2015年06月11日
これはナイショだよ
「あら、今週はジュンちゃんなのね!」
オヤジの手を引いて、実家の周辺を散歩していると、ご近所さんから声をかけられます。
いやいや、“親孝行兄弟” として評判のようであります。
「おじさん、元気ですね。おいくつになられました?」
と問われても本人は、自分の年齢が分かりません。
「今年、91歳になります」
と代わりに僕が答えます。
すると、
「はい、元気ですよ。わたしは100歳まで生きますかね」
だと!
勘弁してくださいよ。
あと9年も、こんな生活が続くのかと思うと、ゾッとします。
ご近所さんは、そんな身内の心情を知ってか知らぬか、
「ええ、ええ。おじさんなら大丈夫ですよ。絶対に」
と、無責任なことをおっしゃるのであります。
ということで今週はまた、頭以外は健康なボケ老人のオヤジと、頭だけ健康な障害老人のオフクロの面倒を看ています。
昨日の夕方のこと。
オヤジが留守の間に徘徊しないように、ガッチリ門扉にワイヤーロックをかけてから、僕は買い物などの用を足しに外出しました。
数時間して、実家に帰ると、リビングの様子がおかしいのです。
外出前には出ていなかったコップやビンが、テーブルの上に!
近寄って、よーく見ると・・・
焼酎の小ビンであります。
どうも、僕のいない間に、オヤジは台所から晩酌用に用意しておいた焼酎を探し当てて、真っ昼間から飲んでしまったようです。
こんなことは、初めてです。
「おい、じいさん! 酒を飲んだろ~!」
僕は2階の部屋にすっ飛んで行きました。
「飲んでないよ」
「しらを切ったって、ダメだよ」
そう、あきらかに、オヤジは酒臭いのであります。
でもね、考えてみたら、親父はしらを切っているわけではないのです。
もう、すでに酒を飲んだ記憶すらないのですから。
「おれ、酒を飲んだのか?」
「そう、だから今晩は、もうお酒はなしだからね!」
と、ついつい僕も大声を出して、しかりつけてしまいました。
「ごちそうさま」
夕食のあと、オヤジが物欲しそうな目で僕を見つめています。
「ダメ! 今日は、もう飲んだでしょ!」
と言えば、
「そうかなぁ…」
と、うつむいてしまいました。
夜。
いつもは7時に寝床に入る親父が、8時を過ぎても起きてます。
本人は、まだ酒を飲んでいないと思っているので、寝られないようです。
でも僕に、また、しかられると思い、何も言えずに、ただ座イスに座っています。
「しょうがないな~。これはナイショだよ」
仕方なく僕は、グラスを差し出し、自分の晩酌用のビールを注いでやりました。
「ああ、わかったよ。これはナイショだ」
そう言ってオヤジは、うれしそうにビールを飲み干しました。
そう、このことは、オフクロにもアニキにもナイショだ。
オレとオヤジの2人きりの秘密にしよう。
ああ、甘い、甘い、あまいな~!
うれしそうなオヤジの笑顔に、ついつい負けてしまいました。
つくづく、介護は子育てに似ていると思います。
だって、その笑顔1つで、1日の苦労が吹っ飛んでしまうのですから。
いつしか僕も、親バカならぬ “子バカ” になってしまったようです。
Posted by 小暮 淳 at 17:39│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
親の面倒を見ている方の本音を聞くと、ホットするこの頃です。
こういう風に感じたり、思うのは、私だけではないんだ、悪いことではないんだと…
こういう風に感じたり、思うのは、私だけではないんだ、悪いことではないんだと…
Posted by ぴー at 2015年06月12日 10:44
ぴーさんへ
日本は、世界一の少子高齢社会です。
今後ますます、介護問題は深刻になってきます。
みんな他人事じゃないんですよね。
だからこそ、我慢しないで本音で話しましょう!
日本は、世界一の少子高齢社会です。
今後ますます、介護問題は深刻になってきます。
みんな他人事じゃないんですよね。
だからこそ、我慢しないで本音で話しましょう!
Posted by 小暮 淳 at 2015年06月12日 17:06