温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2015年06月29日

そして父だった


 今日は、仕事も介護もない、完全なる “オフ日” でした。

 こんな日は、目覚まし時計をセットせず、ただひたすらに眠ることにしています。
 目覚めたのは、午前10時。
 久しぶりに、よく眠りました。

 階下のリビングに下りていくと、息子がひとりでテレビを観ていました。
 彼は、今年の春から会社勤めを始めた社会人1年生。
 僕が反面教師になったようで、スーツに身を包む営業マンの職を選びました。

 「おはよう」
 「おはよう」
 「今日は休みなのか?」
 「ああ」

 僕には3人の子どもがいます。
 長女と次女は、100%僕のDNAを受け継いでいます。
 顔や外見も似ていますが、考え方や趣味嗜好も似ていて、性格も明るくて社交性があります。

 でも息子は、その真逆。
 すべて家内似です。
 真面目で、寡黙で、何をするにも慎重。
 親への反抗期がなかったのも、息子だけです。

 だからか、僕と息子は、ほとんど会話がありません。
 それで長年、過ごしてきてしまいました。


 「昼、いるのか?」
 「ああ」

 いつもなら、適当に僕がスパゲッティーや焼きそばを2人分作って食べるか、もしくは別行動をとるのですが・・・
 今日は、違いました。
 「昼メシ、どうする?」と訊くと、
 「外食してもいいし」

 「外食?」
 「ああ、忙しくて “父の日” してなかったし」
 「父の日?」
 「昼飯、おごるよ」

 もうダメです。
 なんだか、全身がかゆくなってきましよ。
 だって、想像ができませんって。
 僕と息子が、レストランで、向かい合って食事をしている姿なんて!

 「ま、それでもいいさ」
 とだけ告げて、僕は自分の部屋にこもってしまいました。


 そして、昼過ぎ。
 「昼、どうするんだ?」
 息子の気が変わっていないかと、半信半疑で問う僕。
 「なに食べたいの?」
 と息子に言われて、すぐに答えられる親なんていませんって。

 「なんでもいいよ」
 「なんでもいいじゃ、分からないよ」
 「だったら、ラーメン」
 「どこ?」
 「どこって、お前のほうが知っているだろう。おいしいラーメン屋は」
 「Gラーメンでいいかな?」

 息子の車の助手席に乗って、向かったGラーメン。
 もう、それだけで、僕は胸がいっぱいになってしまいました。
 だってGラーメンは、彼が小さい頃、家族で良く食べに行ったラーメン屋だからです。
 親子で行くなんて、10年以上ぶりです。

 寡黙だと思っていても、それは彼の内の顔なんですね。
 営業マンとして働き出した彼は、会社の様子や仕事の大変さを事細かに話してくれました。
 考えてみたら今まで、こうやって2人だけで話す場を持たなかっただけなんですね。

 昔、家族で食べたラーメンの味は、今も変わっていませんでした。
 ただ、目の前にいる息子だけは、あの頃の泣き虫の息子ではありませんでした。

 「ごちそうさま。ありがとう。おいしかったよ」


 日々、両親の介護に明け暮れている僕には、常に “子ども” としての自覚はありましたが、今日は改めて “父親” なんだと認識しました。

 30年後、僕ら親子は、どうなっているのでしょうか?
 やっぱり、僕もオヤジみたいにボケてしまって、彼を困らせているのでしょうか?
    


Posted by 小暮 淳 at 22:25Comments(4)つれづれ

2015年06月28日

ロング・グッドバイ


 オヤジの認知症が、加速を増して進んでいます。

 以前は5分もった記憶も、3分となり、今では1分ともちません。
 「なんだっけ、もう1回言っておくれ」
 そのつど、耳の遠いオヤジに向かって、大声を張り上げなくてはなりません。

 1回や2回ならば、我慢ができます。
 でも、それがエンドレスに続くのです。
 こちらのほうが、ノイローゼになりそうです。

 だから最近は、「なんでもありません。もういいから部屋に行ってください!」 と、かなり冷たくあしらってしまうこともたびたび。
 しょんぼりしながら部屋に向かうオヤジの後姿を見るたびに、「申し訳ない。言い過ぎた。次からは、もっとやさしく接してやろう」と、その時だけは思うのですが・・・
 でも、こちらも生身の人間です。
 神様や仏様にはなれません。

 ついつい、突っぱねてしまいます。


 以前、オヤジがアニキのことは分かっても、僕の存在を忘れてしまったことを書いたことがありましたが、今日は2人とも分からなくなってしまいました。

 実家の前の道路には、フタをされた側溝がありますが、僕が子どもの頃はドブ川でした。
 オヤジは、散歩に出かけるたびに、昔を思い出して必ず同じことを訊いてきます。

 「ここに川があったよな。よく落っこちたのは誰だっけ?」
 そのつど、「オレだよ」 と答えています。
 するとオヤジも、「そーだよな。ジュンだよな」 と納得します。

 ところが今日は、質問のしかたが異なりました。
 「落っこちたのは、お前だっけ? ジュンだっけ?」

 うん? これは完全に僕とアニキを間違えているようです。
 ちょっと、意地悪を言ってみることにしました。
 「お前って、誰よ?」
 「・・・」
 「この人(僕は自分を指さして)は、誰ですか?」
 「わかんない」
 「わかんないって? W(兄の名前) だと思っているでしょ?」
 すると、
 「Wって、誰だ?」

 ついに、アニキのことも忘れちまったようです。
 「ジュンの兄だよ」 と言えば、
 「そうか、ジュンには兄弟がいるのか…」

 いったい、誰と散歩をしていると思っているのでしょうか?
 オヤジの頭の中は、どうなっているのだか! 謎だらけであります。


 ところで、認知症のことをアメリカでは、「ロング・グッドバイ」 って言うんですってね。
 “長い別れ” です。
 意味を調べたら、「少しずつ記憶を失くして、ゆっくりと遠ざかって行くから」 だそうです。

 もしかしたらオヤジは、僕ら兄弟に、少しずつサヨナラを言っているのかもしれませんね。
 急に旅立って、悲しませないように・・・
   


Posted by 小暮 淳 at 20:52Comments(0)つれづれ

2015年06月26日

ライブが最高!


 僕は、講演やセミナーなどの依頼を受けると、可能な限り、担当者との打ち合わせを兼ねて、会場の下見に出かけます。
 それは、会場のサイズとレイアウトの確認をするためです。
 事前に、自分の目で確かめておくことで、当日までにイメージトレーニングができるからです。

 この時に、会場の雰囲気をつかんでおくと、本当に楽なんです。
 予定されている来場者数と座席の配置、演台やホワイトボードの位置を確認して、実際にその場に立ってみます。
 すると、不思議なことに、「ああ、当日は、こんな事を話そう」と自然に講話の流れが頭の中に湧いてきます。

 音楽と同様、講演もライブですからね!
 より良いパフォーマンスを演じるための準備が必要なんです。


 で、今日は雨の中、来月開催される講座の打ち合わせと会場の下見に行ってきました。
 場所は、旧宮城村(前橋市) の宮城公民館です。
 昭和50年代に建てられたとは思えないほど、立派な会館であります。

 僕は、ここで開催される今年度の高齢者教室 「旅講座」 の講師をすることになりました。
 教室とはいっても、当日の会場はホールですから、形式は講演と同じです。

 やはり、下見をして正解でした。
 ライターという職業柄、“現場主義” の姿勢が、またしても功を奏しました。


 会場を眺めていたら、いつものことですが、ワクワクしてきましたよ。
 どんな人が聴きに来るのだろうか?
 どんな反応をするだろうか?
 楽しんでくれるだろうか?

 不安よりも期待のほうが大きくなって、ますますモチベーションを高めてくれます。

 僕はライターですから文章を書くこと、本を作ることが本業です。
 でも、そのワクワク感はライブにはかないません。
 やっぱり、たくさんの人と触れ合えるライブが最高なんだなぁ~!
   


Posted by 小暮 淳 at 20:46Comments(0)講座・教室

2015年06月25日

湯いずる国


 ♪ はるか遠く ふるさと離れ 旅路の果てに
   白き山の頂に立ち ながめる雲よ
   「あづまはや」 と嘆き流した 泪のゆくえをたどれば
   ふもとの谷に のぼる煙 湯いずる国 湯源郷 ♪


 “トンネルを抜けると湯源郷(とうげんきょう)”

 これは、新刊 『尾瀬の里湯』(上毛新聞社) のカバーや新聞広告に書かれているコピーです。
 もちろん、「湯源郷」 という言葉は、僕の造語です。
 何年も前からあたためていた言葉で、このたび新曲のタイトルに付けさせてもらいました。


 ♪ はるか昔 戦(いくさ)に疲れ 一人の武士(おとこ)が
   夜露に濡れる仮の宿で 夢見たものは
   「四万(しまん)の病 癒す泉を そなたに授けん」 と言う
   童(わらべ)が立ちて 願いたくした 湯いずる国 湯源郷 ♪


 と、いうことで、先週に引き続き今日は、レコーディングを行ってきました。
 ※(レコーディングに至る経緯は、当ブログの2015年6月17日 「音友」 を参照)
 先週はオケ録り、そして今週は歌録りです。

 曲のイメージは、何百年と湧き続ける温泉の持つ生命力と、広大な平原を渡る風を牧歌的に表現してみました。
 歌詞に出てくる 「湯いずる国」 とは、もちろん群馬県のことです。


 ♪ はるか国を越えて迫る 二荒(ふたあら)の主
   追われし神は 傷を負いて 赤城嶺(ね)のもと
   「エイヤー」 と叫び 矢を突き立てた
   大地が裂けて 湧き上がる
   泉を浴びて よみがえる神 湯いずる国 湯源郷 ♪


 歌詞に歌われているのは、すべて温泉の発見伝説です。
 みなさんは、どこの温泉だか分かりますか?
  


Posted by 小暮 淳 at 23:01Comments(2)ライブ・イベント

2015年06月24日

鹿教湯温泉 「つるや旅館」


 仕事柄、毎年80~90回、多い年には延べ年間100以上の温泉地を訪ねています。
 ですから、贅沢な悩みなんですけどね。
 時として、「ああ、今日も温泉かぁ~」 なんて、朝起きた時にぼやいたりするわけです。
 ま、これが仕事なんだから仕方がありませんけど。

 で、そんな僕が、今回だけは、温泉行きを待ち望んでいました!
 なーんでか?
 そうです。腰痛ですよ!
 ※(当ブログの2015年6月21日 「介護は人の為ならず」 参照)
 1日も早く、この腰を温泉に浸したかったのであります。


 昨日は、月に1度のNHK文化センター主催による温泉講座日でした。
 この講座では、毎月第4火曜日に、県内外の名湯や秘湯をめぐっています。

 で、6月の講座では、僕にはとっても思い出深い、長野県上田市の鹿教湯(かけゆ)温泉に行ってきました。

 何が思い出深いのかといえば、今から30年以上も前、20代の頃に友人と旅の途中で泊まった温泉だからです。
 それ以来、プライベートでも数回か訪ねています。
 また、数年前に長野県温泉協会主催による講演会が、松本市で開催されたのをきっかけに、たびたび僕は松本市を訪れるようになり、その行き帰りに立ち寄るようになりました。

 たぶん、群馬県外の温泉では、一番多く訪れている温泉だと思います。


 鹿教湯温泉は、旧丸子町に点在する丸子温泉郷の1つ。
 温泉名のとおり、鹿に化身した菩薩様が湯を教えてくれた伝説が残されています。
 開湯は江戸時代、昔から “中風に効く名湯” として知られています。
 昭和31年に国民保養温泉地に指定され、近年はリハビリテーションセンターや温泉病院などを備える “現代の湯治場” として温泉ファンのみならず、療養目的の患者たちも多く訪れている温泉です。

 僕は、ここの静かな温泉街が気に入っています。
 決して「さびれている」のではなく、歴史を経た「ひなびた感」が、郷愁をおびていて好きなのです。
 温泉街の中ほどに小川が流れていて、これからの時季、ホタルが優雅に舞います。


 今回、講座では、江戸時代から営む鹿教湯温泉屈指の老舗旅館 「つるや旅館」 にお世話になりました。
 露天風呂に、ムササビが来る宿としても知られています。

 で、着くなり、混浴風呂の 「文殊湯」 に入り、午後は男性風呂の 「薬師湯」 に浸かり、十分に腰を温めてまいりました。
 サラリとした弱アルカリ性の単純温泉は、飲泉もできます。
 クセがなくて飲みやすいので、受講生さんの中には、ペットボトルに入れて持ち帰る人もいましたよ。

 何よりも、館内はお年寄りや障害者にもやさしいバリアフリー設計なので、腰をケガしている僕には一番ありがたかったのであります。


 帰りには、わざわざ駐車場まで、大女将が見送りに来てくださいました。
 御歳、なんと91歳! 元気過ぎる~!
 うちのオヤジと同じ歳とは、信じられません。
 これ、すべて温泉のなせる業なのかもしれませんね。

 大女将さん、女将さん、ご主人さん、大変お世話になりました。
 腰の痛みが、だいぶ取れましたよ。
 ありがとうございました。
  


Posted by 小暮 淳 at 12:12Comments(5)温泉地・旅館

2015年06月22日

男は二通り


 さる駐車場で、真っ赤なスクーターが目に留まりました。
 ナンバープレートは、「鎌倉市」。

 おうおう、遠いところからやって来なすったなぁ~、と、しげしげと眺めていると、ヘルメットと大きなバッグを抱え、ヒゲを蓄えた初老の男性がやって来ました。

 「これから鎌倉まで帰られるんですか?」
 とっさに、僕は声をかけていました。
 「いえ、昨日着いて、前橋に1泊して、これから北海道まで」
 「えええーっ! 北海道ですかーっ?」

 この日は越後湯沢まで行って、1泊。
 翌日、新潟港からフェリーに乗って、北海道へ渡るといいます。

 「一人旅ですか、いいですねぇ~」
 「ええ、当てもなく、のんびりと、1ヶ月くらい」
 「1ヶ月ですか! うらやましい」

 気が付いたら、20分以上も立ち話をしていました。

 彼が行った全国の町の話、酒の話、料理の話・・・
 なんとなく、僕は自分に似ている人種に出会ったような気になって、旅立ちの足を止めてしまったのであります。
 聞けば、彼は定年後から、こんな旅を年何回もしているといいます。


 「で、ご家族はなんと?」
 「今回も、『まだ出かけないの?』 って、追い出されてきました(笑)」
 「奥様は、ご一緒に旅をされないのですか?」
 「旅の価値観が違い過ぎます。一緒に行ったらケンカになるだけですよ」
 「でも世の中には、どこへ行くにも一緒という仲の良い夫婦がいますよね? 信じられないけど」
 「男には、二通りあるんでしょうね」
 「二通りですか?」
 「ええ、妻に愛されている男と、あきれ返られてる男」
 「だったら僕は、後者です」
 「もちろん、私もですよ」
 そう言って、2人は笑い合いました。

 「そろそろ、行ってみます」
 「引き止めてすみませんでした。お気をつけて」
 「そうだ、旅の記念に、あなたの写真を撮ってもいいですか? 前橋の記念に」
 「えっ? はい…、どうぞ」

 パチリ!

 僕らは、さっき出会ったばかり。
 そして、もう別れます。
 互いに、名前も知りません。

 もう、2度と会うことはないかもしれないし、もしかしたら、またどこかの町でバッタリ出会うかもしれません。
 その時、互いに気づけばいいのですが……。

 グッド・ラック! そして、いい旅を!
     


Posted by 小暮 淳 at 14:28Comments(4)つれづれ

2015年06月21日

介護は人の為ならず


 「ジュンさん、どうしちゃったの?」
 「どこか具合でも悪いの?」

 酒処 『H』 のドアを開けた途端、一斉に振り向いた常連客らが、口々に言葉を浴びせてきました。
 無理もありませんって。
 腰の曲がった老人のような格好で、入って来たのですからね。

 「カクカク、シカジカなんですよ」
 と、『蒲田行進曲』 の階段落ちのような顛末を話しました。
 ※(詳しくは、昨日のブログ 「マロの独白③ らせん階段」 をお読みください)

 「じゃあ、ジュンさんが元気になるように、乾杯!」

 ああ、癒やされるひと時であります。
 仕事からも、家庭からも、介護からも解放される至福の時間を堪能してきました。


 で、一夜明けて・・・

 「イテテテ、イテテテ」
 何をするにも悶絶する息子を見て、
 「おやおや、大丈夫かい? お前のほうが腰が曲がっていて、年寄りみたいだね」
 と、ベッドの中のオフクロが笑います。
 「ほれ、湿布を貼ってやるから、こっちにおいで」
 なーんて、完全に “逆転介護” なのであります。

 トホホホ…

 でもね、逆転されて、初めて気づいたことがあるんです。
 それは、年寄りにやさしい環境は、ケガ人にもやさしいということ!

 実家は、オフクロの退院に合わせて、バリアフリーを強化しました。
 家中の壁という壁には、手すりが取り付けられています。

 何よりもトイレが楽なんですよ!
 今の僕には、便器の両脇の手すりがなかったら、到底、使用することができませんもの。


 “介護は人の為ならず” ですね。
   


Posted by 小暮 淳 at 14:15Comments(0)つれづれ

2015年06月20日

マロの独白③ らせん階段


 こんにちワン! マロっす!
 ここんちの飼い犬、チワワのオス、8才です。

 まいど~、またまた登場です。
 (最近、オイラのファンが増えているみたいで、うれしいっす)

 今日も1日、ご主人様がいないので、こっそりパソコンを拝借しようと思っていたのですが……
 実は! ご主人様にはバレていました(当然だよね。ご主人様のブログなんだから)。


 先ほど、ご主人様が、着替えを取りに、一時帰宅したのであります。
 そうなんです。ご主人様は今週もご両親の介護のために、実家に泊まり込んでいらっしゃるのですよ。
 で、あわてて帰って来るなり、
 「おお、マロ! このところ忙しくってブログを書く間がないんだ。頼む! 代わりに書いておいてくれ」
 ですって。

 しっかり、ご主人様にはお見通しだったんですね。オイラが、いたずら書きしていたこと。
 でも、おやさしい方です。怒ったりはしませんでしたもの。

 「な、頼んだぞ! イテテテ…」
 って、腰のあたりを押さえながら、老人のような格好で家を出て行こうとしました。

 「あれれ、どうなさったのですか?」
 そう声をかけると、ご主人様はオイラを抱えあげて、
 「マロだけだよなぁ~。そうやって、いっつも俺のことを心配してくれるのは」
 と、思いっ切り、ほおずりをしながら、事の顛末を話してくださいました。


 昨晩のこと。
 仕事と介護で、心身ともに疲労困憊していらしたご主人様は、両親を早く寝かしつけて、いつもの酒処へ息抜きに出かけようと考えておりました。
 なのに、夕食後の晩酌を済ませても、なかなか父上が寝てくれなかったそうです。

 外は激しい雨。
 それでも、ご主人様は1分でも1秒でも早く実家を抜け出して、ゆかいな仲間たちが集まる酒処へ行こうと、気がせいていました。

 やがて、2階の電気が消えたので、そーっと部屋をのぞき込み、父上の寝姿を確認したご主人様は、その解放感から、
 「ヤッター! では、行ってまいりまーす」
 と、階段の途中で小躍りしてしまったようです。

 その瞬間、足元が滑り、スッテンコロリン!ドンドンドン! と階段から転げ落ち、腰と背中と腕を強打してしまったとのことです。


 ここで、読者のみなさまには、解説が必要となります。
 実は、ご主人様の実家は、ご主人様の兄上(建築家) が実験的に建てた、ヘンテコな家なのであります。
 (以前、「玄関のない家」 としてテレビのクイズ番組でも紹介されたことがありました)

 いわゆる、部屋と部屋をつなぐ廊下がありません。
 1階の部屋も2階の部屋も、風呂もトイレも、すべて中庭に面しており、部屋から部屋へ移動するには、そのつど外履きに履き替えなくてはならないのです。

 当然、風に吹かれ、雨に降られます。

 ですから、1階と2階をつなぐ階段も、もちろん!外階段。
 しかも、鉄製のらせん階段です。

 あの激しい雨で濡れた階段は、大変滑りやすいのであります。
 そんな場所で小躍りをしたご主人様が悪いといえば、それまでなのですが、この時ほど、設計主の兄上を恨んだことはないと、おっしゃっていました。

 それでも懲りずに、腰と背中に湿布薬を貼って、雨の街へ出かけて行ったそうであります。
 さぞかし、痛々しいお姿だったことでしょうね。


 と、いうことで、本日は、自称、ご主人様の一番弟子、飼い犬のマロが代筆しました。
 今後も、よろしくワン!
  


Posted by 小暮 淳 at 14:51Comments(2)マロの独白

2015年06月17日

音友


 今日は、新曲のレコーディング日でした。

 先月、老神温泉(群馬県沼田市) で開催された、拙著 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』(上毛新聞社刊) の出版記念を兼ねたイベントのレセプション会場で、我がスーパーローカルオヤジバンドの 「KUWAバン」 が、老神温泉をテーマにした新曲 『かえりびと~おいがみの里へ~』 と 『湯源郷(とうげんきょう)』 の2曲を披露したところ、大変好評をいただき、このたびCDを制作することになりました。

 今日は、とりあえずメンバーが集まり、半日使って “オケ録り” を行いました。
 いわゆる、演奏だけのカラオケであります。
 平均年齢57.5歳という、正真正銘のオヤジバンドです(うち2名は、おじいちゃんであります)。
 平日の真っ昼間からスタジオに集まれるフットワークの良さも見事ですが、何より手馴れています。
 2曲ともテイク4で、OKとなりました。

 歌録りは来週ということになり、夕方には解散しました。


 僕が最初にレコーディングを体験したのは、20歳の夏でした。
 音楽専門学校の同級生ら有志が集まり、オムニバスのLPレコードを制作しました(そう、当時はレコードの時代です)。

 参加者は6名、1人2曲ずつオリジナル曲を持ち寄ってのレコーディングとなりました。
 場所は、東京・大田区のレコーディングスタジオ。
 とにかく初めてのことで、緊張していたことを覚えています。
 そして、ガラス張りのミキサー室から、何度もNGを出された記憶があります。

 完成したLPレコードのタイトルは 『扉の向こうで』。
 手元に1枚だけ残っているレコードのジャケットには、若き日の僕が、今と変わらないヘアースタイルで写っています(でも若い!)。

 聴いてみたいのですが、我が家には、レコードプレーヤーがありません。
 時々押入れから引っ張り出しては、なつかしく眺めているだけです。


 あれから37年・・・。
 変わらないのは、髪型だけではないようですね。
 今でも、こうやって “音友” と遊んでいるのですから。
   


Posted by 小暮 淳 at 20:44Comments(0)ライブ・イベント

2015年06月16日

よろしく! 前頭葉


 「小暮さんの場合、前頭葉が発達しているから、更年期障害にはならないでしょう」
 先日、さる友人からこんなことを言われました。
 このところ、無気力状態で、疲れやすいため、「これは更年期なんじゃないかな?」 と相談したときのことです。

 「前頭葉?」
 時々聞く単語ではありますが、実のところ、何をする器官だかはよく知りません。
 で、調べてみました。

 哺乳類の脳の一部で、大脳半球の前部に存在するようです。
 哺乳動物の中では、高等なものほど、この部分が発達しているらしいです。
 「意欲」「創造」「実行」 をつかさどる器官であることから “脳の司令塔” などと呼ばれているとのことでした。

 う~ん、「意欲」「創造」「実行」 か・・・

 確かに若いときは、好奇心旺盛で、「何でも見てやろう!」 と意欲満々でしたけどね。
 最近は、なんだかすべての “欲” が衰退気味であります。
 性欲も食欲も、ありません。あるのは睡眠欲くらいだもの。

 創造、いわゆるクリエイティブのことですね。
 多少は残っていると思うのですが、加齢とともに面倒臭くなってきているのが本音です。
 なんだか、いつも現実に追われっぱなしで。

 長年、「有言実行」が座右の銘だったんですけどね。
 不言不実行のほうが、楽かなぁ~なんて。


 でもね、よーく考えてみたら、僕のように組織には属さず、フリーランスで生きていく人間にとっては、この「意欲」 と 「創造」 と 「実行」 は、必須条件なんですよね。
 これなくしては、成り立たない職業なんです。

 ま、親しい友人が、そこまで言ってくれたのであります。
 更年期障害なんかに陥っている時間は、僕の人生にはありませんぞ!

 頼んだぞ、前頭葉! よろしくな!
  


Posted by 小暮 淳 at 17:58Comments(0)つれづれ

2015年06月15日

おかげさまで1,600話


 昨日のブログで、記事投稿総数が、ちょうど1,600話になりました。

 ブログを開設して、5年と4ヶ月。
 ざっと計算してみると、月に約25話、1.2日に1話のペースでブログを更新してきたことになります。
 よくもまあ、懲りずに続いているものであります。

 というか、一番懲りていないのは読者様でして、今日までこのブログが存続できたのも、ひとえに読者様のおかげなのであります。
 あらためて、お礼を申し上げます。
 いつもいつも、ご愛読いただきありがとうございます。


 ひと口に1,600話と申しましても、その内容はさまざまでございます。
 現在、記事のカテゴリーは16に分かれてます。
 温泉のことは、「温泉地・旅館」 「温泉雑話」。
 講演や講座は、「講演・セミナー」 「講座・教室」。
 著書や他の執筆活動については 「著書関連」 「執筆余談」、その他の日々の出来事は 「つれづれ」 につづってまいりました。

 で、気になるのは、アクセス数の多い人気記事ランキングであります。
 1位は、なんだと思いますか?
 では、発表します!

 第1位 山田べにこさんとの対談 2012年1月14日 (2,485アクセス)
 第2位 謎学の旅「おばけ坂の白い家」 2010年8月15日 (1,845アクセス)
 第3位 沢渡温泉「龍鳴館」 2010年4月23日 (1,714アクセス)

 当然ですが、初期の話のほうがアクセス数も多くなるようです。
 4位~10位までは、以下のとおりです。

 奈女沢温泉「釈迦の霊泉」 2010年8月28日
 四万温泉「竹葉館」 2010年12月15日
 拝啓 恵村順一郎様 2013年4月18日
 猿ヶ京温泉「旅籠屋 丸一」 2012年3月30日
 ああ、ガラメキ温泉 2010年5月28日
 水上温泉「だいこく館」 2012年2月8日
 奈女沢温泉「釈迦の霊泉」② 2012年11月10日

 やっぱり、圧倒的に温泉ファンからのアクセスが多いようですね。
 それにしても、ベスト10内に2つもランクインしているとは、恐るべし奈女沢温泉!


 そのほか、日常をつづった 「つれづれ」 では、以下の話が人気でした。

 「さよならの夏」が聴こえる 2011年7月28日
 ああ、愛しのリンダ様 2013年1月8日
 30代に見る夢 2012年5月11日
 ショッカーの「イー!」 2013年4月15日


 明日からも、時間と体力のある限り、つれづれなるままにブログをしたためていきたいと思います。
 今後とも末永く、ご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。
    


Posted by 小暮 淳 at 13:33Comments(2)執筆余談

2015年06月14日

ヤドカリ県民


 凄惨な事故から1週間が過ぎました。

 事故?
 あれは事故なんかじゃないでしょう!
 事件です。それも殺人事件だ!

 北海道砂川市で軽ワゴン車と乗用車が激突して、5人家族の4人が死亡して、1人が重体になっている事件です。
 信号無視、ひき逃げ、そして飲酒運転だったという容疑者たち。
 もう何十年と、同じことが繰り返されています。

 それでも一向に、飲酒運転はなくなりません。


 かつて僕は、著書 『上毛カルテ』(上毛新聞社刊) の中で、こんなことを書きました。

 <どこへ行くにも、何をするにも、車を決して手放せない悲しい性を背負ったヤドカリ県民である。>「飲んだら乗るクルマ」 より

 ゆえに、“車で酒を飲みに出る” という奇異なスタイルが定着したことを記しました。
 この現象は群馬県に限らず、公共交通網が発達している大都市を除く、日本国中の地方都市で顕著であります。

 そこで登場したのが、代行車です。
 まさしく、地方都市の救世主 “飲んだら乗る車”。

 この代行車、群馬県が発祥の地だとう説があります。
 群馬大学の学生が、アルバイトで始めたのが事の起こりとか。
 ま、諸説あるので、真偽のほどは定かではありませんが。


 で、北海道にだって代行車はあるはずです。
 容疑者たちも代行車を呼んでいれば、こんな惨事を起こさずに済んだのですが、それは “馬の耳に念仏” だったのでしょうな。
 だって、彼らは常習犯です!
 しかも、酒に酔った状態で、カーチェイスまがいの遊びをしていたのだから、これは通り魔と同じこと。
 覚せい剤を打って、刃物を振り回しているのと変わりありませんって。

 飲んだら乗るな! 飲むなら乗るな!
 ですが、酒を提供した側や一緒に飲んだ友人たちにも責任があります。

 飲んだら乗せる(運転させる)な!

 どうか、これ以上、悲しい出来事を起こさないでほしいのです。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:06Comments(2)著書関連

2015年06月12日

ブログの効用⑥ 思わぬ依頼


 僕は数年前から、講演やセミナーなどの活動を行っています。
 例年ですと、年に5~6回のペースなんですけどね。
 なぜか今年は、多いんです。

 すでに5回ありましたし、この1ヶ月間だけで7件もの依頼がありました。
 なんで、この1ヶ月間に集中しているんだろう?
 不思議に思いましたが、思い当たるのは新刊本の出版くらいです。

 でも毎年出版していますが、こんな年は初めてです。
 確かに、新聞広告が掲載されたり、テレビ、ラジオに出演して、それなりの宣伝効果はあると思うのですが・・・
 今年に限ったことではありません。
 やはり、不思議です。


 で、7件のうち6件は、温泉ライターとしての講演依頼です。
 もちろん、講話のテーマも “温泉” であります。

 ところが!
 1件だけ、またったく別のテーマでの依頼がありました。
 なんだと思いますか?

 “介護” なんです。

 これには、依頼をされた当の本人もビックリ!

 「そういった話は、専門家にお願いされたほうが良いのでは?」
 と、最初はお断りしたのであります。
 ところが、
 「いえいえ、専門家の堅苦しい話ではなく、小暮さんの実体験に基づく、面白おかしい、涙あり笑いありの生の話をしていただきたいのです」
 なーんて言われてしまい、渋々ですが結局、お受けすることになりました。


 でも、なんで僕が両親の介護をしていることを知っているのでしょうか!?

 そうです! ブログを読んでいるとしか考えられません。
 これも、ブログの効用なんでしょうな。

 どこで、誰が読んでいるか分からないものですね。
 たかがブログ、されどブログ、おそるべしブログであります。
   


Posted by 小暮 淳 at 17:48Comments(0)講演・セミナー

2015年06月11日

これはナイショだよ


 「あら、今週はジュンちゃんなのね!」

 オヤジの手を引いて、実家の周辺を散歩していると、ご近所さんから声をかけられます。
 いやいや、“親孝行兄弟” として評判のようであります。

 「おじさん、元気ですね。おいくつになられました?」
 と問われても本人は、自分の年齢が分かりません。
 「今年、91歳になります」
 と代わりに僕が答えます。
 すると、
 「はい、元気ですよ。わたしは100歳まで生きますかね」
 だと!
 勘弁してくださいよ。
 あと9年も、こんな生活が続くのかと思うと、ゾッとします。

 ご近所さんは、そんな身内の心情を知ってか知らぬか、
 「ええ、ええ。おじさんなら大丈夫ですよ。絶対に」
 と、無責任なことをおっしゃるのであります。

 
 ということで今週はまた、頭以外は健康なボケ老人のオヤジと、頭だけ健康な障害老人のオフクロの面倒を看ています。

 昨日の夕方のこと。
 オヤジが留守の間に徘徊しないように、ガッチリ門扉にワイヤーロックをかけてから、僕は買い物などの用を足しに外出しました。
 数時間して、実家に帰ると、リビングの様子がおかしいのです。
 外出前には出ていなかったコップやビンが、テーブルの上に!
 近寄って、よーく見ると・・・

 焼酎の小ビンであります。

 どうも、僕のいない間に、オヤジは台所から晩酌用に用意しておいた焼酎を探し当てて、真っ昼間から飲んでしまったようです。
 こんなことは、初めてです。


 「おい、じいさん! 酒を飲んだろ~!」
 僕は2階の部屋にすっ飛んで行きました。
 「飲んでないよ」
 「しらを切ったって、ダメだよ」
 そう、あきらかに、オヤジは酒臭いのであります。

 でもね、考えてみたら、親父はしらを切っているわけではないのです。
 もう、すでに酒を飲んだ記憶すらないのですから。

 「おれ、酒を飲んだのか?」
 「そう、だから今晩は、もうお酒はなしだからね!」
 と、ついつい僕も大声を出して、しかりつけてしまいました。


 「ごちそうさま」
 夕食のあと、オヤジが物欲しそうな目で僕を見つめています。
 「ダメ! 今日は、もう飲んだでしょ!」
 と言えば、
 「そうかなぁ…」
 と、うつむいてしまいました。

 夜。
 いつもは7時に寝床に入る親父が、8時を過ぎても起きてます。
 本人は、まだ酒を飲んでいないと思っているので、寝られないようです。
 でも僕に、また、しかられると思い、何も言えずに、ただ座イスに座っています。


 「しょうがないな~。これはナイショだよ」
 仕方なく僕は、グラスを差し出し、自分の晩酌用のビールを注いでやりました。

 「ああ、わかったよ。これはナイショだ」
 そう言ってオヤジは、うれしそうにビールを飲み干しました。

 そう、このことは、オフクロにもアニキにもナイショだ。
 オレとオヤジの2人きりの秘密にしよう。


 ああ、甘い、甘い、あまいな~!
 うれしそうなオヤジの笑顔に、ついつい負けてしまいました。

 つくづく、介護は子育てに似ていると思います。
 だって、その笑顔1つで、1日の苦労が吹っ飛んでしまうのですから。

 いつしか僕も、親バカならぬ “子バカ” になってしまったようです。
   


Posted by 小暮 淳 at 17:39Comments(2)つれづれ

2015年06月09日

待ちぼうけ


 みなさんは、「あいひょう」 という言葉をご存知ですか?

 群馬県の方言で、“すれ違い” “行き違い” といった意味です。
 「駅まで迎えに行ったのに、あいひょうしちゃったよ」 とか 「待ち合わせの場所に来なくて、あいひょうしてしまった」 なーんて使います。

 今聞くと、なんだか、のんびりした昭和の風景が見えてくるようです。
 だって、今はほとんど “あいひょう” することなんて、なくなりましたものね。

 みーんな、携帯電話をもっていますから!


 でも、昔は勝手が違いました。
 駅の改札口で、何時間でも待ちましたよ。
 だって、来るのか、来ないのかさえ、確認を取るすべがないのですから。
 だから、いつも駅の伝言板には “あいひょう” してしまった人たちの切ない文字が、たくさん残されていたのです。

 『○子へ 2時間まった △夫』
 とか、
 『Kさんへ 先に行きます H』
 なんてね。

 今だったら、メール1本打っておけば済むことなのに、当時は、たった1つの待ち合わせで、丸1日を反故にしてました。
 便利な世の中になったものです。


 当時、といっても僕が東京で下宿をしていた頃ですから、40年近くも前のことです。
 当然、部屋に電話なんてありません。
 いったい、どうやって友だちと連絡を取り合っていたのだろうか?
 ふと、疑問に思いましたが、なんていうことはありません。
 直接、互いの下宿を訪ね歩いていたのです。

 だから、やはりアパートのドアには、必ず伝言板が付いていました。
 確か、僕の部屋には、ノートとエンピツをぶら下げていました。

 『○時○分 Sです。また来ます』
 なんて、メモが残されているわけです。
 中には、
 『駅前のパチンコ店にいます』
 『夕方5時過ぎに、また来ます』
 なんていうのもあったりして、みんなヒマを持て余していたのであります。


 とにかく、“待つ” ことは日常茶飯。
 だからって誰も、会えなかったことに文句なんて言うヤツはいませんでした。
 我慢すること、そして、あきらめることが、身に付いていたのです。

 今思えば、それが昭和という時代だったのですね。

 もどってみたいような、そうでないような・・・
   


Posted by 小暮 淳 at 12:07Comments(4)つれづれ

2015年06月07日

映写技師見習い


 おじいさんは、山里の一軒家でひとり暮らし。
 毎日、人とは会わずに、黙々と畑仕事をしています。
 ある日のこと。
 一匹の子ぎつねが、現れます。
 子ぎつねは、おじいさんが育てた柿の実が欲しくてたまりません。
 そこで子ぎつねは、遠く離れて暮らす孫に化けて、おじいさんをだますことにしました。
 その日から、孫になりすました子ぎつねと、おじいさんの奇妙なふたり暮らしが始まります。
 でも、やがて別れの日が・・・


 今日は地区の公民館で、「こどもえいが会」 が開催されました。
 僕は、主催の子ども会育成連合会の運営委員として、参加してきました。

 ま、これも、我が家の3人の子どもたちを育ててくれた地域への恩返しのつもりです。


 午前8時、公民館に集合。
 まずはホールにて、イスを並べて会場づくり。
 次にテーブルを出して、受付づくり。
 午前9時に開場、9時半から上映開始です。

 今年も100人を超える、たくさんの親子が来場しました。


 僕の役どころは、さしずめ映写技師の見習いといったところでしょうか。
 先輩技師に付いて、フィルムの交換や巻き戻しを手伝ってきました。

 ま、上映作品は、子ども向けのアニメばかりですからね。
 上映時間も1本、10分~20分と短いんですよ。
 『ミッキーマウスとゆかいな仲間たち』 など、計4本のアニメ作品を上映しました。

 で、その中の1本、『源吉じいさんと子ぎつね』 に、不覚にも涙腺を刺激されてしまいました。

 いや~、幼児&小学校低学年向け作品だからといって、つい油断をしていました。
 そしたら、想像を超えたラストシーンが待っていたのであります。


 おじいさんは、やがて本当の孫ではなく、きつねが化けていることに気づきます。
 子ぎつねも、だんだんとおじいさんをだましていることへの良心の呵責に、さいなまれていきます。
 そして・・・

 ああ、感動のラストシーンに涙、涙、涙!


 これでは、映写技師失格ですね。
   


Posted by 小暮 淳 at 18:52Comments(2)つれづれ

2015年06月06日

マロの独白②


 こんにちワン!
 マロです。
 ここんちの飼い犬です。
 チワワのオス、8才です。

 ご主人様が留守なので、パソコンを拝借しています。
 (久しぶりにキーボードを叩くので、ちょっぴり肉球が痛いっす)


 えーと、前回はご主人様について書いたので、今日は奥様のことを書きます。

 ま、とっても厳しいお方ですからね。ご主人様は、かなり苦手の様子ですよ。
 でも、オイラにとっては、命の恩人なんです。

 あれは、次女のS様が小学1年生のお正月のことです。
 オイラは、前年の夏に埼玉県のブリーダーの元で生まれたのですが、その後、前橋市のペットショップに移されました。
 兄弟や仲間たちは、みーんな買い手がついて、引き取られて行ったんですけどね。
 オイラだけ、半年経っても売れ残っていたんです。

 なぜかって?

 無理もないんですよ。オイラ、チワワとしてはB級品ですから・・・。

 ① 鼻が長い(チワワは鼻が短いほうが高い)
 ② 鼻の頭が白い(チワワは鼻の頭が黒いほうが高い)
 しかもオイラ、チワワの特徴でもある目が、小さいんです。

 ズバリ、器量が悪いんだ。

 で、ペットショップの店員さんも、困ったんでしょうな。
 悩んだ末に、オイラを福引の賞品にしてしまったんです!
 しかも、2等だよ(1等はトイプードルだったらしい)。

 で、たまたま来店した奥様とS様が、僕を引き当てたというわけです。

 奥様は、僕を見た途端、「かわいい~!」 と言って抱きしめてくださいました。
 ああ、なんたる幸せ~。
 だって、それまで一度も客から言われたことのない言葉だったのですから。
 でも、その時、かたわらで言ったS様の言葉は忘れません。

 「あーあ、トイプーのほうが良かったな」


 さらにさらに!
 小暮家に連れて来られた、その日の夜のこと。
 初めてオイラを見た、ご主人様の第一声ときたら、
 「えー、これ本当にチワワか? ブッサイクなチワワだな~!」
 ですって。

 でも仕方ありませんよね。
 チワワと聞けば、みなさん、目のクリクリっとしたテレビCMに出てくるような愛くるしい顔を思い浮かべますものね。


 あれから8年。
 いまでは、すっかりオイラも小暮家の家族の一員です。
 あのとき、奥様がオイラを引き当ててくれなかったら……、今の幸せはなかったかもしれませんね。

 だからオイラにとって、奥様は命の恩人なのです。
 文句なんて、ありませんよ。
 スーパーで一番安いドッグフードだって、ちゃんと嫌がらずに毎日食べているじゃありませんか。
 でも、たまには・・・


 あ、ご主人様が帰ってきました!
 では、まただワン!
   


Posted by 小暮 淳 at 13:10Comments(2)マロの独白

2015年06月04日

幡谷温泉 「ささの湯」③


 昨晩の 『ナニコレ珍百景』(テレビ朝日) で、群馬県片品村の幡谷温泉 「ささの湯」 が紹介されました。

 でも “ナニコレ” ですからね。
 旅番組じゃありません。
 当然、宿や温泉の紹介ではありません。

 その不思議な温泉発見秘話についてであります。


 昭和の終わり頃のこと。
 猟師だった先代が、山でクマと格闘して大ケガをしました。
 やっとの思いで家にたどり着きましたが、傷はひどく、痛みがいつまでも続きました。
 ある日、自分の畑の土手から湧く水を持ち帰り、沸かして入ったところ、痛みがとれて、傷跡も治ってしまったといいます。

 この話は、6年前に出版した拙著 『ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) に、「熊と格闘した猟師の傷を治した平成の秘湯」 というタイトルで詳しく書かれています。
 また、テレビにも出演していた温泉を掘削した現オーナーのことは、昨年出版した 『新ぐんまの源泉一軒宿』 に書きました。
 もちろん、先月出版した 『尾瀬の里湯』 でも、この逸話は紹介しています。

 もし、この一連の話を、テレビ局の人が拙著で知ったのだとしたら、うれしいですね。
 温泉ライターとして、世に知られていなかった群馬の小さな温泉を、全国に向けて発信することができたのですから!


 でもね、もう少し “湯” にも触れてほしかったですね。
 毎分約260リットルという、一軒宿にしては桁外れに恵まれた湯量!
 浴槽の縁からは、まるでナイアガラの滝のように全面からザーザーと音を立てて、かけ流されています。

 まさに、平成の世に誕生した奇跡の秘湯であります。
  


Posted by 小暮 淳 at 18:12Comments(0)温泉地・旅館

2015年06月03日

群馬テレビ & FMぐんま


 今日の上毛新聞14面、ご覧になりましたか!?

 新刊 『尾瀬の里湯』(上毛新聞社) のカラー広告が、でっかく掲載されました。
 とにかく目立ちます!

 発売されて、約1ヶ月。
 書店の店頭にも、出揃いました。
 しかも、どの書店も平積みという力の入れようです。
 “シリーズ5万部突破!” のキャッチコピーが効いているようです。

 平積みされた著書の上で、ポップが揺れている光景は、ライター冥利に尽きるものです。


 さて、新刊の発売と連動して、このところメディアからの出演や講演会の依頼が増えています。
 今日は、日程の近いものからご報告いたします。

 まず、僕がコメンテーターを務めている群馬テレビの 『ニュースジャスト6』。
 今月は、新刊にスポットを当てて、取材秘話や制作の苦労話をからめながら老神温泉と片品10湯の魅力についてお話します。
 視聴者プレゼントもありますので、お見逃しなく!


 ●放送局   群馬テレビ(地デジ3ch) 
 ●番組名   「ニュースジャスト6」
          NJウォッチのコーナー
 ●出演日   6月5日(金) 18:00~18:35
 ●テーマ   新刊 『尾瀬の里湯』 出版


 来週の月曜日は、いよいよFMぐんまの人気番組 『G☆FORCE(フォース)』 に登場します。
 こちらは、すでに収録済みです。
 いつものように、パーソナリティーの櫻井三千代さん、竹村淳矢さんとバカっ話をしてまいりました。
 ぜひ、ご期待ください!
 こちらも、著書のプレゼントがあります。


 ●放送局   FMぐんま(86.3MHz)
 ●番組名   「G☆FORCE」
         月~水 12:00~14:55
 ●出演日   6月8日(月) 13:05~13:25
         「人間力向上委員会」
   


Posted by 小暮 淳 at 11:34Comments(3)著書関連

2015年06月02日

おかげさまで50万アクセス!


   読者のみなさまへ


 日頃、ご愛読いただき、ありがとうございます。
 このブログがスタートしたのが2010年2月ですから、丸5年と4ヶ月が経とうとしています。
 おかげさまで、昨日、50万アクセスを突破することができました。
 これも、ひとえに辛抱強く、毎回、カチッとクリックしてくださっている読者のみなさまのおかげと、感謝しております。

 50万アクセス!
 この数字が多いのか、少ないのか、ネット音痴の僕にはさっぱり分かりません。
 でも、5年の歳月の長さならば分かります。

 だって、この5年間で僕は、6冊の温泉本と1冊の登山本、計7冊の本を出版したのですから、それくらい膨大な時間が流れたということです。
 プライベートでは、2010年という年は、僕がおじいちゃんになった年でもあります。
 ということは、孫も今年5歳になるということですね。

 ん~、恐るべし5年!
 たかが5年、されど5年。
 そして、感謝の50万アクセスであります。

 明日からも今までと変わることなく、コツコツと温泉の話や日々の出来事をつづっていく所存であります。
 引き続き、ご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。


     50万アクセスの節目に   小暮 淳 
  


Posted by 小暮 淳 at 11:30Comments(2)執筆余談