2014年08月09日
勝てぬとも負けず
1年で一番長い日が、終わりました。
昨日は、僕の誕生日でした。
そして、約束どおり “アイツ” はやって来ました。
でも、今年のアイツは少し違った。
例年ならば、<オレって、こんなオヤジになっちゃうの?> とか、<相変わらず貧乏じゃん!> とか、<イメージしていた未来と違うな> とか、<それで、オレの夢は叶ったのかよ> なんて、上から目線で僕を問い詰め続けるのですが、なぜか今年は同情的でした。
<大人の事情ってよく分からないけどさ、生きざまを変えずに生きるのって、そんなにしんどいの?>
なーんて、気づかってくれるのです。
たぶん、アイツは、この1年間の僕を見ていたのかもしれませんね。
「ああ、けっこうしんどいぞ」
すると彼は、「お見通しです」 と言わんばかりに、<みんな大変みたいだね> と僕の仲間たちのことまで案じてくれたのです。
僕の友人たちは、みんなフリーランスで生きる一匹狼たちです。
ともに若い頃から夢を追い続け、なんとかその世界で生きています。
でも現状は、若い頃に夢見ていたほど甘くはありません。
妥協せず、自分の理想を貫こうとすれば、壁にぶち当たります。
その壁をよじ登ってもよじ登っても、頂上は一向に見えてきません。
そして何よりも、常に “貧乏” は覚悟しなくてはならない極限的な生活を強いられています。
「俺は、逃げ切ってみせるぜ!」
そう言ったのは、フリーカメラマンのS君です。
「貧乏でもいい。今さら引き返すことも、人生を変えることもできないよ。ここまで来たんだから、逃げ切るしかないね」
酒を酌み交わしながら言った彼の言葉は、そのまま僕にも当てはまることでした。
「もう俺たちは間違っても勝ち組になれん。だからってさ、絶対に負けたくはない!」
そう言ったのは、画家のK君です。
彼は、注文を受けてから絵を描いているわけではありません。
描きたい絵を描いて、年数回の個展会場で販売している根っからの “絵描き” です。
当然、贅沢な生活など手に入れられるわけがありません。
「ああ、オレだって負けたくはない。ここまできたら、僕らの生き方が間違ってなかったことだけは証明しないとな」
そう言葉を残して、僕は彼のアトリエを後にしました。
長い長い誕生日の一日でした。
もしかしたらアイツには、言い訳に聞こえたかもしれませんね。
でもアイツは、最後まで僕の話を <うん、うん> とうなずきながら聞いていました。
<じゃ、また来年くるから!>
そう言って、日付けが変わるとアイツは消えていきました。
来年には、もう少しアイツが喜びそうな大人になっていたいと思います。
Posted by 小暮 淳 at 14:17│Comments(0)
│つれづれ