温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2024年11月30日

四万温泉が1位! なんで?


 <きっかけは、この年 (2000年) の4月に群馬県が実施した 『ぐんま温泉紀行』 だった。ペア2000組を県内19カ所の温泉旅館に優待する企画で、県内および首都圏から5万通を超える応募があり、このうち 「泊まりたい温泉」 として四万温泉がトップとなったのである。常に国内旅行の人気投票で第1位となっていた草津温泉がダントツになると予想されていただけに、誰もが結果に驚いた。>
 ( 『あなたにも教えたい四万温泉』 より)

 このとき僕は、“四万温泉の逆襲” が始まったと感じました。
 そして、この本を書きました。


 あれから約四半世紀。
 その後、着実に知名度を上げてきた四万温泉。

 コロナ禍、「かるたでは知っているけど、行ったことがなかった」 群馬県民たちが一挙に押し寄せ、知名度とともに好感度も上昇しました。
 そして今回、その証左ともいえるランキングが発表されました。


 地元紙の上毛新聞が、「お薦めの温泉」 についてアンケートを行ったところ、県内部門で2位に大差をつけて四万温泉が最多の票を集めたと、発表しました。
 以下が、上位5位までの温泉地です。

 1.四万温泉 (中之条町)
 2.草津温泉 (草津町)
 3.万座温泉 (嬬恋村)
 4.伊香保温泉 (渋川市)
 5.磯部温泉 (安中市)

 四万温泉を選んだ理由について、投票者からは、こんな声が寄せられていました。
 「温泉から眺める自然の景色が良い」 「ちょうど良い泉質」 「四万ブルーの奥四万湖がきれい」 「コンパクトな温泉街は情緒がある」……


 では、半世紀前のアンケートでは、どんな意見が多かったのでしょうか?
 <中之条町の 「ツインプラザ」 において 「外から見た四万、内から見た四万」 というテーマでシンポジウムが開かれ、私もパネリストとして出席した。この時、参加者からは 「開発せずに、このままの自然を大切にしてほしい」 「看板の設置は景観を損ねないように」 「不便が四万の良さ」 「地元の人ととのふれあいがある」 など、さまざまな意見が出された。また来場者から寄せられたアンケートで一番多かった声が、「何もない良さ」 だった。>
 ( 『あなたにも教えたい四万温泉』 より)

 いかがですか?
 大温泉地にはない、素朴な湯治場風情が残っている四万温泉が、現代人の癒やしとなっているようですね。


 著書は、こんな 「まえがき」 から始まります。
 <四万には、コンビニがありません。四万には、信号機がありません。四万には、歓楽施設がありません。でもここには、青く澄んだ川の流れと、こんこんと湧き出す豊潤な温泉、そして何百年もの間、湯とともに暮らしてきた素朴な人たちが生きています。>

 そして帯に、僕は直筆で、こう書きました。
 <何もないとは、なんて素敵なことだろう>


 まだの人は、一度、四万温泉を訪れてみてください。
 「上毛かるた」 の札の意味が、分かると思います。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:25Comments(6)温泉雑話

2024年11月29日

9→7大温泉地へ、なぜ?


 群馬県は2028年の 「温泉文化」 のユネスコ無形文化遺産登録に向け、来年1月6日~2月4日、7大温泉地をめぐってもらう企画 『ぐんま温泉街道』 を展開します。


 報道によれば、こんな内容です。
 ●期間中、県内温泉各地で有料のプレミアムイベントが開かれる。
 ●県内100カ所程度の温泉旅館や入浴施設を1回ずつ楽しめるデジタルチケットを販売する。
 ●チケット購入者が自由に乗り降りできる専用バス 「湯めぐりバス」 を万座温泉と老神温泉間で特別運行する。

 と、まあ、こんな内容です。
 詳細は、特別サイトでお調べください。


 では、“7大温泉地” とは?
 発表によれば、草津、伊香保、水上、四万、磯部、老神、万座でした。

 えっ、いつから7大温泉地になったんですか?
 というのも、以前は確か、群馬県の主要温泉地は9カ所だったはず。
 そう、あと2つは、どこへ行ってしまったの?


 みなさんは、知っていますか?
 あと2つとは、やぶ塚温泉 (太田市) と川原湯温泉 (長野原町) です。

 さみしい限りですが、落選は仕方ないのかもしれません。
 やぶ塚は、コロナ以降、大型旅館の廃業がありました。
 川原湯は、ダム建設による移転により、旅館の数が減少してしまいました。

 もはや、両温泉地とも 「大」 とは呼べません。


 ユネスコ遺産登録に向けて、群馬県の温泉地が活気を得て、にぎわうことは大変よろこばしいのですが、温泉ファンとしては複雑な思いです。
 陽の当たる温泉地と、陰になる温泉地……
 明暗が分かれてしまうことに、一抹の不安を抱いています。
  


Posted by 小暮 淳 at 10:47Comments(2)温泉雑話

2024年09月22日

法師キラリ


 一枚のCDが届きました。

 『山岳昇歌』 オーロラの詩(うた) 山田昇追悼歌


 送り主は、法師温泉 (みなかみ町) 「長寿館」 の会長・岡村興太郎さんでした。
 こんな一文が添えられていました。

 <心境の変化もちょっとあり、このたびCDをつくってみました。(中略) 群馬県沼田高校山岳部出身で、ギター弾き語りの 「いしざかびんが」 さんに歌と演奏 (ギター) と曲の作詞作曲をしていただきました。>


 最初は、なぜ、CDのタイトルが 『山岳昇歌』 なのだろうか?
 法師温泉と関係があるのだろうか?
 と思いましたが、お手紙を読むうちに少しずつ、背景が見えてきました。

 「いしざかびんが」 さんは、群馬県出身・桐生市在住の歌手・ギタリストです。
 お名前は聞いたことはありますが、CDを聴くのは初めてです。


 いしざかびんがさんはCDの歌詞カードの中で、表題作の 「山岳昇歌」 について、このように書かれています。

 <この歌は、平成元年(1989)2月 厳冬の北米マッキンリー山(エスキモーではデナリ山と呼ばれる)に逝った、不世出の登山家・山田昇氏の偉業に感動した、クラシックギタリスト 伊東福雄氏の作詞・作曲によるものであり、サブタイトルとして、オーロラの詩(うた)山田昇追悼歌とも別名がついています。また顕彰の石碑 “オーロラの碑” は、みなかみ町の秘境名湯として名高い、三国峠に近い法師温泉・長寿館の手前800m 名峰 稲包山(いなづつみやま)をながめる左側にケルンとして沼田市のデザイナー塚田修氏考案で制作された。>


 これでやっと、山田昇さんと、いしざかびんがさんと、法師温泉のつながりが分かりました。
 CDの中には、いしざかびんがさんの作詞・作曲による 『法師キラリ』 というオリジナル曲が収録されています。

 収録曲は全15曲。
 他に 『夏の思い出』 『宵待草』 『百万本のバラ』 『なごり雪』 『雪山賛歌』 など、馴染みの曲も収録されています。


 ●お問い合わせ
  法師温泉 「長寿館」 0278-66-0005 いしざかびんが 0277-51-3041



   


Posted by 小暮 淳 at 12:10Comments(0)温泉雑話

2024年09月01日

今日から 「群馬 LOVE ONSEN」


 過日、某社から 「話を伺いたい」 との連絡がありました。
 そして先日、某社に出向き、たっぷり3時間にわたる講話(?)をしてきました。

 話の内容は、すべて群馬の温泉についてです。


 すでにマスコミ等で発表されているので、ご存知の人も多いと思いますが、今日(9月1日)から 「群馬 LOVE ONSEN」 という首都圏向けのプロモーションがスタートしました(11月30日まで)。
 これは 「温泉王国」 と言われる群馬県の温泉地や温泉文化を広くアピールするもので、JR東日本高崎支社と群馬県観光物産国際協会が共同で実施するものです。

 コンセプトは3つ。
 温泉に 「浸かる」、歴史や伝承に触れて人々を 「想う」、温泉文化を 「楽しむ」。

 期間中は、東京、神奈川、千葉、埼玉などのJR線の385駅で2種類のポスターを掲示。
 リーフレットが配付されます。
 リーフレットには、県内7温泉地が紹介されています。
 (草津温泉、伊香保温泉、四万温泉、みなかみ18湯、万座温泉、磯部温泉、老神温泉)


 なぜ、このプロモーションの実施に際して、僕が呼ばれたのでしょうか?
 …………
 分かりません。
 たぶん、県内温泉地の温泉大使をしているからかな?
 あと、県内温泉地の著書があるからかもしれません。

 いずれにせよ、長年 「群馬といえば温泉」 「温泉といえば群馬」 と言い続けている僕としては、このようなプロモーションが実施されることは、大いに喜ばしいことであります。


 さあ、全国のみなさん、温泉の聖地 “湯の国ぐんま” に、いらっしゃ~い!
   


Posted by 小暮 淳 at 11:58Comments(6)温泉雑話

2024年08月19日

温泉知恵熱


 毎度、孫ネタで恐縮です。
 というのも、この夏、孫のKを温泉に連れて行ってやったら、温泉熱に火がついてしまったのです。
 (過去ブログ 「K&Gの真夏休み」 シリーズを参照)

 「今度、いつ行くの?」 「早く次の温泉に行こうよ!」 「群馬の温泉は、全部行くことに決めたんだから」
 と、彼からの催促が止まりません。
 ということで、仕方なく、子供だましに近場の日帰り温泉に連れて行くことにしました。


 「これから行く温泉も、ジイジの本に載ってる?」
 「載ってない」
 「なんで?」
 「温泉地じゃないから」
 「えっ、温泉じゃないの!?」
 「そうじゃない。温泉だけど温泉地じゃないんだよ」

 温泉地とは、宿泊施設のある温泉のことです。
 よって平成以降に誕生した日帰り温泉は、温泉施設ではあるけれど、温泉地としてはカウントしません。
 基本、僕は温泉地を取材しています。
 (稀に編集の都合により取材・掲載する場合もあります。拙著 『西上州の薬湯』 や 『ぐんまの里山てくてく歩き』 など)


 それでもKは、連れて行った日帰り温泉施設に満足してくれたようで、一丁前に湯舟の中で感想を述べていました。
 「ジイジさ、この間の温泉は、もっとヌルヌルしていたよね」
 「ああ、あそこはアルカリ性の温泉だからね」
 「アルカリ性?」
 「学校で習っているだろう? アルカリ性と酸性について」
 「うん」
 「そのアルカリ度が高いと、温泉水は片栗粉を溶かしたようにトロリとした浴感になるんだよ」

 すると、すぐさまKは、今日の温泉について訊いてきました。
 「ここの湯はさ、なめると、しょっぱいよ」
 「へぇー、いいところに気づいたね」
 「うん、おいしい!」
 と言って、またペロリ。
 「やめなさい。湯舟の中の湯は汚いから!」
 と、たしなめたものの、Kはペロペロと自分の腕をなめています。

 「なんで、しょっぱいの?」
 「塩化物泉という温泉だからだよ」
 「エンカブツセン?」
 「そう、塩分を含んだ温泉のことを、そう呼ぶんだよ」
 「へー、そうなんだ。ジイジといると勉強になるね。さすが、温泉博士!」
 とかなんとか孫におだてられ、湯上りに、ソフトクリームをおごらされることになってしまいました。


 帰りの車中にて。
 「次、どこへいく?」
 「今日は、もう行かないよ」
 「今日じゃなくて、今度は、どこの温泉に連れてってくれるのさ?」
 「どこがいいかな……、考えておくよ」
 「草津温泉は、最後でいいからね」
 「なんで?」
 「だってジイジは言っていたじゃないか! 草津のお湯は刺激が強いから肌の弱い人には向かないって!」
 「うん、言ったかもな」
 「僕はアトピーで肌が弱いからさ。草津は一番最後に取っておくんだ」

 いやはや、なんともであります。
 カエルの孫は、オタマジャクシからカエルになろうとしているのでしょうか?

 ま、将来が楽しみであります。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:40Comments(3)温泉雑話

2024年08月07日

K&Gの真夏休み ~至福の瞬間~


 まさか、こんな未来が訪れるとは、夢にも見ていませんでした。


 Kは中学2年生の男子。
 僕の長女の息子です。

 3年前までは、どこにでもいるような普通の祖父と孫の関係でした。
 年に一度、正月に親に連れられて来て、新年のあいさつをするくらいです。
 だから特別な孫との思い出もありません。

 まあ、僕が忙しかったこともあり、娘家族との交流も紋切型。
 冠婚葬祭で顔を合わせ、たまに食事を共にするくらいでした。
 だから孫の成長は見て取れても、彼の人となりや趣味、好きなことなんて、知るよしもありません。

 「じいちゃんらしいことをしてやれなくて、ゴメン」
 娘と孫に会うたびに、そう、いつも後ろめたい気持ちでいました。


 僕と孫の関係が一変したのは、3年前の冬でした。
 僕が友人とともに月一回、街頭紙芝居を始めたことでした。
 偶然にも会場は、娘一家が暮らす伊勢崎市。

 初回の1月、Kは両親に連れられて会場にやって来ました。 
 「ねえ、ジイジ、また来てもいい?」
 「おいで、今度は一人でも来れるだろう?」
 「うん、そうする」

 そんな会話が交わされて以降、彼は時々、自転車に乗って会場にやって来ました。


 ある日のこと。
 「僕のジイジは温泉ライターなのに、僕は温泉に行ったことがないんだ……」
 ポツリと言ったKのさみしそうな目に、胸の奥がキューンと痛くなりました。

 「よし、今度の夏休みに温泉へ行こう!」
 「マジ? 連れてってくれるの?」
 「ああ、KとG(ジー)の2人だけで行こう」
 「やったー!」

 ということで、僕はKとの約束を果たすため、先日、上牧温泉 (みなかみ町) へ行って来ました。


 初めて入る大きな露天風呂に、興奮するK。
 「ねえ、泳いでいい?」
 「ダメだよ、人がいるだろ」

 しばらくすると、他の浴客は湯舟から出て行きました。
 「今ならいい?」
 「……」
 僕から 「いい」 とは言えません。
 が、言葉ではなく、小さくうなずき、黙認しました。

 「うわ~、チョー気持ちいい!」
 Kは、北島康介のようなことを言っては、何度も湯にもぐります。
 「おい、そのくらいにしな。人が来るよ」
 と注意すると、
 「ジイジもやってみれば? チョー気持ちいいよ」

 チョー気持ちいいって?
 そんなことはGだって知っているさ。
 知っているけど、大人だし、立場やマナーもあるからしないだけなんだ。
 だけど、カッパのように泳ぐKは、確かに気持ちよさそうである。


 夏休みだし、今日は特別な日だから、ま、いっか!
 と、恥も外聞もなく、65歳最後の真夏の大冒険と相成りました。
 (明日、誕生日を迎えます)

 「どう? ジイジ、気持ちいい?」
 「ああ、チョー気持ちいい!」
 そう言って、2人で大笑いしました。


 洗い場にて。
 「なあ、K」
 「なに?」
 「Gの背中、洗ってくれるか?」
 「ああ、いいよ。タオル貸して」

 ジーンと目頭が熱くなりました。
 20数年前の思い出が、よみがえってきます。
 僕と息子とオヤジの3人で、温泉に行ったことがありました。。
 「ほれ、R(息子の名)、おじいちゃんの背中を洗ってやりな」
 その時、オヤジが言った言葉が忘れられません。

 「ああ、幸せだ。孫のいない人は、可愛そうだね」


 今まさに僕は、その至福の瞬間を迎えています。
 いいことも、悪いことも、無駄なことも、面倒くさいことも、長い人生にはいろんなことがあるけど、稀だけど、こうやって幸せを感じる瞬間も訪れるんですね。

 K、ありがとう。
 そして、Kを産んでくれた娘に感謝。


 オヤジ、見ているかい?
 やっと俺もオヤジの気持ちが分かる歳になったよ。

 お盆に報告に行きます。
  


Posted by 小暮 淳 at 10:22Comments(2)温泉雑話

2024年05月27日

祝!復旧 「ささの湯」 ファンの集い


 呑んだ、呑んだ、呑んだ~!
 語った、語った、語った~!

 ノンストップ12時間、飲酒マラソンを完走してきました。


 読者のみなさんは、覚えていますか?
 幡谷温泉 (群馬県利根郡片品村) の一軒宿 「ささの湯」 が、今年の初めに温泉ポンプが故障してしまい、お湯が出なくなってしまったというニュースを?
 (2024年3月1日 「【緊急】 「ささの湯」復旧支援のお願い」 参照)

 その後、全国の温泉ファンからの募金やクラウドファンディングにより資金が集められ、無事に復旧しました。


 ということで、みんなでお祝いに駆けつけました。
 県内外から 「ささの湯」 を愛する温泉ソムリエや温泉関係者など、温泉ファンの面々が22人も集まりました。
 埼玉、長野、東京、神奈川、遠くは大阪からも参加してくれました。

 みなさんコテコテの温泉マニアたちで、話の内容もコアで、ただただ感心。
 初対面の人も多く、それぞれの人が、それぞれのジャンルに卓越していて、温泉ワールドのスケールの大きさを知りました。


 昼過ぎに到着し、まずは、ひと風呂。
 泉温約43度、毎分約260リットルという恵まれた湯が、ドバドバとかけ流されています。
 浴槽内の温度は、もう少し低いため、ゆっくりと長い時間入っていられるのがいいですね。

 「再雇用でなくて、再就職ですよね(笑)」
 「昼飯を腹十分も食べてしまいました(笑)」
 先客たちは、どうも僕のブログの読者のようで、数日前のブログネタで、笑いを誘ってくれました。


 一夜明けて、朝風呂に入りに行くと、奇妙な行動をとる先客がいます。
 しきりにスマホを浴槽奥の湯口 (湯の注ぎ口) に向けている若い男性です。

 「湯口スト」 の小松歩君です。
 彼は昨年、テレビの 『マツコの知らない世界』 にも出演した湯口のスペシャリストです。

 僕も長年、温泉には携わっていますが、湯の鮮度や量は気になっても、湯口自体に興味をいだいたことはありません。
 何が、どう、違うんでしょうか?


 「種類とか、パターンってあるの?」
 「はい、僕は大きく4つに分類しています」
 ①ドバドバ型 ②析出物型 ③オブジェ型 ④複合型
 とのことです。

 ①は、湯量が豊富で豪快に注ぎ込まれているタイプ。
 ②は、カルシウムやナトリウムなどの成分が湯口のまわりに付着して、鍾乳石のように変形したタイプ。
 ③は、ライオンなどの彫刻の口から湯が注がれているタイプ。
 ④は、1~3の複合タイプ。

 と、教えてもらいました。
 ん~、確かに言われてみれば、いろいろあり、興味深い存在ではあります。
 今後は、彼の言葉を思い出しながら温泉を楽しみたいと思います。


 とにもかくにも、とりあえず、復旧して良かった!よかった!
 女将さん、これからも頑張って、湯を守り続けてくださいね。

 全国には、こんなにもファンがいるんですよ。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:40Comments(5)温泉雑話

2024年03月06日

難読温泉地名


 あれは昨年聴講した、さる大学教授の講演会でのこと。
 テーマは、温泉でした。

 話が群馬の温泉に触れた時でした。
 教授は、鹿沢温泉のことを 「しかざわ」 と発音しました。
 聴講者のほとんどが群馬県民ですから、怪訝な顔をしました。

 正しくは 「かざわ」。
 群馬の温泉ファンなら難なく読める温泉地名なのに、読み間違えたことが不思議でした。
 「なんだよ、行ったこと、ねーのかよ」
 そんな声が聞こえてきました。

 この教授は、県外在住者だったのです。


 確かに、行ったことがなければ 「鹿沢」 を 「しかざわ」 と読んでしまっても仕方ありませんね。
 温泉地に限らず、地名には、その土地独特の読み方というのがあります。
 ということで、群馬県内の難読温泉地名をいくつか挙げてみました。

 みなさんは、正しく読めますか?

 ①湯檜曽 (みなかみ町) ②奈女沢 (みなかみ町) ➂真沢 (みなかみ町) ④湯宿 (みなかみ町) ➄沢渡 (中之条町) ⑥応徳 (中之条町) ⑦半出来 (嬬恋村) ⑧梨木 (桐生市) ⑨猪ノ田 (藤岡市)  ➉向屋 (上野村)
 


 ところで昨晩放送の 『ぐんま!トリビア図鑑』 は、ご覧になりましたか?
 前出の難読温泉地名が舞台です。
 見逃した人は、再放送をご覧ください。


         『ぐんま!トリビア図鑑』
         温泉王国ぐんま Vol.6
          「山の湯 鹿沢温泉」

 ●放送局  群馬テレビ (地デジ3ch)
 ●再放送  3月9日(土) 10:30~ 11日(月) 12:30~



 <正解>
 ①ゆびそ ②なめざわ ➂さなざわ ④ゆじゅく ➄さわたり ⑥おうどく ⑦はんでき ⑧なしぎ ⑨いのだ ➉こうや
  


Posted by 小暮 淳 at 11:31Comments(2)温泉雑話

2023年11月17日

先輩の背中


 「飯出先生!」
 「先生はやめてください。小暮先生!(笑)」

 それが僕と飯出さんとの出会いでした。
 緊張していたことを覚えています。
 だって、あこがれの大先輩と、こうやって酒を酌み交わしながら話ができるなんて、夢のようなひと時でした。


 温泉紀行ライター、飯出敏夫さん。
 温泉好きなら誰もが、その名を知っていると思います。

 僕も駆け出しのライターの頃から、数々の飯出さんの著作を読んで、勉強させていただきました。
 近年では70歳の時に日本百名山を完登し、『温泉百名山』(集英社) を出版されました。


 僕がお会いしたのは、『続・温泉百名山』 の取材中でした。
 群馬の山行中に、温泉宿で合流しました。

 古希を過ぎているというのに、その強靭な体力に感服しました。
 大病を患ったとは思えぬ精神力にも脱帽です。
 何よりも、その酒豪ぶりは惚れ惚れとします。

 山から下りて来て、宴会に加わり、翌朝には、また次の山へと向かって行きました。
 まさに、フィールドワークを骨子とするライターの鑑であります。


 そんな飯出さんの不定期連載が、上毛新聞で始まりました。
 「オピニオン21」 です。
 このコーナーは、群馬県にゆかりの著名人や各ジャンルで活躍する県民が持ち回りで寄稿するコラム欄です。

 実は飯出さんは、群馬県上野村の出身なんですね。
 それだけで親近感がわきます。


 次回の掲載日は、いつだろうか?

 これからも偉大なる先輩の背中を追い続けたいと思います。
    


Posted by 小暮 淳 at 10:18Comments(0)温泉雑話

2023年10月27日

群馬県民は草津を 「くさつ」 とは言わない


 先日のフジテレビ 『ホンマでっか!?TV』 に出演以降、SNS上で僕の発言について物議をかもしていることを知りました。
 番組の中で、僕が草津温泉のことを 「くさつ」 ではなく、「くさづ」 と発音していたことについてのようです。


 ハハハハ(笑) 
 書き込んだ人は、すべて群馬県民ではありませんね!
 根っからの県民は、「くさつ」 なんて言わない。
 「くさづ」 と濁るんですよ!

 確かに、草津温泉の正しい表記は 「くさつ」 です。
 でも、それは標準語のようなもの。
 江戸っ子が 「ひ」 と 「し」 を区別できないように、ネイティブ県民は 「つ」 なんて言えません。
 生まれてからこのかた、ずーーーっと、草津は 「くさづ」 なのであります。


 では、どちらが正しいのか?

 草津の語源には諸説あるようですが、あの独特の硫黄成分のにおいから 「臭い水」 を表す 「くさみず」 だといわれています。
 「くさみず」 → 「くそうづ」 → 「くさづ」 → 「くさつ」

 ほらね、最終表記は 「くさつ」 でも、言葉の由来でみれば 「づ」 と濁るわけです。
 しかも “水” を意味するわけですから 「づ」 ではなく、「ず」 が正しいことになります。


 結論、どちらも正しいと思います。
 現代表記では、「くさつ」 と発音します。
 (パソコンでも 「くさつ」 で変換)

 でもネイティブの県民語では、「くさづ」 が一般的ということになります。


 群馬県民御用達の 『上毛かるた』 の 「く」 の札には、なんと書かれているか、ご存知ですか?

 「草津 (くさづ) よいとこ 薬 (くすり) の温泉 (いでゆ)」 です。

 ほらね、ルビは、しっかりと 「くさづ」 とふられています。


 かつて、「た」 の読み札が、地元民の要望により変更されたことがありました。

 「滝は吹割 片品渓谷」

 改定前のルビは 「ふきわり」 でしたが、「地元では “ふきわり” とは言わない」 との意見が多く寄せられ、ネイティブ語の 「ふきわれ」 と書き換えられました。


 ということで、いずれ草津温泉も 「くさづ」 が主流になる日が来るかもしれませんね。
  


Posted by 小暮 淳 at 10:10Comments(7)温泉雑話

2023年04月01日

四月馬鹿がやって来た!


 今年も、粋な絵ハガキが届きました。

 “ なぜ今までなかったのか!!
  <四万ブルー色>絵の具
  待望の新色 新発売 ”

 そんなキャッチーなコピーが躍っています。
 そして鮮やかなコバルトブルー色した奥四万湖をバックに、絵の具のチューブの写真がメインに印刷されています。


 一見、ふつうのDMハガキのようで、「へぇ~、そんな色の絵の具が発売されたんだ」 と受け流してしまいそうですが、次のコピーで、まんまとだまされたことに気づきます。

 “ 四万温泉にちなんで 1本四万円で販売中!”


 これ、毎年恒例の 「エイプリルフール in かしわや」 という、お遊びハガキなのであります。
 そして差出人は、四万温泉 (中之条町) 「柏屋旅館」 の主人、柏原益夫さんであります。

 柏原さんとは、長い付き合いになります。
 2000年に四万温泉で開催されたイベントからですから、かれこれ四半世紀。。
 四万温泉協会長も歴任し、2011年に出版した拙著 『あなたにも教えたい四万温泉』(上毛新聞社) の制作では、多大なる協力をいただきました。

 いわば僕にとっては、四万温泉を語るには欠かせない人物であります。


 ちなみに 「四万ブルー」 とは、四万温泉の最奥にある奥四万湖の湖水の神秘的な色を表現した、四万オリジナルの造語です。
 初めて見る人は、その吸い込まれそうな青より青い、独特な色合いに息を呑むことでしょう。

 女優の吉永小百合さんが奥四万湖でカヌーを漕ぐ、JR東日本 「大人の休日倶楽部」 のテレビCMでも有名になりました。


 それにしても、なぜ、こんなにも “美しい青” なのでしょうか?

 専門家が奥四万湖を調査したところ、湖水には 「青く見える物質は含まれていない」 との分析結果でした。
 では、なぜ?
 一説には、温泉水が関係しているのではないか?と言われていますが、いまだに謎のようです。


 今日は、エイプリルフールです。
 どうせ嘘をつくなら、だまされても楽しくなる、柏屋さんのようなキラリとセンスが光る嘘をつきましょうね!
  


Posted by 小暮 淳 at 12:50Comments(0)温泉雑話

2023年03月05日

ガラメキ温泉に生まれて


 「私は4代目でした」
 そう、講師は語り始めました。

 昨日、「榛東村耳飾り館」 (群馬県北群馬郡) で開催された 「しんとう・ふるさと歴史講座」 を受講してきました。
 講師の中村智明さんは昭和10(1935)年、ガラメキ温泉に3軒あった旅館の一軒 「富士見館」 に生まれました。
 今は無き、消えた温泉です。


 “消えた温泉” とは、かつて旅館があった温泉地のこと。
 群馬県内にはいくつかありますが、そのほとんどは源泉が涸渇してしまったか、ダム建設に伴い湖底に水没して姿を消したものです。

 ところが榛名山中にあったガラメキ温泉は、事情が違いました。
 敗戦の翌年、昭和21(1946)年4月。
 突然、役場から “72時間以内の立ち退き” を言い渡されました。
 同じ榛名山中にある旧日本陸軍の相馬ヶ原演習場を米軍が接収し、射撃訓練に土地を使用するという理由で、強制撤去を命じられたのでした。
 ※(詳しくは、当ブログの2013年9月7日 「消えたガラメキ温泉」 参照)


 10歳まで暮らしていた中村さんは、まさにガラメキ温泉の “生き証人” であります。
 すでに親世代は他界しているため、当時のガラメキ温泉を知るのは中村さんと、中村さんの弟妹だけとのこと。
 こんな貴重な話を、聞き逃すわけにはいきません。

 「何が何でも聴講したい!」
 その願いを叶えてくれたのは、3人の青年 (年齢不詳) たちでした。


 実は、この講座、一般には非公開でした。
 地元に回覧板で告知されただけです。
 では、なぜ僕が参加できたのでしょうか?

 まず、回覧板を見た榛東村在住のA君が、村内のB君に話をしました。
 するとB君は、村外に住む温泉マニアのC君に連絡しました。
 C君は、たびたび僕の講演会などにも参加している人です。
 そして彼が、僕にメールをくれたという次第です。


 会場では、3人の青年(?)たちと会うことができました。
 C君以外は、初対面です。

 「貴重な情報をありがとう!」
 温泉ファンの絆に、ただただ感謝であります。


 そして講師の中村さん、これからも長生きをして、戦争と温泉の歴史を語り続けてください。
 ガラメキ温泉は、永久に不滅です!

 源泉は、こんこんと湧き続けているのですから……
   


Posted by 小暮 淳 at 12:29Comments(6)温泉雑話

2023年03月03日

湯守失格


 「小暮さんは、どう思われますか?」
 知人との雑談の中で、不意に意見を求められました。

 福岡県の温泉旅館で、基準値の最大3,700倍のレジオネラ属菌が検出されたニュースについてです。
 運営会社社長の記者会見を見れば、ただただ、あきれるばかり。
 起こるべくして起きた、まったく客のことを考えていない怠慢経営であります。

 「愚の骨頂! 湯守(ゆもり)失格」
 これが、僕が知人に返した感想でした。


 まず、週に1回以上必要な浴槽の湯の取り換え清掃を怠っていたこと。
 それも驚くべきことに、盆と正月の年2回だけだっというから、開いた口が塞がりません。

 ちなみに “週1回以上” というのは、循環ろ過式の浴槽の場合の施行条例です。
 これが完全放流式 (かけ流し) となると、毎日の換水清掃が義務付けられています。
 僕が知る限り、源泉かけ流しの宿では、必ず毎日清掃時間があり、その間は客の入浴を断っています。

 これが、正しい湯守のいる宿なのです。


 もう一つ、記者会見で気になることがありました。
 社長は、「塩素のにおいが嫌いだった」 と言います。
 これ、過去のレジオネラ菌による死亡事故の際にも、たびたび経営者から語られた言葉です。

 「客から塩素くさいといわれるので……」

 という理由から定められた塩素量の消毒を怠ったといいます。
 “嫌い” は結構です。
 その人の主観ですからね。

 僕も嫌いです!

 でもね、循環式である限り、仕方がないことなのです。
 世の中が便利になれば、便利になるほど、その代償も大きいのです。
 それが面倒くさいというなら、浴槽を小さくして、完全放流式にしなさい!

 そうすれば、換水清掃も楽だし、塩素消毒も必要ありません。
 ※(都道府県によっては、かけ流しでも塩素消毒を義務付けている自治体があります)


 とかなんとか知人には、うんちくを述べながら説明しましたが、今回の一件は、ただただ残念です。
 僕は知らなかったのですが、昭和天皇も宿泊したことのある歴史ある老舗旅館なんですってね。
 従業員は気づいていたようですから、老舗にありがちなワンマン経営が起こした不祥事といえそうです。

 即刻、社長更迭!
 経営陣を総入れ替えして、その歴史と伝統を引き継いでいってほしいものです。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:42Comments(2)温泉雑話

2023年01月18日

「群馬といえば温泉」 から 「温泉といえば群馬」 へ


 <「群馬といえば温泉」 から 「温泉といえば群馬」 へ>

 これは来週、みなかみ町で開催される某企業主催による講演会の演題です。
 近年、このテーマで講話をすることが増えました。

 では、2つの言葉は、どこがどう違うのでしょうか?


 僕は2009年に出版した 『ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) をはじめとして、今日までに10冊の温泉関連本を世に出してきました。
 しかも、すべて群馬県の温泉です。

 「たった1つの県で、こんなにも温泉の本が出せるんだぞ!」
 「それだけ群馬は、すごい県なんだぞ!」
 という郷土愛から書きました。

 だから最初は、県の観光PRへの不満から始まった実力行使だったのです。
 「あれもある」 「これもある」
 という割には、結局、他県に秀でたモノなんてねーじゃねーか!

 「温泉もあります」
 と言われた時に、カチンと来ました。
 「温泉も」 だ?

 何を言ってるんだ!
 「温泉しかないじゃないか!」
 でもね、“しか” というのは最強の誉め言葉なんだよ!

 すると、こう言い返されました。
 「“しか” ということはないでしょう。群馬には温泉以外にも、いいところがたくさんあれます」
 だと!

 売り言葉に、買い言葉。
 これにより僕と県の全面戦争が始まったのであります。
 ※(勝手に僕がケンカを仕掛けて、勝手にムキになっただけですけど)


 あれから14年が過ぎました。
 ことあるごとに僕は、「群馬といえば温泉」 と言い続けて来ました。
 ところが……
 ここ数年、群馬の温泉に対する流れが変わって来たのです。

 それは、県外者からの目です。


 これまでも県外の企業や自治体から講演依頼を受けることはありました。
 そんな時は、当たり障りのない温泉の基礎話をしてきました。
 でも、ここ数年は変わりました。

 「ぜひ、群馬の温泉の話を聞かせてください」
 と、テーマの指定まで受けるようになったのです。
 「いいんですか? マニアックな話になりますよ?」
 と言えば、
 「だって、温泉といえば群馬じゃないですか!」
 と返されました。

 やったー!
 ついに、この時が来たと思いました。

 「群馬といえば温泉」 は、内から外へのメッセージ。
 でも 「温泉といえば群馬」 は、外から内へのエールであります。

 これは僕にとって、活動への励みになりました。
 いわば、このために長年、取材活動を続けてきたのですからね。

 努力が報われた瞬間でもありました。


 群馬県民のみなさん!
 あなた方が思っている以上に、他県の人たちは群馬が日本を代表する温泉県だと知っています。
 もっと、自信を持ってください!
 胸を張って、大きな声で言ってください。

 「温泉といえば群馬」 と!
  


Posted by 小暮 淳 at 11:14Comments(2)温泉雑話

2022年09月26日

温泉はラーメンである


 さるイベント会場でのこと。
 客席で座っていると、いきなり司会者が、こんなことを言い出しました。

 「今日、この会場に、温泉ライターの小暮淳さんがお見えになっています」

 驚いたのなんのって!
 受付で、正体がバレてしまったようです。
 司会者に半強制的に促され、その場で起立! 礼! 着席!

 まったくもって恥ずかしい体験でした。


 そんなことがあったからでしょうか?
 イベント終了後、会場を出ようとした時、ひとりの初老の婦人が近寄って来ました。
 そして、僕に、こう言ったのです。

 「一番いい温泉は、どこですか?」

 自己紹介もなく、あいさつもなく、唐突にであります。
 「失礼な!」
 と思った気持ちをグッと、こらえました。


 実は、講演会やセミナーなどの質疑応答の場で、一番多い質問なんです。
 でありながら、最大の難問でもあります。
 いつも僕は、質問者が納得するような回答ができずに、話をごまかしてしまいます。

 でも、考えてみてください。
 “一番いい” って、主観ですよね?
 定義も基準もありません。
 「いい」 と思えば、いい温泉だし、「いや」 と思えば、それは悪い温泉、または嫌いな温泉ということになります。

 だから僕は、この質問をされると、必ず、話を 「ラーメン」 に例えます。
 「どこのラーメンが一番、おいしいですか?」
 と……
 そう訊かれたら、どう答えますか?

 ただ単に、“おいしい” だけでは、情報が足りないですよね。
 しょうゆ味なのか? みそ味なのか? 塩味なのか? とんこつ味なのか……
 麺も種類があります。
 細麺なのか? 中太麺なのか? 太麺なのか? ちぢれ麵なのか……
 また、こってり系なのか? あっさり系なのか?

 さらに細かいことをいえば、この “ラーメン” という、くくりの中には、インスタントの袋ラーメンやカップラーメンは、含まれているのだろうか?
 そう考えると、玉石混交すぎて、回答に窮するのであります。


 ということで僕は、ラーメンのたとえ話をしたあとに、
 「もうすこし、温泉の種類かエリアを絞り込んでいただけますか?」
 と、お答えしました。

 すると初老の婦人は、
 「あの……、もう結構です」
 と、そそくさに僕の前から姿を消してしまいました。


 ちょっと大人げが、なかったですかね?
 でも、無礼だったのは、その婦人の方ですよ。
 結局、最後まで名前も身分も告げませんでしたもの(笑)。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:24Comments(0)温泉雑話

2022年08月06日

強そうな温泉


 さて、問題です。
 群馬県内で一番強い温泉は、どこでしょうか?


 今週火曜日、群馬テレビで放送された 『ぐんま!トリビア図鑑』 は、ご覧いただけたでしょうか?
 「温泉王国ぐんま~泉質が変わった温泉~」 と題して、僕が旧倉渕村 (高崎市) の2つの温泉地からリポートしました。

 放送後、知人から、こんなメールが届きました。
 <ガンテツセン、名前からして強そうだ。海軍カレーと合わせて最強!>

 思わず、笑ってしまいました。
 言われてみれば、本当だ。
 とっても強そうです。


 番組では、倉渕川浦温泉を紹介。
 10年に1度の成分分析検査をしたところ泉質名が、以前の 「塩化物泉」 から 「含鉄泉」 に変化していたというミステリー。
 しかも、県内では唯一入浴できる含鉄泉ということで、話題になっています。

 また一軒宿の 「はまゆう山荘」 の名物料理は、海軍カレー!
 なぜ、横須賀発祥のカレーライスが名物なのかは、テレビをご覧ください。

 「含鉄泉」 と 「海軍カレー」
 その言葉の響きは、確かに強そうです。
 ということで、冒頭の問題の答えは、倉渕川浦温泉でした。


 同じ発想で、全国の温泉地名を思い浮かべてみると、強そうな名前がありました。
 強羅(ごうら)温泉、強首(こわくび)温泉、地鉈(じなた)温泉、龍神温泉、熊ノ湯温泉なんて、強そうじゃありませんか?

 逆に弱そうな温泉は……
 はい、半出来温泉 (群馬) くらいしか思い浮かびませんでした。

 ほかにあったら、教えてください。
 


            ぐんま!トリビア図鑑
       「温泉王国ぐんま ~泉質が変わった温泉~」

 ●放送局  群馬テレビ (地デジ3ch)
 ●再放送  8月8日(月) 12:30~12:45
  


Posted by 小暮 淳 at 11:39Comments(7)温泉雑話

2022年07月15日

脱帽神話


 伊香保温泉へ行く野暮用があり、「どうせ来たのだから」 と、帰りに露天風呂に立ち寄り、一浴して来ました。
 たびたび取材や撮影で訪れている浴場ではありますが、プライベートで入るのは初めてのことでした。
  

 平日の昼間ということもあり、割と空いていました。
 男風呂の浴客は僕のほか3人。
 内訳は、30代とおぼしき男性と40代だろうと思われる男性。
 2人は日本人です。

 もう一人、西洋人の男性がいました。
 歳の頃は……
 西洋人の年齢は読みにくいのですが、若者ではありません。
 たぶん、40代ではないでしょうか。


 当然ですが、外人コンプレックスの僕は、西洋人の股間に目がいきます。

 大きい!
 我々日本人の倍はあります。

 でも……

 やっぱり!
 彼は、しっかりと “帽子” をかぶっていたのです。
 この暑い夏の最中、しかも湯舟の中でも、帽子を脱ぎません。

 一方、3人の日本人はサイズこそ劣るものの、ちゃんとマナー (?) を守り、湯舟の中では帽子を脱いでいます。

 この違いって、何なんでしょうか?
 東洋と西洋の文化の違いなんでしょうか?


 僕は職業柄、たぶん今までに何千回と温泉地を訪ねています。
 ということは、何万本という男性の股間を見て来たことになります。
 その僕が、長年、疑問に感じていることが、この “帽子” の着脱率であります。

 日本人は、圧倒的に 「脱帽率」 が高いのです。
 9割がた、帽子を脱いだ状態で入浴しています。

 ところが外国人 (西洋人しか区別がつきませんが) は、その真逆です。
 圧倒的に 「着帽率」 が高いのです。
 帽子を脱いで入浴している外国人にお会いしたことは、過去に数回しかありません。

 思えば、かのジョン・レノンも着帽派でした。
 古くは、ダビデ像も着帽です。

 なのに日本人ときたら浮世絵にしても、脱帽で描かれています。


 これは、どういうことなのでしょうか?
 いったい、いつから日本に “脱帽神話” が根づいたのでしょうか?

 思い返しても、学校や家庭で、「大人になったら帽子は脱ぎましょうね」 なんていう教育を受けた覚えはありません。
 ただ、なんとなく暗黙のうちに日本人は思春期になると、「恥ずかしい」 という感情が芽生えてくるようであります。。


 「恥ずかしい」 と思う日本人。
 「恥ずかしい」 と思わない西洋人。

 では逆に、西洋人にとっては “脱帽” のほうが、恥ずかしいのでしょうか?
 ぜひ、訊いてみたいものです。


 黄金色の湯に身を沈めながら、とりとめもなく、そんなことを考えていました。
 もちろん、湯は絶品でした。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:07Comments(2)温泉雑話

2022年03月05日

花袋の愛した群馬の温泉


 もう10年以上前ですが、館林市文化会館で開催された、館林市教育委員会主催による講演会の講師を務めたことがありました。
 演題は 『花袋の愛した群馬の温泉』

 その時の光景が、よみがえってきました。


 今月に入って、いきなり、このブログの検索キーワードのトップに浮上した言葉があります。
 「西長岡温泉」 です。
 たぶん、聞きなれない温泉名だと思います。
 それもそのはず、昭和30年代に消えた幻の温泉なのです。

 なぜ、今になって、突然、検索されたのでしょうか?


 僕には心当たりがあります。
 上毛新聞に連載されていたシリーズです。
 『生誕150年 花袋の故郷をたどる』
 この最終回 (3月1日掲載) で、「紀行文に今はなき秘湯」 と題して、西長岡温泉に触れています。

 《誇る文豪 田山花袋》

 「上毛かるた」 でも知られる文豪・田山花袋は、『蒲団』 や 『田舎教師』 などの作品で知られる自然主義文学者です。
 花袋の出身である館林市には記念文学館もあります。

 ただ、あまり知られていないのが、元祖 “温泉ライター” としての、もう一つの顔。
 全国の温泉地を訪ね歩いた 『温泉めぐり』(岩波文庫) をはじめ、幾多の紀行文を世に残しています。


 新聞記事では、『温泉めぐり』 に登場する 「西長岡の湯」 に触れています。

 <藪塚本町誌によると、西長岡温泉は現在の太田市西長岡町にあり、明治期から唯一の温泉宿 「長生館」 が営業した。(中略) 1913年の東武鉄道薮塚駅開設を契機に栄えた。花袋もこの頃に訪れている。しかし57年に同館は火災で焼失し、記述は途絶える。>


 僕も講演では、花袋が愛した幻の温泉について話をしました。
 花袋は、著書の中で、こう記しています。

 <その西長岡の温泉に初めて私の出かけて行ったのは、そのあくる年の二月のまだ寒い頃であった。(中略) 藪塚よりも深く丘陵の中にかくれたようになっていて、一歩一歩入って行く心持が好かった。>

 花袋は、この温泉を大変気に入ったようで、のちに西長岡温泉を舞台にした小説 『野の道』 を書いています。


 残念ながら当時僕は、幻の温泉跡にたどり着くことができませんでした。
 しかし、新聞記事には、こう記されています。

 <今も残るため池や稲荷を目印に、古い住宅が並ぶ細い道を進んだ。空き地にぶつかり、奥には雑木林と積み上がる石垣が見えた。焼失後を知る近くの男性(65)によると、宿泊棟として利用していた建物の跡だという。>

 ぜひ、今度、訪ねてみたいものです。


 ということで、新聞記事を読んだ人が、「西長岡温泉」 でネット検索をした結果、このブログの過去記事にたどり着いたようであります。
 少しでもお役に立ちましたでしょうか?
   


Posted by 小暮 淳 at 10:44Comments(6)温泉雑話

2021年11月29日

2番じゃダメなんです!


 「くやしいです!」
 思わず、ザブングルのギャグが口を突いて出てしまいました。

 先日発表された “温泉イメージランキング” です。


 リクルート (東京都) が発行する 「じゃらん」 が、インターネットで全国の20~50代計1,005人からアンケートを行い、「温泉と聞いてイメージする都道府県ランキング」 を発表しました。
 その結果、1位は大分県、2位は群馬県、3位は北海道でした。

 ぬぁぬぁぬぁんですとーーーーーーー!!!!!

 怒り心頭に発し、お笑い芸人・ザブングル加藤の顔になってしまいました。

 ダメなんです!
 2番じゃ、絶対にダメなんです!


 先日、読売新聞の取材に対して僕は、こうコメントしています。
 < 「 『群馬と言えば?』 と問われると、温泉と返す人は多い。逆に、『温泉と言えば?』 と問われて群馬と即答する人はあまりいない。>
 (2021年11月8日 読売新聞群馬版 「クローズアップ」 より)

 コメント通りの結果となってしまいました。
 「群馬と言えば温泉」 と答えるのは当たり前。
 その逆こそ、真なり!
 「温泉と言えば群馬」 と答えてこそ、温泉界の “絶対王者” になれるのです。

 たぶん、僕の力不足なんでしょうね。
 大いに反省しています。


 「じゃらん」 によれば、群馬について 「草津温泉が有名だから」 「湯畑を思い出す」 との草津温泉に関するコメントが多かったといいます。
 ほーらね、草津に “おんぶにだっこ” されているからダメなんです!

 チームですよ、チーム!
 「湯の国ぐんま」 が一丸となって闘わなければ、1位の座は永遠にありませんぞ!

 さあ、立ち上がれ!
 百九十万の民よ!

 そして、温泉大国として、絶対王者になるのだ!

 断じて、2番じゃダメなんです!
   


Posted by 小暮 淳 at 09:33Comments(0)温泉雑話

2021年11月20日

太宰と群馬の温泉


 『わらう!太宰治』

 そのタイトルに、惹かれた。

 太宰治=苦悩する作家、というイメージの真逆のコピー。
 思わず、受付で 「どなたのコピーですか?」 と訊いてしまいました。
 当然ですが、「学芸員です」 との回答。

 つくづく、ネーミングは大切だと思いました。


 現在、群馬県立土屋文明記念文学館 (高崎市) で開催中の第113回企画展 『わらう!太宰治』 に行って来ました。

 僕にとっての太宰との出合いは、ご多分にもれず、まずは教科書の 『走れメロス』 でした。
 そして、思春期に読んだ 『人間失格』。
 それと 『津軽』 『斜陽』 『女生徒』 くらいでしょうか……

 しかし展示会では、そういった代表作ではなく、数ある太宰の作品の中でも 「わらい」 に注目。
 ユーモアや機知に富む秀作群に光を当てて、太宰文学の懐の深さを紹介しています。


 大人になって僕は、思わぬところで太宰文学と再会しました。
 それは、温泉です。

 太宰は、2度、群馬の谷川温泉 (みなかみ町) に訪れています。
 1度目は、昭和11(1936)年8月、薬物中毒と肺病の治癒のために単身で滞在しています。
 2度目は、同12年3月、妻の小山初代と2人で訪れています。
 初代と谷川山麓で心中を図ろうとしますが、未遂に終わり、その後2人は離婚します。

 この2回の滞在で宿泊した宿は、川久保旅館でした。
 (現在の 「旅館たにがわ」 の駐車場が跡地)
 谷川温泉では、『創生記』 を執筆しています。
 また後に 『姥捨(うばすて)』 の舞台としても描かれました。


 太宰は、昭和15(1940)年4月、四万温泉 (中之条町) にも訪れています。
 この時は、太宰が師と仰ぐ井伏鱒二や友人たち数名と滞在しています。
 のちに発表された 『風の便り』 は、四万温泉がモデルとされています。

 この時、一行が滞在したのは 「四萬館」 でした。


 2つの温泉地での太宰にまつわるエピソードは、拙著 『みなかみ18湯 【下】』 と 『あなたにも教えたい四万温泉』 に記載されていますので、興味のある方は、ぜひ、一読されたし!

 企画展では、「群馬と太宰」 と題し、2つの温泉地での貴重な写真や資料が展示されています。



    企画展 『わらう!太宰治』

 ●会期  開催中~2021年12月19日(日)
 ●開館  9:30~17:00
 ●休館  火曜日
 ●料金  一般 500円 大学・高校生 250円
 ●問合  群馬県立土屋文明記念文学館 TEL.027-373-7721
  


Posted by 小暮 淳 at 11:18Comments(0)温泉雑話