2014年08月31日
そこにもいる妖しいもの
僕には、“人生の師” と呼ぶ人がいます。
作家だったり、ミュージャンだったり、冒険家だったり……
若い時に影響を受けた、人生の先輩たちです。
一番身近な “人生の師” として、長年、お付き合いをさせていただいてる方に、前橋市在住の絵本作家、野村たかあき先生がいます。
野村先生は絵本作家でもありますが、そもそもは木版画や木彫を専門に制作する作家です。
僕が無職で、プラプラしている時に、ふらりと入った作品展で、先生とはお会いしました。
あれから27年・・・
「表現することの楽しさ」「自由に生きることの難しさ」「他人を喜ばせることの素晴らしさ」 などなど、先生からは数多くの導きをいただきました。
そして、何よりも僕を後押してくれている言葉があります。
“書いて書いて、書きまくれ!”
“作品は、その値段以上の価値がある”
そして、
“誰かが見ている”
です。
そんな先生が、昨日から前橋市内で個展を開催しているというので、ごあいさつがてら顔を出してきました。
『野村たかあき 妖怪画談』
「鬼」 の版画や彫刻で知られる先生ですが、このたび 『妖怪』(グラフィック社) という絵本を出版されたため、今年から妖怪をテーマにした版画や彫刻の展示会を県内外で開催しています。
「あれ、ジュンちゃん! 忙しいのに来てくれたの、悪いねぇ~」
と先生は、いつものように満面の笑みで出迎えてくれました。
ちょうど、新聞社の取材を受けている最中だったんですけどね。
「これで今日は3社目だよ」
と、言うそばから、ファンの婦人たち囲まれ、質問攻めにあっていました。
ギャラリーには約60点の版画と、十数点の木彫が展示されています。
波小僧? イクチ? 手長足長? 掻撫(かいなで)?・・・
見た事も聞いた事もない妖怪って、この世にたくさんいるんですね。
「大太郎法師」 って書いて、何て読むか知ってますか?
“ダイダラボッチ” ですって!
知りませんでした。
日本全国に残る怪力の巨人伝説です。
群馬では、“デーダラボッチ” なんて言いますけどね。
そんな怖くて、ちょっぴり可愛くて、色っぽい妖怪たちに、みなさんも会いに行ってみてくださいな!
<そこにもいる妖しいもの
憑き物・河童・鬼・天狗・山姥・幽霊・異人……。
太古の昔から、怪異や妖怪は確かに存在してきた。
世の中のいたるところに。
日本人の心の中に。
それからは今どこに行ったのだろう?
もしかしたら今も、あなたのすぐそばに、いるのかも知れない>
「パンフレットより」
『野村たかあき 妖怪画談』
●会 期 8月30日(土)~10月13日(月・祝) 11:00~19:00
●会 場 フリッツ・アートセンター/ギャラリー
前橋市敷島町240-41(敷島公園内)
●休館日 火曜日(祝日の場合は翌日)
●入館料 無料
●問 合 フリッツ・アートセンター TEL.027-235-8989
2014年08月30日
ペットと泊まれる温泉宿
我が家には、8才になる愛犬マロ君(チワワ・雄) がいます。
生後半年くらいの時に、もらわれてきました。
たぶん、ペットを飼っている家は、同じ悩みを抱えていると思います。
それは、泊まりで家を空けられないこと。
我が家もマロ君が来てからというもの、家族全員で宿泊旅行がなくなってしまいました。
(ま、子どもたちも大きくなってしまって、親となんて一緒に出かけてくれませんけどね)
で、そんなときに、心強いのが “ペットと一緒に泊まれる宿” です。
最近は、ペットブームの影響で、ずいぶんと増えました。
日本全国、観光地や避暑地には、必ず1軒や2軒はペットと泊まれる宿はあります。
でも、それって、ペンションやホテルが主流ですよね。
そして、どちらかというと主役がペットで、飼い主が同伴者のような扱いです。
だもの、温泉好きには物足りません。
そこで今回、僕がコメンテーターを務める群馬テレビ 『ニュースジャスト6』 では、温泉好きがペットと泊まれる宿を紹介します。
あくまでも、人間が主役です!
温泉旅館なのに、愛犬も一緒に連れて行ける夢のような宿です。
●放送局 群馬テレビ(地デジ3ch)
●番組名 「ニュースジャスト6」
NJウォッチのコーナー
●放送日 9月1日(月) 18:00~18:30
●ゲ ス ト 小暮 淳(温泉ライター)
●テーマ 「ペットと泊まれる温泉宿」
2014年08月29日
老神温泉 「吟松亭 あわしま」②
「老神温泉」 と書いて、「おいがみおんせん」 と読みます。
えっ? そんなの知っているって!
いえいえ、群馬県民でも正しく読めない人が、まだまだいるんですよ。
実際、老神温泉の人たちは、いまだに 「ろうじんおんせん」 と読まれてしまうことに困惑しています。
と、いうことで、今週も老神温泉に入り込んで、取材活動を続けています。
温泉宿15軒 + 日帰り入浴施設1軒 = 計16湯
現在、14湯を制覇!
いよいよ、残り2湯となりました。
で、昨晩は、老神温泉でも最大規模を誇る老舗旅館 「吟松亭 あわしま」 に泊めていただきました。
こちらにお邪魔するのは、今年になって2度目です。
すでに4月に、僕が講師を務める温泉講座でお世話になっています。
※(当ブログの2014年4月22日 「老神温泉 吟松亭 あわしま」 参照)
出迎えてくれた2代目女将の桑原律子さんとお会いするのは、3度目です。
先日の 「老神温泉盆踊り大会」 に、“女将さん会” として踊りで参加してくださっていました。
前回も堪能しましたが、「吟松亭 あわしま」 の自慢は2つ!
絶景の露天風呂と名物の 「山賊鍋」 であります。
紅葉の名所としても知られる片品渓谷をはさんで、真正面にそびえる大楊山(おおようさん)。
この山が全山紅葉する10月下旬~11月初旬は、露天風呂からの絶景を目当てにやってくる入浴客で混み合うほど。
もちろん、今の大楊山は夏山ですから緑一色でしたが、紅葉の時季にもう一度、カメラマンと一緒に訪れたいと思います。
そして湯上がりにいただいた 「山賊鍋」。
キノコや野菜、豚肉などの山の幸を味噌仕立ての秘伝のスープでいただきます。
夏に炭火の囲炉裏端でいただく鍋というものも、これまた美味なのであります。
もちろん、キンキンに冷えた生ビールとともに・・・
女将さん、支配人さん、取材協力ありがとうございました。
来年の今頃には、素敵な本にして、お届けします。
それまで、首をなが~くして待っていてくださいね。
2014年08月27日
鬼押温泉 「ホテル軽井沢1130」②
<壁一面の窓ガラスいっぱいに、青空に映える雄大な浅間山がそびえている。
眼下を見下ろせば、錦のじゅうたんを敷きつめたような紅葉の森が、あたかも雲海のように広がっていた。>
( 『新ぐんまの源泉一軒宿』 より)
季節は違いますが、本来なら、絶景のパノラマを眺望する予定でした。
ところが、昨日は一日中、雨!
残念ながら、僕から受講生へのサプライズプレゼントとは、なりませんでした。
昨日は月1回開催される、NHKカルチャーの温泉講座日。
僕は、6年前から講師をしています。
今年度は、奇数月は県外の名湯、偶数月は県内の秘湯を訪ねています。
で、昨日は、嬬恋村にある鬼押(おにおし)温泉 「ホテル軽井沢1130」 へ行ってきました。
鬼押温泉は、群馬県民でも知る人ぞ知る一軒宿の温泉です。
実は、5年前(2009年) に出版した拙著 『ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) には、掲載されていません。
今年4月に改訂版として出版した 『新ぐんまの源泉一軒宿』(同) で、初めて取材・掲載をしました。
それには理由があったのです。
※(掲載にいたる理由は、当ブログの2013年11月8日「鬼押温泉 ホテル軽井沢1130」参照)
雨の中、高崎駅と前橋駅を出発したバスは、一路、嬬恋村を目指します。
東吾妻町の八ッ場(やんば)ダム建設予定地を通過!
は、しないで休憩と視察を兼ねて、八ッ場ダム建設に伴い住民のために掘削された温泉 「天狗の湯」 に立ち寄りました。
ま、温泉好きの団体ですから、時間があればムダなく入浴するのであります。
「天狗の湯」 を出る頃には、雨はいよいよ本降りに。
土砂降りの北軽井沢に到着しました。
標高1,130メートル、高原の大自然の中に建つリゾートホテルです。
気温18度。涼しいを通り越して、少し肌寒いくらいです。
でも僕らには、極上の温泉が待っています!
泉質は、ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉。
群馬県内では、ここ浅間山と赤城山周辺に見られる泉質です。
皮膚の角質をやわらかくして、余分な皮脂や分泌物を洗い流して肌をなめらかにすることから、「美人の湯」「美肌の湯」 などと呼ばれています。
この日の湯は、黄褐色ににごっていました。
鉄分を多く含んでいるため、キシキシとした浴感がしますが、湯上がりはサラッとしていて、とても清涼感があります。
「先生、今回もいい湯でしたね」
「肌が、ツルツルになりました」
「もう一度、季節を変えて来ましょうよ」
と、受講生たちからも大変好評でした。
これで天気が良ければ、100点満点の講座だったんですけどね。
でも、これだけは選べません。
来月は、信州の名湯を訪ねます。
受講生のみなさん、それまでお元気で、ごきげんよう!
2014年08月24日
中庭図書館
ふだん、実家で両親の介護をしているアニキが、先週から夏休みをとって、家族のいる東京へ帰ってしまいました。
よって現在、僕が実家に泊り込みで両親の面倒を看ています。
足の不自由なオフクロは、87歳。
日本女性の平均寿命を超えました。
頭の不自由なオヤジは、来月で卒寿(90歳)を迎えます。
かなりのスーパーボケ老人ですが、日本男性の平均寿命をはるかに超えて、寿命を更新中であります。
ま、介護といっても、なんとか2人とも自分でトイレは行けますので、下の世話はありません。
3度の食事の用意と洗濯、それと買い物や後片付けくらいなものです。
それでも高齢のため、いつ何時、何が起こるか分かりません。
そのため、いつでも2人の部屋に、駆けつけられるようにしています。
で、毎日、空いた時間は何をしているのかって?
はい、僕は毎回、実家に泊まり込んでいるときは、絶好の “読書三昧” に当てています。
たまには仕事を持ち込むこともありますが、よっぽど締め切りが迫っているとき以外は、朝から晩まで本を読んでいます。
実家の1階には、建築家であるアニキのアトリエがあります。
アトリエには壁一面に、はめ込み式の書架があり、かなりの蔵書が収納されています。
専門的な本もありますが、彼の家族や僕が読み終えた書籍類も置かれています(もちろん僕の著書もあります)。
「さて、今回は、誰(作家)を読もうか……」
と、実家に着くと、僕は真っ先にアトリエに入って、本を探します。
“『檀』 沢木耕太郎”
「う~ん、確か、以前、読んだよなぁ~」
と手に取り、ページをめくります。
なんとなく、内容は覚えていますが、もう10年以上も前の作品です。
再放送のサスペンスドラマと同じで、観たことは覚えていても、犯人やトリックなどの細部は忘れているものです。
僕はそのまま中庭へ出て、ディレクターチェアーに腰を下ろし、アイスコーヒーを飲みながら読み始めました。
沢木耕太郎といえば、僕にとっての青春のバイブル 『深夜特急』 を書いた作家です。
これにより、アジアへの旅に目覚めました。
そしてインドでは、珠玉のエッセイ 『バーボン・ストリート』 を読みながら旅を続けました。
ま、吉田拓郎と双璧をなす “我が青春の師” であります。
で、『檀』 とは、ご存知、昭和の無頼派作家、檀一雄のことであります(女優、檀ふみのオヤジです)。
まあ、これまた若い日に 『火宅の人』 を読んで、あこがれたものでした。
「ああ、僕もこんなハチャメチャな生き方をしてみたい」 なんてね。
その愛人との暮らしをつづった 『火宅の人』 を書いたハチャメチャな作家の妻、檀ヨソ子さんに沢木耕太郎が1年間かけて取材して書いた本が、この 『檀』 なのであります。
う~ん、やっぱり面白い!
やっぱり、どこかあこがれちゃうのであります。
でも、あこがれちゃうということは、僕はそこまでの無頼にはなれなかったということなのですね。
ちょっぴり、自分の人生のスケールの小ささに、いじけたりもするのでした。
朝、昼、晩と日がな一日、介護の合い間に中庭で涼みながら読書を楽しんでいます。
2014年08月23日
群馬の山が面白い
本日(23日) の上毛新聞31面。
全面に、上毛新聞社の出版本広告が掲載されました。
緑におおわれた夏色の谷川岳と青い空、白い雲。
そこに大きく書かれた白抜きの文字。
“群馬の山が面白い”
そして7冊の山に関する本が紹介されています。
『なるほど榛名学』 『群馬の県境を歩く』 『尾瀬国立公園ガイド』 『ぐんまの百名山』 『尾瀬紀行』 『群馬の山歩き130選』・・・
そして、ありました!
『電車とバスで行く ぐんまの里山てくてく歩き』
2011年に出版した、僕のゆる~い山歩きエッセイであります。
もう、3年も前に出した本なんですね。
著者自身、忘れかけていました。
そうなんですよ、僕は温泉ライターだから温泉の本ばかり書いていると思われがちですが、温泉以外の本も書いているのです。
でも、何事もかる~く生きる僕ですから、山だって真面目になんて登りません。
下心、ありあり登山なんであります。
すべては下山後の温泉とビールが目的の登山です。
だからマイカーは使用しません。
酔っ払って帰れるように、必ず公共交通機関を利用します。
広告には、こんなコピーが添えられていました。
<電車とバスを利用して、のんびり里山を歩いた紀行文。
上越、吾妻、信越、両毛、八高、上信電鉄の各線周辺と、路線バスを使って著者が里山に登り、自然と温泉を楽しむ。
行く先々には意外な名所や穴場的な山里の風景が広がり、新しい発見が相次ぐ。>
たぶん編集者の誰かが書いてくださった宣伝コピーなんでしょうけど、言い当てています。
これに、<うまい酒を飲み、ほろ酔い気分で帰る>が加われば完璧です!(冗談)
さあ、みなさんも、せめて休日くらい車社会に別れを告げて、スローライフ&スローレジャーを楽しんでみてはいかがですか?
2014年08月22日
「打ち上げ」 という名のライブ
先月、群馬県みなかみ町の奈良俣ダムで開催された 「利根川源流まつり」 に、我がスーパーローカルオヤジバンド 「KUWAバン」 が出演したことは、以前、このブログにも書きました。
※(2014年7月11日 「夏だ!ライブだ!源流まつり」、7月25日 「いざ、真夏のライブツアーへ!」 参照)
この時、主催者側からギャラが出たんですね。
当然、「この金で打ち上げをやろう」 という話になりました。
いつもなら、前橋市内の居酒屋にメンバーが集まって祝杯を上げるのですが、今回、ギター担当のT君が粋な提案をしました。
「どうせなら、どこかの宿を貸し切って、打ち上げライブをしませんか?」
それも、「みなかみ町で行われたイベントの打ち上げだから、みなかみ町の温泉地で」 ということになりました。
で、フットワークの良いT君のことです。
数日のうちに会場を見つけてきて、ライブ開催のチラシまで作ってしまったのです。
KUWAバン in 湯ノ小屋 トップス
The End of Summer LIVE 2014
う~ん、なかなか派手なチラシです。
これは、打ち上げのレベルではありませんぞ!
そして、迎えた当日(昨日です)。
会場は群馬県最北端温泉地、湯ノ小屋温泉の「ペンション・トップス」。
もちろん、源泉かけ流しの温泉付きペンションでの温泉ライブであります。
宣伝効果もあり、20人も入れば満席のレストランホールは、いっぱいになりました。
メンバー全員、ひと風呂浴びて、会場へ。
午後8時。
「今日は、先日開催された源流まつりの打ち上げも兼ねています。まずは、みなさんと一緒に乾杯をしたいと思います」
僕のかけ声とともに、メンバーもお客さんも一斉に生ビールのジョッキをかかげて、
「カンパ~イ!」
と、1時間を超えるライブがスタートしました。
2次会は、メンバー全員が客席に加わって、お客さんたちと酒を酌み交わしました。
3次会は、お客さんたちが帰った後、今度はペンションのママやスタッフたちと、今日のライブの打ち上げです。
気が付けば、午前4時。
飲んだ!歌った! 飲んだ! 飲んだ!
これぞ、“オヤジバンド遊び“ の醍醐味なのであります。
2014年08月20日
風は吹いているか?
「えっ、小暮さんは、まだ観てないんですか? あれは宮崎駿の最高傑作ですよ!」
デザイナーのK君が、酒を飲みながら熱く熱く語るのでした。
アニメ映画 『風立ちぬ』 のことです。
実は僕、1年前の劇場公開時に、このブログでも宮崎駿監督について書いているんですよね。
※(当ブログの2013年7月22日 「損得ではない10年」 参照)
だからブログの読者でもある彼は、僕は観ているものだとばっかり思っていたようです。
申し訳ない!
昨年の夏は、うっかり公開を逃がしてしまったのでした。
と、いうことで、K君と飲んだ翌日、僕はさっそくレンタルビデオ店に駆け込んで、『風立ちぬ』 のDVDを借りてきました。
いやいや、K君のおすすめに間違いはな~い!
泣けて、泣けて、泣けて、続けて2回も観てしまいましたよ。
えっ、そんなに悲しいのかって?
いえいえ、たぶん、僕が泣いたのはラストシーンではありません。
しかも、涙なんて一滴もこぼれませんでした。
ただ、ただ、心が震えるシーンが、何ヶ所もあったのです。
主人公の航空技術者、堀越二郎と、彼が尊敬するイタリアの設計家、カプローニは、互いの夢の中で何度も遭遇します。
二郎は、少年の頃に初めてカプローニと夢の中で会った時、自分は飛行機の設計技師になることを誓うんです。
でも、夢は遠く、月日はいたずらに過ぎるばかり。
それでも二郎は、夢を追い求めます。
「キミの10年を力を尽くして生きなさい」
カプローニは、二郎に会うたび、そう、念を押します。
そして、必ず彼に、こう問いかけるのです。
「風は吹いているか?」
ああ、もうダメです~!
このセリフが、僕の心の奥の奥のそのまた奥に大切にしまって置いた “パンドラの箱” の扉をこじ開けるのです。
「はい、吹いています」
と二郎が言うたびに、僕も心の中で、
<もちろん、吹いているにきまっているさ>
と、大声で叫んじゃうのです。
遠い遠い少年の日、夢見た世界があります。
その場所へは、いったい、どれくらい時間をかければたどり着くのでしょうか?
いつになるかは分からない、はるか遠い夢の世界ですが、
“風” なら今も、確かに吹いているのです。
2014年08月19日
日本一不幸な県
ぐんまちゃん人気や世界遺産登録の追い風を受けて、やっと 「地域ブランド力」 の最下位から脱却したというのにね。
またもや、汚名を塗られてしまいました。
先日、全国47都道府県ごとの地域や住民の幸福度を測定するために行われた民間の調査 「地域しあわせ風土調査」 というのが発表されました。
で、なななんと! 群馬県が総合評価で全国最下位に!
幸福度の最下位ですから、言い換えれば “日本一不幸な県” ということになります。
アンケート内容が新聞記事だけでは、いまひとつよく分からないのですが、
①やってみよう(自己実現と成長)
②ありがとう(つながりと感謝)
③なんとかなる(前向きと楽観)
④あなたらしく(独立とマイペース)
⑤ほっとする(安全と安心)
の5つの指標を20~64歳の男女1万5000人からインターネットでアンケートした結果のようです。
1位は沖縄、2位は鹿児島、3位は熊本、4位は宮崎と、上位は完全に九州地方が独占しています。
関東では、5位の東京が最高位。
神奈川が26位、千葉が31位、茨城32位、栃木37位、埼玉40位と下位に低迷。
関東は、人生や日常生活に満足してない人が多いエリアということが判明しました。
でもね、それにしても群馬の最下位は、ど~よ?
調査を行った広告代理店の博報堂と慶応大学のグループによれば、
「(群馬県は) 物価が安い、教育や娯楽、運動施設が充実しているといった点で高評価を得たものの、知名度や景観などの評価が低かったことが要因ではないか」
と分析しています。
がーーーっ! 知名度や景観って、県民の幸福度と関係あるの?
それって、どうみてもブランド力最下位だったコンプレックスを引きずってませんか?
こうなったら、「“日本一不幸な県” で幸せになろう」キャンペーンでも打って、自虐ネタで勝負をかけましょうかね!
群馬県民のみなさ~ん!
あなたは今、幸せですか?
2014年08月17日
温盛手成志の夏休み
昨日と今日の2日間、夏休みをいただきました。
と、いっても、僕の場合、半分は仕事なんですけどね。
フリーになって、約20年。
世間様のように土・日・祝日に休みを取ることはありません。
盆・暮れもなく、せいぜい正月休みがあるくらいです。
では1年中、休みがないのかといえば、いえいえ、たくさんありますよ。
仕事がないときが、休みです。
または、仕事をしたくない日が、休日です。
と、いうことで、無理矢理ですが、昨日と今日の2日間を僕の “夏休み” としました。
だからといって、家族でどこかへ出かけたわけではありません。
今年からライフワークで取材に通っている沼田市の老神(おいがみ)温泉へ行ってきました。
えっ、じゃあ仕事でしょ?って・・・・
これが、仕事のような、そうじゃないような、ただの飲み会のような、僕にも良く分からんのです。
要は、老神温泉で 「盆踊り大会」 が開催されているので、取材がてら遊びに行って来たのであります。
じゃあ、やっばり仕事じゃないかって?
う~~ん、微妙ですね。
だって、酒飲んで、踊るだけですからね。
僕と一緒に老神温泉を訪ねたのは、ディレクターのK氏とデザイナーのK君。
そして、ご主人と女将さんのご厚意により、昨晩、泊めていただいたのは、素泊まりの宿 「楽善荘」 であります。
※(楽善荘については、当ブログの2014年6月13日 「老神温泉 楽善荘」 参照)
ところが昨日は一日中、あいにくの雨!
「せっかく来ていただいたのに、これでは盆踊りをやるか心配ですね」
と、女将さん。
「僕らの日頃の行いが良いから、そのうち雨も上がるでしょう」
とかなんとか言っちゃって、ノンキなもんです。
雨でも晴れでも、僕らにとっては同じこと。
宿に着いたら、やることは2つ!
温泉に入って、湯上がりのビールの飲むことです。
僕らは雨音をBGMに、すぐに缶ビールを飲みだしました。
ご存知、ここ 「楽善荘」 は飲食物持ち込み自由の宿ですからね。
適当に、乾き物なんかテーブルに広げて、始めていたのです。
「そろそろ6時ですね。行ってみましょうか!」
と最初に腰を上げたのは、K氏です。
「えっ、外は雨ですよ。盆踊りは中止でしょう」
と言えば、
「盆踊りは8時からです。違いますよ、“おもてなし” ですよ」
“おもてなし” とは、老神温泉観光協会が運営している居酒屋なんです。
正しくは、「温盛手成志」 と書きます。
場所は、楽善荘のとなり!
「小暮さん、お世話になります。先日は新聞に老神温泉のことを書いてくださり、ありがとうございました」
と、カウンターの中から現れたマスターは、何を隠そう! 観光協会長の金子さんであります。
「うわ~、なんだか居酒屋の店主が板についていますね」
と言えば、
「好きなものを頼んでください」
と言われ、ならばと、まずはジョッキの生ビールと焼き鳥を注文しました。
カラン、コロン、カラン・・・
午後8時、少し前。
小雨の降る中を傘を差して、浴衣に下駄といういでたちで、温泉街の坂道をほろ酔い気分で上りました。
ところが、雨足は徐々に激しくなり、盆踊り会場に着く頃にはドシャ降り状態です、
もちろん、櫓(やぐら)が組まれた広場には、人っ子一人いません。
「こりゃ~、中止ですね」
と言いながら、協会の建物の軒下で雨宿りをしていると・・・
奇跡が起きました!
開催時間になった途端、ピタッと雨が止んだのです。
と同時に、快適な盆踊りの音楽が流れ出し、あれよあれよのうちに、着物姿の女将さんや浴衣姿の泊り客たちが、ぞろぞろと集まって来ました。
「こんな魔法のようなこともあるんだね」
と、僕。
「ええ、ふだんの行いが良いからですよ。我々の行く末を案じているようじゃないですか!ほら、見てください。星が出てますよ」
と、K君。
「ん? 本当だ! たくさん出ているね。僕らの未来は明るいぞ!」
しばらくすると、撮影を終えたK氏が戻ってきました。
「さ、そろそろ温盛手成志にもどって、飲み直しましょうや」
「そうしましょう!」
これが、僕の今年の夏休みでした。
2014年08月15日
69年後の子どもたちへ
今日、69回目の終戦記念日を迎えました。
“戦争を知らない子どもたち” も、今やおじいちゃん、おばあちゃんとなり、この国全体が “戦争を知らない国民” だらけになろうとしています。
年々、戦争を体験した人たちの数も減って、生の声がだんだん聞かれなくなりつつあります。
今日は、そんな終戦記念日に合わせて出版された本をご紹介します。
上毛新聞社から出版された吉川廣和著 『はだしっ子』 です。
※(「吉」 の字は、正しくは上の 「士」 が 「土」 です)
読者の皆さんは、覚えているでしょうか?
先月、僕は著者の吉川氏をインタビュー取材しました。
※(詳しくは、当ブログの2014年7月31日 「著書に会う」 参照)
氏は、群馬県旧箕郷町(現・高崎市)生まれ。
DOWAホールディング㈱ の元会長で、2007年に出版した 『壁を壊す』(ダイヤモンド社) はベストセラーになりました。
農家の6番目の末っ子として生まれ、3歳の時に終戦を迎えます。
この本は、太平洋戦争直後の貧しい時代を生きた小学校時代の6年間の記録です。
氏はインタビューで、このように話しています。
<70歳を過ぎて人生を振り返ると、少年時代の重要さが分かってくる。戦後のあの貧しい時代を作ったのは大人たちだったんだと……。
「戦争反対!」 なんて軽々しく言うと言葉だけが踊ってしまうけど、生々しい姿を描くことで、今の子どもたちが 「やっぱり戦争はやめようよ」 と思ってくれたらいいね。>
そして、大人たちにも、こんなメッセージを贈っています。
<国家が豊かなら贅沢もいいでしょう。でも日本の財政が破綻している中での国民の贅沢は、さらにこの国を窮地に追い込みます。
我慢のできる範囲でいい。今一度、立ち止まって考えてみてほしい。次の時代を担う子どもたちのために……。>
戦前、戦中のことを著した書物は数多くありますが、終戦直後の庶民の暮らしを描いた本は少ないと思います。
日本の未来が危うい現代だからこそ、いまを生きる子どもたちと親たちに読んでほしい1冊です。
●『はだしっ子』(上毛新聞社刊、本体1,100円+税) は、最寄りの書店または上毛新聞取り扱い新聞販売店でお求めになれます。
2014年08月14日
オー・マイ・ゴールド!
5年ぶりに運転免許証の更新に行ってきました。
5年ぶりということは、そう、“ゴールド”免許だったのです。
が! 今回の更新で、免許証の色が変わってしまいました。
“無事故・無違反・安全運転” がモットーの模範ドライバーだったのに・・・
悪夢が起きたのは、忘れもしない昨年の5月。
我が家と実家を結ぶ、通い慣れた道路でのこと。
その日も、老いた両親の夕食を作るために、実家へ車を走らせていました。
いつもの信号機のないT字路。
ここは、左側は見通しが良いのですが、右側は人家の塀があるため視界が悪いのです。
当然、「止まれ」 のある停止線からでは、右方から来る車を確認することができません。
いつものように最徐行をして、停止線の先まで行き、視界が開けたところで停止しようとした、その矢先!
「はーい、そこの黒い車の運転手さーん! 止まってくださーい!」
とパトカーに呼び止められました。
<えっ、だれ? 僕? まさか、今、停止して左右確認したじゃん! おいおい、人違いでしょ?>
とか何とか、ゴチャゴチャと口ごもっているうちに、おまわりさんがやって来ました。
「あれ、気づかなかった? 今のところ、一時停止ですよ!」
「知ってますよ。だから止まったでしょ?」
「停止線では、止まってませんね」
「だって、あそこじゃ、見えないんだもの!」
「いえいえ、停止線では止まってください」
てな具合で、反則キップを切られてしまったのであります。
罰金の7,000円も痛かったけど、今回のゴールド免許の剥奪(はくだつ) は、プライドが傷つきました。
だって、“無事故、無違反、安全運転” がモットーの模範ドライバーですからね!僕は・・・
で、今日、しっかり2時間の講習を受けてきたのであります。
でもね、1年前のことですけど、今になって、ちょっぴり反省もしているんですよ。
今日の講習によれば、交差点には 「停止線」 と 「ドットライン」 というのが引かれているんですってね(知りませんでした)。
「停止線」 は交差点の手前、「ドットライン」 という白い点線は車道との境界線にあります。
ですから、「止まれ」 のある停止線で、まず一時停止をしてから、視界の開けるドットラインまで徐行して、ふたたび停止して左右を確認しろ!ということなんですって。
なーるほどね。
やっぱり、僕は違反を犯していたわけです。
すみませんでした。
でも、ぐやじぃぃぃぃぃ~!!!!
オー・マイ・ゴールド!
2014年08月13日
おかげさまで60回
「よぉ、小暮さん! 毎週、読んでるからね」
そう、声をかけてくれたのは、近所にお住まいのTさん。
温泉好きで知られるご老人です。
愛犬マロ君の散歩をしていると、時々、呼び止められて温泉談義をします。
「うちはさ、小暮さんの記事を読むために新聞を替えたんだからね」
だなんて、さすがに僕も恐縮してしまいました。
でも最近、このように声をかけられることが多くなりました。
先日も某温泉旅館に泊まった翌日、ロビーへ下りて行くと、
「おはようございます。今日の新聞に載っていますね。ちょうど読んでいたところです」
と、宿のご主人が新聞を広げていました。
そうです、この日は水曜日だったんです。
僕は昨年の4月から毎週水曜日、朝日新聞の群馬版に 『小暮淳の温泉考座』 というコラムを連載しています。
スタート時は、こんなにも続くとは思っていませんでしたが、おかげさまで本日の掲載で第60回を迎えることができました。
週刊のコラム連載というのは初の試みだったので、ちょっぴり不安もあったのです。
でも担当編集者に励まされながら、なんとか今日まで書き続けています。
もちろん、読者あってこその連載です。
時おり、新聞社に届く読者からの 「毎回、楽しみにしています」 の便りに、勇気づけられています。
だって、“ライター殺すに刃物はいらぬ。たったひと言 「つまらない」 と言えばいい” のですからね!
読者の皆さま、いつもいつも本当にありがとうございます。
末永くご愛読してくださりますようお願い申し上げます。
これからも、もっともっと面白くて、ためになる温泉話をお届けいたします。
2014年08月12日
赤兎馬の酔夢② ふたたび
昨晩、またしても赤兎馬(せきとば) に酔いしれてしまいました。
※(赤兎馬については、当ブログ2014年7月14日 「赤兎馬の酔夢」 参照)
「あの後、小暮さんのブログを見たというファンの方がお見えになりましたよ」
店に入るなり、マスターから言われました。
「えっ、ブログですか?」
と驚く僕。
だって、確かに以前、この店で酒を飲んだことはブログに書きましたが、店名までは書きませんでしたからね。
どうも、ブログの文面から場所と店を探し当てて、訪ねて来たようです。
ちなみに前回、この店を訪ねた時のブログでは・・・
<駅前大通りに面した雑居ビルの2階。ドジョウの寝床のように細長くて狭い、小さな居酒屋です。>
と、記されています。
これに、「高崎市」 であることと、「赤兎馬」 という幻の芋焼酎が飲めること以外の情報は一切ありません。
なのに、読者様は現れたのですね。
やっぱり、読者様は神様であります。
「で、その読者は初めて来たお客さん?」
「もちろん、そうですよ。小暮さんのブログを見て来たと言ってましたから」
「と、いうことは、もしかして赤兎場を飲んだ?」
「はい、飲まれました」
う~ん、なんか、この流れっていいよね!
“群馬の吉田ルイ” になったような気分です。
著者と読者が、ブログを通じてつながっているって、最高じゃありませんか~!!
と、いうことで僕も、グィ~っとジョッキの生ビールを飲み干して、
「マスター、じゃあ、赤兎馬をロックでちょうだい! あ、それと、塩モツ煮もね」
キーーーーッ、これこれ、これですよ!
五臓六腑に染み渡る芋焼酎のキレのいい旨みと芳醇な香り・・・
また、これに 「塩モツ煮」(なんと、一皿たったの100円) が、合うのなんのって、ベストパートナーであります。
みそで煮たモツ煮と違い、うっすら塩味で、やわらかくて、芋焼酎のアテにはピッタリであります。
1杯が2杯、2杯が3杯、4杯、5杯・・・
気の置けない秘密結社の面々と、暑い夏の夜を熱~く語り明かしたのでありました。
PS
今回、マスターのご厚意により、店名公開の許可をいただきました。
『魚貝串焼 楽縁(たのえん) 居酒屋』 高崎市あら町116 新井ビル2F
であります。
2014年08月10日
老神温泉 「旅館 石亭」
旅館の前に立つと、湯が良い宿かどうかは、なんとなく分かるものです。
老神温泉(沼田市) の温泉街のはずれにたたずむ小さな旅館 「石亭」 も、すぐに湯が良いことが分かりました。
決して華美な宿ではありません。
でも、歴史を刻んだありのままのたたずまいに、長年、湯治客を受け入れている宿であることが分かります。
団体客や観光客ではなく、湯治客に愛されてきた宿であれば、湯にハズレることはありません。
さらに、看板には “湯元” の文字。
湯元とは、自家源泉を保有している宿のことです。
それも、湯の元を管理しているわけですから、昔から他の旅館に湯を分け与えるくらい湯量が豊富な源泉を持っているということです。
老神温泉では、数少ない湯元の宿であります。
と、いうことは、代々受け継がれた腕の良い湯守(ゆもり) がいるということ!
「うちは客の9割は、常連の湯治客です。定期的にやってきては、3日~1週間は滞在されていきます」
と、2代目主人の中村守さん。
創業は昭和41(1966)年。
石屋を営んでいた先代が、この地に旅館を開業しました。
「それで石亭です。ま、風呂場を見てください。先代のこだわりが見れますから」
との主人の言葉に、居ても立ってもいられなくなり、話もそこそこにタオルを片手に浴室へ!
う~ん、蒸された空気とともに、かすかに漂ってくる硫黄臭。
これぞ温泉!という香りです。
浴槽は大きからず、小さからず。
僕が一番好きなサイズの湯舟であります。
湯口が奥にあり、源泉をかけ流すには、理想の構造をしています。
で、浴室の壁を見て、驚いた!
チルチルバラバラと、色鮮やかな石畳のような文様が・・・
この壁面にはめ込まれている石は、すべてメノウと水晶とのことです。
今までに何百という浴室を見てきましたが、こんな宝石箱のような浴室は初めてです。
ズバリ、昔は 「宝石風呂」 と呼ばれていたそうです。
「夏のこの時季は、湯の調節が一番難しいんだよ」
という浴槽内の湯は、かなり熱めです。
「冬場なら窓の開閉だけで、温度が下がるんだけどね。だからといって注ぎ込む湯の量を絞り込み過ぎると、湯が汚れてしまう。難しいね」
と言って、2代目湯守は笑ってみせる。
そして、僕を浴室へ見送りながら、こんなことを言いました。
「客が水で薄めるぶんには、かまわないよ」
ですって。
なるほど、あくまでも加水をせずに生一本の源泉で勝負しようとする湯守のこだわりなのですね。
では、僕もその湯守の心に応えるべく、決死の覚悟で湯舟へ・・・
でも、アツーーーイ!
(ご主人、ごめんなさい。僕は猫肌なもんで、熱い湯が苦手なんです)
お言葉に甘えて、少しだけ加水させていただきました。
それでも、沈めた時点ですぐに蛇口を止めて、なるべく源泉に近い状態で湯をいただきましたよ。
ガツーンと肌に染み渡る、存在感のある湯であります。
きっと、この浴感がクセになって、常連客は通って来るんでしょうな。
あっぱれ!の湯であります。
2014年08月09日
勝てぬとも負けず
1年で一番長い日が、終わりました。
昨日は、僕の誕生日でした。
そして、約束どおり “アイツ” はやって来ました。
でも、今年のアイツは少し違った。
例年ならば、<オレって、こんなオヤジになっちゃうの?> とか、<相変わらず貧乏じゃん!> とか、<イメージしていた未来と違うな> とか、<それで、オレの夢は叶ったのかよ> なんて、上から目線で僕を問い詰め続けるのですが、なぜか今年は同情的でした。
<大人の事情ってよく分からないけどさ、生きざまを変えずに生きるのって、そんなにしんどいの?>
なーんて、気づかってくれるのです。
たぶん、アイツは、この1年間の僕を見ていたのかもしれませんね。
「ああ、けっこうしんどいぞ」
すると彼は、「お見通しです」 と言わんばかりに、<みんな大変みたいだね> と僕の仲間たちのことまで案じてくれたのです。
僕の友人たちは、みんなフリーランスで生きる一匹狼たちです。
ともに若い頃から夢を追い続け、なんとかその世界で生きています。
でも現状は、若い頃に夢見ていたほど甘くはありません。
妥協せず、自分の理想を貫こうとすれば、壁にぶち当たります。
その壁をよじ登ってもよじ登っても、頂上は一向に見えてきません。
そして何よりも、常に “貧乏” は覚悟しなくてはならない極限的な生活を強いられています。
「俺は、逃げ切ってみせるぜ!」
そう言ったのは、フリーカメラマンのS君です。
「貧乏でもいい。今さら引き返すことも、人生を変えることもできないよ。ここまで来たんだから、逃げ切るしかないね」
酒を酌み交わしながら言った彼の言葉は、そのまま僕にも当てはまることでした。
「もう俺たちは間違っても勝ち組になれん。だからってさ、絶対に負けたくはない!」
そう言ったのは、画家のK君です。
彼は、注文を受けてから絵を描いているわけではありません。
描きたい絵を描いて、年数回の個展会場で販売している根っからの “絵描き” です。
当然、贅沢な生活など手に入れられるわけがありません。
「ああ、オレだって負けたくはない。ここまできたら、僕らの生き方が間違ってなかったことだけは証明しないとな」
そう言葉を残して、僕は彼のアトリエを後にしました。
長い長い誕生日の一日でした。
もしかしたらアイツには、言い訳に聞こえたかもしれませんね。
でもアイツは、最後まで僕の話を <うん、うん> とうなずきながら聞いていました。
<じゃ、また来年くるから!>
そう言って、日付けが変わるとアイツは消えていきました。
来年には、もう少しアイツが喜びそうな大人になっていたいと思います。
2014年08月07日
今年もアイツがやって来る!
♪何回目かの記念日が 今年も明日またやってくる
もう一つ年を重ねるわけだね
祝ってなんかくれるなよ♪
<吉田拓郎 『誕生日』 より>
明日、56回目の記念日がやってきます。
毎年、毎年、この日が近づくと、知らず知らずのうちに僕は、この歌を口ずさんでいます。
♪20才の頃ならそいつもいいだろう
仲間を集めて飲んで踊って
世の中を変えてやるんだと 力一杯右手をさし上げる♪
そして、僕は毎年、恐怖におののいています。
決して、年をとることが怖いからじゃありません。
アイツが、やって来るからです。
アイツとは、僕の心の中に住んでいる “20才の自分”。
♪ひけ目も感じているけれど
違った奴が一人居てもいい
あいつもこいつもどいつも同じなら
人間やっている気がしない♪
そう、僕は20才の時、自分と約束したことがあるんです。
それは 「生きざまを変えない」 ということ・・・
♪若いからとか大人だからだとか
理由になるけど今さら面倒で
今の自分をやさしくみつめたい
20才の頃もきっとそうだった♪
あれから36年・・・
アイツは毎年、誕生日になると現れます。
そして、僕に向かって、こう言うのです。
「僕の未来は、どう?」
♪あいつは変わった時代も変わったと
話している奴 臆病なんだよ
自分の心を確かにしておこう
20才の頃もきっとそうだった
2014年08月06日
老神温泉 「金龍園」
群馬県沼田市利根町の老神(おいがみ)温泉には、現在、15軒の温泉宿があります。
僕は今年の6月から、すべての宿を網羅すべく、コツコツと取材活動を続けています。
昨晩は、前老神温泉観光協会長である主人の小尾孝男さんと、3代目で専務の和正さんのご厚意により 「金龍園」 に泊めていただき、2日間にわたり温泉街や周辺を取材してきました。
「金龍園」 は、旧老神温泉街の一番奥。
片品川に架かる内楽橋のたもとに建つ旅館です。
あえて “旧” と表現したのは、現在の老神温泉は昭和10年に対岸の穴原温泉と大楊温泉を吸収合併して誕生した温泉郷だからです。
金龍園の創業は昭和45(1970)年ですが、前身は 「末広館」 という戦前から商っていた老舗旅館でした。
地主だった先代が、廃業した末広館の跡地に、現在の旅館を建てて営業を再開させました。
ちなみに旅館名の 「金龍」 とは、先祖に 「金平」 という人がいたことと、先代の奥様の名が 「たつ」 だったからとのことでした。
う~ん、旅館名の由来って面白いですね。
僕は取材に伺うと、必ず由来を訊くことにしています。
「金龍館」 といえば、マニアの間では全国区で知られている旅館なんですよ。
それは、な~んでか?
答えは、“混浴” のある旅館だからです。
えっ、混浴のある温泉は、群馬県内でもほかにあるだろうって?
確かにそうですが、でも、ここは 「男湯」 がないんですよ!
女性専用の婦人風呂はあるんですけどね。
大浴場も露天風呂も混浴です!
(あと貸切の露天風呂があります)
て、ことは、男性は常に混浴であることを意識しなくてはなりません。
よって、脱衣所には、こんなメッセージが書かれています。
<淑女が入浴中は腰に巻いてお入り下さい>
貼り紙の下には、入浴衣(腰巻) が用意されています。
では、僕も、さっそく突撃潜入ルポへ!
ん? 誰もいません。
っていうか、カメラマン同行の取材入浴ですものね。
誰もいるわけありませんって。
大浴場も露天の岩風呂も貸切状態なので、もちろん腰巻は使用せず、生まれたままの姿で撮影しました。
引かれている源泉は7号泉、8号泉と10号泉の混合泉。
ほんのり硫黄の香りがするアルカリ性単純硫黄温泉と、サラリとした単純温泉という泉質の異なる2種類の湯が楽しめます。
もちろん湯上がりは、食事処で上州牛や赤城豚などの地の食材や、川魚や山菜などの里山料理をいただきながら、地酒に酔いしれました。
湯良し、宿良し、人良し。
群馬には、いい温泉、いい旅館が、たくさんありますね。
あ~、群馬って、いいなぁ~!
2014年08月04日
夏の終わりにペンションライブ
みなさ~ん、お元気ですか~!
夏を楽しんでいますか?
えっ、毎日、仕事仕事仕事で、夏休みも盆休みもないって?!
たまの休日も夏バテで、家でゴロゴロしているって?!
それじゃあ、なーんもいいことないじゃありませんか!
夏を頑張った自分に、ご褒美をプレゼントしましょうよ!
そう、夏の終わりに、僕らと高原のペンションで遊びませんか?
しかも、温泉付きですよ!
僕らとは、僕が所属するスーパーローカルオヤジバンド 「KUWAバン」 のメンバーです。
今回のメンバーは、2012年と2013年に出版した 『みなかみ18湯』 上下巻の制作スタッフです。
取材でお世話になった湯ノ小屋温泉の 「ペンション トップス」 のご厚意により、夏の終わりに、アットホームなミニライブを開催することになりました。
温泉に入って、ゆっくりお酒を飲みながら、懐かしのオールディーズやGS、フォークのナンバーを一緒に歌いませんか?
たった6部屋、限定20名だけのプレミアムライブですぞ!
(もちろん、宿泊せずにライブだけの観覧もできます)
ぜひ、この夏、頑張った自分のご褒美に、高原のペンションへいっらしゃ~い!
僕らと一緒に、楽しいひとときを過ごしましょう!
KUWAバン in 湯ノ小屋 トップス
The end of summer LIVE 2014
●日 時 2014年8月21日(木) 20:00~
●会 場 湯ノ小屋温泉 「ペンション トップス」
群馬県利根郡みなかみ町藤原4995
●料 金 1,000円 (1ドリンク+おつまみ付)
※限定20名様 (宿泊のお客様は観覧無料)
●出 演 KUWAバン G&V 桑原 一 (アートディレクター)
G&V 小暮 淳 (温泉ライター)
B 酒井 寛 (カメラマン)
EG 木村 崇利 (みなかみ町観光協会)
●問 合 湯ノ小屋温泉 「ペンション トップス」
TEL.0278-75-2024
お申し込みは、お早めに!
2014年08月03日
カブトムシ、飛んだ。
ブーーーン、ブーーーン、バシッ!
ブーーーン、ブーーーン、バシッ!
僕の仕事部屋は、自宅の2階。
夜は、カーテンを閉め切って、この時期はエアコンをかけて仕事をしています。
ブーーーン、バシッ!
数日前のこと。
外で大きな羽音がしたと思うと、窓ガラスに何かが体当たりする音がしました。
それが、2回、3回と繰り返されます。
「ん? 虫かな?」
その程度にしか思っていませんでした。
ところが、次の日も、その次の日も、音の主はやって来ます。
あわててカーテンを開けて、外を見てみましたが、それらしき姿はいません。
ところが昨晩、正体が判明しました。
深夜、仕事を終え、シャワーを浴びた後、リビングでビールを飲んでくつろいでいた時です。
「あっ、カブトムシ!」
と、一緒にビールを飲んでいた長男が、窓を指さしました。
見ると、大きなカブトムシが飛翔しながら、何度も何度も網戸に体当たりしています。
一向に、網戸に留まる気配がありません。
「こいつだよ、オレの部屋に数日前から訪ねて来ているヤツは!」
僕は、息子に、この数日間の話をしました。
それにしても、稀(まれ) に見る大きなカブトムシです。
て、いうか、カブトムシ自体が珍しい。
20年近く、この地に住んでいますが、カブトムシなんて飛んで来たことは一度もありません。
「捕まえるか?」
と息子に問えば、
「いいよ。お盆も近いしさ」
と、殊勝な返事が返ってきた。
そう、昔々のこと。
死んだばあちゃんに言われたものです。
「ご先祖様が虫に姿を変えて会いに来るから、お盆中は虫を捕ってはいけない」 と・・・
それまでに捕まえた虫も、お盆が近くなると、泣く泣く全部、逃がした思い出があります。
「だよな。でもコイツ、オレに何を言いに来たんだろうね」
っていうか、あなたは先祖ですか?
それとも……
僕はカブトムシを見つめながら、若くして逝った友人たちの顔を思い浮かべました。
「おい、誰なんだい?」
ブーーーーーーーン
カブトムシは、大きく羽ばたくと、闇の中へ飛んで消え去りました。