて白濁を始めます。
さらに時間が経過すると半透明になり、また無色透明へと戻っていきます。
まるで “変わり玉” という飴のように、コロコロと色を変えます。
温泉が時間の経過とともに変色するのは、湯が空気に触れて酸化し、劣化が始まっている証拠です。
ですから、こんな時は湯口に竹の樋を渡して、新鮮な源泉を流し入れてやります。
すると不思議、ふたたび黄褐色へとにごり始めます。
温泉には “湯の劣化を楽しむ” という妙味もあるのです。
<2013年12月4日付>
2020年09月22日
『湯けむりの先に』 最終回
今月7日から上毛新聞の最終面にて大々的に始まった特別連載 『湯けむりの先に』。
隔週の月・火曜日の掲載で、今日、最終回を迎えました(全4回)。
※(掲載のいきさつについては、当ブログ2020年9月7日 「連載開始!『湯けむりの先に』」 を参照)
シリーズではコロナ禍の温泉地の現状を、多方面から切り口を変えて追いかけています。
第1回 「需要消失」 では、自粛により苦悩する温泉宿や県のキャンペーン効果についてをレポート。
第2回 「事業承継」 では、後継者不在により存続が危ぶまれる秘湯の一軒宿の “いま” を取材。
第3回 「もてなし」 では、時代のニーズに合わせて変わろうとする旅館やホテルの接客のようすを報告。
そして、今日の最終回のテーマは、「魅力創出」。
ズバリ、“温泉王国ぐんま” の魅力に迫ります。
たとえば、旅行のプロが選ぶ温泉地ランキング 「にっぽんの温泉100選」 で、草津温泉が17年連続で1位に選ばれていること。
また、インターネット接続大手のビッグローブの温泉大賞でも、群馬が都道府県別の番付で 「東の横綱」 に君臨していること。
さらに伊香保温泉が 「温泉まんじゅう」 の、磯部温泉が 「温泉マーク」 の発祥地など、群馬の温泉文化の奥深さにも触れています。
しかし記事では、群馬県が大きな難題を一つ、抱えていることをあぶり出します。
それは、知名度です。
“温泉県” としては知られているのに、“観光県” としては低迷している現状です。
毎年発表される都道府県の 「魅力度ランキング」 では、常に下位です。
このことについて、都内の旅行会社は、こうコメントしています。
「商品としてみると、群馬は華がない」
首都圏からも約1時間と近く、アクセスも良く、有名温泉地もある。
なのに “旅のパック” としては弱いということのようです。
確かに、言われてみれば、その通りです。
温泉県だけど、観光県ではないということですね。
でも、どうでしょう?
これは考え方一つではないでしょうか?
受験勉強と同じですよ!
苦手科目を克服するか、得意科目を伸ばすか……
だったら “温泉一本” で行きましょうよ!!
そんな考えにまで及んだ、好企画の連載記事でした。
執筆を担当した井部記者、堀口記者、大変お疲れさまでした。
丁寧な取材と記事をありがとうございました。
2020年09月21日
それぞれのS・W
ゴールデンウィーク (G・W) ならぬ、シルバーウィーク (S・W) というらしいですね。
秋の大型連休のことです。
みなさんは、この4連休を、どのようにお過ごしですか?
コロナ禍ではありますが、ニュースを見ると観光地や娯楽施設は、かなりの人出のようです。
入場人数や収容人数が緩和されたことで、一気に自粛の足かせが外れたのかもしれませんね。
感染も怖いですが、ストレスも上手に発散したいものです。
さて、今日は 「敬老の日」 であります。
あれ、確か以前は、9月15日だったような?
いつから変わったのだろう、と調べてみたら平成15(2003)年から改正され、9月の第3月曜日になったようです。
で、“敬老” という言葉であります。
「老人を敬う日」 とのことではありますが、いったい何歳から老人なのでしょうか?
と思っていたら、今日、「敬老の日」 にちなんで、こんなデータが発表されました。
日本人の65歳以上の人口が3,600万人を超えて、全人口の28.7%に達したと……
100歳以上も8万人を超え、史上最高の高齢化社会を迎えたとのことです。
(1万人を超えたのが平成10年ですから、すごい勢いで高齢化が進んでいます)
ということで、65歳以上が “老人” ということになりそうです。
ギェッ!
僕の場合、3年後であります。
ま、還暦過ぎたら姥捨て山に連れていかれた昔ならいざ知らず、現代では65歳を “老人” と呼ぶには、かなり抵抗がありそうですけどね。
でも、年金をもらう年齢ですから、社会の中ではリタイアする年齢と判断されても仕方がないのかもしれません。
みなさんは、どう思われますか?
そして明日は、「秋分の日」。
彼岸の中日であります。
僕は早々に、彼岸の入りである土曜日に、両親の墓参りを済ませてきました。
「暑さ寒さも彼岸まで」 とは、よく言ったものです。
霊園には、ススキが風に揺れ、赤トンボが飛び回っていました。
両親が亡くなって、2度目の秋です。
「とりあえず、みんな元気です」
と、墓前に手を合わせてきました。
誰もが、コロナ禍という初めての秋を迎えていることでしょう。
それぞれの秋、それぞれのS・W……
それでも少しずつ、いつもの生活にもどりつつあるようです。
2020年09月20日
温泉考座 (30) 「いい宿は引き算」
このカテゴリーでは、ブログ開設10周年を記念した特別企画の第3弾として、2013年4月~2015年3月まで朝日新聞群馬版に連載された 『小暮淳の温泉考座』(全84話) を不定期にて、紹介しています。
(一部、加筆訂正をしています)
「いい湯守 (ゆもり) のいる宿には、露天風呂がない」
と言ったら、言い過ぎでしょうか?
実は、古湯 (ことう) と呼ばれる歴史ある温泉地へ行くと、露天風呂のない旅館が少なくありません。
それは湯守にとって、露天風呂が “いい湯を提供する浴槽” の理にかなっていないからです。
夏には虫が飛び込み、秋には落ち葉が舞い落ち、冬には砂ぼこりが入ります。
湯が汚れやすい露天風呂は、湯守の立場からすれば、厄介な存在なのです。
ただ厄介なだけなら、まめに掃除をすれば済むことなのですが、露天風呂の問題点は、それだけではありません。
常に湯面が外気に触れている露天風呂は、湯が冷めやすいという欠点を抱えています。
それゆえ源泉が高温でないかぎりは循環装置を使い、加温し続けなければなりません。
内風呂に比べて、経済的負担も大きいわけです。
加えて、野外で日光にさらされるため、藻が発生します。
藻が付着すると、レジオネラ菌が繁殖しやすいという悪条件のおまけまで付いてしまうのです。
「こんなに湧出量があっても、露天風呂は造らないのですか?」
と、山あいの温泉宿の主人に質問したことがあります。
すると主人は、
「先祖から 『湯に手を加えるな、湯舟を大きくするな』 と言われています。1時間で浴槽内すべての湯が入れ替わるよう、湧出量に見合った大きさを守っています」。
この宿の浴室には、シャワーもカランもありません。
洗い場がないのです。
「温泉は、体を洗う場所ではない」 という先祖の言いつけを、かたくなに守り続けていました。
「あれもある、これもある」
「こんなサービスもあります」
という “足し算” をしてきたのが、現在の観光旅館の姿です。
でも、湯に自信がある湯守のいる宿は、とことん無駄と不必要なものを省いた “引き算” をしています。
「その代わり、うちには極上の湯がある」。
そんな頑固一徹な主人の心の声が聞こえてくる宿こそが、私は、いい温泉だと思うのです。
<2013年11月17日付>
2020年09月19日
最終回!今日の毎日新聞
<心や体を癒やしに温泉に行く──。群馬県の温泉に詳しい前橋市在住のフリーライター、小暮淳さんは、そんな昔の 「湯治」 のような素朴な旅を自書や講演などで長年推奨してきた。>
(2020年9月19日付 毎日新聞首都圏版より)
いよいよ、最終回となりました。
今月5日付より、毎日新聞の首都圏版にて掲載が始まったシリーズ 『やすらぎの宿』 「霧積温泉 金湯館」 (全3回) が、今日、完結しました。
ざっと、これまでの記事の紹介をすると……
「上」 (第1回)
<偉人が愛した避暑地>
<人気小説の原点にも>
と題し、明治時代には避暑地として人気があり、伊藤博文や勝海舟などが訪れたことや、詩人・西条八十が書いた詩の一節をモチーフにした作家・森村誠一のベストセラー小説 「人間の証明」 の舞台になったことに触れています。
「中」 (第2回)
<110年一軒で守りつぐ>
<山津波被害後に託され>
との見出しで、度重なる災害と闘いながらも、家族で温泉と宿を守り続ける佐藤家 (湯守) のこれまでを追いながら、毎分300リットルという豊富な量を誇る湯の魅力についても記しています。
そして、今日の最終回 「下」 (第3回)
<秘湯で心や体癒やす>
<手つかずの自然 脅威に>
またしても襲いかかる自然の猛威!
昨年10月に群馬県を襲った台風10号により、県道が崩落し、通行止めになってしまった金湯館。
それでも湯治客らは、長野県側のルートから山道を3時間も歩いて、やって来てくれたといいます。
4ヶ月後の2月、県道が復旧したのも束の間、3月に入ると今度は新型コロナウイルスの感染拡大で、ふたたび秘湯の宿は苦境に立たされました。
そこで、僕の登場となります。
冒頭に続き、こうコメントしました。
<コロナ禍だからこそ小暮さんは源泉を守る温泉宿にエールを送る。「大きな宴会などはできずとも、行ったことがない近場の小さな温泉地の魅力を再確認するような機会になれば」>
筆者の尾崎記者、丁寧な取材と記事を、ありがとうございました。
今後、ますますの活躍を楽しみにしています。
2020年09月18日
多国籍事件簿
バングラデシュ国籍男……逮捕 (強制わいせつ)
ペルー人……無期懲役 (強盗殺人)
パキスタン国籍男……逮捕 (県迷惑防止条例違反)
ベトナム国籍男……逮捕 (強盗殺人)
ベトナム国籍男……再逮捕 (大麻取締法違反)
一昨日の地元新聞の社会面。
見開き2ページに、5つの事件と5人の逮捕者の名前が、別々の記事で掲載されていました。
ここは日本? しかも群馬?
一瞬、目を疑ったほどでした。
いつから、こんな片田舎が、こんなにも多国籍化したのでしょうか?
国際化することは良い事ですが、もしかしたら、まだ僕らは、その急増ぶりに意識が追い付いていないのかもしれません。
僕が子どもの頃 (50年ほど前) は、住んでいる街の中で外国人を見ることは、とても稀でした。
たまに見かけても、その人は、たぶん英語の教師かキリスト教の宣教者くらいなもの。
決まって、西洋人でした。
あれから半世紀……
地方の街もにも国際化の波が訪れています。
コンビニへ行けば、流暢な日本語で応対してくれる外国人のなんて多いことか。
そして、肌の色も様々です。
最近は、胸につけている名札を読むのが楽しみにさえなりました。
「グエンさん? お国はベトナムですか?」
「はい、そうです」
なーんてね。
遠路はるばるアジアの片隅の小さな国の、さらに内陸の田舎町で働く、彼ら彼女らを見るにつけ、「頑張ってますね。日本を嫌いにならないでね」 という思いから、ついつい話しかけてしまいます。
いつか母国へ帰った時、日本という国、群馬という県、前橋という街で暮らしたことが、楽しかった思い出として語られることを願っています。
なのに……
新聞記事は、真逆を伝えています。
異国の地で、犯罪に手を染めてしまった彼らは、この国で、どんな心の闇を抱えてしまったのでしょうか?
まわりに相談できる日本人は、いなかったのでしょうか?
ただただ、残念でなりません。
このコロナ禍で、母国へ帰れず、やむなく日本に留まり、もしかしたら仕事も失っていたのかもしれません。
それでも彼らは、この国を選んでくれたのです。
誰か、誰か、誰か……
一生懸命に日本語を話そうとする彼らの力に、なってあげてください。
2020年09月17日
はじめての滝行
かれこれ60年以上生きてきましたが、まだまだ未体験なことって、あるものですね。
今日、生まれて初めて、滝に打たれてきました。
群馬テレビの人気謎学バラエティー番組 『ぐんま!トリビア図鑑』。
僕は、この番組のスーパーバイザーをしています。
まあ、スーパーバイザーというのは、いわゆる番組の “ご意見番” みたいなもので、年に数回、制作会議などに顔を出して、「あーだ」 「こーだ」 と口をはさんで、最後に 「いいんじゃないの」 なんて適当に相槌を打っているような、居ても居なくてもいいような役職なんですけどね。
ところが僕の場合、根っからの “出たがり” ですから!
裏方で、エラソーにしているのが、性に合わないんですね。
「いいですよ! だったら、僕がレポートしましょう」 なんて、二つ返事の安請け合いをしてしまうわけです。
そして、付いた肩書が 「ミステリーハンター」。
自分が提案したネタが採用された場合のみ、自らが番組に出演しています。
昨年から新シリーズ、『令和の世に語り継がれる七つの不思議』 が始まりました。
今回で、第3回目となります。
その収録が、今日、行われました。
場所は赤城山中、旧富士見村 (現・前橋市) にある古刹です。
この寺院に伝わる七不思議を、レポートしてきました。
どんな七不思議なのかについては、番組を見ていただくことにして、今回のハイライト (見どころ) は、なんといっても、エンディングのシーンです。
七不思議の7番目、「不動の滝」。
この伝説について、住職が語り出すやいなや、白装束に白鉢巻姿に変身した僕が、滝つぼ目がけて飛び込むという、番組史上初の大胆かつ奇天烈な演出となりました。
イヤ~、残暑厳しいとはいえ、相手は “滝” ですからね!
そりゃ~、冷たいですよ。
しかも、想定外の水量の多さでした。
カメラがズームアップして、ピンで僕を抜きます。
ディレクターから 「キュー」 の合図。
「この番組の躍進とコロナの終息を祈念して、私は人身御供となります。では、いざ!」
そして、滝つぼの中へ……
さて、どうなったか?
オンエアをご覧ください。
ぐんま!トリビア図鑑
『令和の世に語り継がれる七つの不思議~富士見編~』
●放送局 群馬テレビ(地デジ3ch)
●放送日 2020年10月6日(火) 21:00~21:15
●再放送 10月10日(土) 10:30~10:45 10月12日(月) 12:30~12:45
2020年09月16日
温泉考座 (29) 「消えゆく混浴」
「古湯(ことう)」 と呼ばれ、何百年と湯を守り続けてきた温泉地には、いくつかの共通点があります。
必ず、温泉神社や薬師堂が祀られています。
霊験あらたかな湯に対して、先人たちが畏敬の念を込めて建立したものです。
次に、外湯 (共同湯) があります。
現在のように各旅館に温泉が引かれたのは、戦後になってからのこと。
それ以前は、湯治客は宿から 「大湯」 と呼ばれる共同湯へ入りに行きました。
ですから現在でも外湯が残されている温泉地は、歴史が古く、湯量が豊富な証拠だといえます。
もう一つ、古湯の条件に入れたいのが “混浴” の存在です。
昭和23(1948)年に公衆浴場法が制定されて以降、日本では県条例で不特定多数の成人男女の混浴は、原則として禁止されています。
旅館やホテルの浴場には、この条例は適用されません。
それでも、昔ながらの純粋な混浴風呂は、年々減少の一途をたどっています。
混浴の浴場を持つ宿でも水着や湯浴み着、バスタオルの着用を義務付けたり、女性専用時間帯を設けているところが多くなっています。
また女性客からの要望からか、新たに女性専用風呂を増設する宿も少なくありません。
浴槽を増やすということは、それだけ多くの湯量を必要とします。
そのために、かけ流しをやめて循環式にしてしまう、という本末転倒な事態が起きています。
湯量を増やすために、新たに源泉を掘った温泉地もあります。
では、どうして昔は混浴が一般だったのでしょうか?
その答えは簡単です。
貴重な温泉を大切に利用するために、1つの浴槽を男女で兼用していたからです。
言葉を言い換えれば、“湯の都合” に人間が合わせていたと言えます。
現代社会にあって、“混浴” という入浴スタイルは、馴染めない風習かもしれません。
これからも廃れる一方でしょう。
しかし、その中に湯を大切にする日本文化、先人たちの知恵があったことを、私たち現代人は忘れてはならないと思うのです。
<2013年11月13日付>
2020年09月15日
目に見えない恐怖
また、未来と才能ある若い女優さんが、亡くなってしまいました。
死因は不明のようですが、警察は自殺とみて調査を進めているとのことです。
ご冥福をお祈りいたします。
新型コロナウイルスの感染拡大が報じられるようになって、半年以上が経ちます。
あと、どれくらい辛抱すれば、いいのでしょうか?
このコロナ禍の中で、人々は、不安と焦燥におびえながら生きています。
そんな折、先日、8月の自殺者数が発表されました。
1,849人で前年比15.3%の増加だったといいます。
ちなみに1月は横ばい、2~6月は大幅減、7月は横ばい、そして8月は一気に大幅増に転じました。
この現象について、さる識者は、こうコメントしています。
<コロナ禍の影響を否定できない。夏頃から廃業を考える中小企業の経営者が増えている。7月まで踏ん張った経営者や非正規社員が、8月に心が折れてしまった。>
確かに、僕のまわりを見渡しても景気の良い話をしている人は、誰一人といません。
アルバイトを切られた学生、パートを失った主婦、夏のボーナスが激減したサラリーマン……
それだけでは、ありません。
旅行やイベント関係者においては、依然、先の見えない実質 “休業状態” が続いています。
たとえば僕の場合。
講演やセミナーなどの屋内会場での講師の仕事は、少しずつですが戻りつつあるものの、バスを出して温泉地をめぐる野外講座については、まったく再開のめどが立っていません。
まあ、講師なんていう僕一人の問題は、どうでもいいことですが、バス会社にしてみれば死活問題です。
きっと、すべての団体旅行が中止になっていることでしょう。
実際、僕が毎年参加している某出版社の社員旅行も、ご多分にもれず今年は中止となりました。
でもね、僕は思うんです。
コロナの恐怖は、目に見える恐怖だけではないと!
仕事が減ったり、失ったりすることは、コロナの無かった世界でも起きていたことです。
人間には、知恵があります。
そして、手を差し伸べてくれる人もいます。
でも、もし、その、手を差し伸べてくれる人が、いなくなってしまったら?
冒頭の女優さんの死について、仲の良かった俳優さんがテレビで、こんなことを言っていました。
「コロナで、人と人とのコミュニケーションが取りづらくなった」
仕事の終わりに、「ちょっと呑んでいくか?」 の一言が、かけづらい世の中になったと……。
“3密” を気にするあまり、人と人が接触を恐れ、人が人に無関心になっているのではないでしょうか?
「コロナがなかったら、もっと会って、話を聞いてあげられたのに」
コロナに打ち勝つには、ワクチンよりも景気回復よりも、人と人のコミュニケーションの大切さに気づくことなのかもしれませんね。
2020年09月14日
温泉考座 (28) 「清掃時間の確認」
<温泉旅館で60代男性死亡 レジオネラ菌で肺炎>
<基準値の1800倍のレジオネラ菌を検出>
2011年11月、新聞は一斉にショッキングな記事を報じました。
群馬県内で発生したレジオネラ菌による死亡事故です。
この舌をかんでしまいそうな細菌の名前が知られるようになったのは、02年の夏に宮崎県の温泉施設で起きた集団感染からでした。
感染者数は約300人、死者7人という未曽有の大惨事となりました。
レジオネラ菌による死亡事故は以前から発生していたのですが、件数が少なかったため全国レベルでの対策が遅れていました。
また事故の多くが 「循環式風呂」 で発生していました。
循環式風呂とは、温泉を何度も再利用する方式のことです。
ろ過、殺菌、加熱をしながら湯を浴槽の中で循環させ続ける “魔法の装置” と言ってもいいかもしれません。
この装置が登場したおかげで、湧出量の少ない温泉でも大型の入浴施設を造ることが可能になりました。
ところがレジオネラ菌にとっては、これが絶好の繁殖の場となったのです。
レジオネラ菌は、土中や河川に生息します。
従来の放流式(かけ流し)の浴槽なら、たとえ菌が入っても流されてしまうので問題ありませんでした。
しかし、その菌が繁殖に適温とされる湯の中で循環し続けると、爆発的に増殖し、飛沫から人間の肺に入り込み感染するのです。
もちろん、多くの循環式風呂は、きちんと衛生管理がされています。
それに循環式だけが危険というわけではありません。
かけ流し風呂でも、清掃が行き届いていなければ同じことです。
温泉旅館に泊まって、夜中や朝方に風呂に入ろうとしたら、清掃中だったという経験はありませんか?
「なんだ、24時間入れないのか!」 と立腹される人もいますが、実は、こうやって毎日、湯を抜いて清掃している宿が、いい湯守(ゆもり)のいる宿なのです。
宿によっては、客のいないチェックアウトからチェックインの間に清掃を行っている宿もあります。
温泉宿に行ったら、ぜひ清掃時間の確認をしてください。
<2013年11月6日付>
2020年09月13日
二度咲きのアサガオ
季節が、秋めいてきました。
朝からエアコンを付けずに、窓を開け放していると、涼やかな風とともに虫の声が聴こえてきます。
我が家の2階、僕の仕事部屋の窓の下は、空き地です。
見下ろすと、背丈ほどまで伸びた夏草の上を、悠々とトンボの群れが飛んでいます。
そして、所々に咲く、赤と青の花々……
よく見ると、アサガオです。
このアサガオ、もしかしたら我が家のアサガオかもしれません。
現在、我が家の花壇でも、2種類のアサガオが咲いています。
色も、まったく同じ赤と青です。
そして、葉っぱの形も同じです。
遠い遠い昔、小学校の低学年だったと思います。。
夏休み前になると、必ず、観察用のアサガオの鉢植えを抱えて帰った記憶があります。
この時のアサガオの葉っぱは、葉先が3つに割れた鉾型をしていました。
いわゆる古来、日本の夏の風物詩として栽培されている 「朝顔」 です。
調べてみると、この品種は東南アジア原産で、奈良~平安時代に伝わったようです。
我が家では今、青い花を咲かせています。
ところが赤い花のアサガオは、丸いハート型の葉っぱを付けています。
こちらは調べてみると、「丸葉朝顔」 という品種だということが分かりました。
最近は、こちらのアサガオのほうが、街中でも多く見られるような気がします。
原産は熱帯アメリカで、明治中期に観賞用に輸入された品種とのことでした。
で、思ったのは、「あれ、こいつら、2度目じゃん!」 ということ。
一度、7月に咲いて、枯れて、散って、今になって、また芽を出して、ツルをのばして、つぼみを付けて、咲いています。
すごい生命力であります。
これだから何百年と地球上で、生息エリアを広げつつ、子孫を絶やすことなく、生き続けているのですね。
わけもなく、ただただ感心しながら、見惚れてしまいました。
夏の終わりの “観察日記” でした。
2020年09月12日
今日の毎日新聞 『くつろぎの宿』
<群馬県の温泉に詳しい前橋市のフリーライター、小暮淳さんに聞くと、金湯館のような 「源泉一軒宿」 が県内に40軒近くあり、残念ながら年々減りつつあるという。「霧積温泉は群馬で一番の秘湯でしょう」>
(2020年9月12日付、毎日新聞首都圏版より)
人の縁とは、不思議です。
長い人生において、一度会ったきり二度と会わない人というが、ほとんどです。
それが仕事での出会いとなれば、なおさらで、担当が変わったり、勤務地が異動になったりすれば、そのまま音信不通になってしまうのが、人の常です。
でも、この記者は、違いました。
今から5年前、僕はNPO法人 「湯治乃邑(くに)」 を設立しました。
その時、真っ先に、オンボロ事務所(雨漏りがする借家) に駆けつけてくれたのが、当時、毎日新聞の前橋支局に在籍していた尾崎修二記者でした。
<湯治場として復活計画>
<前橋のライター小暮さんらNPO設立>
(2015年10月18日付、毎日新聞群馬版より)
そんな見出しが躍る記事を、地元版に書いてくださいました。
その翌年のこと。
「小暮さんの活動を、もっと全国の人に知ってもらいましょう」
と連絡があり、再度、取材を受けました。
<発信 地方から>
<守りたい 「源泉一軒宿」>
(2016年3月22日付、毎日新聞全国版より)
という記事が載りました。
今度は、全国版です!
反響は、前回の比ではありませんでした。
日本中の読者から、このブログにコメントが入り、アクセス数も1日で3,000を超えました。
「なんで、そこまでしてくれるの?」
なにげに訊いたことがありました。
すると彼は、たった一言、
「温泉が好きなんですよ」
そう言った記憶があります。
そして、コロナ禍の今年……
またしても連絡がありました。
すでに彼は異動をしていて、現在は東京本社の勤務です。
それでも、群馬の温泉の記事を書きたいと言います。
そして先週から毎日新聞の首都圏版にて、『くつろぎの宿』 霧積温泉 金湯館の連載 (全3回) が始まりました。
今日の掲載が、第2回目です。
<110年一軒で守りつぐ>
<山津波被災後に託され>
と題して、幾多の災害を乗り越え、家族だけで守り続ける一軒宿の “いま” をレポートしています。
でも彼の記事は、資料に基づく、報告だけではありません。
実際に、自分の足で歩き訪ね、温泉に入り、宿に泊まり、湯の浴感に至るまで、ドキュメント・スタイルで詳細に記しています。
その文章を読めば、いかに彼が温泉を愛しているかが分かります。
そして記事には、冒頭の一文が登場します。
来週 (次回) の最終回を楽しみにしています。
そして、尾崎記者のますますの活躍を期待しております。
2020年09月11日
温泉考座 (27) 「料金設定の不公平」
そもそも湯治場としての温泉地には、ハイシーズン料金もオフシーズン料金もないのですが、いつからか季節や時期によって料金の異なる温泉旅館が多くなりました。
“稼ぎ時” に宿泊料金が高くなるシステムのことです。
温泉好きの人たちは、ゆっくりと温泉に入りたいという理由で週末や連休を避けて、平日に利用する人が多いようです。
私は取材で温泉地や温泉宿を訪ねますが、先方が忙しい “稼ぎ時” を避けてオフシーズンや平日にお邪魔しています。
でも一般の勤め人は、休みの取れる週末や連休に温泉地へ行く人が、ほとんどだと思います。
この時期は、どこの観光地も混雑し、宿に着いても人であふれ、十分なサービスを受けられないのに、なぜか宿泊料金が高く設定されています。
「稼ぎ時だから仕方ない」 と、当然のようにあきらめているようですが、私はそうは思えません。
平日と休日の料金設定は、逆のような気がするのです。
では、なぜ休日前やハイシーズンといわれる期間は、利用金が高くなるのでしょうか?
「週末やハイシーズンを高くしているのではなく、客の少ない平日を安くしている分、忙しい時期で調節しているのです」 と言った経営者がいましたが、どうもこの答えには納得がいきません。
では、この宿の平日料金が極端に安いのかといえば、そんなことはないからです。
黙っていても客が来る週末や連休に料金設定の基準を置くか、もしくは平日より安くするべきです。
なぜならハイシーズンは館内が混雑し、風呂の湯も汚れやすく、食事も手間をかけられず、サービスが行き届かないからです。
これでは、ゆっくりと過ごせ、新鮮できれいな湯に入れ、十分なサービスを受けられる平日との差があり過ぎます。
私が知っている湯守(ゆもり)のいる宿は、季節や時期によって宿泊料金を変えてはいません。
それは季節や時期に関係なく、供給される新鮮な温泉の湯量に見合った宿泊人数しか受け入れていないからです。
これならば、平日の客と休日の客に、サービスや料金の差が生じることはありません。
<2013年10月30日付>
2020年09月10日
うれしたのしトリビア会議
おかげさまで、このコロナ禍においても、順調に撮影は続いています。
群馬テレビの人気謎学バラエティー番組 『ぐんま!トリビア図鑑』。
僕は放送開始の2015年4月より、番組のスーパーバイザーを務めさせていただいています。
今年で6年目。
オンエアも今週の放送で、第218回を数えます。
これもひとえに、スポンサー様およびコアな視聴者様の賜物です。
関係者の一人として、厚く御礼を申し上げます。
なーんて、堅苦しいあいさつで始まってしまいましたが、要は、とっても楽しいんです!
3ヶ月に1回開かれる企画構成会議が、昨日、行われました。
プロデューサー、ディレクター、放送作家らが集まり、僕も末席に参加させていただきました。
そして、2時間以上もの白熱した討論の末、11月~来年1月までのテーマと担当者が決まりました。
出席者のみなさん、大変お疲れさまでした。
また局のスタッフのみなさんには、“3密” に気を遣いながらの会場のセッティング、資料の用意、お茶の準備等、大変お世話になりました。
ありがとうございます。
ということで今回は、会議からオンエアまでの番組の流れを簡単に紹介したいと思います。
① まず会議では、各々が持ち寄ったネタが発表されます。
② 過去に放送したネタとの重複の有無、“落としどころ” と呼ばれる起承転結の 「転」 と 「結」 の部分について話し合います。
③ 「決定」 すると、担当するディレクターおよび放送作家、レポーター(局アナorフリーランス) を選出します。
④ 後日、ディレクターと放送作家がロケハン(ロケーション・ハンティング) と呼ばれる現地の下見に行きます。
⑤ そして、撮影当日を迎えます。
⑥ その後、編集作業を経て、オンエアとなります。
僕は、スーパーバイザーでもありますが、“ミステリーハンター” という肩書で、時々、番組にも出演するため、自分が提案したネタが採用された場合は、ロケハンにも同行します。
先週、一本、ロケハンを済ませてきました。
いよいよ来週、収録となります。
内容については追って、ご報告いたします。
今後とも 『ぐんま!トリビア図鑑』 を、よろしくお願いいたします。
●放送局/群馬テレビ(地デジ3ch)
●放送日/火曜日 21:00~21:15 (毎月最終火曜日を除く)
●再放送/土曜日 10:30~10:45 月曜日 12:30~12:45