2025年05月02日
色のないブログ
「なぜ、写真がないのですか?」
よく聞かれる質問です。
このブログのことです。
確かに言われてみれば、そうなのです。
ブログを開設して15年、4,200話以上を投稿していますが、写真を添付したことは一度もありません。
文字だけのブログです。
それは、なぜか?
今から5年ほど前。
この件について、高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」 から取材を受けました。
記事は、企業向けの 「ニュースレター」 という広報紙に掲載されました。
<ブログ 「小暮淳の源泉ひとりじめ」 は、今年の1月でまる10年。2月から11年目に突入です。(中略) このブログから仕事や講演の依頼はもとよりテレビやラジオの出演、新聞や雑誌への執筆依頼まで来るとか。また小暮さんのファンとの交流もこのブログがきっかけだそうです。>
こんな書き出しで始まります。
ちなみに、記事のタイトルは 『続ける力』。
<まさに日々こつこつ積み上げている行動に対して、素晴らしい結果が出ているという事実。さて気になるのは、どうやって続けてきたか? ご本人に直接聞いてみました。>
なんと答えたのか記憶にはないのですが、記事には、こう書かれています。
<「秘訣としては、写真を一切使わずに文字のみのブログであることかもしれません。視覚にとらわれず、筆者目線で日々を切り取ることができるから」>
このアンサーに対して記事は、こう締めくくっています。
<今やSNSは文字より写真のほうが優先されがち。写真1枚あれば、文字での表現を大いに補ってくれますが、逆に写真がなければ文章に集中できる。目から鱗の回答でした。>
先日もブログのコメント欄に、読者からのこんなコメントが寄せられていました。
<いっさい写真を使わずに、人気ランキング1位って、すごくないですか。 「NO PHOTO」 の黒の並びが、かっこいいし、何より文章だけで勝負しているってのが、いいのかな。>
「まいちゃ」 さん、ありがとうございます。
そう感じていただいている読者が、このブログを15年間、今日まで支えてくれています。
黒い文字だけの色のないブログですが、末永くお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
2025年05月01日
羆 ―HIGUMA―
20年ほど前だったと思います。
あるミニコミ誌から、寄稿の依頼を受けました。
与えられたテーマは、「私の愛読書」。
ジャンルは問わず、最近読んだ本で、ぜひ他の人にも読んでほしいオススメの一冊を紹介するという企画でした。
その時、僕が選んだ本が、山と渓谷社の 『山でクマと会う方法』 でした。
不思議なタイトルですよね。
本来なら、“会わない方法” です。
でも僕は、その真逆の発想に引かれたのです。
というのも当時、僕は趣味と仕事を兼ねて、頻繁に山登りをしていました。
多くは1,000メートル以下の低山ハイクでしたが、それでも時々、山道では 「クマ出没注意」 の看板を見かけました。
また、山によっては、要所要所に “クマ除けの鐘” が設置されていて、叩きながら登ることもありました。
当然、いつもリュクには、大きなクマ除けの鈴を付けていました。
でもね、幸か不幸か、一度もクマに遭遇したことはありません。
そんな時に出合った本が、『山でクマと会う方法』 です。
クマの習性や棲む環境、行動範囲を知れば、クマに出遭う確率は上がります。
ならば、その逆の行動をとれば、クマに遭わずに済むのです。
当時の僕には、心強い指南書でした。
近年、日本全国でクマが人里に現れるニュースが頻繁に報じられています。
これは異常事態です。
登山は、クマのテリトリーに人間が入り込むのですから当然、人間側が注意をしなくてはなりません。
でも人里、いえ最近は市街地にまでクマが出没しています。
人間のテリトリーにクマが、無断で入り込んでいるのです。
人間にしてみれば、“寝耳に水” であります。
防ぎようがありません。
ニュースを見るたびに僕は、恐怖を覚えます。
令和の世に、このクマ騒動は、なんで起きているのか?
待てよ、確か、昔、歴史に残る、とんでもない事件が北海道で起きているよな?
と思って調べてみました。
大正4(1915)年12月に北海道天塩山麓の苫前郡苫前村で起きた、日本獣害史上最大の惨事 「苫前羆事件」 です。
わずか2日間に6人の男女が、ヒグマに殺害されました。
ということで、今回紹介するのはドキュメンタリー小説です。
吉村昭・著 『羆嵐(くまあらし)』 新潮文庫
凄惨な現場の描写に、恐怖が止まりません。
なのにページをめくる手も止まらなくなってしまいました。
怖い! だから止めよう!
でも引き返すのも怖い!
だったら前に進もう!
と、気が付いたら読み手の自分が、小説の中の主人公になっていました。
中盤以降、戦慄はピークに達します。
こんな会話があります。
「なぜ子供を食わぬのかわかるか」
老練な猟師は村人に問います。
首を振る村人に、こう言います。
「最初に女を食った羆は、その味になじんで女ばかり食う。男は殺しても食ったりするようなことはしないのだ」
これがヒグマです。
本州のツキノワグマとは、凶暴さが違います。
全長9尺 (2.7メートル)、体重102貫 (383キロ) の化け物が、村人たちに次から次と襲いかかるのです。
でも、これは実話なんです。
結末は、いかに!?
この結末も史実なのであります。
未読の方は、ぜひ、一読を!
※巻末解説、倉本聰氏の文章が白眉です。