2018年06月30日
はじめての会議
僕は今までに、9冊の温泉本をはじめ、紀行や登山のエッセイなど計13冊の書籍を出版しています。
でも今までは、企画や制作の会議には参加しても、販売会議というものに呼ばれることはありませんでした。
基本、著者とは、そういうものです。
でも今回、本を作ってくださっているは、小さな地方の編集会社です。
だから何から何まで手作りなんです。
もちろん、著者だからといって高みの見物はできません。
本を売るためには、販売会議にだって参加いたします。
発売まで、いよいよ1ヶ月。
制作も大詰めです。
残るは、販売ルートの開拓であります。
ということで昨日は、販売会議が開かれました。
社長、編集長、スタッフ全員で、知恵をしぼり合います。
書籍コードの取得、書店のリストアップ、マスコミやメディアへの告知、イベントの開催、チラシやポップ、ポスターの準備などなど、議案は尽きないのであります。
「へー、そうなんだ」 「そんなことも必要なんだ」
と、著者の僕には、知らないことばかりです。
こうやって本は作られて、書店に並ぶのですね。
感心しきりであります。
著者って、のん気なものですね。
文章を書くだけなのですから。
売ってくれる人たちがいるからこそ、本が読者に届くってこと、ちょっぴり忘れていました(反省!)。
著者や読者の見えないところで、縁の下の力持ちたちが、大勢、額に汗してくださっているのです。
感謝、感謝、ただただ感謝の二文字であります。
さて、出版日が決まりました。
8月8日です。
書店に並ぶのは、それ以降になります。
ただし、その前にイベントがあり、先行販売が行われます。
それらの情報公開は、来週7月6日に解禁となります。
初の “伝奇エッセイ” です。
お楽しみに!
2018年06月28日
ライターとして大使として
今日は、中之条町観光協会の 「定時社員総会」 に呼ばれ、講演を行ってきました。
会場は、中之条ガーデンズ 「桃源郷」(旧花の駅「美野原」)。
演題は、「中之条町の温泉の魅力と活用方法」。
僕は10年前から、企業や団体、自治体等から依頼を受け、講演やセミナーを行っています。
たぶん、何百回と講話をしていると思います。
でも今日ほど、やりにくい講演はありませんでした。
だって僕は、中之条町の観光大使であり、同じ中之条町にある四万温泉の温泉大使であります。
しかも過去には、中之条町にある7つ(10年前は9つあった) の温泉地、すべての宿を取材して本を書いています。
だもの、温泉および観光関係者は、みんな顔見知りなんです。
案の定、演台の前に立つと、知っている顔、顔、顔、顔……
聴講者のほとんどが、温泉旅館のご主人や女将さんたちです。
さらに温泉協会事務局長や温泉組合長、観光協会長、そして町長までもがいます。
「こんな、やりづらい講演は初めてです。これは講演という名を借りた “いじめ” ですよ。温泉ハラスメント、“オンハラ” です」
これが僕の、第一声です。
考えてみてください。
聴講者全員が、温泉と観光のプロたちですよ。
その人たちを相手に、なにを話せばいいのでしょうか。
でも講演が始まってしまえば、すべてが杞憂でした。
温泉のことを知っている人たちだからこそ、ウケるネタというのがあるのですね。
“裏ギャグ” “裏ジョーク” っていうやつです。
また、一般の人では分からない “身内ネタ” というのもありますから、コツさえつかんでしまえば、逆にいつもの講演より笑いも取れるし、楽しい時間となりました。
「良かったですよ、今日の話。さっそく、参考にさせてもらいます」
講演終了後、声をかけてきたのは、なななんと! 群馬県温泉協会長でした。
「えっ、なんでいるんですか? 中之条町と関係があるんですか?」
「小暮さんの講演があるって聞いたから、来たんですよ」
その時は大変驚いたのですが、よくよく考えてみれば不思議なことではないのですね。
だって群馬県の温泉界のトップなのですから。
今回の講演も、この言葉で締めさせていただきました。
「“群馬といえば温泉” ではなく、“温泉といえば群馬” と言われるように、オール群馬でがんばりましょう!」
2018年06月27日
そうだ、湯治に行こう!
<今、群馬で再び注目されている「湯治」。四万温泉の新スタイル「ごほうび湯治」や、温泉ライターおすすめの夏に楽しむ温泉まで、“温泉大県”群馬の湯を楽しみ尽くします。>(番組概要より)
いよいよ、番組放送まで、あと2日となりました。
ということで、詳細が分かりましたので、ご報告いたします。
番組では、四万温泉(中之条町) の “新湯治” スタイルや “草津のなおし湯” として栄えた湯治場、沢渡温泉(中之条町)。
暑い夏でも無理なく入浴できる “ぬる湯” の湯治宿、川古温泉(みなかみ町) などを紹介します。
ナビゲーターは、「中之条町観光大使」 で 「みなかみ温泉大使」 の僕が担当します。
そしてナレーションは、群馬が生んだスーパーバラドル、タレントの井森美幸さんです。
番組タイトルは、『ぐんまスペシャル そうだ、湯治に行こう 極上!温泉大国ぐんま』。
群馬県民はもちろん、他県の温泉ファンも必見ですぞ!
●放送局 NHK総合テレビ
●放送日 2018年6月29日(金) 19:30~19:57
●再放送 2018年6月30日(土) 10:55~11:22
2018年06月25日
カイメンライダー2号
先週、『昔イクメン、今カイメン』(2018年6月19日付) というブログを書いたところ、知り合いから、こんなメールが届きました。
<正義の味方 カイメンライダー 長期任務 お疲れ様です!>
うまい!
と感心した次の瞬間、思わず涙がちょちょ切れてしまいました。
“カイメン” とは、介護する男子のことです。
そんなこと、日本中でたくさんの人がやっていることじゃないか…
決して、偉いことでも、ほめられることでもないし…
でも、介護の大変さは、経験した人しか分からないし…
だからって、分かってほしいとは思わないのだけど…
なのに、なのに、心のどこかで、賛同を求めている、ちっちゃな自分がいるのです。
そんな、どうでもいいつぶやきに、“正義の味方” だと言ってくれた人がいたこと…
ただただ、うれしくて…………
今週も今日、3日間の任務が無事、終わりました。
昨晩は4回、オヤジに起こされました。
ちょうど2回目のトイレタイムが、0時10分でした。
あわててテレビをつけると、「1-0」 の文字。
日本が負けている!
「じいさん、いいときに起こしてくれたな」 と、そのままサッカー観戦となりました。
だから今日は、ちょっぴり寝不足です。
毎週日曜日は、オヤジを車イスに乗せて、施設に入所しているオフクロを見舞っています。
洗濯物の交換をして、様子を看て、オヤジとの対面をさせて、帰ります。
ふと、オフクロのベッドの隣にあるタンスの上に、小さな封筒があるのに気づきました。
「誰からだろう? 職員からか? それとも見舞い客がいたのだろうか?」
何気に中の便箋を開いてみると、見覚えのある文字が…
<91歳、お誕生日おめでとう。親父のことは心配しないで、長生きしてください。>
差出人は、アニキでした。
洗濯物を交換に来た際に、そっと手紙を置いていったようです。
またしても、涙、ナミダ、なみだ…
なんだよ、あんちゃん、ずるいよ。反則だよ!
自分だけ、かーちゃんに、気に入られようとしてさ!
俺だって、同じくらい親のことは心配してんだからな!
でも、やっぱ、あんちゃんが1号だね。
俺は、2号でいいや。
これからも一緒に、正義のために戦おうぜ~!!!!
ゴー、ゴー、レッツゴー!
カイメンライダー、カイメンライダー、ライダー、ライダー!
2018年06月22日
湯の旅へ② <沢渡~川古>
今日は “あつ湯” と “ぬる湯” の温泉をハシゴして来ました。
放送日が近づいているということで、急きょ、僕のコメント撮りをすることになりました。
読者のみなさんは、覚えていますよね?
たびたび、東京からテレビ局のディレクターが訪ねて来ていたことを。
ついに4度目の今日は、ディレクター1人ではなく、カメラマンと音声さんを連れてやって来ました。
前橋インター近くで待ち合わせて、僕がスタッフの車に同乗。
一路、中之条町へ。
最初の撮影場所は、沢渡温泉の入り口にある「晩釣(ばんつり)せせらぎ公園」。
ここで、旅のナビゲーターを務める僕が、カメラに向かってごあいさつ。
その足で、温泉街へと向かいました。
次の撮影場所は、「三喜屋旅館」。
ここでは入浴シーンのみの撮影。
温泉街を歩くシーンの後、共同浴場へ。
思えば、ちょうど1年前も、ここでNHKBSプレミアムの 「ニッポンぶらり鉄道旅」 の撮影をしたのでした。
あの時同様、今回も沢渡温泉組合長の林伸二さんが、沢渡温泉名物の 「きび大福」 を持参して出迎えてくださいました。
ここでは、居合わせた一般客に許可をもらい、一緒に入浴してもらい、雑談シーンを撮影しました。
浴槽の湯の温度は、ぬるい方でも44~5度あります。
熱いのなんのって、お客さんも悲鳴を上げていました。
が、僕はプロです!
しっかりディレクターに頼んで、カメラに映らない箇所からホースで水道水を注いでもらい、テイク2でOKを出しました。
午後は、大道峠を越えて、みなかみ町へ。
ぬる湯の宿で知られる一軒宿、川古温泉 「浜屋旅館」を訪ねました。
3代目主人の林泉さんとは、かれこれ15年近くの付き合いになります。
雑誌の取材だけではなく、過去には新聞で対談をしたこともある仲です。
「では、小暮さんとご主人の再会のシーンから撮ります」
「次は、2人の会話の場面です」
手際よく仕切られて、言われるままに “役者” に徹します。
露天風呂での入浴シーンでは、やはり客の許可を取り、一緒に撮影しました。
温泉の温度は、約39度。
今の季節ならば、熱くもなく、ぬる過ぎず、ちょうど良い温度です。
長いシーンの撮影には、持って来いの湯であります。
それでも撮影が終わる頃には、額にビッシリと汗が噴き出していました。
さてさて、どんな番組に仕上がるのでしょうか?
みなさんも、楽しみにしていてくださいね。
●放送局 NHK総合テレビ
●番組名 「首都圏情報ネタドリ番外編&群馬スペシャル」
●放送日 6月29日(金) 19:30~19:57
●再放送 6月30日(土) 10:55~11:22
※ナレーションは群馬県出身のタレント、井森美幸さんが担当します。
2018年06月21日
御裳裾の湯を訪ねて
谷川温泉(群馬県みなかみ町) には、こんな “いで湯発見伝説” があります。
その昔、谷川の川岸に夜な夜な、ルリ色の光が立つようになりました。
村人たちは不思議に思い、ある夜、ひそかに近寄ってみると、輝くばかりの美しい娘が流れに身を清めていました。
村人が近づくと、光も娘も消えうせ、岩間から温泉が湧き出たといいます。
この湯を浴むと、疲れも病もたちどころに癒えたため、村人たちは 「これは菩薩のお告げ」と喜び、姫が裾を洗ったら湯に変じたことから 「御裳裾(みもすそ) の湯」 と名づけられました。
昨日は朝から雑誌の取材で、谷川温泉へ行って来ました。
訪ねたのは3ヶ所。
日帰り温泉施設の 「湯テルメ・谷川」 と 「旅館たにがわ」、「金盛館せゝらぎ」 です。
「湯テルメ・谷川」 には、3種類の異なる源泉風呂があるのをご存じですか?
単純温泉とアルカリ性単純温泉とカルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉です。
それぞれに浴槽が異なり、加水や加温なしにかけ流されています(一部、循環併用)。
露天風呂のみ混合泉を加温しています。
都会の入浴施設では味わえない、ちょっと贅沢な日帰り施設なのです。
「旅館たにがわ」 では、文豪・太宰治のギャラリーを取材。
くしくも一昨日が、命日の 「桜桃忌」 でした。
宿前に立つ記念碑には、献花がされていました。
「金盛館せゝらぎ」 は、歌人・若山牧水ゆかりの宿です。
大正7年(1918) 11月16日から3日間、投宿しています。
牧水は滞在中に、妻に宛て、こんな手紙を書いています。
<夕方、山路を越えて、ここに着いた。名のごとく、谷川の岸。通された部屋は、その谷の瀬の上に、突き出していた。>
文人たちも浴んだであろう、御裳裾の湯。
谷川の清流のように澄んだ、実に美しい湯であります。
伝説の美女に、我も会いたし……
雨音と瀬音を聴きながら、湯の中で妄想を膨らませていたのでした。
2018年06月19日
昔イクメン、今カイメン。
「今日は、父の日だよ」
「……」
「はい、たまにはビールで乾杯しよう」
「……」
「カンパ~イ!」
オヤジは満93歳。
今秋、誕生日を迎えると94歳になります。
一族でも、歴代最長寿タイに並びます。
でも認知症を患って、かれこれ10年になります。
年々症状は悪化しています。
今ではオフクロも、僕も、アニキのことも分かりません。
昼も、夜も、もちろん季節も分りません。
1日24時間、食事の時以外は、目をつむっているか、寝ています。
「おいしいかい?」
「冷たくて、おいしい」
「さあ、これを飲んだら、ちゃんと布団で寝ようね」
寝る前にオヤジをトイレへ連れて行き、オムツを交換します。
夜中に、だいたい3回 (多いときは10回近く起きる時も)。
それでも間に合わない時があります。
オムツの保水力の限界を超えてしまい、布団も本人もビショビショになることもたびたび……
教訓を生かして、今は布団の上にレジャー用のビニールシートを敷いて、その上に寝かせています。
オヤジのオムツを取り替えるたびに、思い出すのは20~30年前の子育てです。
まだ「イクメン」(育児男子) なんていう言葉もない時代のことです。
基本、昼間は勤め人ではない僕が、3人の子供たちの面倒を看ていました。
食事、散歩、保育園の送り迎え……
重なるんですね、オヤジとかつての子供たちの姿が。
人間の一生は、元にもどるのだと、つくづく感じています。
イクメンならぬ、今は 「カイメン」(介護男子) です。
ただイクメンは10年経てば、すでに役目は終えているのですけどね。
カイメンの任期って、いったいいつまでなんでしょうか?
ふぅーーーーーーーーっ!!!
2018年06月15日
正しくなくとも……
「小暮さんは、大したもんだよ」
「えっ、なんで?」
「ブレないからだよ」
「ブレないって?」
「人生、生き方がだよ」
「そうかなぁ~、でも、弊害も大きいんだよ」
「弊害?」
「ああ、家族にすれば、こんな亭主や父親は大迷惑だ」
「でも、ちゃんと立派に3人の子供を育てたじゃない」
「それはオレじゃない、カミさんだよ」
「でも、ボクは間違っていないと思いますよ。小暮さんの生き方」
「……そう、ありがとう。そう言ってもらえると、うれしいよ」
「ま、正しいかどうかは分かりませんけどね(笑)」
「だな(笑)」
還暦が近づくに連れて、日に日に臆病になっている自分がいます。
何か、あせっているのかもしれません。
同級生は来年、定年退職を迎えます。
自分だけ、人生に置いて行かれたような錯覚に陥るときがあります。
いったい、オレは、いい歳をして何をやってんだ!
学生じゃあるまいし、いつまでも夢みたいなことばかり考えて!
すでに遅過ぎるけど、社会人として、家庭人として、もう少し、まともに生きられないのか!
気が付くと、もう一人の自分が、説教を始めています。
そんなときに、友が言ってくれた言葉に一瞬ですが、ホッと救われました。
“正しくないかもしれないけれど、間違ってはいない”
正しくないことは、端から分かっていたことです。
心配だったのは、間違っていないかということ。
お世辞でも、ジョークでも、ヨイショでもいいのです。
他人に言ってもらえさえすれば。
Y君、ありがとう!
還暦を迎える勇気が出てきました。
2018年06月14日
山頂に立つ
“出版は登山に似ている”
たびたび、そうブログに記してきました。
2009年9月から昨年5月まで毎年、僕は本を出版しています。
9年間で、10冊の著書を出版しました。
※(2011年は2冊の本を書いています)
そして今年もまた、昨日、最後の原稿を書き上げました。
登山で例えるならば、山頂に立った気分を味わっています。
昨晩は1人で祝杯を挙げ、頂上からの景色に酔いしれました。
でも登山とは、無事に下山してこそ、山を制したことになります。
いつまでも山頂の絶景を眺めているわけにはいきません。
早くも下山の準備に、取り掛かっています。
ここまでは、著者のひとりよがりです。
ここからは、チームワークの見せ所です。
カメラマンやデザイナー、編集者らと、一歩ずつ丁寧に足元を固めながら下りて行きます。
そして下山して、振り返り見たとき、我々が制した山が屹立とそびえているのです。
出版まで、あと1ヶ月半。
今日は、これから出版会議です。
いよいよ、タイトルや装丁を決定しなくてはなりません。
楽しくも、緊張する時間です。
でも、この高揚感が、なんとも言えないのです。
“無” から “有” を生み出す醍醐味とでもいうのでしょうか。
この充足感を味わいたくて、僕はライターの道を選んだのだと思います。
では、行ってきます!
2018年06月12日
TENGU伝説
<もし一連の事件の舞台が沼田でなかったとしたら、誰もあの男のことを “天狗” とは呼ばなかっただろう。> ( 柴田哲孝著 『TENGU』 より)
僕は、高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」(ライフケア群栄) に、『民話と伝説の舞台』 という伝奇エッセーを連載しています。
来月の掲載で、第25話を数えます。
過去には、カッパや大蛇、龍神、巨人、化身、妖怪、地獄、竜宮伝説を追いかけてきました。
今回は、天狗です。
<沼田は天狗の町である。駅周辺や、市内のいたる所に天狗の文字やその図柄が描かれ、この街を訪れる者を伝説の世界へと誘ってやまない。北関東随一の荒祭として名を誇った祇園祭は、いまも沼田の天狗祭として面影を残し、巨大な天狗面の神輿が市内を練り歩く姿が夏の風物詩となっている。> (同書より)
JR上越線、沼田駅には、大きな天狗様の像が立っている。
あれ、昔は、こんな大きな像は、あったかしらん?
はたして沼田市は、いつからこんなにも “天狗の町” になったのだろうか?
天狗と町の関係を知りたくて、市役所を訪ねました。
経済部産業振興課商工振興係によれば、毎年8月に行われる 「沼田まつり」 で巨大な天狗面を担ぐ天狗みこしが登場したのは、意外と新しく昭和47年(1972) からだといいます。
それ以前は、「沼田祇園祭」 と 「沼田まつり商工祭」 という2つの祭りがあり、昭和45年に統合され、市民総参加の 「沼田まつり」 が誕生したとのことです。
で、その2年後に大天狗面を担ぐ 「天狗みこし」 が初めて登場するのですが、昭和45年に大天狗奉賛会が交通安全を祈願して迦葉山(かしょうざん) に奉納した張子の大天狗面 「交通安全身代わり大天狗」(顔4m、鼻2.7m) をみこしに仕立てて担いでいました。
現在祭りに参加している2基は、昭和58年(1983) に奉納された張子の大天狗面と、平成11年(1999) に奉納された強化プラスチック製の大天狗を、それぞれみこしに仕立てたものです。
やはり、沼田市の天狗のルーツは、霊峰・迦葉山にあり!
ということで昨日は、台風が接近した雨模様の中、その足で関東三大天狗の御山と知られる迦葉山龍華院弥勒護国禅寺を目指しました。
すると、ある事実が浮かび上がってきたのです。
それは、弥勒寺が開創された嘉祥元年(848) 当時は、まだ天狗伝説は存在していなかったこと。
600年以上のちの康正2年(1456) のある日、旅の坊さんが、小僧さんを一人連れて迦葉山に登って来ました。
この小僧さんが、摩訶不思議な神通力を使い、数々の奇行をしたといいます。
彼は、何者なのでしょうか?
謎学の旅は、つづくのです。
2018年06月10日
相間川温泉 「ふれあい館」⑤
楽しい時間というのは、あっという間に過ぎ去って行くものであります。
それでも、たまには、こんな日がないと……
昨日は、自分にご褒美をあげました。
取材でも、仕事でもない、純粋に温泉に入り、気の置けない仲間たちと酒を酌み交わしてきました。
相間川温泉(高崎市倉渕町) の一軒宿、「ふれあい館」。
拙著 『西上州の薬湯』(上毛新聞社) の表紙となった温泉宿です。
幾度となく取材で泊まっていますが、今まではすべて宿泊施設のある本館でした。
今回は、併設されている市民農園 「クラインガルテン」 の中にあるログハウスに泊まってきました。
プロジェクトK主催による、バーベキュー大会です。
僕は、5年ぶりに参加しました。
というのも、毎年この時期の土日に開催されていますが、週末は親の介護のため、泣く泣く欠席を続けていたのです。
でも今年は幸か不幸か、オフクロはリハビリ施設に入院中だし、運良くオヤジもショートステイが取れたので、久しぶりの参加となりました。
「プロジェクトK」 とは?
読者なら、ご存じだと思いますが、群馬県を中心に県内外で活動するフリーランスのクリエーター軍団です。
ライターやカメラマン、デザイナー、イラストレーターら約20人で構成されています。
ま、ひと言で言えば、組織に属せないアウトローの集まりです。
だから気心も知れています。
苦労話も共有し合えます
まさに、友人・知人というよりは、“仲間” なのであります。
午後3時、バンガロー前のバーベキュー会場に、9人の男女が集まりました。
少し遅れた僕が着いた頃には、炭火をおこし、鉄板の上では、上質の牛肉が音を立てていました。
「あれ、みんな早いな~」
といえば、「私なんか、2時半に来ちゃいましたから~」 とイラストレーターの I 女子。
すでに、紙コップでワインを飲んでいます。
平均年齢は、たぶん、50代半ばだと思います。
内訳は、60代3人、50代4人、40代1人、20代1人。
20代のF君(カメラマン) は、父親の後を継いでメンバーになりました。
午後7時、バーベキュー会場を片付けて、いったんバンガローに戻り、各々タオル片手に浴室棟へ。
今日も今日とて、黄金色に光り輝く、濃厚な湯をたたえています。
「湯が茶色いのは、鉄分ですか?」
と、建築家のY君。
「ですね。それと、塩分が濃厚だから、ちょっと、なめてみて」
「本当だ、しょっぺ~!」
さらに油分が多く、ほのかに重油のような臭いも漂います。
まさに、西上州(群馬県西部) を代表する薬湯であります。
でも、長湯は禁物です!
塩分と鉄分の多い湯は、体感温度が低く感じられるという特徴があります。
ついつい長湯が過ぎて、湯あたりをする浴客が後を絶たない温泉なのです。
「夜風が気持ちいいね」
とカメラマンのS君が、森の中の小道を歩きながら、しみじみと言いました。
彼は、僕の50年来の友人です。
誕生日が来て、ひと足先に還暦を迎えました。
「淳ちゃん、ダバダ飲んでよ、ダバダ!」
「ダバダ? なんだい、そりゃ?」
「四国の焼酎だよ。おいしいんだから、飲んでよ!」
「きーーー、効くねぇ~~!! でも、うまい!」
「でしょ、でしょ!」
ロックでいただく焼酎に、気も大きくなり、昔見ていた夢のつづきが饒舌に語られ出したのであります。
良き湯、良き酒、そして我に、良き仲間あり。
2018年06月08日
マロの独白(39) 日赤フィーバー
こんばんワン! マロっす。
ここんちの飼い犬、チワワのオス、11才です。
(来月、12才になります)
超~お久しぶりでやんした。
みなさん、お元気でしたか?
オイラは、暑さに負けずに毎日、散歩と昼寝をエンジョイしています。
でもね、我が家のまわりでは、ちょっと騒動が起きているんです。
前橋市民の方は、ご存知だと思いますが、先週、前橋赤十字病院が引っ越してきたんですよ。
それも、通りをはさんだ我が家の目の前に!
引越しの日、それはそれは、にぎやかでやんした。
ピーポー、ピーポー、ピーポーって、一日中、救急車が列を成して走っているんですから。
オイラ、そのたびに、「何事だ~!」 って吠え続けてましたからね。
喉がカラカラになっちゃいました。
「ご主人様、何が始まったのですか?」
「いよいよ、町内に日赤病院がやって来るんだよ。大変なことになるぞ!」
ご主人様が言うことには、この日(6月1日) は、約3キロ離れた旧病院から約300人の入院患者を搬送したそうです。
症状の軽い患者は、県警の白バイが先導するマイクロバスに乗って移動。
症状の重い患者は、救急車で送り届けられたらしいです。
まー、それはそれは、さわがしい一日でした。
あれから1週間が、経ちました。
「あれれ、ご主人様、こんなところに信号ができましたよ」
「信号だけじゃないぞ。よく見てみろ! 道路もこんなにも広くなっているだろう」
「本当ですね。これじゃ、チビのオイラには、渡れませんね。あれ、あの看板!」
「コンビニもできたし、スーパーもできた。ほれ、通りは薬局だらけだろうが」
「なんだか、いきなり都会になっちゃいましたね」
「ああ、数年前までは、田んぼと畑ばかりだったのにな」
散歩の途中も、救急車が走り抜け、ドクターヘリが飛び回っていました。
「でも、ご主人様。便利になってよかったでやんすね」
「まあな」
「目の前に大きな病院があると、もしもの時に安心でやんす」
「まあな」
「あれ、ご主人様は、便利になるのは、おイヤですか?」
「いや、便利になるのはいいんだけどさ。固定資産税が上るんじゃないかと思って……」
「えっ、なんですか? その、コテコテサンなんとかって?」
「いや、これは俺のひとり言だ。マロには関係ないよ。さ、帰ろう!」
ピーポー、ピーポー、ピーポー……
ワン、ワンワンワーン!!
2018年06月07日
ディレクター魂
「小暮さん、たびたびすみません。また会ってください。聞きたいことが、たくさんあり過ぎて」
またまた、熱い男がやって来ました。
某テレビ局のディレクターであります。
※(当ブログの2018年6月1日「熱き心に湯の花が咲く」参照)
僕も 「全面協力します」 と言った手前、後に引くわけにはいきません。
とことん彼に、付き合うことにしました。
いつもの喫茶店に行くと、彼の足元には大きなキャリーバッグが置かれていました。
「昨日から前橋のホテルに泊まっています」
そう言いながら、バッグを開けて、本を取り出しました。
それも、全部で8冊!
「も、も、もしかして、それ!」
「ええ、小暮さんの本を、すべて買いました」
驚き、桃の木、山椒の木であります。
絶版になった旧 『ぐんまの源泉一軒宿』 を除く、『群馬の小さな温泉』 から昨年出版した 『金銀名湯 伊香保温泉』 までが、コンプリートされているのです。
最初に会ったときは1冊、2回目に会ったときは2冊に増えていて、ついに全巻を揃え、持ち歩いています。
恐るべし、ディレクター魂!
過去に僕は、さまざまなテレビ番組に出させていただきました。
たいがい1度は、ディレクターが会いに来ますが、その後は、撮影当日に現地で会い、台本が渡され、撮影となります。
中には事前打ち合わせもなく、当日、一発撮りの場合も珍しくありません。
でも彼は、違います。
なんだか仕事をしているというよりは、完全に温泉の魅力にハマっているのです。
「あの後、O温泉とK温泉に、行ったんだよね。どうだった?」
「ぬる湯の世界って、奥が深いですね。小暮さんが言ったとおり、本を読みながら1日に8時間以上温泉に入っている湯治客がいました。僕も真似して、湯の中で小暮さんの本を読んできましたよ」
そこまで、ハマるか!?
ロケハンの域を超えているぞ!
「その後、小暮さんに言われたところは、みんな行ってきました。Y温泉でしょ、S温泉でしょ、H温泉でしょ、それとS温泉。そうそう、K温泉も行ってきました。あそこの湯、本当に全身が泡だらけになりますね。感激しました」
お見それしました!
スゴ過ぎます!
だって、最初に彼に会ってから、まだ10日しか経っていないんですよ。
なのに、この行動力はなんですか!?
どう考えたって、全部の温泉を番組で紹介することはできませんって。
それでも彼は、僕から聞いた話の真偽を、自分の目で見て、確かめないと気が済まないのですね。
素晴らしき、ディレクター魂です。
「ところで小暮さん、この際、テレビに出て、解説してもらえませんか?」
「えっ、出るの!?」
“全面協力” と言った言葉に、二言はありませんって。
2018年06月05日
ハラスメント対策
とある宴会場にて
部下 「くれぐれも今日は、気をつけてくださいね」
上司 「ああ、言われなくても分かっている」
部下 「絶対ですよ! 部長は酒グセが悪いんですから」
上司 「そんなに、悪いか?」
部下 「酔ってくると必ず女性に、卑猥なことを言います」
上司 「あれは、ギャグだよ、ギャグ」
部下 「それがダメなんですよ」
上司 「昔は、酒の席で下ネタを言うのは、当たり前だったんだけどなぁ~」
部下 「今はダメなんです。それと、酔ったふりをして女性の体を触らないでくださいね!」
上司 「俺、そんなことをするか?」
部下 「はい、トイレに立つとき必ず。よろけたふりをして女性に触ります」
上司 「それって、ダメなの?」
部下 「ダメです!」
しばらく時が経って
部下 「部長! もう、酒はやめましょう。ソフトドリンクにしましょう」
上司 「てめぇ~、なんだとー! 誰に向かって言ってるんだ!!」
部下 「部長、いいんですか? 今の地位も家族も、すべて失っても!」
上司 「…………」
部下 「部長、部長! どうしたんですか? 急にうなだれちゃって」
上司 「分かった、今すぐ、ガムテープとロープを買ってきてくれ」
部下 「えっ、そんなもの、何に使うんですか?」
上司 「俺の口をふさいで、両手をしばってくれ」
部下 「……そこまでしても、飲みますか!?」
上司 「これは命令だ! 今すぐ、買って来~い!」
部下 「部長、それって今度は、パワハラですよ」
上司 「えっ、……帰ろう」
予備軍のみなさま、お気をつけくださいませ。
2018年06月04日
そして、榛名湖へ
何週間ぶりに、週末はオヤジの介護から解放されました。
なにをしようか?
自由に動ける休日です。
一日中、酒を飲んで、家の中でゴロゴロしていようか。
それとも、映画でも観に行こうか。
たまには、家庭サービスをするか?
いやいや、それはないな。
なーんて、1ヶ月も前からワクワクしながら休日の予定を考えていたのです。
でも、貧乏性は治りません。
「一日も無駄にしたくない」 という思いが、僕を仕事モードへ向かわせます。
「そうだ、彼を誘って、撮影に行こう!」
と数週間前に、カメラマンにアポを取りました。
彼のスケジュールも、OK!
朝からオジサン2人の、スナップ旅行が始まりました。
なんのことかといえば、今夏、出版が予定されている著書のことです。
出版まで、残り2ヶ月を切りました。
「まえがき」 や 「あとがき」 などを除く、ほとんどの原稿は出揃いましたが、いくつか写真が足りません。
必要とされている写真は10点ほどあり、その被写体は群馬県内に点在しています。
今月中には、撮影しなければなりませんでした。
ということで、“介護がない日が吉日” とばかりに、朝から県内各所をめぐりました。
「残るは、榛名湖だけですね」
カメラマンの車が、榛名山を目指します。
標高1,100メールの湖畔は、別天地です。
この日の下界の気温は30度。
休日ということもあり、涼風を求める観光客でにぎわっていました。
でも僕らの目的は、観光ではありません。
湖畔にある、“あるモノ” を撮影するために訪れたのです。
観光客は、誰一人気づきません。
“そのモノ” は、人知れず、ひっそりと、たたずんでいます。
摩訶不思議なモノが、湖畔に鎮座しているのです。
2018年06月02日
老神温泉 「伍楼閣」②
最近は、なんだか老神(おいがみ) 温泉づいています。
昨日も老神温泉(群馬県沼田市) を訪ね、「伍楼閣(ごろうかく)」 に1泊してきました。
とはいっても、取材ではありません。
かといって、温泉大使としての公務でもありません。
では、仕事ではないのか?
と問われれば、微妙なのであります。
しいていえば、“ご褒美” のようなものです。
2016年4月から上毛新聞社が発行している 『ぐんまの源泉パスポート』。
ご存知ですか?
群馬県内の温泉旅館や日帰り入浴施設の割引クーポンが付いている本です。
おかげさまで発売以来、大好評でして、昨年11月には第2弾が発売になりました。
96温泉157施設が掲載された <2018-19年版> であります。
で、この最新版が、わずか6ヶ月で、早くも増刷されました!
ということで、「増刷祝い」 に温泉宿泊が “ご褒美” となりました。
僕も末席ながら、コラム執筆と監修をやらせていただいたので、参加してまいりました。
その会場となったのが、「伍楼閣」 であります。
館内には、宿名にちなんで5つの浴場があります。
混浴露天風呂が2つ、男女別の内風呂が2つ、そして貸切露天風呂が1つ。
かつて僕は、“五湯めぐり” を制覇したことがありますが、今回は取材ではありませんので、無理をせず、ゆっくりと湯を楽しむことにしました。
まずは、ぬる湯が味わえる混浴露天風呂 「赤城の湯」 へ。
新緑を愛でながら、暮れゆく初夏の里山風景を存分に堪能しました。
ま、宴会前ですから欲を張らずに、一浴で浴衣に着替えて、制作スタッフの待つ広間へ。
「おかげさまで、増刷になりました。これからもよろしくお願いいます。乾杯!」
アートディレクターの発声で、宴が始まりました。
良き仕事に、良き仲間。
そして、良き酒と、良き湯があれば、いうこと無し!
しばらくして、
「あらためて、日本酒で乾杯!」
長い長い夜が、始まりました。
2018年06月01日
熱き心に湯の花が咲く
「小暮さん、企画が通りました! 全編、群馬の温泉でいきます。それもゴールデンの放送ですよ!!」
某テレビ局のディレクターが、興奮気味に電話をかけてきました。
読者のみなさんは、覚えてらっしゃいますよね。
先日、わざわざ東京から僕を訪ねてきたテレビのディレクターがいたことを。
※(当ブログの2018年5月29日 「どこかで誰かが⑨」 を参照)
「ついては、また会っていただけませんか? いつでもいいです。小暮さんの都合に合わせます」
と今週、また彼は東京から、わざわざ前橋まで僕に会いにやって来ました。
喫茶店のテーブルには、僕の著書が2冊置かれています。
確か前回会った時は 『新ぐんまの源泉一軒宿』 だけだったのですが、『西上州の薬湯』 が増えています。
僕が、そのことに気づくと、
「ええ、昨日、買いました。小暮さんの話を聞いて、冷鉱泉にも興味を持ったものですから」
そして、前回より、さらにコアでマニアックな質問をしてきました。
一軒宿のこと、自然湧出のこと、ぬる湯とあつ湯、その効能の違い……
先週まで、草津温泉と伊香保温泉しか知らなかった “にわか温泉ファン” とは思えないほどの熱量です。
ひしひしと、彼の番組に対する意気込みが伝わってきます。
「この後、みなかみ町へ取材に行ってきます。しばらくは群馬県内にいますので、また会ってもらえますか?」
「もちろん、いつでもどうぞ。全面協力するって言ったでしょう」
「ありがとうございます。じゃあ、行ってきます。また連絡します」
昨晩、彼からメールが来ました。
<先日はありがとうございました。何から何まで頼りっぱなしで恐縮です。今日はO温泉に日帰りで入り、明日はK温泉に宿泊することにしました。>
ぬる湯の一軒宿を回り出したようです。
その行動力に、心を打たれました。
熱い男の心に、湯の花が咲き出したようです。
どんな番組がになるのか、ますます楽しみになりました。