温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2024年06月29日

ファンレターはカンフル剤


 1通のメールが届きました。
 送信者は、僕が日頃から仕事でお世話になっている 「ちいきしんぶん」(ライフケア群栄) の社長です。
 たった一言、こう記されていました。

 <うれしいハガキが届きました>

 添付画像を開くと、ハガキの写真が現れました。
 差出人は、読者のようです。


 <6月7日号 小暮淳の取材こぼれ話>
 そう大きく見出しが付いていました。

 『小暮淳の取材こぼれ話』 は、今年5月から高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」 で連載が始まった僕のショートエッセイです。
 タイトルの通り、今までのライター人生の取材先で体験したアクシデントや悲喜こもごものエピソードを、面白おかしく紹介しています。
 いわば、取材で拾った副産物のようなネタです。
 原価ゼロの廃棄食材の再利用のような、地球にやさしいエコな記事なのであります。


 もちろん、こんな発想はライターの僕にはありませんでした。

 この記事の連載を提案してくださったのが、何を隠そう 「ちいきしんぶん」 の社長でした。
 「小暮さん、今までに、どこにも書いていないようなネタってない? たとえば取材先での出来事とか?」
 そのひと言で、連載が決まりました。


 まさに盲点でした。
 考えてみたこともありません。
 言われてみれば確かに、雑誌の編集者や記者時代を含めれば、35年以上も取材活動を続けてきました。
 当然ですが、現場は常にシナリオのない舞台です。
 アクシデントは、付きものです。
 予想外のいいこともあれば、絶体絶命のピンチも訪れます。

 でも、それらは取材目的とは関係ありませんから、記事になることはありません。
 「それを書いてみたら?」
 とは、まさに目からウロコが落ちました。

 そして始まった連載が、「小暮淳の取材こぼれ話 『ちょこっと小耳に』」 です。


 ハガキには、こう書かれていました。
 <毎号楽しみにしています。足しげく、あるいは心優しく、地元に愛されている方である事を今回もつくづく感じました。「日々、徳を積んでいる私には、こういう時に手を差し伸べてくれる神々がいるのだ。」 との結びは、正にその通りです。全く恐れ入りました。と付け加えて、大いに賛美致します。>

 M子さんという70代の女性からでした。
 ありがとうございます。
 本当に、うれしい!


 こんな廃材を寄せ集めて作ったような小さなエッセイを、ここまで読み込んでくださっていることに、ただただ敬服いたします。
 読者って、僕にとっては神様です。 
 その神様のひと言で、ライターは書き続けることができるのです。

 ファンレターは、何よりも勝るカンフル剤です!


 M子さん、シリーズは、まだまだ続きますよ。
 次号も楽しみに待っていてくださいね。
 (次回は7月5日号に掲載の予定です)
  


Posted by 小暮 淳 at 12:41Comments(0)執筆余談

2024年06月28日

R Y U


 「以心伝心」
 手にしたとき、その言葉が浮かびました。

 以心伝心とは、口に出して説明をしなくても、心が自然に通じ合うことですが、一般的には人と人の関係に使う言葉です。
 でも、その日、僕の脳と体は何か強い力に導かれるように、動き出しました。


 現在、僕は 「竜」 を追いかけています。

 今年は、辰年。
 なので、竜にまつわる県内の地名や伝説を調べ上げ、その由来やいわれ、そして舞台を探し訪ねています。


 数日前、さる町に伝わる竜伝説を調べようと、最寄りの図書館へ行きました。
 ところが休館日でもいのに、蔵書整理のためか臨時休業の貼り紙が……。
 仕方なく、その日はあきらめて、その足で書店へと向かいました。

 書店といっても古本屋のチェーン店です。
 僕は、暇があれば立ち寄って、文庫本の 「あ」 ~ 「わ」 までの著者別の棚を見て回ります。
 ひと通り見て、気に入った本がなければ、そのまま店を出ます。

 まあ、僕にとっては、ライフワークのような習慣の一つです。


 で、その日、まるで何かに導かれるかのように 「し」 の棚に、吸い寄せられました。
 柴田哲孝
 僕の好きな作家の一人です。

 群馬県沼田市が舞台の 『TENGU』 は大藪春彦賞を受賞した傑作です。
 茨城県牛久沼が舞台の 『KAPPA』 も読みました。
 いわゆるファンの間ではUMA (未確認生物) ミステリー3部作です。

 もう1冊が 『RYU』。
 ところがなぜか僕は、この本だけが未読だったのです。
 気にはなっていたのですが、出合いのチャンスがなかったようです。

 が!
 その時、僕の目に、R・Y・U の3文字が飛び込んで来たのでした。


 「竜」 を調べに図書館へ行ったら、「竜」 には合えず、古本屋を覗いたら 「RYU」 に合えたということです。
 さっそく今、むさぼるように読んでいる最中であります。

 今回の舞台は、沖縄県。
 南国の平和な村に伝わる双頭の竜、「クチフラチャ」。
 はたして、その正体は?


 実は昨日、県内に伝わる竜伝説を追って、ある古刹を訪ねてきました。
 住職にお会いして、竜が残していった “モノ” を見せてもらいに……

 竜を追って、謎学の旅は、まだまだ続きます。
   


Posted by 小暮 淳 at 10:27Comments(3)読書一昧

2024年06月26日

黒いランドセル


 すでに “ラン活” が始まっているといいます。

 「ラン活」 とは、来年度に小学校へ入学する子どもへのランドセル選びのこと。
 “選び” というのが、いかにも現代っぽいですね。
 だって、選ぶも何も昔は、2種類しか色の選択肢はありませんでしたから。

 男の子は黒、女の子は赤。
 親も、おじいちゃんもおばあちゃんも、誰もが迷わず、そう決めつけて買い与えていました。
 もちろん、それに対して異を唱える子どもいませんでした。
 だって、それが当たり前だと思っていたから……


 でも現代は、多様性の時代です。
 自由が、選択肢の幅を限りなく広げています。

 カバン屋の店頭には、色とりどりのランドセルが、まるで花屋の店先のように百花繚乱です。


 確かに選択肢は広がりました。
 では、それを使う、または買い与える人の意識は、時代の流れに準じて変われたのでしょうか?

 こんな新聞記事を見つけました。

 「息子がピンク色のランドセルを欲しがっている」 という母親の声。
 親としては、子どもの好きな色を買ってあげたいと思う一方で、周囲の目を気にしてしまうという相談です。
 「うちの子だけ浮いてしまうのではないか?」 「いじめに遭いはしないか?」
 親ならば当然の不安であります。


 この記事を読んだとき、僕は実の姪のことを思い出しました。
 30年以上も昔の話です。
 当然、まだランドセルの色の選択肢は黒と赤しかありません。

 姪は、「絶対に赤は背負いたくない」 といいました。
 そして、黒が好きなのではなく、赤が嫌いという理由だけで、黒いランドセルを買ってもらいました。
 当時の兄夫婦の心情は、いかばかりか?
 かなり、思い切った潔い決断だったと、同じ親として思います。

 案の定、姪はいじめに遭いました。
 「おとこ! おとこ!」 と、はやし立てられ、ランドセルにも落書きをされたといいます。

 でも勝気な姪は、その都度、
 「男じゃないもん! なんで女の子が黒を持っちゃいけないのよ!」
 と反撃をくり返していたといいます。


 今、時代は、どれほど変わったのでしょうか?
 色で性別を選択する 「無意識の偏見」 は、なくなりつつあるのでしょうか?
 それとも建前的に選択肢のみ広がり、人の心の中は、まだまだ偏見に満ちているのでしょうか?


 そんな姪も今は、一児の女の子の母親であります。
 彼女の子は、何色のランドセルを選ぶのかな?
   


Posted by 小暮 淳 at 11:23Comments(2)つれづれ

2024年06月25日

余命25年


 「余命」 と聞くと、末期がんなどの重い病気を宣告された患者を連想しがちですが、さにあらん。
 余命とは、読んで字のごとく、残りの人生のこと。
 よって今年、オギャーと産まれた赤ちゃんですら、すでに余命のカウントダウンは始まっているのです。


 日本老年学会が今月、新たな報告書を公開しました。
 これによると、「高齢者」 の定義を新たな観点から再検討した結果、国際的には基準を 「何年生きたか」 ではなく、「あと何年生きるか」 に置いた議論が広まっているとのことです。
 そこでキーワードとなるのが 「平均余命」 という言葉。

 この平均余命が15年となる年齢が “老後” の始まりとされました。


 これに日本を当てはめると、男女平均で74~75歳が平均余命15年の 「老後」 の始まりとなります。
 う~ん、いわゆる後期高齢者と呼ばれる人たちですね。
 ということは、それより10歳若い前期高齢者は?
 一歩手前の “老後予備軍” ということになります。

 はい、まさに今の僕です。
 なので僕は、余命25年を宣告されたことになります。
 まあ、個人差があるでしょうが、両親の死期と照らし合わせても妥当な余命かと思われます。


 ということで、このブログが書けるのも、あと25年です。
 読者のみなさん、残りわずかとなりますが、最後までよろしくお願いいたします。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:24Comments(2)つれづれ

2024年06月24日

不自然な暴力


 書庫なんていう大それたものじゃないんですけどね。
 僕の仕事部屋を出た廊下の右側に、小さな納戸があるんです。
 一畳半ほどの細長い、物置部屋です。

 ドアを開けるのもやっとぐらい、床には廃棄物同然の不用品が転がっています。
 でも、僕が時々、こうやって、この部屋を訪れるのは、やはりここが自称 “書庫” だからなんです。

 壁には一面、書棚が配されています。


 先日、読み終えた本を仕舞いに、入った時でした。
 書棚の上のまた上の方に、あずき色をした背表紙に、ひらがな三文字の文庫本が目に留まりました。
 背伸びをして、取り出しました。

 『こころ』 夏目漱石

 なつかしい!
 ページをめくると中は、すでにセピア色に変色していました。
 いったい、いつ読んだのだろう?

 奥付を開きました。

 昭和二十七年二月二十九日 発行
 昭和五十五年二月二十五日 八十七刷
 とあります。

 ほほう、40年以上前の本だ。
 僕は20代前半です。
 いったい、いくらだったんだ?

 定価220円

 安かったんですね。
 今は文庫本でも、平気で7~800円しますものね。


 で、どんな話だったっけ?
 と、裏表紙の解説に目を通しました。

 そうそう、鎌倉の海岸で出会った “先生” という主人公の不思議な魅力にとりつかれた学生の話でした。
 出会いのシーンは、おぼろげに覚えていますが、その後、どうなったんだっけ?
 結末は?


 あー、もう、気になって気になって、仕方がありません。
 これは、一気に読破するしかない!
 と、仕事部屋にもどり、1ページ目を開きました。

 が、……ダメです。
 字が小さ過ぎます。
 今の文庫本の文字に比べると、半分ほどのサイズしかありません。

 いつも読書に用いているお気に入りの老眼鏡をかけてみましたが、ダメです。
 クッキリ見えるだけで、やはり字が小さ過ぎて読めません。


 ということで、近くの100円ショップまで行って、「拡大鏡メガネ」 とやらを購入してきました。
 "らくらく読める1.5倍” です。
 これなら60代の僕にも読めます。


 さて、みなさんは若い日に 『こころ』 は読みましたか?
 大人になってから読むと、若い頃には感じ取れなかった細かい主人公の心情が読み取れて、面白いものですよ。
 ことのほか今回、僕は、“先生” が冒頭で “私” に出会う早々に投げかけた言葉が、終始、胸に引っかかりながら読んでいました。

 それは 「不自然な暴力」 です。


 <新潮文庫 P59より引用>
 「よくころりと死ぬ人があるじゃありませんか。自然に。それからあっと思う間に死ぬ人もあるでしょう。不自然な暴力で」
 「不自然な暴力って何ですか」
 「何だかそれは私にも解らないが、自殺する人はみんな不自然な暴力を使うんでしょう」

 この言葉、気になりませんか?

 気になった人は一読を、いや、若い日の感性と比べながら再読をおすすめします。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:31Comments(0)読書一昧

2024年06月23日

さよなら、野外温泉講座


 「おお~、やっと来た!」

 郵便受けに入っていた青い封筒を手にして、僕は喜びました。
 差出人は、NHK文化センターです。


 僕は平成21(2009)年4月から、NHK文化センター前橋教室が主催する 「野外温泉講座」 の講師をしています。
 この講座は毎月1回、JR前橋駅と高崎駅からバスを出して、県内外の温泉地をめぐるというもの。
 僕は水先案内人としてバスに添乗して、道中と温泉地で温泉の講義をしていました。

 ところが、4年前!
 令和2年1月の講座を最後に、突然、休講してしまいました。
 原因は、新型コロナウイルスの感染拡大です。


 この4年の間、ときどきセンターの担当者からは連絡をいただいていました。
 「先生、お元気ですか? 今年は無理ですが来年度の開講に向けて準備を進めています」
 そのたびに僕の脳裏には、最後に担当した受講生たちの顔が浮かびました。
 「みんな、元気だろうか? 早く会いたいなぁ~」 と……。


 こんなこともありました。
 コロナ禍のこと。
 前橋市内の公民館で、僕の講演会が開催されました。
 その時、開演前の控え室に、一人の婦人が訪ねてきました。

 「せんせ~い、お久しぶりです。覚えていますか?」
 その声、忘れるわけがありません。
 野外温泉講座の受講生、Kさんです。
 「先生、来年は開講しますよね!?」

 でも、その時、僕は断言することはできませんでした。
 「だいぶコロナも下火になってきたからね。たぶん来年は大丈夫でしょう」
 「ですよね、みんな、また先生と一緒に温泉をまわりたいって言ってますよ!」

 昨年の夏のことでした。


 そして今年、コロナが5類に引き下げられました。
 ということは来年度は、いよいよ待ちに待った講座の再開だ~!

 僕は、はやる気持ちを抑えきれずに、玄関先で封筒を開けました。


 <講師の皆様>
 と印字されていたプリントが出てきました。
 署名は、(株)NHK文化センターの社長名です。

 あれ? なんかヘンだな?
 講座の再開ならば前橋教室の担当者からのはずなのに、本社から直々とは……

 えっ、もしかして!
 と思った瞬間、次の1行が目に飛び込んできました。

 <前橋教室9月末終了のお知らせ>


 そして、こう書かれていました。
 <コロナ以降、受講者減少に歯止めがかからず、経費削減も続けて参りましたが、昨今の厳しい状況に対し課題も多く、これ以上の運営継続は困難との判断に至った次第です。つきましては、2024年9月末をもって前橋教室は閉鎖することになりました。>

 ガーーーーーーーン!!!!


 コロナ禍では、どの業界、どの職業でも、何らかのあおりを受けていたと思います。
 僕もそうでした。
 野外講座にとどまらず、取材が伴う連載が終了したり、その他の講演活動も軒並み中止となりました。

 でも、この野外講座だけはコロナが終息したら、また再開するものだと思い込んでいました。
 それだけに、ショックを隠し切れません。


 でも今は、ただただ感謝しかありません。
 11年間にわたり、つたない僕の講座を根気よく開講してくださった前橋教室のスタッフのみなさん、大変お世話になりました。
 また、何百人という歴代の受講生のみなさん、ありがとうございました。
 そして、平成20年度の受講生のみなさん、とっても残念ですが、1月の上牧温泉(みなかみ町)が最後となってしまいましたね。

 みんな、元気でいてくださいね。
 元気でいれば、またいつか必ず、お会いすることができます。

 また会いましょう! 
   


Posted by 小暮 淳 at 13:09Comments(0)講座・教室

2024年06月22日

<令和版 みなかみ紀行> 第3話 花敷~沢渡~四万


 高崎市民のみなさん、こんにちは!
 かつ牧水ファンのみなさん、お待たせしました!

 昨日発行(6月21日号) の 「ちいきしんぶん」(ライフケア群栄) は、もう読みましたか?
 旧高崎市内の10万世帯に配布されているフリーペーパーです。
 僕は昨年より不定期で、<令和版 みなかみ紀行> という紀行エッセイを連載しています。


 「毎回、掲載されると読者から問い合わせがありますよ」
 と編集者から連絡がありました。
 「続きが読みたい。次の発行日はいつか?っていう」

 筆者としては、うれしい限りであります。
 世の中には、けっこう牧水ファンって多いんですね。


 歌人・若山牧水(1885~1928)は、宮崎県日向市(現在)の生まれ。
 晩年は静岡県沼津市に暮らしましたが、全国を旅して多くの歌と紀行文を世に残しました。
 ただそれだけだったら、たぶん、文学ファン以外の人を魅了しなかったでしょうね。

 牧水は、のん兵衛だったのです。
 さらに温泉大好き人間でした。
 となれば、自称 「令和の牧水」 を名乗る僕は黙ってはいません!


 牧水は、群馬にもたびたび訪れています。
 中でも大正11(1922)年に長野県から群馬を横断して栃木へと抜ける旅 『みなかみ紀行』 は、牧水ファンならずとも多くの旅好きや温泉好きにも読まれている名著であります。
 その15日間の足取りを令和の現代に訪ね、牧水が入った温泉と牧水が呑んだであろう酒を探す紀行エッセイが、<令和版 みなかみ紀行> です。

 サブタイトルは、「牧水が愛した群馬の地酒と温泉」。


 最新号の第3話では、花敷(はなしき)温泉から暮坂(くれさか)峠を越えて、沢渡温泉に立ち寄り、四万温泉に投宿するまでを追いました。
 各温泉地でくり広げられるトラブルやエピソードを紹介するとともに、牧水が呑んだであろう酒の蔵元も訪ねました。

 歌人・牧水としてだけではなく、人間・牧水のお茶目で破天荒な生き方を通して、今後も群馬の温泉と地酒の魅力を伝えていきたいと思います。
 ご期待ください。


 ※「<令和版 みなかみ紀行> 牧水が愛した群馬の地酒と温泉」 は、「ちいきしんぶん」 のホームページよりバックナンバーを閲覧することが出来ます。

   


Posted by 小暮 淳 at 11:49Comments(0)執筆余談

2024年06月21日

「神社かみしばい」 6月はスペシャル口演!

 
 あれは4年前の夏のこと。
 コロナ禍、真っただ中の2020年8月でした。
 僕は、高崎市内の公民館で開催された講演会に、講師として呼ばれました。

 演目は 「民話と伝説の舞台」。

 拙著 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) を題材にした90分間の講演でした。


 その会場に受講者としていたのが、高校の同級生だった紙芝居師の石原之壽(いしはらのことぶき)君でした。
 講演終了後、「お願いがある」 と声をかけられたのが、きっかけとなり、翌2021年1月より僕も 「神社かみしばい」 に参加することになりました。

 第1作の 『いせさき宮子の浦島太郎』、第2作の 『女堀と桜姫』 は、どちらも石原君の出身地である伊勢崎市を舞台にした民話が題材となっています。
 「知られざる埋もれた郷土の民話や伝説を今の子どもたちに残したい」 という彼の情熱が作り上げた紙芝居です。

 微力ながら僕も、脚本作りに参加しています。


 さて、毎月開催されている 「神社かみしばい」 ですが、先月(5月)は主催者の都合により、お休みさせていただきました。
 ので今月は、2カ月ぶりの開催となります。
 しかも1日限りのスペシャル公演です!

 なななんと!
 石原君の地元・茨城県から、あの筑波名物 「ガマの油売り」 が友情出演で登場します!

 みなさんは、本物の 「ガマの油売り」 の口上なんて、聞いたことがありますか?
 ぜひ、この機会に滅多に見られぬ貴重な体験をしてください。


 スタッフ一同、お待ちしています。



        「神社かみしばい」 6月口演
 
 ●日時  2024年6月30日(日)
       10時、11時、12時、13時 (「ガマの油売り」 は11時の回~)
       ※屋外開催 (悪天候時は室内)
 ●会場  伊勢崎神社 境内 (群馬県伊勢崎市本町21-1)
 ●入場  投げ銭制 ※ペイペイ可
 ●問合  壽ちんどん宣伝社 TEL.090-8109-0480

       ※小暮も終日在社します。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:20Comments(0)神社かみしばい

2024年06月19日

水上温泉 「坐山みなかみ」


 「えっ、サザン? (オールスターズ?)」
 「いえ、坐山(ざざん)です」
 「それ、どこ?」
 「旧水上館ですよ」

 みなかみ町観光協会の職員との電話でのやり取りです。
 僕は「みなかみ温泉大使」 を委嘱されている関係上、毎年行われている協会の総会に出席しています。
 過日、今年は 「坐山みなかみ」 という旅館で開催されるとの連絡を受けました。


 まさに温泉地は、栄枯盛衰であります。
 僕が著書の取材で 「水上館」 を訪れたのは、12年前のことです。
 温泉地自体も様変わりしましたが、あった旅館がなくなっていたり、逆に新しいホテルができていたりと、目まぐるしく変化しています。


 国道から分かれ、利根川左岸を通る狭い道を小日向(おびなた)地区へ向かって走ります。
 水上温泉の旅館やホテルは、ほとんどが利根川右岸の湯原(ゆばら)地区にかたまっています。
 旧水上館だけが、利根川の対岸にポツンと建つ宿なのです。

 ということで昨晩、「坐山みなかみ」 に泊まってきました。
 名前は変わっても、建物はそのままで、館内もそのままでした。


 懐かしい!
 と思うのは、著書の取材で訪れたことがあるからだけではありません。
 もっともっと古い思い出がよみがえるからです。

 今から30年以上も昔のこと。
 僕はタウン誌の記者をしていました。
 当時、水上温泉では唯一 「水上館」 だけがスポンサーとなり、誌面に広告を掲載してくれていました。

 担当だった僕が、毎月配本を兼ねて、打ち合わせに伺っていたのです。
 でも今は社長さんをはじめ、当時を知っているスタッフは誰もいません。


 総会懇親会は、旅行や観光関係者が80名以上も集まり、大盛況でした。
 毎年、僕も末席に座るつもりで参加しているのですが、なぜか毎回来賓席が用意してあり、町長や議員などと同じ席のため、名刺交換をしにビールを注ぎに来る人が絶えず、あまり酔えないのが現状です。

 それでも二次会まで元気に参加してきました。


 改めて、旧水上館は広いなぁ~と思いました。
 「坐山みなかみ15湯めぐり」 なんていうのがあるんですね。
 大浴場が3カ所あり、浴槽が15もありました。

 はい、この際なんで、チェックアウトのギリギリまでねばりにねばって、15湯すべてに入浴してきましたよ。
 おかげさまで肌はツヤツヤ、スベスベになりましたが、やや湯あたり気味で、今日は一日中からだが、ダル~オモ~状態でした。


 ま、たまには、いいんじゃないですかね。
 “温泉ライター、湯あたりするの巻” 
 ということで!
  


Posted by 小暮 淳 at 19:41Comments(5)温泉地・旅館

2024年06月18日

A I よ、酒を吞んだことがあるんか?


 おいおい、本当か?
 そんなこと、あんたにできるの?

 と、思わずツッコミを入れたくなるような記事が、数日前の地元紙に載っていました。

 ≪○○屋、“ソムリエ” 導入≫
 ≪AIが日本酒選び助言≫


 県内のデパートが和洋酒売り場で、日本酒ソムリエAI (人工知能) を導入したといいます。
 その理由は?

 日本酒の買い物客から 「ラベルやパッケージを見てもどれを選んでいいか分からない」 といった意見が寄せられていたためらしい。
 確かに、初めて見る蔵元や銘柄の酒は、ラベルを見ただけでは味が分かりません。
 だから、そんな時は、店員さんに聞いていたはずです。

 でも、今の人手不足のご時世です。
 ついに、こんなところにも “A I 様” が登場いたしました。


 新聞記事によれば、先日の 「父の日」 を前に設置されたようです。

 装置には店内で扱う50種類の日本酒情報が登録されており、「気分」 「味わい」 「ギフト」 のいずれかを選択します。 
 「気分」 では 「気合を入れたい」 「癒やされたい」など、「味わい」 では 「すっきり」 「熟成感」 など各6種類の言葉から選ぶと、回答してくれるようです。

 「ギフト」 は、もう少し複雑です。
 贈りたい相手をイメージし、「穏やか」 「頑固」 といった26種類の中から最大3つの言葉を選ぶと、AIが、ズバリ! 日本酒3本セットを説明付きで紹介してくれるとのことです。


 ほほ~、なんだか便利ですね。
 一度、利用してみようかなぁ……

 なんて一瞬、思ってみたのですが、いえいえ、何かがおかしいのです。
 そもそも、根本的に何かが間違っているのです。

 僕は、「群馬の地酒大使」 であります。
 だから、あえて、A I にモノ申します!


 A I よ、あんた、酒を呑んだことがあるんかい!?
   


Posted by 小暮 淳 at 11:07Comments(4)大使通信

2024年06月17日

尾瀬戸倉温泉 「ペンション ゆきみち」


 ~いい湯 いい宿 いい仲間~

 つくづく、幸せな人生だと思います。
 普通の勤め人をしていたら、こんな出会いはなかったことでしょう。


 出会いは、2年前の5月でした。
 県内外から温泉好きが、群馬の温泉地に集まりました。
 そのとき、講演会が開催され、僕が講師として招待されました。

 中にはSNSでつながっている人たちもいましたが、それでも、ほとんどの人が初対面同士です。
 講演会の後、懇親会が開かれ、夜遅くまで温泉談議に花が咲きました。


 その時、6人の男女が意気投合したといいます。
 居住地は、東京・埼玉・群馬と、それぞれです。
 また年齢も40~60代と幅があります。

 それでも6人は、馬が合ったようで後日、「温泉M会」 が結成されました。。
 (Mは、代表者2名の名字と名前を合わせた造語だそうです)


 その後、温泉M会は年に2回、群馬県内の温泉地に集まり、交遊会を開催しています。
 第1回は四万温泉(中之条町)、第2回は草津温泉(草津町)、第3回は老神温泉(沼田市)でした。
 会場となる宿は、どこも知る人ぞ知るマニアックでコアな宿ばかり。
 (さすがです! みなさん、湯のいい宿を知っていらっしゃる)

 毎回、声をかけていただき、僕も参加させていただいています。


 そして先週、その第4回が開催されました。
 場所は、尾瀬戸倉温泉(片品村) 「ペンション ゆきみち」 です。

 シブイ!
 そして、ニクイ選択です。
 いい宿を知ってらっしゃる!

 聞けば、温泉M会の開催宿の条件は以下の3つ。
 ①湯がいいこと。
 ②料理が美味しいこと。
 ③料金が安いこと(1万円以下)。


 「ペンション ゆきみち」 は、僕にとっては、とっても懐かしい宿なんです。
 以前、『尾瀬の里湯』(上毛新聞社) という本の出版で、取材に訪れています。
 かれこれ7年前のことです。

 “秘伝の山ブドウ酒とジビエ料理の宿”

 著書に書いた宿のタイトルです。
 今回も、そのコピーに偽りはありませんでした。
 濃厚でコク深い山ブドウの食前酒から始まり、鹿肉の石焼きを存分に味わいました。

 女将さんも変わらずチャーミングで、僕のことを覚えていてくださいました。


 もちろん、湯は折り紙付きです。
 源泉は、ほのかに硫黄の香り漂うアルカリ性の単純硫黄温泉。
 ツルスベの湯が、肌にまとわりつきます。


 代表のM君は、僕とちょうど干支が2回りも下の好青年です。
 親子ほどの年の差があるのにね。
 僕をジジイ扱いすることもなく、他のメンバーもフレンドリーに接してくださいます。

 温泉M会のみなさん、毎回、とっても楽しい “湯会” に誘ってくださって、ありがとうございます。
 次回は、どこですか?

 楽しみにしています。 
   


Posted by 小暮 淳 at 11:44Comments(0)温泉地・旅館

2024年06月14日

「くぐつ草」 をもう一度


 古い読者なら覚えている人も、いるかもしれませんね。
 今から40年以上も昔のこと。
 東京・吉祥寺での甘くて、ほろ苦い青春の日々をつづったブログを……
 (2017年2月27日 「ツィゴイネルワイゼンと青春の街」 参照)


 このブログの最後に、たった1行、僕は、こんなことを書きました。
 <待ち合わせた 「くぐつ草」 という喫茶店は、いまもあるのでしょうか?>

 すると読者から2件のコメントがありました。
 どちらも、今でも営業をしているという内容でした。


 昭和55年(1980)当時、「くぐつ草」 は吉祥寺の街のアーケード通りの地下にありました。
 階段を下りていくと、ほの暗く、洞窟の中のような店内でした。

 僕は、スターを夢見るミュージシャンの卵。
 彼女は、美大に通う画家の卵でした。
 毎週末、彼女は吉祥寺の路上で、絵を描いて販売していました。

 夕方になると、僕は彼女の露店を訪ねました。
 「どう売れた?」
 「全然」
 「来週は売れるよ」
 「うん、先に行ってて。片づけたら行くから」

 そこが 「くぐつ草」 でした。


 あれから44年。
 僕は、完全に忘れていました。
 ところが、数日前のこと。
 突然、メールが届きました。
 しかも何枚もの写真が添付されています。

 7年前のブログにコメントをくれた読者からでした。
 彼女は、現在の 「くぐつ草」 を訪ねてくれたのです。


 ブログには、こう、言葉が添えられていました。
 <先生の思い出のワンシーンである、あの店に行って来ました。(中略) 相変わらず暗い地下なのに、若い人たちでいっぱいでした。>

 チクリ、と胸の奥の方が痛みました。
 遠い遠い記憶の中の、甘酸っぱい思い出と、ほろ苦いアイスコーヒーの味。

 確かに、あの日、僕はここに居ました。
 そして、果てしない夢を語っていました。


 画家の卵だったあの娘は、いまどこで何をしているのでしょうか?
 ミュージシャンの卵だった僕は、こうしてここで細々と、まだ夢のカケラを拾い続けています。


 読者のMさん、素敵な写真をありがとうございます。
 今度、東京へ行ったら吉祥寺まで足を延ばしてきます。

 「くぐつ草」 をもう一度
  


Posted by 小暮 淳 at 11:08Comments(0)つれづれ

2024年06月13日

聴き逃した人は 「ラジコ」 で!


 群馬の温泉ファンのみなさ~ん、こんにちは!
 昨日のエフエム群馬 『news ONE』 は、お聴きになりましたか?

 えっ、聴き逃した!
 でも大丈夫。
 今は便利になりました。
 「ラジコ」 なら放送から1週間は無料で聴取できます。


 毎月第2水曜日、僕はレギュラー出演しています。
 毎回1テーマ、温泉についてのあれこれをお話ししています。
 第3回となる昨日は、「ぬる湯の楽しみ方」 でした。

 温泉は、地球が沸かしてくれた神様からの贈り物です。
 だから必ずしも人間にとって都合のいい温度では湧いていません。
 そのため熱ければ加水して、ぬるければ加温して利用してきました。


 でも今でも、温泉に人間が合わせるという入浴法を行っている温泉地があります。
 湯治場です。

 持続浴、微温浴とは?
 不感帯入浴とは?

 今でも歴史と伝統を大切にしている県内の湯治場を紹介しました。


 ※次回の出演は7月10日です。



 ■放送日  毎月2週目水曜日 (18:37頃~)
 ■放送局  FM GUNMA (86.3MHz)
 ■番組名  『news ONE』 月~水 18:00~18:55
 ■出演者  岡部哲彦 (アナウンサー)、小暮 淳 (温泉ライター)
  


Posted by 小暮 淳 at 10:45Comments(2)テレビ・ラジオ

2024年06月12日

在庫薄! 「小さな温泉」 「新源泉」


 「書店に並べておいて、黙ってても本が売れる時代じゃないよ」
 昔、そう先輩作家に言われたことがありました。
 以来、僕はその先輩を見習って、講演やセミナー、イベント会場で自分の著書を自ら販売するようになりました。


 今までに僕は温泉関連本を10冊出版しています。
 うち、最初(2009年)に出版した 『ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) は、すでに絶版となっています。
 ので、現在、書店で売られている温泉関連本は9冊です。

 コロナが5類となった今年は、イベントや講演の依頼が目白押しです。
 ということは、本も売れるぞ!
 と、捕らぬ狸のなんとやらで、出版元へ行って、著書を購入してきました。
 (もちろん定価ではなく、著者割引を利用させていただきました)


 す、す、すると!
 な、な、なんと!
 出版担当者いわく、
 「『小さな温泉』 は5冊まで、『新源泉』 にいたっては在庫が品薄のため、お出しできません」
 だと~!

 『小さな温泉』 とは、『群馬の小さな温泉』(2010年) のこと。
 『新源泉』 とは、『新 ぐんまの源泉一軒宿』(2014年) のことで、絶版になった 『ぐんまの源泉一軒宿』 の改訂版です。


 おい、オレは著者だぞ! 
 そこを、なんとかできないの~?
 と言ったところで、ない本は出せません。

 なので仕方なく、それ以外の著書を見つくろって仕入れてきました。


 ということなので、読者のみなさ~ん!
 『小さな温泉』 と 『新源泉』 は、現在書店で販売されている在庫がなくなり次第、売り切れとなります。

 担当者いわく、
 「たぶん増刷はありません。あるとすれば改訂版の方向で検討します」
 とのことです。


 まだ持ってない人は、今すぐ本屋へ急げ~!
  


Posted by 小暮 淳 at 11:44Comments(2)著書関連

2024年06月11日

泣いた赤鬼


 映画を観たり、本を読んで、目頭を熱くさせることは多々あります。
 でも、大粒の涙をポロポロと流しながら人前で泣くことなんて……
 たぶん、何十年ぶりのことだったと思います。

 僕は友人と、さる作家の話をしていました。
 その人は、昨年7月に亡くなられた絵本作家・野村たかあきさん。
 僕が37年間、慕い続けていた “心の師” でありました。


 今年になり、野村さんの奥様から一通の便りをいただきました。
 <生前、野村が承諾していたダイソー✕鈴木出版とのコラボ絵本が出来ました>
 そして、小さな絵本が同封されていました。
 (2024年4月24日 「天国からの贈り物」、2024年5月22日 「三竦みの美学」 参照)


 作・絵/野村たかあき 『あいこでしょ』 (すずき出版✕ダイソー)


 「なんでダイソーだったんでしょうね?」
 友人の問いに言葉を返そうとした、その時、グッと込み上げるものがあり、僕は顔を上げることが出来なくなってしまいました。
 見る見るうちに涙があふれ出で、二の句を継げません。

 友人も驚いていましたが、当の本人が一番驚いていたのです。

 あふれ出る涙をぬぐいながら、やっと言えた言葉が、
 「一人でも多くの子どもたちに絵本を読んで欲しかったんだよ」
 でした。


 通常、書店で売られている絵本の価格は1,000円以上します。
 でも、ダイソーならば100円です。
 これならば生活に余裕のない家庭でも、子どもに絵本を買ってあげることができます。

 たぶん、野村さんは自分の死期を知っていたのでしょう。
 そんな折、全国展開する100円ショップから出版の話があった。
 もし、健康でバリバリと仕事をこなしていた頃だったら、作家としてのプライドもあり、承諾しなかったかもしれません。

 でも絵本は、みんなのモノです。
 貧富の差や家庭環境に関係なく、誰もが気軽に楽しめるものでなくてはならない。
 きっと野村さんは、そう考えたのでしょう。

 そう思ったら、とめどなく涙が流れ出したのでした。


 そういえば、野村さんの絵本の代表作の一つに 「泣いた赤鬼」 がありました。
 作・浜田廣介/絵・野村たかあき 『ないたあかおに』 (講談社名作絵本)

 これもまた 『あいこでしょ』 同様、心優しい鬼たちの話です。


 ぜひ、どちらも一読することをおすすめします。
  


Posted by 小暮 淳 at 11:31Comments(2)読書一昧

2024年06月10日

セルフには無理がある


 ときどき利用する近くの100円ショップ。
 以前は、有人レジとセルフレジがあり、客が選択することができました。
 若い人や慣れた人は、ピッピッと手際よく、セルフレジを利用し会計を済ませます。
 一方、高齢者や子どものみならず、店員との会話を楽しみたい常連客は、有人レジへ。

 なのに!
 先日、久しぶりに店内に入って、ビックリしました。
 店員の姿が見当たりません。
 商品の場所を尋ねようにも、困ってしまいました。

 そして!
 なななんと、有人レジが消えていました。
 セルフレジのみ2台あるだけです。
 しかも、完全なる無人です。
 (最寄りの某スーパーにもセルフレジはありますが、必ず店員が監視していて、困ったときは必ずサポートしてくれます)


 僕の前に、高齢の女性が並びました。
 自分の番になると、ひとり言が始まりました。
 「これ、どうするの?」 「ああ、バーコードをかざすのね」 「えーと、えーと」

 見れば、カゴいっぱいの商品です。
 それでも何とか、スキャンし終えたようです。
 「で、どうするの?」 「え、え、わからない~」

 すると隣のレジの客が、そっと教えてあげました。
 「精算ボタンをタッチしてください」
 
 なのに……

 高齢女性は緊張のあまり、「取り消し」 ボタンを触ってしまいました。
 アチャー! すべて元の木阿弥です。
 また最初からスキャンをやり直す羽目になったとさ。

 この間、店員は一人もいません。
 防犯カメラで監視しているのなら、飛んできてほしいものですが、人手不足なんでしょうな。


 100ショップだけではありません。
 近年は、回転寿司やファミレスでもそうです。
 入店から注文、精算まで、すべて無人の店があります。

 店員がいないということは、カスハラ (カスタマーハラスメント) も起こらなくて、店側には都合がいいのかな?


 ところが、海の向こうでは、セルフレジが消えるかも?という 「セルフレジは失敗だった説」 が話題になっているといいます。
 買い物に革命を起こすはずだったセルフレジですが、欧米では予想以上のトラブルの多さに、有人レジの見直し説が浮上しているとのこと。

 ・店員は故障する機械の対応に追われる。
 ・万引きの発生率が上がった。
 ・客はスキャンと袋詰めの二重労働を強いられる。

 万引きについては、有人レジよりも無人レジの方が21倍も盗難される可能性が高いというデータがあります。
 また盗むつもりはなくても、スキャンできていなかったというケースも多発しています。
 逆に、スキャンの時に商品を2度登録してしまうトラブルもあるようです。

 いやはや、まさに現代は、未来化への過渡期なんでしょうな。
 やがて僕のようなガラケー人間は、買い物自体ができなくなるかもしれませんね。


 だから昭和が、こんなにも恋しいのだと思います。
 商店で買い物をして、町中華で食事をして、居酒屋で酒を呑む。
 これ、すべて有人かつ現金なり。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:58Comments(2)つれづれ

2024年06月09日

「類アナ」 トーク、今週オンエア!


 1カ月間のご無沙汰です。
 また今月もエフエム群馬 『news ONE』 の放送日が近づいてきました。


 僕は今年4月から毎月第2水曜日、夕方のニュース番組に生出演しています。
 コメンテーターなのかって?
 いえいえ、違います。

 レギュラーのゲストです!
 それも肩書きは、温泉ライターです。
 なに? それじゃ、普通だろうって?
 いえいえ、それが、ちっと違うんですね。
 かなりマニアックなんです。

 というのも、お相手の岡部アナウンサーが、温泉ソムリエの資格を持つ、かなりコアな温泉ファンなんです。
 で、僕に白羽の矢が立ったということです。


 まあ、「類は友を呼ぶ」 ならぬ、類がアナウンサーを呼んでしまったというわけで、“類アナ” コンビがコテコテの温泉談議をするという、なんともマニア向けの番組となりました。
 4月のテーマは、「実は4つあった日本三美人の湯」。
 5月は、「温泉発見伝説<英雄篇> 御三家」 でした。

 さて、6月のお題は?
 夏らしい温泉ネタを用意しましたよ。


 僕の出演は、番組の中ほど 「news ONE アラカルト」(18:37頃~) のコーナーです。
 お聴き逃しなく!



 ■放送日  毎月2週目水曜日 (次回は6月12日)
 ■放送局  FM GUNMA (86.3MHz)
 ■番組名  『news ONE』 月~水 18:00~18:55
 ■出演者  岡部哲彦 (アナウンサー)、小暮 淳 (温泉ライター)
  


Posted by 小暮 淳 at 11:39Comments(0)テレビ・ラジオ

2024年06月08日

取材こぼれ話② 「神々の配剤」


 高崎市民のみなさ~ん、こんにちは~!
 旧高崎市内の約9割のご家庭や事業所に配布されているフリーペーパー 「ちいきしんぶん」 は、お読みですか?

 昨日(6月7日)発行の 「ちいきしんぶん」 に、先月から始まった新連載 「小暮淳の取材こぼれ話 『ちょこっと小耳に』」 の第2話が掲載されました。
 この連載はタイトルどおり、僕が取材先で体験した出来事を、面白おかしく紹介するエッセーです。


 今回のテーマは、『神々の配剤』。
 県北部の温泉地で起きたハプニングについて書きました。

 共同浴場で、湯上りのビールを飲もうとすると、売店もなく、自動販売機にもビールが売っていません。。
 僕にとって、湯上りのビールは必須アイテムです。

 「許せん!」
 と駄々をこねる僕の前に、一人の男性が現れます。
 「小暮さんですか?」

 その後、次々と神々が降臨し、奇跡の大逆転劇が起こります。

 さて、その結末は?


 タウン誌の記者から37年。
 このシリーズでは、様々な取材現場でのエピソードを取り上げていきます。

 次回、第3話では、摩訶不思議な霊体験について紹介します。
 お楽しみに!
  


Posted by 小暮 淳 at 11:40Comments(0)執筆余談

2024年06月07日

師が残した言葉


 コロナ禍の某スーパーでのこと。
 ビニールシートで仕切られたレジ前で、高齢男性が大声を上げていました。

 「何言ってるんか、聞こえねぇーんだよ!」
 かなり虫の居所が悪いようで、駄々っ子のように怒り叫んでいます。
 レジの中の若い女性店員は、涙目で硬直しています。

 いるんですよね、こういう前頭葉が委縮しちまったジジイが!
 彼らは、三波春夫の言った 「お客様は神様です」 の意味を、勘違いしたまま受け入れてしまった世代です。

 ついに男性は、自分の感情をコントロールできなくなり、突如、ビニールシートを引っぱがしてしまいましたとさ。


 あれから数年の時が経ちましたが、この手のカスハラ事例はエスカレートの一途をたどっています。
 カスハラ=カスタマーハラスメント
 いわゆる顧客や取引先による従業員への暴言や脅迫、言いがかりといった迷惑行為のことです。

 先日の地元紙に、こんな記事が出てました。
 ≪市職員の名札 10市が名字のみ≫
 ≪個人特定、カスハラ防ぐ≫

 県内12市のうち10市が、職員が業務中に着ける名札を名字だけの表記にしているとのこと。
 インターネット上で、個人的な情報の詮索・公開や理不尽な要求を突きつけるカスハラを防ぐためのようです。

 役所だけではありません。
 コンビニなどでも名札の表記をアルファベットによるイニシャルにした企業もあります。


 では、なぜ現代社会は、こんなにも病んでしまったのでしょうか?
 金を払う方が優位だという錯覚。
 元をたどれば、これ、すべて、個人の資質なんですよね。

 根底には、今話題の 「フキハラ」 があると思います。
 不機嫌ハラスメント
 和洋折衷のなんともヘンテコな造語ですが、冒頭のビニールシートを破壊したジジイも、まさにフキハラが招いたカスハラです。

 いま、このフキハラが、家庭でも学校でも会社でも、世の中のいたるところで多発しています。

 この人たちは、機嫌が悪いことは自分のせいではなく、全部まわりのせいとして正当化しているのです。
 現代は、自分を制御できない人たちで、あふれ返っています。


 このような人たちを目撃した時、僕は、昨年亡くなられた絵本作家の野村たかあきさんの言葉を思い出します。
 37年前に出会ったとき、最初にいただいた言葉です。

 「ジュンちゃんなぁ、どんなに自分が機嫌が悪くても、他人を不快にする権利なんて、誰にもないんだよ」
 そして、こう言いました。
 「元気がなくてもカラ元気」

 その日から、この言葉は僕にとっての座右の銘となりました。


 不機嫌なみなさ~ん!
 カッとなったら一瞬だけ口と手を止めて、つぶやいてみてください。

 「元気がなくてもカラ元気」

 きっと、あなたのカラ元気に、まわりの人も笑顔を返してくれるはずです。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:50Comments(3)つれづれ

2024年06月06日

イチゲンさん


 知る人ぞ知る、酒処 「H」。
 いや、このブログの読者なら、毎度おなじみの店ですね。
 僕が、かれこれ15年以上も通っている吞兵衛たちのアジトであります。

 なんでも一時、「Hは、どこだ?」 と僕の読者の間では話題になったことがあったようです。
 「やっぱり、ここだったんですね!」
 と探し当てた客は、狂喜乱舞したそうです。

 では、なぜ、この店が 「H」 と分かったのか?
 はい、入店すれば、すぐに分かります。
 それは……

 答えが気になる人は、探し出してみてください。


 さて、その酒処 「H」 ですが、まあ、入りにくい店なのであります。
 大通りに面していて、暖簾も電照看板も出ているんですけどね。

 間口は、一間半ほど。
 外から中の様子は見えません。
 扉を開けると、うなぎの寝床のような細長い店内に、カウンター席のみ。
 しかも、8席限定。

 一見(イチゲン)の客は、それだけで尻込みをして、二の足を踏んでしまいそうなのに、さらに、そこにはクセの強い常連が早い時間から陣取っています。
 運よく、空き席に座れたとしても、試練は続きます。

 この店には、お品書き (メニュー) が一切ありません。
 ということは、料金が分かりません。

 すべてママの手作りお任せ料理で、料金一律です。


 たとえば、「今日行くよ」 とママにメールを送ると、「串カツなり」 とメールが来ます。
 その日のママの気分によっては、餃子だったり、シチューだったり、焼き魚だったり、和洋中どれが飛び出すか分からないのも常連の楽しみになっています。

 ということで客は、常連か、もしくは常連に連れて来られた客がほとんどであります。
 が、たま~に、勇気のあるツワモノが、ぷらりと現れることがあります。

 そんな時は、一斉に常連たちの鋭い視線の集中砲火を浴びることに!


 一昨日、見慣れない男性が入ってきて、戸惑うこともなく、堂々と空いている席に座りました。
 ママはソワソワ、常連は興味津々。

 「また、どうしてこの店に?」
 さっそく、常連の一人が身元調査を開始しました。
 「ええ、この通りで、ここしか空いてなかったもので」
 時間は、まだ午後5時前です。

 「初めてですよね?」
 「はい、前橋自体が……何十年ぶりです」
 「仕事で? 違うか?」
 見た目、年の頃は60代後半~70代前半です。
 服装もラフな格好でした。

 「尾瀬の帰りです」
 「えっ、車?」
 「いえ、電車です」
 「だったら高崎泊まりでしょう?」
 常連の飽くなき追求は続きます。

 なんで前橋の、こんなマニアックな店に、この男はたどり着いたのか?
 それが知りたいのです。

 「高崎は昨日泊まったので、今日は前橋に宿をとりました」


 このあと、常連客らの追求の末、住所と氏名を訊き出し、一応、怪しい人物ではないことを確認しました。
 なんでも定年退職後、日本のみならず、世界中を一人で旅して回っているとのこと。
 「死ぬまでに行ってないところへ行く」 のだそうです。
 それで、どの街へ行っても、一見で店に入れる度胸がついているのですね。

 Оさん、根掘り葉掘り訊いて、ごめんなさいね。
 これに懲りずに、またのご来店をお待ちしております。

 よい旅を!
   


Posted by 小暮 淳 at 11:36Comments(4)酔眼日記