2024年06月14日
「くぐつ草」 をもう一度
古い読者なら覚えている人も、いるかもしれませんね。
今から40年以上も昔のこと。
東京・吉祥寺での甘くて、ほろ苦い青春の日々をつづったブログを……
(2017年2月27日 「ツィゴイネルワイゼンと青春の街」 参照)
このブログの最後に、たった1行、僕は、こんなことを書きました。
<待ち合わせた 「くぐつ草」 という喫茶店は、いまもあるのでしょうか?>
すると読者から2件のコメントがありました。
どちらも、今でも営業をしているという内容でした。
昭和55年(1980)当時、「くぐつ草」 は吉祥寺の街のアーケード通りの地下にありました。
階段を下りていくと、ほの暗く、洞窟の中のような店内でした。
僕は、スターを夢見るミュージシャンの卵。
彼女は、美大に通う画家の卵でした。
毎週末、彼女は吉祥寺の路上で、絵を描いて販売していました。
夕方になると、僕は彼女の露店を訪ねました。
「どう売れた?」
「全然」
「来週は売れるよ」
「うん、先に行ってて。片づけたら行くから」
そこが 「くぐつ草」 でした。
あれから44年。
僕は、完全に忘れていました。
ところが、数日前のこと。
突然、メールが届きました。
しかも何枚もの写真が添付されています。
7年前のブログにコメントをくれた読者からでした。
彼女は、現在の 「くぐつ草」 を訪ねてくれたのです。
ブログには、こう、言葉が添えられていました。
<先生の思い出のワンシーンである、あの店に行って来ました。(中略) 相変わらず暗い地下なのに、若い人たちでいっぱいでした。>
チクリ、と胸の奥の方が痛みました。
遠い遠い記憶の中の、甘酸っぱい思い出と、ほろ苦いアイスコーヒーの味。
確かに、あの日、僕はここに居ました。
そして、果てしない夢を語っていました。
画家の卵だったあの娘は、いまどこで何をしているのでしょうか?
ミュージシャンの卵だった僕は、こうしてここで細々と、まだ夢のカケラを拾い続けています。
読者のMさん、素敵な写真をありがとうございます。
今度、東京へ行ったら吉祥寺まで足を延ばしてきます。
「くぐつ草」 をもう一度
Posted by 小暮 淳 at 11:08│Comments(0)
│つれづれ