温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2018年12月31日

還暦からの風景 ~随想2018~


 今年も、いろいろなことがありました。
 民話の本を出版して、トークライブを行い、NPO主催によるパネルディスカッションを開催しました。
 カルチャーセンターの温泉講座、公民館での高齢者向けセミナー、各団体からの依頼による講演会の講師。
 そしてテレビやラジオへの出演。
 どれもこれも刺激的で、ライターという職業を超えた魅力ある活動ができた有意義な1年間でした。


 その中で、今年最大のニュースといえば、夏に誕生日が来て、“還暦”を迎えたことでしょうか!
 還暦ですよ~!!!
 まさか自分の人生に、やって来るとは、思いも寄らぬ二字熟語です。
 だって子供の頃、「60歳」 と聞けば、当然ですが、正真正銘の 「おじいさん」 でしたからね。
 間違っても、「おじさん」 とは呼んでもらえない年齢です。

 ところが、いざ迎えてみると、まったく自覚がありません。
 「おじいさん」 になった気がしないのです。
 ※(私生活では、孫が2人もいるジイジなんですけどね)
 でも60年間という時間の経過だけは感じます。
 そう、鏡を見たときです。

 「あっ、オヤジがいる!」
 朝、洗面所で顔を洗っていて、何度、驚いたことか……。
 まるで年寄りの “きぐるみ” を着た自分がいるようで、肉体の老化と精神の未熟とのギャップを感じる、今日この頃であります。


 でも、1つだけ良かったことがあります。
 それは、人生の視界が開けたこと。

 20代~30代は暗闇で、40代~50代は霧の中だったのに、五十路の急坂を上り切った途端に、パーッと周りの景色が一望できるようになったのです。
 それだけではありません。
 下をのぞくと、今まで歩いて来た道からスタート地点まで見渡せます。

 アップダウンの多い、石ころだらけの20代。
 クネクネと蛇行して、寄り道ばかりの30代。
 長い長い上り坂が続いた40代。
 そして、岩場が多かった急登の50代。

 今、僕の目の前には、ゆるやかな坂道が続いています。
 これならば、周りの景色を楽しみながら、ゆっくりと歩いて行けそうです。


 人生100年といいますが、きっとそれは、まれな人です。
 だから人生を登山に例えるならば、たぶん今は八合目あたりなんでしょうね。

 これからの人生で、できる事と、できない事ぐらい、この歳になれば分かります。
 もう、無駄に頑張ることは辞めました。
 でも、あきらめてはいません!


 来年は、どんな年になるのでしょうか?

 読者のみなさん、1年間お付き合いいただき、ありがとうございました。
 良いお年を、お迎えください。

        平成30年 大晦日  小暮 淳 
   


Posted by 小暮 淳 at 19:02Comments(2)つれづれ

2018年12月29日

冬の怪


 ギェェェェェェーーーーッ!!!!

 深夜の住宅街に大きな悲鳴が響き渡りました。
 僕の声です。


 昨晩のこと。
 駅から自転車を漕いで、我が家まで帰る道すがら。
 大通りを避けて、閑静な住宅地に入り込みました。
 大きな庭のある、しょう洒な白い家の角を曲がったときです。

 キキキキーーッ!
 急ブレーキをかけました。

 道路の真ん中に人が立っていたのです。
 それも、おばあさんです。

 それだけなら僕だって、驚きはしません。
 ただ、そのおばあさんの格好が、異様だったです。
 ガリガリにやせこけて、白髪が逆立っていました。

 何より不気味だったのは、下着姿だったということ。
 この真冬の寒空の夜に……。

 一瞬にして全身に鳥肌が立った僕は、脱兎のごとく、自転車を立ち漕ぎしながら、全速力で家まで帰りました。


 部屋に入り、一息ついたときです。
 ハテ、ナンダッタノダロウ?
 もちろん、幽霊ではありません。
 確かに、生身の老いた女性に見えました。
 でも、この世のものとは思えない、妖気が漂い、フラフラとよろけるように歩いていたのです。

 徘徊?
 そうだ、あのおばあさんは、認知症老人なんだ。
 風呂上りか、寝る前の着替えの最中、家族が目を離したすきに、外へ出てしまったのではないか?

 でも、寒くないのだろうか?
 それより、家族は、突然、姿を消したおばあさんを探しているはずだ。
 もう、見つかっただろうか?
 ならばいいけど、交通事故に遭ってはいないか?
 川や側溝に落ちて、ケガなどしてないだろうか?


 気が付いたら、おばあさんの顔と、リハビリ入院中のオフクロの顔が頭の中で重なっていました。
 そういえば、しばらく会いに行ってないなぁ。
 明日にでも会いに行ってこようか……

 あのおばあさんは、オフクロの生霊だったのかもしれませんね。
  


Posted by 小暮 淳 at 13:03Comments(0)つれづれ

2018年12月27日

忘れ物はなんですか?


 今年もあと4日となりました。
 みなさんは、思い残すことはありませんか?

 なーんか先週あたりから、胸の奥のほうがモヤモヤしていたのであります。
 やり残したことがあるような、忘れていることがあるような……
 年賀状は書いたし、お世話になった人へのあいさつ回りは済ませたし、年内にすべき支払いも終えました。
 連載中の原稿も、先方に迷惑がかからないようにと、1月分はまとめて早めに入稿しています。

 これで完璧だ!
 モレはないはずだ。
 と、頭の中で指さし確認をしてみたものの、なんか、忘れ物をしているようなモヤ~とした気分が続いていました。


 あっ、そうだ!
 Hだよ、H!

 ご存じ、我らのたまり場、酒処 「H」 での “飲み納め” が、まだだったのです。
 えーと、最後にHに行ったのは……
 手帳を紐解くと、先週の火曜日です。
 でも、あの時は、まだクリスマス前で、年の瀬が押し迫った感覚がなかったため、ママにも常連客にも 「良いお年を」 とは、あいさつをしていません。
 きっと、このことが心のどこかに引っかかっていて、モヤモヤしていたのです。


 「あら、ジュンちゃ~ん! 来てくれたの。年内は、もう来ないかと思った」
 まずはカウンターの中からママが、満面の笑みで迎えてくれました。
 「小暮せんせーが来ました~!」
 カウンターの奥からは、すでに酔いの回った常連さんが、手を振ってくれます。
 隣の席には、“水曜日の男” と呼ばれるダンディー氏が、いつものように洋酒のグラスを傾けています。
 「最近、よく、ご一緒しますね」
 「なんか、忘れ物をしたようで、来ちゃいました」
 「私もですよ」

 カンパーイ!

 これが今年最後の乾杯になりそうです。


 「今年は、どんな年でしたか?」
 たった、それだけのテーマで、カウンターの上には、悲喜こもごもの話題が、次から次へと飛び出してきます。
 飲むほどに、酔うほどに、グルリ、グルリと今年の出来事が、めぐります。

 「今年も本を出されて、いい年だったんじゃないですか?」
 出版記念のトークライブにも足を運んでくれたダンディー氏。
 「そうですね。親の介護もあったから、相変わらず忙しい年でした」

 酔うほどに、語るほどに、刻一刻と今年の終わりが近づいていきます。


 「良いお年を!」
 「良いお年を!」
 三々五々、手を振りながら常連客が、寒空の下へと出て行きます。

 「ママ、1年間、ありがとう。楽しかった。良いお年を!」
 「こちらこそ、ありがとね。良いお年を!」


 深夜の街へ出て、大きく深呼吸を1回。
 ううう~っ、寒い!
 でも、これで今年は、もう思い残すことはありません。
   


Posted by 小暮 淳 at 13:00Comments(0)酔眼日記

2018年12月26日

マロの独白(44) 平々凡々な日々


 こんにちワン! マロっす。
 ここんちの飼い犬、チワワのオス、12才です。

 おひさしぶりでやんした。
 なんでも、そろそろ今年が終わりに近づいているんですってね。
 そういえば、なんとなく家の中があわただしいような気がしてました。
 ま、オイラには年末も年始も盆も正月もありませんから、いつもと変わらない毎日を送っております。


 「おい、マロ! どこに居るんだ?」
 ソファーの隅で昼寝をしていたら、突然、ご主人様に起こされました。
 「なんだよ、また寝てるんか。他にやることないのか!?」
 と言われましても、オイラは犬です。
 大そうじの手伝いなんてできませんから、こうやって邪魔にならないように部屋の隅っこでジッとしているんでやんすよ。

 「お前、最近、ブログ書いてないだろ! 読者が待っていると思うから、年内に1本書いておけよ。な、いいな!」
 ということで、シブシブ、ご主人様の仕事場に上がり、こうやってキーボードを叩き出しました。
 でも、何を書きましょう?
 「今年1年を振り返れば、いろいろとあるだろう」
 と言われても、オイラは所詮、犬ですからね。
 生まれてこのかた、毎日毎日、同じ生活っすよ。
 朝起きて、食事して、昼寝して、散歩して、また昼寝して、食事して、少しだけ家族とテレビを観て、そして寝るだけです。

 平々凡々とした日々でやんす。


 でもね、先日、嬉しいことがありました。
 リビングで昼寝をしている時に、ご主人様と次女のS様の会話を聞いてしまったんですよ。

 「マロが死んだら、お前が一番、泣くだろうな。マロとずーっと一緒だものな」
 「私が小学1年の冬に来たんだよね」
 「ああ、長いよな~。完全に家族だものな」
 と言いながら、ご主人様は寝たふりをしているオイラの頭をなでました。

 「でもマロも年取ったよな~」
 この、ご主人様の言葉に、S様は何と言った思いますか?
 「確かに年は取ったけど、可愛くなったよ」
 ですって!
 なのに、ご主人様ったら、
 「そうか? 俺にはわからないな~」
 「だって、うちに来た頃は、もっとブサイクだったよ。あれから見たら、かなり可愛くなった」

 喜んでいいのか、悲しむべきか、なんだか複雑な心境でやんす。
 でも、一番嬉しかったのは、S様のこの一言でした。
 「でも、マロって、すごいと思わない?」
 「なにが?」
 「だって、この12年間、一度も病気をしていないんだよ!」
 「言われてみれば、本当だな。医者にかかったことないな」
 「そうだよ、マロは偉いんだよ!」

 ウグ、ウグ、ウエ~~ン!!!
 オイラ、泣けて、泣けて、だんだん寝たふりをしているのが辛くなってきやした。

 ワン、ワンワンワ~ン!
 S様、ご主人様、こんなオイラを12年も見捨てずに、置いてくださってありがとうございます。
 無芸大食で、取り得の無い瑣末な犬ですが、これからも末永く、よろしくお願いいたしやす。

 平々凡々な日々、でも、これが幸せっていうもんなんですね。


 読者のみなさん、今年も1年間、ありがとうございました。
 来年もよろしく、チワワン!!
   


Posted by 小暮 淳 at 14:58Comments(2)マロの独白

2018年12月25日

週に一度は 「ノースマホデー」


 今、ハマっているマイブームがあります。
 それは、“一人ド忘れゲーム”!

 テレビやポスターなどを見て、端から俳優やタレントなど有名人の名前を言うのです。
 はなから知らない人は、対象には入りません。
 その中で、「絶対、自分は知っているはず」 という人で、名前を思い出せない人がゲームの対象になります。

 「えーと、えーと、確か、最近のドラマに出ていたよな」
 とか、
 「ああ、オリンピックで金メダルを取ったスポーツ選手なんだけど」
 と、自分の脳を追い込んでいきます。
 早い時は数分後に、パッと思い出すこともありますが、2~3日抱え込むこともあります。

 でもね、思い出せた時の爽快感っていったら、ありませんよ!
 まるで、仕事を1本成しとげた時のような達成感と充足感があるのです。
 ま、本音を言えば、将来、認知症にならないための予防トレーニングなんですけどね。


 先日のこと、飲み屋のカウンターで、僕が思い出せずにいる女優さんの名前を、数名の常連客に訊いてみました。
 運悪く、一人も即答できる人はいません。
 ということで、“複数ド忘れゲーム” がスタート!

 「いたね、いたね、そんな娘が」
 「あれでしょ、突然、芸能界辞めちゃった」
 「ほら、顔は、出ているんだよ」
 と話は盛り上がり、ゲームは段々と面白くなってきました。

 と、その時です。
 カウンターの隅で聞いていた客の一人が、
 「○○××ですよ」
 と教えてくれました。

 「あー、そうだ、そうだ!」
 と一同、喜んだのも束の間、良く見ると、その客の手にはスマホが握られているではありませんか!
 一瞬、シラーっとした空気が、カウンターの上を流れて行きました。

 「あ、ありがとうございます……(でも、スマホ使うのはルール違反だからね)」

 便利になると、世の中は、つまらなくもなるのです。


 昨日の読売新聞に、人生相談の回答者でスポーツジャーナリストの増田明美さんが、今年を振り返って、こんなコメントを寄せていました。
 <人の目を気にしすぎて、他人と比べてしまう悩みが多くなりました。SNSなどの普及により、それが加速しているように思えます。「はみ出る勇気」 が必要な時代です。(中略) ネットにはいい面もたくさんありますが、時には 「ノースマホデー」 があってもいいのではないでしょうか。>


 週に一度は、ノースマホデー!
 現代人に必要かもしれませんね。

 ま、ガラケーの僕は、毎日が 「ノースマホデー」 ですけど……。 
   


Posted by 小暮 淳 at 11:52Comments(0)つれづれ

2018年12月23日

コンビニ温泉の減少


 数日前、新聞記者からコメント取りの電話取材を受けました。
 でも、まさか1面の記事だとは知りませんでした。


 <独自性 ホットに競う>
 <日帰り温泉施設>
 <人口当たり全国11位>

 今日(12月23日) の上毛新聞1面、しかもトップ記事で掲載されました。
 それによれば群馬県の人口10万人当たりの日帰り温泉施設は13.86ヶ所で、全国11位だそうです。
 トップは長野、2位鹿児島、3位大分、そして秋田、青森と東北勢が続きます。

 温泉地(宿泊施設のある温泉) の1位は北海道ですが、それを除けば、ほぼ上位は温泉地数の順位と変わりません。
 僕のコメントは、<火山抱える県が上位> と題した囲み記事で、そのあたりのことを話しています。


 ところで、このデータ、とっても解釈が難しいのです。
 環境省が発表しているデータが基になっているのですが、「日帰り温泉施設」 の定義には日帰り可能な旅館も数に入っています。
 もしかしたら温泉地にある外湯(無料の共同湯) も入っているかもしれません。
 でないと数字が大き過ぎます

 群馬県の場合、温泉地が約100ヶ所に対して、日帰り温泉施設は約270ヶ所。
 全国にいたっては、温泉地数が約3,000ヶ所に対して、日帰り温泉施設は約7,000ヶ所となっていますもの。
 平成以降に平野部にできた都市型の日帰り温泉施設は、その半分といったところでしょうか。

 ちなみに僕は、平成以降にできた街中の日帰り温泉施設のことを 「コンビニ温泉」 と呼んでいます。
 “便利な簡易温泉” という意味です。
 記事によると、このコンビニ温泉ブームのピークは過ぎ、減少が始まっているようです。


 ご存じのとおり、平野部には火山がありませんから自噴しないため、掘削により温泉をくみ上げています。
 当然、それを維持していくには莫大な設備投資費や光熱費、人件費がかかります。
 平成も30年が過ぎようとしていますから、施設や設備の老朽化もあります。
 もしかしたら、源泉自体が涸渇年齢を迎えているかもしれません。

 ということで、どこも生き残りをかけた経営に、しのぎを削っているのが現状です。
 まさに平成と共に雨後の竹の子のように増え続け、今、淘汰されつつあるコンビニエンス・ストアの盛衰と、よく似ていると思うのです。


 年が明ければ、数ヵ月後には“平成” という時代が終わり、新しい時代がやって来ます。
 はたして日本の温泉は、どう変わって行くのでしょうか?
   


Posted by 小暮 淳 at 12:58Comments(2)温泉雑話

2018年12月22日

舞台裏、話しちゃいます!


 「さっそく浦島太郎の墓へ行ってきました」
 「三途の川って、この世にあったんですね」
 「倉賀野(高崎市) に住んでいるけど、ムジナの話は知りませんでした」
 「伊香保温泉に分福茶釜があったなんて!」
 「お伊勢参りをした犬がいたとは、ビックリです」

 『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) が出版されて、4ヶ月が経ちました。
 著者の耳にも、ちらほら読者からの声が届いています。
 みなさん、楽しんでいただいているようで、嬉しい限りであります。


 民話や伝説の妙味は、“荒唐無稽な創話” にあります。
 昔むかしから、人づてに口承されてきた話は、尾ヒレ足ヒレが付き、時には物語自体が捻じ曲げられ、突拍子もない結末を迎えるものもあります。
 ただ、“なぜ、そんな話が生まれたのか?” と考えると、実に奥が深く、謎が多いことに気づきます。

 “火の無い所に煙は立たぬ”

 どこかに真実があるからこそ、奇想天外な話が生まれたと考えられます。
 99%はウソ(作り話) でも、1%のホントウ(史実) が知りたい!
 その真実の舞台を探すのが、謎学の旅なのです。


 浦島太郎や分福茶釜、舌切り雀の話は、どこが真実なのか?
 カッパや天狗などの架空生物は、何を人間に伝えようとしたのか?
 その他、取材で見つけた摩訶不思議な慣習や風習など、現代に残された謎の舞台裏をお話します。



 ■第1話/2019年1月15日(火) 群馬発祥の昔話
 ■第2話/2019年2月19日(火) 不思議な民話
 ■第3話/2019年3月19日(火) いで湯発見伝説


    『ぐんま県 民話と伝説の舞台裏』
 ●日程  第3火曜日 10:30~12:00
 ●受講料 会員7,776円 一般8,780円
 ●教材費 1,000円
 ●会場・お問い合わせ NHK文化センター前橋教室
   群馬県前橋市大手町1-1-1 (群馬県庁昭和庁舎3F)
    TEL.027-221-1211
   


Posted by 小暮 淳 at 12:57Comments(0)講座・教室

2018年12月20日

NEXT STAGE


 「次のステージに進んだということだ」
 ため息まじりに、電話の向こうでアニキが言いました。


 オヤジは94歳、認知症歴約10年。
 それでも健康だけが取り得の元気な老人でした。
 しかし “老化” という自然現象にはあらがえません。
 ぜい肉がなくなり、筋肉がなくなり、年々、やせ細っていきます。

 この10年間、アニキと共同で、なんとか自宅で両親の介護を続けてきました。
 91歳のオフクロは、ひと足早く、自宅での介護が不可能になったため、今年の1月から施設に入所させましたが、オヤジはなんとか食事と排泄が自分でできていたので、デイサービスとショートステイを組み合わせながら兄弟で面倒を看ていました。

 が、その10年の在宅介護が終わろうとしています。

 今月初め、オヤジが高熱を出したため、大事をとって入院をさせました。
 熱は数日で下がりましたが、これまた大事をとって、検査も含めて2週間ほど入院を延長させました。

 すると、案の定、心配していたことが起きました。
 至れり尽くせりの入院生活で寝たきり状態だったため、筋肉は衰え、気力は失われ、言葉まで発しなくなってしまいました。
 当然ですが、食事は介助となり、排泄もオムツのみとなってしまいました。
 ここにきて、一気に老衰が加速してしまったのです。


 「こうなることは分かっていたんだ。だから、できればもっと早く退院させたかった」
 アニキの声に、ただただ僕はうなづくだけでした。
 結局、年内の退院はなくなりました。
 リハビリにより復活する日が来ることを、祈るばかりです。


 来年、生まれて初めて、オヤジもオフクロもいない正月を迎えることになりました。
   


Posted by 小暮 淳 at 14:48Comments(2)つれづれ

2018年12月19日

まつだい芝峠温泉 「雲海」


 国境の長いトンネルを抜ける前から雪国であった。

 群馬は広い!
 前橋から1時間走っただけで、一面の銀世界です。
 バスの中では、そこかしこから喚声が上がりました。
 そしてトンネルを抜けると、その雪の量は増し、「雪国に来た!」 感に、誰もがどっぷりと浸っていました。


 僕が講師を務めるNHK文化センターの野外温泉講座も今年で10周年になります。
 毎年、この季節は、豪雪地帯の温泉を訪ねるのが、お約束です。

 「やっぱり、雪見風呂に入りたいよね」
 「そして、湯上がりは雪見酒でしょう」
 という受講生らのリクエストにお応えして、今年最後の講座は、新潟県十日町市の 「まつだい芝峠温泉」 へ行って来ました。
 なぜ、まつだい芝峠温泉なのか?
 雪も見たいが、別の目的がありました。
 それは、ホテル名と同じ “雲海” です。

 “まるで雲の上にいるような不思議な感覚と幻想的な景色”
 そのキャッチコピーに惹かれました。

 雲海が出やすいのは、寒暖差の激しい秋と冬。
 一年の中で、もっとも雲海が出る確率が高くなるといいます。

 今年は暖冬で、昼間はポカポカ陽気の日が続いています。
 でも朝晩の冷え込みは例年通りです。
 これはチャンス!
 そして昨日は快晴に恵まれました。

 もしかして、雲海が眺められるかも!?


 「先生、露天風呂は、こっちです!」
 「すごい眺めですよ」
 「絶景とは、まさに、このことです」
 内風呂で体を温めた後、雪景色の露天風呂へ。

 す、す、素晴らしい!
 ビ、ビ、ビューティフル!!
 眼下は一面、雪に覆われた棚田が広がり、遠くには日の光を受けて白銀に輝く魚沼連峰を一望します。

 左から巻機山、谷川岳、万太郎山、平標山、苗場山……2,000m級の山々が連なります。
 あたかも氷山のようにたたずむ真っ白な山が巻機山のようです。
 それぞれの山が雪の量によって、微妙に濃淡を変えているため、まるで一幅の水墨画のよう。

 「でも先生、残念ながら雲海は見られませんでしたね」
 という受講生に僕は、
 「ほら、あの山の下を見てください。“海” と言うほどではありませんが、小さな雲のかたまりが、いくつもありますよ。雲海の子供たちです」
 「ですね。ハハハ」


 湯上がりは、お約束の忘年会であります。
 雪見風呂と雪見酒、2つの願いが叶って、受講生たちもご満悦の様子。

 今年も1年間、大変お世話になりました。
 来年も、名湯・秘湯をたくさん巡りましょうね!
   


Posted by 小暮 淳 at 14:22Comments(0)温泉地・旅館

2018年12月17日

温泉文化をユネスコ無形文化遺産へ


 すでに群馬県民のみなさんは、マスコミ等の報道でご存じの方も多いと思いますが、群馬県温泉協会など5団体の代表を発起人とする 「温泉文化ユネスコ無形文化遺産登録推進協議会」が設立され、今日、群馬県庁県民ホールにて発会式が行われました。
 末席ではありますが、僕もNPO法人 「湯治乃邑(くに)」 の代表として、応援に駆けつけました。


 まず開会のあと、発起人の紹介があり、代表である群馬県温泉協会長の岡村興太郎さんのあいさつがありました。
 岡村さんは、群馬を代表する秘湯の一軒宿、法師温泉 「長寿館」 のご主人でもあります。
 僕が温泉ライターとして、こうして長年やって来れたのも、岡村さんの後押しがあったからこそです。
 そんな恩人が代表を務める協議会だもの、知らんぷりはできませんって!

 県知事や議員など、来賓のあいさつのあと、同会の特別顧問である高崎商科大学特任教授の熊倉浩靖さんが、設立趣旨説明として趣意書を読み上げました。
 熊倉さんといえば、そうです! 先月、NPO法人 「湯治乃邑」 主催によるパネルディスカッションにゲストパネリストとして登場し、僕と温泉談義をしてくださった方であります。
 ということは、やはり恩義がある僕としては、応援しないわけにはなりません。


 では、なぜ、日本の温泉文化のユネスコ無形文化遺産への登録推進が、群馬県からなのでしょうか?

 趣意書より抜粋します。
 ●温泉が絹産業に代わる本県の基幹産業になりうる可能性があること。
 ●全国の温泉地ランキング 「にっぽんの温泉100選」 で16年連続1位を獲得した草津を筆頭に、50位以内に入る伊香保、万座、みなかみ18湯、四万など魅力的な温泉地があること。
 ●また 「最も印象の良かった温泉地ベスト10」、「最も行ってみたい温泉地ベスト10」 にも草津と伊香保が入り、年間延べ宿泊者数の都道府県ランキングでは4位であること。
 ●こうした状況から本県が登録推進の先導役になる立場にある。
 とし、賛同と行動を求めています。


 いかがですか、県民のみなさん、全国のみなさん!
 賛同をいただけますでしょうか?

 ぜひ、日本の温泉文化をユネスコ無形文化遺産へ登録させましょう!
   


Posted by 小暮 淳 at 19:32Comments(3)ユネスコへの道

2018年12月15日

すべて転じて福となせ!


 今年も 「今年の漢字」 が発表されました。
 「災」 だそうです。
 なんだか平成最後の年末には、ふさわしくないような漢字です。

 でも、この1年を振り返ってみれば、北海道の地震や西日本の豪雨など、自然災害のニュースが目立ちました。
 しかし、必ずしも 「災」 は天災ばかりではありません。
 人災も多くありました。
 パワハラによる暴力やいじめによる自殺、「あおり運転」 なんていうのも人災です。

 迎える新しい年は、災いが転じて、大いに福を招いてほしいものです。


 さて、僕も 「今年の漢字」 を発表いたします。
去年は 「活」、一昨年は 「奔」、その前の年は確か 「労」 でした。
 年々、元気な漢字になっているような気がしますが、はてさて、今年は……

 「話」 に決定しました!

 一番の要因は、今年8月に 『民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) という民話の謎学本を出版したことです。
 これにより、方々のマスコミから取材を受け、裏話など執筆のエピソードを話す機会が増えました。
 著書の発売を記念したトークショー、2週連続のFMラジオ出演も 「話」 であります。

 そのほかNHK総合テレビの全国放送出演や観光大使、温泉大使としての講演会の数々、NPOでのパネルディスカッションなど、すべて 「話」 です。
 ライブ活動でも、僕がバンドのMCを担当していますから、ここでも 「話」 となります。

 振り返れば1年間、まー、いろんなところで話してきたものです。
 本業は、ライター(文筆業) なんですけどね。
 「話」 には、書くよりも早く相手に物事を伝えられるという利点があるのです。
 一度、「話」 の楽を覚えてしまうと、ついつい書く前に話したくなってしまうのです。


 今年も残り2週間余りとなりました。
 みなさんは、どんな1年でしたか?

 良い年だった人も、悪い年だった人も、いつもと変わらない年だった人も、来年は、すべてを転じて福となしましょう!
  


Posted by 小暮 淳 at 17:39Comments(0)つれづれ

2018年12月13日

川古温泉 「浜屋旅館」⑧


 今年はなんだか、川古温泉(群馬県みなかみ町) と縁のある年のようです。
 6月と10月にNHK総合テレビで放送された番組で、僕は川古温泉の一軒宿 「浜屋旅館」 を紹介しました。
 6月の放送は首都圏エリアでしたが、放送されたのは夜7時台というゴールデンタイム。
 そして10月は、全国放送の人気番組 『ごごナマ』 だったこともあり、大反響となりました。

 3代目主人の林泉さんによれば、「放送後に予約電話が殺到した」 とのことでした。
 みなかみ町の温泉大使を務めている僕としては、少しでも町の活性化のお役に立てたことを喜んでいました。


 そしたら!
 またしても川古温泉でのロケ話が飛び込んできました。
 今度は地元、群馬テレビで来年に放送される特別番組の撮影です。

 ということで、昨日は川古温泉へ行って来ました。


 朝から天気は晴れましたが、関東地方は前夜に初雪を観測しています。
 北に向かうにつれ、雪景色が濃くなっていきます。
 そして現地に着くと、雨模様。
 太陽は出ているのにね。
 完全なる “キツネの嫁入り” です。

 「このあたりでは、よくある天気です。山の上のほうで雪が降っているんですよ」
 と、ご主人。
 今回は、ご主人とのからみはありません。
 そのかわりに、僕と一緒に混浴露天風呂に入浴してくれるのは、若い女性キャスターです。
 たぶん、まだ20代。
 僕とは、親子以上に歳が離れています。

 ひと言、“まぶしい!”


 悪天候の中、無事、撮影は終了。

 それにしても、若いって素晴らしいですね。
 まざまざと至近距離で、彼女の肌を見てしまいました。
 湯を弾くんです!

 僕の肌も、弾くことは弾くのですが、湯面から腕を上げるとワンクッションあって、それからサーッと湯が引いていきます。
 が、彼女の場合、違います。
 湯面から腕を上げた時、すでに湯が肌にのっていないのです。
 まるで撥水加工がされているよう。

 「本当ですね、おもしろ~い!」
 と嬉々としながら、腕を何度も湯面から出し入れする彼女。
 「それが若さだよ。若いって、すごいね~」
 と、還暦を過ぎたおじさんは、しみじみと感心してしまったのであります。


 オンエア日が分かりましたら、ご報告いたします。
   


Posted by 小暮 淳 at 10:32Comments(0)温泉地・旅館

2018年12月10日

不便と不自由の選択


 <「休み時間になると、廊下に公衆電話の順番を待つ長い列ができるんです。昨年から急に生徒たちがポケベルを持つようになったんですよ。その前の年には、まったく見られなかった現象です。たぶんテレビドラマの影響でしょうけど、授業中には鳴らさないように注意しています」> (『上毛カルテ』(上毛新聞社) より)

 これは平成6年(1994) に、僕が雑誌の取材で専門学校教師にインタビューした時の記事です。
 今読むと、もはや平成というよりは、昭和に近いイメージがする現象です。
 たかが24年前のことなんですけど……


 先週、ソフトバンクに通信障害が発生して、利用者らが公衆電話に列を作るという “珍現象” が起きました。
 なかには 「初めて公衆電話を使った」 という若い人もいたりして、なんとも不思議な “時代回帰” を見た思いがしました。


 実は僕、いまだに携帯電話はガラケーです。
 持たない理由は、「必要ないから」 なのですが、できればケータイ自体も持ちたくありません。
 というか、そもそも “持たない派” だったのです。
 が、18年前、雑誌の編集人に就任した際に、無理やりに持たされたのでした。
 もちろん、抵抗はしました。
 でも、スタッフに、
 「分かりました。だったら一日中、外出しないで編集室に居てください。でないと連絡が取れません!」
 と言われてしまい、自由が欲しい僕は、泣く泣くケータイを持つハメになったのであります。

 便利なものは、一度持ってしまうと手放せません。
 だからスマホも、怖いのです。
 現在、スマートフォンの保有率は約75%だそうです。
 誰かに脅かされない限り、残り25%の少数派に居残るつもりです。


 そういえば身近なところに、携帯電話を一度も持ったことのない人がいました。
 僕の実兄です。
 そう、このブログにも時々登場する、両親の介護を共にしているアニキであります。

 彼が、いまだにケータイを持たない理由は、「必要ないから」 です。
 職業は、建築士。
 すべての連絡は、自宅と事務所の固定電話の留守番電話機能で済ましています。

 「不便ではないのか?」
 と問えば、
 「不自由ではない」
 と答えます。

 う、う、うらやましいーーーッ!!!!!

 そうなのです、“便利” の代償は “不自由” なのです。
 そろそろ現代人は、自分の価値観で生きる勇気を身に付けたほうが良さそうですね。

   


Posted by 小暮 淳 at 12:08Comments(2)つれづれ

2018年12月08日

謎学の旅はつづく


 <伝説とは、あくまでも言い伝えであり、史実とは異なるものなのに。民話も、先人たちが口承しながら伝えた創話です。でも、そこには必ず舞台があるのです。そして舞台がある限り、これからも私の “謎学の旅” は続くのです。>

 これは今年8月に出版した 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) の 「あとがき」 に書いた一節です。
 その言葉のとおり、僕の “謎学の旅” は、本を出版したあとも続いています。


 本書の書店でのポスターやポップに書かれたセールスコピーは、
 【浦島太郎の墓があった!?】
 です。
 海なし県なのに、なぜ浦島太郎伝説が残っているのか?
 その謎を追った旅は、マスコミ等でも取り上げられ、今では読者が 「龍神宮」 を参拝するようになったと聞きます。


 浦島太郎がいたならば、桃太郎だって群馬にいたのではないか?
 「そんなバカな! 桃太郎は岡山でしょう!」
 と思われるでしょうが、ところが、どっこい!
 僕を誰だと思っているんですか?
 人呼んで、“謎学ライター” ですぞ~!!!

 群馬には、「桃太郎橋」 が存在するのです。
 周辺に、イヌ、サル、キジにまつわる地名はあるのか?
 謎を追って、現地に入り、資料館の館長や地元の長老に話を聞いてきました。

 すると、思わぬ史実があったのです!

 海がなくても浦島太郎がいたように、海がなくても鬼ヶ島があったのです。
 まだまだ、僕の “謎学の旅” は続きます。 
  


Posted by 小暮 淳 at 19:33Comments(0)謎学の旅

2018年12月06日

秘密のH


 「私もエッチに連れてってください!」
 知人の女性に言われて、一瞬、ドキッとしました。
 でも次の言葉を聞いて、意味が分かりました。
 「ブログ、読みましたよ」

 彼女は、知り合いの I 女史と僕が、Hで酒を飲んだというブログを読んだようであります。
 ※(2018年11月30日 「三人会」 参照)
 Hとは、僕が時々、ぷらりと心の洗濯に寄る、 酒処『H』 のことであります。


 実は、彼女に限らず、ブログを読んでいる友人・知人からは、たびたびHは話題にのぼります。
 「Hって、どこにあるんですか?」
 「Hって、どんな店なんですか?」
 「ぜひ一度、Hに連れてってください」

 なんだか読者の頭の中では、かなりHが美化されて描かれているようであります。


 つい先日のこと。
 さる会社の社長さんと仕事の移動で、前橋の街中を歩いていました。
 偶然にも、ちょうどHの前を通りかかりました。
 でもオープン前の時間ですから、店は閉まっています。

 「ここが、Hなんですよ」
 「えっ、えーーーーっ! ここ、ここなんですか~!!」
 と、大層驚いた様子でした。
 抱いていたイメージと、だいぶ違っていたようです。

 立ち止まって、中をのぞくと、明かりが点いています。
 ママが、仕込みの準備をしているようです。
 ドアのノブを回すと、開きました。

 「あら、ジュンちゃん!!」
 案の定、頭にカーラーを巻いたままのママが、カウンターの中で忙しそうに動き回っていました。
 「仕事で、前を通っただけなんだけどさ。そうそう、こちら○○会社の社長さんです」
 と紹介すると、
 「あ、あ、はじめまして。ここがHなんですね。感動するな~! 今度、来ます!」
 とかなんとか言っちゃって、まるで芸能人に会ったようなリアクションを見せるのでした。


 「イメージと違いました?」
 「すごくキレイな店なので、驚きました」
 「もっと汚いイメージだったの?」
 「いえ、勝手に新橋のガード下にあるような、昭和レトロな店を想像していました。でも……」
 「でも?」
 「確かに、Hでした。だって、小暮さんの本がズラ~リ並んでいましたから」


 謎が謎を呼ぶ、酒処 『H』 であります。
 HのHは、“秘密” のHなのかもしれませんね。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:30Comments(0)酔眼日記

2018年12月04日

ダチョウ倶楽部じゃあるまいし


 「押すなよ! 絶対に押すな!」
 思わず、叫んじゃいました。

 なんだか、ここのところ熱湯風呂づいています。
 先月の湯宿温泉(みなかみ町) に続いて、今月は草津温泉であります。
 しかも同じ雑誌の連載取材です。
 これは担当編集者の僕に対するいじめ、パワーハラスメントに違いありません!


 ということで、昨日は早朝より草津温泉の 「大滝乃湯」 にて、入浴シーンの撮影がありました。
 僕が入る浴槽は、名物の 「合わせ湯」 です。

 一般的に 「合わせ湯」 というと、異なる泉質の温泉に複数回入ることをいいますが、ここの 「合わせ湯」 は泉質ではなく、温度の異なる温泉のことをいいます。
 大きな浴場には、5つの浴槽があります。
 時計回りに、39度、42度、44度、45度、46度。

 僕は自他共に認める “ぬる湯” 好きです。
 ふだん41度以上の湯には入らない、“ネコ肌” なのであります。

 当然、カメラマンも知っています。
 だから僕は、迷わず39度の浴槽に入りました。
 う~ん、ちょうど良い!
 これならば多少、撮影が長引いても大丈夫です。
 リラックスしながらカメラのスタンバイを待っていると……

 「小暮さん、そっちはアングル的にダメですね。こちらの手前の浴槽でお願いします!」
 と声がかかりました。
 振り返ると、カメラマンと担当編集者が、意地悪そうな笑いを浮かべてるではありませんか!!

 手前の浴槽は、45度です。
 あの2人は結託して、僕が “ネコ肌” と知っていながら、陥れようとしているのです。
 まるで、罰ゲームのように。


 「マジかよ!? わざと熱い湯に入れさせようとしてない?」
 「いえいえ、本当なんです。レイアウトと光の加減が、こちらのほうがいいんです」

 もう、こうなりゃ、プロの心意気を見せてやるぞ!
 と、足の先を入れた途端、
 「アチ、アッチィーーーーー!!!」

 ダメだこりゃ、無理だよ。
 でも、プロとしての意地もある。

 「小暮さ~ん、いつでも、どうぞ! 準備オーケーでーす!」
 と言われたって、こっちは心の準備も体の準備もまだなのです。
 「押すなよ! 絶対に押すなよ~!!」
 と叫びつつも、自ら45度の浴槽にドボ~ン!


 「いいですね、もう少し横向いてください。はい、いただきました。今度は、少し前に移動してください」
 カメラマンの調子にのせられて、浴槽の中を動くのですが、そのたびに脳天に向かって、ジンジンとしびれるような熱さが全身を駆け上っていくのです。

 「はい、もうワンカットです。ありがとうございます。もう、いいですよ。ご苦労さまでした」

 瞬時に浴槽を飛び出し、脱兎のごとく脱衣場へと逃げ去ったのであります。


 終了後、
 「ありがとうございました。おかげさまで、いい写真が撮れました」
 と担当編集者が言うものだから、僕も言ってやりました。

 「聞いてないよーーー!」
  


Posted by 小暮 淳 at 13:41Comments(0)取材百景

2018年12月02日

金は出すが口は出さぬ


 “いい湯は料金に反比例する”

 そんなことを以前、ブログに書いた記憶があります。
 講演会などで、「料金の高い宿は、お湯もいいんですか?」 という質問を受けることが多々あるからです。
 ズバリ、宿泊料金と温泉の良し悪しは、無関係です!
 いえいえ、逆かもしれませんね。
 だって、外湯(共同湯) なんて無料なのに、あんなにも新鮮な湯が随時、かけ流されているのですから。


 では、宿へのクレームは、どうでしょう?
 料金の安い宿と高い宿、どちらが多いと思いますか?
 これまた “反比例” なんです。

 以前、同系列の2つの旅館の支配人に、それぞれ話を聞いたことがありました。
 料金の安い大衆旅館では、クレームの嵐だといいます。
 「部屋が汚れている」 「料理の量が少ない」 「サービスがなっていない」 など、挙げたらキリがないほど細かいクレームが日常茶飯とのことでした。

 これに対して、1泊10万円以上する高級旅館では、「ほとんどクレームがない」 とのことでした。
 それだけ料理もサービスも徹底しているからなのかもしれませんが、どうも理由は、それだけではないようです。
 支配人いわく、
 「金持ちは、滅多に文句を言いません」

 思わず、納得してしまいました。
 貧乏人の僕には、到底たどり着けない境地であります。
 懐があたたかいと、心まで広くなるんですね。

 ま、僕の場合、取材で行って、タダで泊めてもらっていますから文句なんて言える立場ではないんですけど。
 それでも時には、「この料理、冷めているけど、どうよ?」 「なんだ! この従業員の態度」 なーんて腹の中では憤慨することがありますもの。
 だもの “安かろう、悪かろう” は承知していても、クレームを言う客の気持ちも分かります。

 でも金持ちは、“金は出すけど、口は出さない” のであります。
 ただ、本音は分かりませんよ。
 口には出さないけれど、態度に出るかもしれません。
 “二度と来ない” という態度に。

 比べ、貧乏人は、散々文句を言っても、しっかり元を取って帰ります。
 そして、またやって来て、常連ぶったりするものです。
 それが、貧乏人の処世術なのであります。


 でもね、一度でいいから仕事ではなくて、自分のお金で高級旅館に泊まってみたいものです。
 きっと家族に、尊敬されるだろうなァ~~~~!!!
  


Posted by 小暮 淳 at 13:37Comments(0)温泉雑話