2018年06月21日
御裳裾の湯を訪ねて
谷川温泉(群馬県みなかみ町) には、こんな “いで湯発見伝説” があります。
その昔、谷川の川岸に夜な夜な、ルリ色の光が立つようになりました。
村人たちは不思議に思い、ある夜、ひそかに近寄ってみると、輝くばかりの美しい娘が流れに身を清めていました。
村人が近づくと、光も娘も消えうせ、岩間から温泉が湧き出たといいます。
この湯を浴むと、疲れも病もたちどころに癒えたため、村人たちは 「これは菩薩のお告げ」と喜び、姫が裾を洗ったら湯に変じたことから 「御裳裾(みもすそ) の湯」 と名づけられました。
昨日は朝から雑誌の取材で、谷川温泉へ行って来ました。
訪ねたのは3ヶ所。
日帰り温泉施設の 「湯テルメ・谷川」 と 「旅館たにがわ」、「金盛館せゝらぎ」 です。
「湯テルメ・谷川」 には、3種類の異なる源泉風呂があるのをご存じですか?
単純温泉とアルカリ性単純温泉とカルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉です。
それぞれに浴槽が異なり、加水や加温なしにかけ流されています(一部、循環併用)。
露天風呂のみ混合泉を加温しています。
都会の入浴施設では味わえない、ちょっと贅沢な日帰り施設なのです。
「旅館たにがわ」 では、文豪・太宰治のギャラリーを取材。
くしくも一昨日が、命日の 「桜桃忌」 でした。
宿前に立つ記念碑には、献花がされていました。
「金盛館せゝらぎ」 は、歌人・若山牧水ゆかりの宿です。
大正7年(1918) 11月16日から3日間、投宿しています。
牧水は滞在中に、妻に宛て、こんな手紙を書いています。
<夕方、山路を越えて、ここに着いた。名のごとく、谷川の岸。通された部屋は、その谷の瀬の上に、突き出していた。>
文人たちも浴んだであろう、御裳裾の湯。
谷川の清流のように澄んだ、実に美しい湯であります。
伝説の美女に、我も会いたし……
雨音と瀬音を聴きながら、湯の中で妄想を膨らませていたのでした。
Posted by 小暮 淳 at 14:39│Comments(0)
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