温泉ライター、小暮淳の公式ブログです。雑誌や新聞では書けなかったこぼれ話や講演会、セミナーなどのイベント情報および日常をつれづれなるままに公表しています。
プロフィール
小暮 淳
小暮 淳
こぐれ じゅん



1958年、群馬県前橋市生まれ。

群馬県内のタウン誌、生活情報誌、フリーペーパー等の編集長を経て、現在はフリーライター。

温泉の魅力に取りつかれ、取材を続けながら群馬県内の温泉地をめぐる。特に一軒宿や小さな温泉地を中心に訪ね、新聞や雑誌にエッセーやコラムを執筆中。群馬の温泉のPRを兼ねて、セミナーや講演活動も行っている。

群馬県温泉アドバイザー「フォローアップ研修会」講師(平成19年度)。

長野県温泉協会「研修会」講師(平成20年度)

NHK文化センター前橋教室「野外温泉講座」講師(平成21年度~現在)
NHK-FM前橋放送局「群馬は温泉パラダイス」パーソナリティー(平成23年度)

前橋カルチャーセンター「小暮淳と行く 湯けむり散歩」講師(平成22、24年度)

群馬テレビ「ニュースジャスト6」コメンテーター(平成24年度~27年)
群馬テレビ「ぐんまトリビア図鑑」スーパーバイザー(平成27年度~現在)

NPO法人「湯治乃邑(くに)」代表理事
群馬のブログポータルサイト「グンブロ」顧問
みなかみ温泉大使
中之条町観光大使
老神温泉大使
伊香保温泉大使
四万温泉大使
ぐんまの地酒大使
群馬県立歴史博物館「友の会」運営委員



著書に『ぐんまの源泉一軒宿』 『群馬の小さな温泉』 『あなたにも教えたい 四万温泉』 『みなかみ18湯〔上〕』 『みなかみ18湯〔下〕』 『新ぐんまの源泉一軒宿』 『尾瀬の里湯~老神片品11温泉』 『西上州の薬湯』『金銀名湯 伊香保温泉』 『ぐんまの里山 てくてく歩き』 『上毛カルテ』(以上、上毛新聞社)、『ぐんま謎学の旅~民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん)、『ヨー!サイゴン』(でくの房)、絵本『誕生日の夜』(よろずかわら版)などがある。

2021年02月27日

忠治と落語


 「“酒は百薬の長” なんてことをよく申します。でも、呑み過ぎはいけません。呑み過ぎはいけませんが、“ほどほど” に呑んでいただけますと、体のためになるという。これは医学的にもそう言われているそうでございまして……。お酒ってえのは、大変ありがたいものでございますが、中には、ありがたくもないお酒というのもございまして……」
 <落語 『末期の酒』 より>


 「瓢箪 (ひょうたん) から駒が出る」 といえば、冗談ごとが真実になることで、思いもよらぬことや、あり得ないはずのことが現実になることです。
 僕の人生、行き当たりばったりのわりには、時々、この瓢箪から駒が飛び出します。

 今回は、一編の記事から “落語” が飛び出しました。


 読者のみなさんは、覚えていますでしょうか?
 昨年9月に、高崎市内に配布されているフリーペーパー 「ちいきしんぶん」(ライフケア群栄) に連載している 「ぐんま謎学の旅」 というシリーズに、『忠治外伝 末期の酒 「牡丹」 を探しに』 という記事を書いた話を?
 ※(当ブログの2020年10月3日 「忠治が呑んだ酒」 参照)

 この記事で、江戸時代後期の侠客、国定忠治が嘉永3(1850)年12月21日、大戸の関所 (群馬県東吾妻町) を破った罪により、関所近くの処刑場にて、磔(はりつけ)の刑に処せられた際、忠治が “末期の酒” に選んだのは、「牡丹(ぼたん)」 という酒だったことを書きました。
 そして、その酒を造っていたのは、大戸村の 「加部安」 こと加部安左衛門という大富豪でした。

 すでに、その酒蔵は無く、「牡丹」 は、幻の酒と呼ばれています。


 昨年9月、僕は、この記事を行きつけの呑み屋で会う常連客の1人に見せました。
 彼の名は、都家前橋 (みやこや・ぜんきょう)。
 アマチュアの落語家さんです。

 アマチュアといっても、落語の腕前は玄人はだし。
 僕も何度か、落語会に寄せていただきましたが、いつだって彼は “取り” を飾っています。
 その彼が、記事を読むなり、
 「いいですね! この話は、そのまま落語になりますよ」
 と、絶賛してくださいました。

 そして2人は意気投合し、僕が彼に資料を送り、彼が物語を作り上げるという作業を続けてきました。
 「完成したら、来年の春にでも、お披露目会を開きましょう!」
 と話し合っていたのですが、なかなか新型コロナウイルスの感染が収束へと向かいません。

 いつしか2人の間では、「来年の春」 が 「コロナが収束したら」 という口約束になっていました。


 ところが思わぬ所から、2つ目の駒が瓢箪から飛び出しました!

 ご存じ、群馬テレビの謎学バラエティー番組 『ぐんま!トリビア図鑑』 です。
 僕は、この番組のスーパーバイザーをしています。
 昨年末の企画会議の時に、この忠治が呑んだ 「末期の酒」 の話をすると、
 「面白いじゃ、ありませんか! それ、番組でやりましょう!」
 と、手を挙げたディレクターがいて、トントントンと話が進み、今週、番組の収録をしてきました。


 リポーターは、「トリビア博士」 の異名を持つ、そうです!
 僕です(笑)。

 寒風吹く中、忠治が破った関所跡や磔の刑に処せられた処刑場跡、加部安の屋敷や酒を造った井戸をめぐり、そして加部安代々の墓がある菩提寺の住職にも話を聞いてきました。

 夕方、ロケを終えた一行は、都家前橋さんが待つ、テレビ局のスタジオへ。
 ほとんどワンテイク (一発撮り) に近い完璧な落語を披露してくださりました。


 酒と忠治が結んだ縁は、170年の時を経て、またしても酒が落語との縁を呼びました。

 さてさて、どんな番組になったのかは、放送を観てのお楽しみであります。




          ぐんま!トリビア図鑑
     #239 「伝説のお大尽 『加部安』 とは!?」

 ●放送日  2021年3月16日(火) 21:00~21:15
 ●再放送  3月20日(土) 10:30~10:45 22日(月) 12:30~12:45
 ●放送局  群馬テレビ (地デジ3ch)
   


Posted by 小暮 淳 at 12:51Comments(0)テレビ・ラジオ

2021年02月26日

続々決定! アンコール口演


 <海なし県なのに、なぜ浦島太郎?>
 <乙姫様からもらった玉手箱がある!?>
 <浦島太郎の墓があった!>

 2018年に出版された拙著 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) にも収録され、紙芝居になった民話 『いせさき宮子の浦島太郎』。
 1月に街頭紙芝居として、地元伊勢崎市の神社境内で披露したところ、新聞やテレビでも報道され、話題となりました。

 その後、「まだ観てないので、ぜひ、もう一度口演を!」 との声が上がり、今月28日(日) にアンコール口演が決定したことは、過日、このブログでも報告いたしました。
 ところが、うれしいことに、さらに、反響の輪が広がりつつあります。


 地元FMラジオ局での民話紙芝居の収録……
 地元商店街でのポスターやチラシの配付……

 なんだか作者や演者の知らぬところで、小さなムーブメントが起きているようです。


 ということで、今後もしばらく月1回のペースで、「神社かみしばい」 を開催することになりました。
 会場である伊勢崎神社様の協力を得て、開催日には、昔なつかしい駄菓子やおもちゃ、作者の著書やイラスト、ポストカードなどの作品も販売されます。

 ぜひ、民話や伝説に興味のある方、また昭和レトロな雰囲気が好きな方は、お越しください。
 1日4回、口演いたします。



       神社かみしばい
    『いせさき宮子の浦島太郎』

 文/小暮 淳 (フリーライター)
 画/須賀りす (画家、イラストレーター)
 演/石原之壽 (壽ちんどん宣伝社 座長)

 ●日時  2021年2月28日(日)、3月14日(日)、4月11日(日)
        10時、11時、12時、13時 ※悪天候の場合中止
 ●会場  伊勢崎神社 境内 (群馬県伊勢崎市本町21-1)
 ●入場  無料 (投げ銭制)
 ●問合  壽ちんどん宣伝社 TEL.090-8109-0480
   


Posted by 小暮 淳 at 09:22Comments(0)神社かみしばい

2021年02月24日

温泉考座 (70) 「江戸より伝わる洗眼処」


 このカテゴリーでは、ブログ開設10周年 (2020年2月) を記念した特別企画として、2013年4月~2015年3月まで朝日新聞群馬版に連載された 『小暮淳の温泉考座』(全84話) を不定期にて、紹介しています。
 (一部、加筆訂正をしています)


 霧島温泉 (鹿児島県)、姥子温泉 (神奈川県)、浅間温泉 (長野県)、貝掛温泉 (新潟県) など、全国には眼病に効くといわれる温泉があります。
 泉質は、それぞれ異なりますが、殺菌作用のあるホウ酸やミョウバンが含まれている場合が多いようです。

 群馬県内では浅間隠(あさまかくし)温泉郷の温川(ぬるがわ)温泉 (東吾妻町) が、昔から 「目の湯」 といわれ湯治場として親しまれてきました。
 湯の歴史は古く、江戸中期、安永 (1772~1781) の頃に発見されたと伝わります。


 ある時、村人が家路を急ごうと近道をした草むらで、偶然に湯だまりにカエルの群れを見つけたのが最初といわれています。
 囲炉裏や炊事の煙に悩まされていた村の女たちが、この湯で丹念に目を洗ったところ、たちまち治り、村から村へとその効能が伝わり、「目の湯」 と呼ばれるようになったといいます。

 明治23(1890)年、浅間隠山の大洪水によって一瞬にして埋没してしまいましたが、73年後の昭和38(1963)年に再掘され、幻の薬湯がよみがえりました。


 泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉。
 1㎏中のメタホウ酸の含有量が78.4㎎と多いのが特徴です。
 ホウ酸は目薬の成分としても知られ、結膜炎やトラホームなど感染症が多かった時代は、洗眼薬としても治療に用いられていました。

 宿から露天風呂へ向かう温川沿いに、源泉を引いた 「洗眼処」 があります。
 医学が進み、抗生物質などの治療薬が普及した現代でも、洗眼のために湯をペットボトルにくんで持ち帰る客が後を絶ちません。


 湯は、ややぬるめで、しばらく浸かっていると、体中に小さな泡の粒が付き出します。
 昔から “病を教える湯” といわれ、体の悪い所には泡が付かないといいます。
 また泡の出る温泉は、骨の髄まで温まるといわれ、湯冷めをしない温泉としても珍重されてきました。

 ※現在、一軒宿は廃業し、露天風呂も閉鎖されています。


 <2014年11月19日付>
   


Posted by 小暮 淳 at 11:31Comments(0)温泉考座

2021年02月23日

「消えた日本一」 の反響


 過日、このブログで 『消えた日本一』 (2021年2月10日付) というタイトルで記事をアップしたところ、大変反響をいただきました。
 「ブログを読んだ」 という方から、「どこだか気になる」 「何が消えたんだ?」 「その日本一を教えてほしい」 という問い合わせが多く寄せられました。

 やっぱ、気になりますよね~!

 直接、問い合わせていただいた方には、あくまでも 「ここだけの話ですよ」 と前置きをした上で、プライベートな世間話として、教えて差し上げました。
 でも、いくら個人的なブログであっても、やはり、この場では申し上げられません。
 倫理的、社会的な側面を考慮しまして、控えさせていただきます。

 「もったいぶって、なんだよ!」
 「だったら、ブログなんかに書くな!」
 という読者の声が聞こえてきそうですが、これだけは “ネット上のモラル” ですからお許しください。


 ただ、ヒントならば差し上げられます。
 謎解きゲームのようですが、これから提示する4つのヒントをキーワードに、検索するなり、図書館で調べるなり、知恵と足を駆使して、答えを導き出してみてください。

 まず、第1のヒントです。
 ① その日本一は、昭和60(1985)年5月に完成しました。
 その後、マスコミが騒ぎ出し、新聞や雑誌などマスコミにもてはやされました。

 第2のヒントは、場所です。
 ② 群馬県西部の町です。
 観光名所としては、大きな庭園と宿場跡が残っています。

 第3のヒントは、本当の “日本一” について。
 ③ 現在、公式に発表されている日本一は、大分県にあります。

 最後のヒントは、なぜ、“日本一” のフェイクニュースが生まれたか?
 ④ 全体ではなく、ある部分だけの大きさならば、現在でも日本一だとされています。


 さあ、以上4つのヒントを参考にして、探してみてください。

 ただし、もし分かっても、このブログのコメント欄に、地名や固有名詞は書き込まないでくださいね。
 (書き込まれた場合、すぐに削除します)

 では、Let's Try!
  


Posted by 小暮 淳 at 12:02Comments(0)謎学の旅

2021年02月22日

なぜか里山


 便利な世の中になりました。

 僕にとって図書館は、仕事をする上で必要不可欠な存在です。
 特にフリーランスになってからは、より頻繁に図書館を利用しています。

 最近は、何でも簡単にネット検索できる時代です。
 僕も簡単な事柄や度忘れした言葉を思い出すときには、検索機能を利用しています。
 でも、仕事となると、そうはいきません。

 「ネットで調べられることは、記事にするな!」
 というのが、雑誌の編集長時代の口グセでしたからね。
 「必ず現場へ行け、現地の人の話を聞け、それでも分からないことがあったら図書館で調べろ!」
 ってね。


 で、その図書館ですが、群馬県内だけでも、あまたとあります。
 県立図書館、市立図書館、さらに公民館の図書室……

 僕の場合、まずは県立と市立を訪ねます。
 希少や貴重な書物は、ほとんどは禁帯出なので、資料室で調べ、必要な個所だけコピーを取っています。
 中には、マニアックな特定の地域のみで発行された郷土史の類いもあり、その場合は、あらかじめ電話を入れ、所蔵を確認した上で、町村の図書館や教育委員会の資料室などへも足を運びます。

 それでも、やっぱり最近は、便利になりました。
 自宅に居ながらネットで、図書館の所蔵や貸し出し状況が確認できるのですから。
 昔に比べたら無駄足が減り、だいぶ効率が良くなりました。


 で、図書館には、僕の著書も置いてあるわけです。
 僕も物書きの端くれですからね、自分の本が貸し出されているかどうか、興味があります。

 まず、「著者名」 で検索してみます。
 図書館によっては、ズラ~ッと10冊以上の書名が出てきます。
 市立図書館などは、本館だけでなく分館 (公民館図書室など) の在庫状況まで表示されます。

 「ほほう、うちの近くの公民館にも置いてあるんだ!」
 なんて、今さらながら気づいて、驚いたりします。


 僕は今までに14冊の著書を出版しています。
 うち温泉本が9冊で、これらがメインで所蔵されている図書館がほとんどです。
 で、検索を続けると、このコロナ禍の影響でしょうか?
 ある法則に気づきました。

 「貸出中」 の文字が一番多く付いていた僕の本って、何だと思いますか?

 これが2011年1月に出版した 『電車とバスで行く ぐんまの里山 てくてく歩き』(上毛新聞社) だったんです!


 この時季、まずキーワードは “里山” でしょうね。
 里山 (低山) は、高山と違い高温になるため真夏の登山には向きません。
 また、夏はヤブが深くなるため、草枯れする冬登山に適しています。
 さらに広葉樹の多い里山は、冬場は葉を落とすため、山頂の眺望が開けるという利点もあります。
 なんといっても平野部に近いので、滅多に積雪がありません。

 そして、今はコロナ禍です。

 3密を避けて、個人で自由に歩き回れる “里山ハイク” が見直されているのかもしれませんね。
 と、著者ながら勝手に推測してみました。

 いずれにせよ、出版から10年経った今でも愛読していただけているようで、うれしい限りであります。
 読者の皆さま、ありがとうござます。

 お気を付けて、里山ハイクをお楽しみください。
   


Posted by 小暮 淳 at 14:34Comments(0)著書関連

2021年02月21日

カメラマンの目


 <さすが、記者のカメラじゃないよなぁ>

 地元紙に記事が掲載された日の午前中、“彼” を知る友人から早々にメールが届きました。
 そう言われて、朝刊を広げると、確かに他の紙面の写真とは、一見して分かる “画力” を放っていました。


 先月末、伊勢崎市の神社で催された 「神社かみしばい」 の記事です。
 当日は、『いせさき宮子の浦島太郎』 という、ご当地民話の初披露がされ、新聞やテレビなどの地元メディアが多数、取材に駆けつけてくれました。
 出典が拙著 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) ということもあり、物語 (文) は僕が書きました。

 で、翌日、某紙に掲載された新聞記事の写真が、他紙に比べ、ダントツのリアリティーをもって、場の雰囲気を伝えていたのであります。
 その写真を撮った “彼” とは、僕の中学~高校時代の同級生です。
 また、紙芝居を口演した、ちんどん芸人も同じ高校の同級生です。


 彼は現在、地元新聞社のカメラマンをしています。
 若い頃は東京へ出て、フリーのカメラマンとして活躍していました。
 結婚と同時に帰郷し、地元の新聞社の写真部に就職しました。

 あれから30余年。
 彼は組織の中であがきながらも、カメラだけは手放しませんでした。
 部署は転々としましたが、それでも 「ここぞ」 という記事では、彼の写真が名入りで掲載されました。


 僕の同級生ですから、すでに彼は一度、定年退職しています。
 でも彼は定年間際に、自ら役職を捨て、「最後はカメラマンとして終わりたい」 と所望し、人生のスタート地点である写真部に戻りました。

 そして定年。
 さらに再雇用となり、現在は若手の育成に尽力しています。


 その彼が、「同級生2人が演じるならば」 と、記者とは別に、わざわざカメラを手に、やって来てくれたのです。

 「悪いね、わざわざ巨匠に来ていただいちゃって(笑)」
 と言えば、
 「相変わらず、お前らはヤンチャだな(笑)」
 と返された。
 高校時代の “3馬鹿トリオ” は、今も健在です。


 そんな彼が撮った写真には、その日のドラマが、すべて映り込んでいます。
 紙芝居を語る演者の姿、それを食い入るように見つめている子どもたち。
 さらに、この場が神社の境内であることが、ひと目で分かるように社殿や灯ろうまでもが、きっちりフレームに納まっています。

 さすが、臨場感があります。
 ともすると、紙芝居のアップ写真だけになり、“開催された” という報告だけになりがちです。
 でも彼の目線は、限られた新聞記事の紙面では表現しきれない細部の描写までも、1枚の写真に収めているのです。

 我が同級生ながら、見事としか言いようがありません。
 まさに、職人技であります。


 つくづく、歳は重ねるものだと知らされました。
 彼を見習い、人の心に届く仕事をしていきたいものです。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:48Comments(0)神社かみしばい

2021年02月20日

コロナに惑う子どもたち


 東京駅八重洲中央口、タクシー乗り場。

 先日、僕は講演会場へ急ぐため、改札口を抜けると、タクシー待ちの列を探して、走りました。
 「えーっと、えーっと、最後尾は……、えっ!」
 タクシー乗り場に、ズラリとタクシーは並んでいるものの、乗車待ちをする客の姿は、まったくありません。
 「ここって、東京駅だよね? 前橋駅じゃないよね?」
 そんな不安を抱えながら、先頭車両へ。

 スーッとドアが開きました。
 「乗っても、いいんですか?」
 「はい、どうぞ」
 「あ……、ビックリしました。お客が並んでないんで」
 そういうと、運転手は、
 「これが現状ですよ」
 と苦笑いをしました。

 まざまざと、コロナ禍の影響を目の当たりにしました。


 コロナ禍では、目に見える影響と見えない影響があります。
 飲食店などには、“時短営業” が余儀なく求められましたが、その代わり補償金が出されています。
 そもそも売り上げの少ない店では、思い切って店を閉めたほうが 「実入りが良い」 などという話も聞きます。

 飲食店に限らず、このコロナ禍では、ほとんどの業種で収入が落ちていることは確かです。
 私たちは今、大変な世の中にいるんだと、つくづく思います。
 でも、それらは、すべて大人の世界の話。

 大人は、経験もあり、知恵もあり、他人に相談することもできます。
 では、子どもたちは?


 先日、ショッキングな統計が発表されました。

 <2020年の全国の小中学生と高校生の自殺者数は、前年比140人 (41.3%) 増の479人 (暫定値) となり、過去最多を更新した。>
 (2021年2月16日付 毎日新聞)

 小学生14人 (前年比8人増)
 中学生136人 (同40人増)
 高校生329人 (同92人増)

 高校生では、特に女子が前年の約2倍の138人と急増しています。


 これについて文部省 (児童生徒課) は、
 「新型コロナウイルスの感染拡大による社会不安が影響した可能性がある」
 とコメントしています。
 でも、なぜ、子どもたちが?

 その問いに、さる大学教授 (生徒指導論) が、こう話しています。
 <子どもの自殺が急増したのは複合的な要因が考えられる。コロナ禍で社会不安が広がり、「新しい生活様式」 によって孤立化も進んだ。長期間の休校とそれに伴う学習の遅れの挽回で、家庭に問題を抱えている子と学校が苦手な子の両方に負荷がかかった。コロナ禍が終息するまでは、これまで以上に自殺リスクが高い状態が続く可能性が高い。>


 大人たちには、なんらかの救済があるのに対して、未成熟な子どもたちに差し伸べる手はないということなのだろうか?
 本来ならば、大人が子どもの異変に気づき、フォローしていたことが、このコロナ禍で大人たちも手いっぱいで、意識が届かなくなってしまったということなのか?

 自粛により家族時間が増えたこと、それ自体が 「地獄だ」 と言った子どもがいました。

 コロナの弊害は、まだまだ続きそうです。
   


Posted by 小暮 淳 at 12:13Comments(0)つれづれ

2021年02月19日

日本一の埴輪県 “ぐんま”


 群馬県立歴史博物館 「友の会」 運営委員からお知らせです。


 まず、「友の会」 会員のみなさんへ

 日頃、当会の事業にご協力いただき、感謝申し上げます。
 現在、「友の会」 では、会員の感染防止対策の観点から本年度事業 (講座や見学会) の中止や繰り延べを決定し、友の会事業を中断しております。
 このことを踏まえ、本年度会員 (令和2年度会費納入者) は、令和3年度の会費を無料といたします。
 なお、令和3年度の新しい会員証は、3月中にお送りいたします。
 ※(すでに令和3年度会費を納入していただいた方には、後日返却いたします)
 何卒、よろしくお願いいたします。


 と、少々堅苦しいあいさつで始まってしまいましたが、ここからは一般の方へのお知らせです。

 群馬県が 「日本一の埴輪県」 と呼ばれていることを、ご存じですか?
 なんと、国の重要文化財に指定されている埴輪の半分以上が、群馬県からの出土品なんですって!
 しかも、国宝第一号の 「武人像埴輪」 も群馬県太田市から出土しました。

 群馬県立歴史博物館では、“日本一” の名にふさわしい多彩な埴輪を収蔵・保管しています。
 今回の展示では、国重要文化財の 「上野塚廻り古墳群出土埴輪」 をはじめとする本県出土の埴輪を一堂に、ご覧いただけます。
 また、東京国立博物館所蔵の群馬の埴輪8点も里帰りし、一挙公開されます。
 ぜひ、この機会に、古墳人たちによって創り出された “すばらしき群馬の埴輪” の躍動感を、ご堪能ください。



         春の特別展示
     「新・すばらしき群馬のはにわ」

 ●会期  2021年2月27日(土)~5月9日(日)
        ※毎週月曜日、3月16日~19日は休館
 ●開館  9時30分~17時 (入館は16時30分まで)
 ●会場  群馬県立歴史博物館 企画展示室
        (群馬県高崎市綿貫町992-1)       
 ●料金  2/27~3/14 一般500円、大高生250円、中学生以下無料
        ※企画展示室のみ開館
        3/20~5/9 一般600円、大高生300円、中学生以下無料
        ※企画展示室、常設展示室とも開館
 ●問合  群馬県立歴史博物館 TEL.027-346-5522
  


Posted by 小暮 淳 at 11:36Comments(0)歴博便り

2021年02月18日

温泉考座 (69) 「美人の湯めぐり」


 以前、「日本三美人湯」 と呼ばれる温泉があることを書きました。
 ※(2020年8月6日、温泉考座16 「4つある三美人湯」 参照)

 龍神温泉 (和歌山県)、湯の川温泉 (島根県)、そして群馬県の川中温泉 (東吾妻町) です。
 3つの温泉の泉質は異なりますが、共通する美肌作用の条件は、弱アルカリ性でナトリウムイオン、カルシウムイオンを含んでいること。
 とりわけ川中温泉はカルシウムイオンが多く、湯上りはベビーパウダーを塗ったようなスベスベ感があると評判です。


 これとは別に 「三大美人温泉」 といわれる泉質の湯があります。
 古い角質をやわらかくする炭酸水素塩泉、高い保湿効果を持つ硫酸塩泉、紫外線から肌を守る作用のある硫黄泉です。
 また水素イオン濃度 (pH) の高いアルカリ性単純温泉は、トロンとしたローションのような浴感があることから 「美人の湯」 と呼ばれ、女性に人気の温泉です。

 ちなみにpH6以上7.5未満を中性泉、それ未満を酸性泉。
 7.5以上8.5未満を弱アルカリ性泉、それ以上をアルカリ性泉といいます。


 群馬県北部、利根川上流に位置するみなかみ町には、なぜか、このアルカリ性泉単純温泉が多く点在しています。
 上の原(うえのはら)温泉はpH9.1という強アルカリ性で、湯上りの肌がツルツル、スベスベになることから 「美肌の湯」 とも 「ツルスベの湯」 とも呼ばれています。

 向山(むこうやま)温泉はpH9.2、保湿効果があり、肌にうるおいを与えることから 「若返りの湯」。
 真沢(さなざわ)温泉は驚異のpH9.6を誇り、化粧品の成分として使用されているメタけい酸を多く含んでいるため、地元では 「美人の湯」 の愛称で親しまれています。

 また 「三大美人温泉」 の1つ、硫酸塩泉が湧く上牧(かみもく)温泉も昔から 「化粧の湯」 と呼ばれてきました。


 みなかみ町に限らず、県内には 「仕上げ湯」 や 「なおし湯」 といわれてきた、肌にやさしい、やわらかい泉質の温泉がたくさんあります。
 寒さが増し、ますます温泉が恋しくなる季節です。
 美肌効果を求めて、“美人の湯めぐり” を楽しんでみてはいかがですか。


 <2014年11月12日付>
  


Posted by 小暮 淳 at 17:22Comments(0)温泉考座

2021年02月17日

東京だヨ おっ母さん


 「うわぁ~、こわいよ~! 倒れて来んかね?」

 もう40年以上も昔のこと。
 オフクロが、東京で暮らしていた僕を訪ねて来たことがありました。
 あまりにも昔過ぎて、なんで、やって来たのか理由は忘れましたが、オフクロを連れて、東京見物をした思い出だけは残っています。

 冒頭のセリフは、新宿へ連れて行ったときのオフクロの第一声でした。
 副都心の高層ビル群を見上げた途端、めまいでも起こしたのか、路上に、うずくまってしまいました。

 あの時、オフクロは、いつくだったのだろうか?
 そう思って計算してみると、ナント! 51歳でした。
 僕の記憶では、もっと年老いていたイメージがあったんですけどね。


 今日、久しぶりに東京へ行って来ました。

 港区・汐留に本社がある某企業が主宰する関東地区特別講演会の講師に選ばれ、群馬県代表として講話をしてきました。
 もちろん、テーマは温泉です。
 でもコロナ禍のご時世ですから、数名の社員とスタッフの前で話し、その様子をビデオカメラで撮影。
 後日、リモート配信されることになりました。


 講演自体は、滞りなくサクサクッと終わり、社員やスタッフらと雑談の後、タクシーに乗り込みました。
 無事、大役を終えた安堵からでしょうか、行きには気にならなかった車窓からの風景を、改めて、まじまじと見入ってしまいました。

 ビルが高い……

 そう思ったとき、死んだオフクロの声が聞こえたのです。

 「倒れて来んかね?」


 あの時、僕は、ビルの谷間にうずくまるオフクロに、なんと声をかけたのだろうか?
 「大丈夫だよ、ちゃんと設計されて、建ってるんだから」
 とでも言ったのかもしれませんね。


 東京駅に着いた僕は、早々に新幹線に乗り込んでしまいました。
 ビル街が消え、まばらな住宅地となり、遠方に山影が見えてくると、ホッとしている自分がいます。

 やっぱり僕は、オフクロの子です。
 田舎もんです。
 なんだか都会が、こわいんです。
   


Posted by 小暮 淳 at 18:24Comments(0)講演・セミナー

2021年02月16日

今年も開催! 老神温泉 びっくりひな飾り


 老神温泉大使から、うれしいお知らせがあります!

 昨年、小松姫の没後400年を記念して大々的に開催された老神温泉 (沼田市) の 「びっくりひな飾り」 が、今年も開催されることになりました。
 このコロナ禍で、各地でイベントが中止になる中、何よりの朗報であります。

 ただし、今年は来場者および運営スタッフの 「三密」 を避け、感染拡大防止のためできうる限りの対策を講じた上で、原点に返り、規模・内容を開催当初に近い形で実施することになりました。
 ※(新型コロナウイルス感染状況によっては、中止または内容が変更されることがあります)


 では、今年の展示内容は?

 ① 利根観光会館ロビー・客席・大蛇みこし展示館内に約7,000体のひな人形を展示
 ② 「小松姫人形」 (沼田市東倉内町飛組保存会所有) 特別展示
 ➂ 小松姫ゆかりの遺品 (正覚寺所蔵) 特別展示

 と、今年も盛りだくさんの内容ですが、きっと、みなさんは、ある疑問を持ったことでしょうね?
 「小松姫とひな飾りは、何の関係があるのか?」 って!


 それは第1回が開催された平成26(2014)年に、埼玉県の鴻巣市から500体のひな人形が寄贈されたことに始まります。
 すでに鴻巣市は、「日本一のピラミッド型ひな壇」 があることで知られていました。
 実は、鴻巣市と沼田市には、意外な共通点があったのです。

 それが、小松姫でした。

 沼田城の初代城主・真田信幸の奥方、小松姫は、元和6(1620)年に鴻巣の地で亡くなりました。
 そして小松姫の遺骸は、鴻巣市と沼田市と上田市 (長野県) の寺に分骨されました。

 ですから、いわば、この 「びっくりひな飾り」 は、小松姫が縁で開催されたイベントなのです。


 今回で第8回目となります。
 まだ見たことのない人は、ぜひ一度、その圧巻なひな壇 (幅18m、高さ3.8m) と、ひな飾り (約7,000体) を間近に感じてください。
 そして歴史ファンには、さらに深く、小松姫を知ることができる特別な出会いの場となることでしょう。



     2021 老神温泉 びっくりひな飾り
  「真田信幸正室 小松姫 (没401年) を偲んで」

 ●期間  2021年2月20日(土)~3月28日(日)
 ●会場  沼田市利根観光会館 (メイン会場)
        および老神温泉参加旅館・南郷曲屋ほか
 ●開館  午前9時30分~午後4時20分
 ●入場  運営協力金 100円
 ●問合  老神温泉観光協会 TEL.0278-56-3013
   


Posted by 小暮 淳 at 18:05Comments(0)大使通信

2021年02月15日

小銭のぬくもり


 以前、このブログに 「無表情の時代」(2020年11月24日付) と題して、スーパーのレジで戸惑う老婆の話を書いたところ、その後、ブログを読んだ方から 「私もそうです」 という声が多く寄せられました。


 続くコロナ禍、世の中は急速に変化しています。
 オンラインやリモート、テレワーク……
 食品や衣料、生活必需品の宅配……
 キャッシュレスにも拍車がかかっています。

 すべては、“非接触で安全” だからです。


 過日、新聞の読者投稿欄に寄せられた21歳のアルバイト男性からのコメントに、目が止まりました。
 こんな書き出しから始まっています。

 <新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、人々と距離を取るソーシャルディスタンスは当たり前になり、さまざまな場所で見られるようになった。>

 その一例として、彼は近所のコンビニに導入された自動精算機に触れています。

 <金銭を介した店員と客の接触は限りなくゼロになった。店員は手間がかからなくなって便利になる。客も非接触で安全。両者ともにメリットのある素晴らしい対策だ。>

 と現状に納得するも、彼は、自分が勤務する百円ショップの業務になぞり、一抹の不安をいだきます。
 それは、いつも店に通って来る幼い子どものこと。
 小さい手で、力いっぱい強く握った “110円” から伝わって来る熱い思いを……。

 そして最後に、こう締めくくっています。

 <あのぬくもりが感じられなくなってしまうドライな時代は、もうすぐそこまで来てしまっているのだろうか。コロナは僕らから日常だけでなく、人のぬくもりまで奪うつもりなのか。>


 かつて、昭和の人々が夢に描いた21世紀の世の中が、現実になりつつあります。
 しかし、皮肉なことに進歩に拍車をかけたのは、コロナという人類の敵でした。

 “小銭から伝わる人のぬくもり”

 どんなに便利な世の中になっても、忘れたくないものです。
  


Posted by 小暮 淳 at 13:29Comments(0)つれづれ

2021年02月14日

ハナシのハナシ


 いつまでも若々しく生きる 「アンチエイジング」 に対して、ありのままに老いを受け入れる生き方を 「ウィズエイジング」 というのだそうです。
 僕は還暦を迎えるにあたり、その数年前から髪を染めることを止め、老いにまかせた生き方をすることにしました。

 結果、大変、楽になりました。
 ありのままの自分をさらけ出す解放感は、残りの人生への指針にもなっています。


 ところが精神的には楽になりましたが、老いにまかせていると、どうしても避けては通れない弊害もあります。
 それは、“肉体の老化” です。

 目や膝が、加齢とともに年々、悲鳴を上げ出しました。

 目は老眼が進み、読み書きの際には眼鏡が手放せません。
 また、ここに来て、突然、膝の関節が痛み出しました。
 日によって痛みは異なりますが、寒い日は、足を引きずる始末です。

 「じいさんになったね」
 と娘に嫌味を言われれば、
 「孫が2人もいるんだ、正真正銘のじいさんだよ」
 と開き直ってしまいます。


 いかん! いか~ん!
 これは 「ウィズエイジング」 ではないぞ!
 老いに寄り添っても、老いを加速させてしまっては、ダメじゃないか!

 と、自分に活を入れて、鼓舞した矢先……

 昨年の暮れに、ポロリと前歯が半分、欠け落ちました。


 幸い、今はコロナ禍です。
 マスクを取って、馬鹿笑いしない限りは、前歯がないことは、他人には分かりません。
 ということで、放っておいたのであります。
 (年内に行なった講演は、マスク着用だったのでセーフ!)

 ところが今月になって、立て続けにテレビと動画の出演依頼が来ました。
 しかも1本は、僕がリポーターとして番組を進行することに……
 ということは、マスクを取って、カメラの前に立つことに……

 それにしても収録までに、時間がありません。
 間に合うのでしょうか?
 いえいえ、躊躇は無用だ!
 とばかりに、脱兎のごとく、歯医者に予約を入れ、その日のうちに診察をしてもらい、「かくかくしかじかの理由でして」 と事情を話すと、先生いわく、「差し歯が入るまで、10日は必要です」。

 「10日……えーと、えーと、ぎりぎりセーフです。お願いします! 最短スピードで!」


 で、なんとか先週末、前歯が入り、今週の収録に間に合いました。

 “歯なし” の “話し” なんて、シャレにもなりませんものね。

 わがままを聞いてくださった先生、ありがとうございました。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:28Comments(0)つれづれ

2021年02月13日

温泉考座 (68) 「医王仏が見守る薬湯」


 何百年と歴史のある古い温泉には、必ず 「お薬師さま」 が祀られています。

 観音山丘陵の山里に約300年前から湧き続けている坂口温泉 (高崎市) も、そんな西上州を代表する薬湯の一つ。
 重曹を含む弱アルカリ性の食塩泉は、特に皮膚病に効くといわれ、今もなお、遠方より多くの湯治客が訪れています。

 一軒宿の 「小三荘(こさんそう)」 は、昭和25(1950)年創業。
 しかし、戦前から湯屋があり、4代目主人、山崎孝さんの伯父が立ち寄り湯として営業していました。
 東京で暮らしていた山崎さん一家は、空襲で焼け出され、父親の実家がある旧吉井町にもどり、戦後になって湯守(ゆもり)の仕事を継ぎました。


 「終戦直後の娯楽のない時代のこと。私はまだ小さかったのですが、来る日も来る日も入浴客でにぎわっていたことを覚えています。あせもやオムツかぶれを治しに、赤ちゃんを抱えた女性が多くやって来ていました」

 古くは 「たまご湯」、明治時代は 「塩ノ入鉱泉」 と呼ばれていました。
 塩気があり、玉子の白身のようにトロンと肌にまとわりつくことから、そう名付けられたようです。
 その浴感は、まるでローションを体に塗っているようなツルツル感があり、かすかに硫黄の香りもします。


 浴室から見える裏庭に、いくつもの小さな石仏が並んでいます。
 その数、30体あまり。
 これは開湯以来 「薬師の湯」 として、人々の病を癒やしてきた祈願と感謝の名残だといいます。
 地元では親しみを込めて 「お薬師さま」 と呼ばれていますが、別名 「医王仏」 とも言われる祈願仏です。

 現代のように医学が発達していなかった時代のこと。
 先人たちにとって 「薬師の湯」 は、願いをかなえてくれる、よりどころだったに違いありません。
 病気やケガを治してもらったお礼に奉納された小さな石仏群は、代々の湯守たちによって、大切に守られてきました。

 石仏群の中には、真新しいものが何体か見られます。
 平成の世になっても奉納する人がいるようです。

 ※(「小三荘」 は2015年に閉館しました)


 <2014年11月5日付>
  


Posted by 小暮 淳 at 12:01Comments(0)温泉考座

2021年02月12日

おかげさまで重版出来!


 好きな四字熟語は? と訊かれたら、僕は迷わず、こう答えます。

 「重版出来」

 <じゅうはんしゅったい> と読みます。
 あまり聞きなれない言葉ですが、実は、出版に携わる人たちの業界用語なんです。

 「重版」 とは、書籍などの出版物が初版の発行部数を上回って、刷り版を重ね、さらに発行すること。
 一般にいう “増刷” のことです。
 「出来」 とは、その製品ができあがることをいいます。

 まあ、ひと言でいえば、業界人にとっては、出世や昇給よりも価値のある称賛の言葉といえます。
 まして、組織に属さずフリーランスで仕事をしている編集者やライター、作家にとっては、すでに過去にやった仕事で、また収入が入るわけですから、喉から手が出るほどあこがれる四字熟語であります。


 突然、なんで、そんな話をしたかというと……

 やりましたーーーーーっ!!!!
 2018年8月に出版した拙著 『ぐんま謎学の旅 民話と伝説の舞台』(ちいきしんぶん) が、つ、つ、ついに、増刷されることになりました~!

 苦節、2年6ヶ月。
 雨の日も風の日も、書店の店頭もしくは奥の棚の中で、ひっそりと読者の手に取られることを願いながら待ち続けた日々……。
 1冊、また1冊と売れて行く喜びを嚙み締めつつ、コツコツと努力を重ねた結果、ついに、出版元の在庫が尽きたのであります。

 ああ、なんて、けなげな本たちなのでしょうか!
 生みの親にとっては、我が子も同然です。
 「みんな、里子に出された先で元気にやってるか!」
 なんて、朗報が届いたときは、そんな思いが込み上げてきて、目頭が熱くなりました。


 ということで、昨日、増刷会議が開かれました。
 出版元のミーティングルームに集まったのは、編集担当者とチーフデザイナーと著者の僕であります。

 ま、会議といっても内容は初版と同じですから、大それたことは話しません。
 ただ、奥付 (著者の略歴や発行年月日が記された最終ページ) や表紙まわりに若干の変更が加わります。

 そして、今回、“重版出来” を記念して、帯が付くことになりました!

 ので、会議では、帯に印刷されるキャッチコピーの言葉選びが中心に議論されました。


 増刷本が書店に並ぶのは、3月中旬の予定です。
 同時に、初版時にも行った 「表紙原画展」 も 「増刷記念」 と銘打って、県内の書店をめぐる巡回展を企画しています。

 まだ、お読みでない人は、ぜひ、この機会に、ご購入ください。
 すでに、お読みの方は、増刷記念本としてコレクションに、もう1冊、お買い上げください。


 「重版出来」

 いや~、何度聞いても、いい響きですね。
  


Posted by 小暮 淳 at 13:22Comments(4)著書関連

2021年02月11日

草津よいとこコロナに効く湯?


 『草津よいとこ薬の温泉(いでゆ)』

 ご存じ、「上毛かるた」 の 「く」 の詠み札であります。

 草津温泉と言えば、群馬が誇る日本の名湯です。
 「温泉大国ぐんま」 の名は、草津温泉が、けん引して全国に知らしめているからと言っても過言ではありません。
 それほどまでに草津温泉は、群馬を語るときに欠かせないキーワードとなっています。

 では、なぜ草津温泉が、そんなにも有名になったのでしょうか?
 その答えは、かるたの札にあります。
 “薬のいでゆ” と称されるほど、昔から効能が豊かでした。

 “万病に効く” といわれ、草津の湯で治らないのは “恋の病” だけだと言われてきました。


 「だったらコロナにも効くんじゃないの?」
 草津町は、そう考えたそうです。
 「だったら調査してもらおう!」
 と、群馬大学の研究機関に依頼しました。

 すると!

 結果が出ました。
 発表によると、草津温泉の湯畑源泉のお湯が、新型コロナウイルスの感染力をなくす 「不活化」 に効果があることが分かりました。

 「不活化」 とは、感染力がなくなったということです。

 調査結果によると、温泉水 (湯畑源泉)、硫酸酸性水、水道水にウイルスを入れて培養したところ、水道水ではほとんど不活化しなかったのに対し、硫酸酸性水では約80%、温泉水にいたっては90%以上が不活化したことが確認できたといいます。

 これって、すごくありませんか!
 「やっぱ草津の湯って、万病に効くんだ!」
 って、最初に新聞記事を読んだときに僕は、声を上げて、小躍りしてしまいました。


 研究にあたった群馬大学院の板橋英之教授は、このようにコメントしています。
 <硫酸酸性水と草津の温泉水は、ともに「酸性」 で、これがウイルスを不活化させたと推察されます。その上で草津の温泉水のほうが不活化の効果が高かったということは硫酸酸性水にない、草津の温泉水ならではの “成分” が不活化に作用したと考えられます。>

 ヤッホー!
 これは、まさに温泉だけが持つ “湯力(ゆぢから)” が立証されたということですぞ!

 結果を受けた草津町では、さっそく観光対策として源泉を使った 「手洗い場」 を整備するそうです。


 これで医学や薬学が進歩した令和の世でも、古来、日本人が大切にしてきた湯治という文化が継承されて行くことでしょう。
 久々の朗報でした。
   


Posted by 小暮 淳 at 11:39Comments(4)温泉雑話

2021年02月10日

消えた日本一


 30年以上も昔のこと。
 昭和の終わりに、群馬県内のある場所が、“日本一” だということで、マスコミにもてはやされたことがありました。
 当時、タウン誌の記者をしていた僕もカメラを片手に、すっ飛んで行った記憶があります。

 「さて、しばらく噂は聞かないけど、今は、どうなっているんだろう?」
 と思い、ネットで検索をしてみると……
 「あれれ?」
 いくつかの記事は見かけますが、“日本一” をうたっていません。
 「これは、どういうことだ? この30年間で、あの町に、いったい何が起こったのか?」

 そう思ったら、もう居ても立っても居られません。
 「謎学ハンター」 の血が騒ぎ出しました。

 ということで、カメラマンを連れて、現地を訪ねてきました。
 すると!
 あれから、思わぬ騒動が勃発していたことが分かりました。


 群馬県某所。
 まずは、30年前に訪れたことのある “現場” を訪ねました。

 大きい! 見上げるほどの大きさで、そびえ立っています。
 その姿は、30年前と変わりありません。

 でも……
 ないのです!
 何がないって、町に入ってから、この場所に来るまで、一切、観光の案内看板がないのです。
 30年前は、凄かったですよ!
 新聞や雑誌、テレビまで来たのですから、その後、完全に町一番の観光名所となり、 “日本一” の文字が町中に躍っていたのです。
 なのに、まったくありません。


 さらに不思議だったのは、町の中だけでなく、現地の案内板からも、その名前が消されていました。
 「これは、絶対、何かある!」
 と感じた僕は、まず町の観光案内所へ行きました。

 すると……

 案の定、すべての観光パンフレットから、“その名” は消されていました。


 「じゃあ、役場へ行こう!」
 とカメラマンの車に飛び乗りました。
 「役場って、どの部署でしょう? 観光課ですか、文化財? いや教育委員会ですかね?」
 カメラマンの問いに、
 「どこでもいいよ。片っ端から訪ねてみよう!」

 その結果……

 「あっ、……少々、お待ちください」
 「ああ、それはですね……」
 どこも奥歯に物がはさまったような対応です。


 「絶対に知っていますよ。なのに隠している」
 「だね、みんな名前 (日本一の名称) を言うと、顔が引きつったものね」

 そして、待たされること約5分。
 若い職員が出てきて、こう言いました。
 「その件は直接、○○さん (土地の所有者) に聞いてください」

 もちろん僕らは、○○さんの自宅を探し出し、その足で訪ねました。
 そこで知らされた事実は……?


 申し訳ありません。
 せっかくカメラマンを連れて取材をしてきたのですが、記事としての掲載を断念しました。
 もちろん、このブログにも書くことはできません。

 では、この30年の間に何が起こったのか?

 まず、“日本一” ではなかったこと。
 (マスコミが、あおり過ぎたようです)
 そして、権利をめぐり、制作者と地主と町が三つ巴の争いになり、「すべては無かったこと」 にしたようであります。


 よって、裏話としては大変面白いのですが、ライターとして、このことを表に出すことはあきらめました。

 でも、講演ならば大丈夫かも?

 いつか、みなさんの前で、“消えた日本一” のてん末を、面白おかしくお話しできる時が来るかもしれません。
 その日まで、封印いたします。
   


Posted by 小暮 淳 at 13:21Comments(2)取材百景

2021年02月09日

恋の占い 「アキストゼネコ」


 最近、ニュースで頻繁に耳にする 「アストラゼネカ」。
 なんでも新型コロナウイルスのワクチンを製造する製薬企業の名前なんですってね。

 「アストラゼネカ」 と聞いて、僕は 「えっ、アキストゼネコ?」 と反応してしまいました。
 そう思ったのは、たぶん、僕だけではないはずです。
 昭和の時代に幼少期を過ごした人は、「アキストゼネコ」 を連想したはずです。


 アキストゼネコとは?

 はい、小学校の頃に (特に女の子の間で) 流行った恋占いです。
 「ア」 は 「愛してる」、「キ」 は 「嫌い」、「ス」 は 「好き」、「ト」 は 「友だち」、「ゼ」 は 「絶交」、「ネ」 は 「熱愛」、「コ」 は 「恋人」 のこと。

 占い方は、互いの名前をひらがなに分解して、あ行の5つの母音に分類します。
 たとえば、僕の名前ならば、「こ」 =5、「ぐ」 =3、「れ」 =4、「じ」 =2、「ゆ」 =3、「ん」 =1、となります。
 ※(「ん」は1)


 これと占う相手の数字を比較します。

 そうですね、では、僕と女優、深田恭子さんとの相性を占ってみましょう!
 「ふ」 =3、「か」 =1、「だ」 =1、「き」 =2、「よ」 =5、「う」 =3、「こ」 =5、となります。

 両方そろったら、2人の重複している数字を消します。
 1が1つ、3が2つ、5が1つあります。
 これらを消して、残った数字を足した数字が、占う数字となります。

 僕は、4+2+=6
 深田さんは、1+2+5=8

 この数字に、「アキストゼネコ」 の7文字を当てはめます。
 ※(8以上は 「ア」 にもどります)

 よって、占った結果は!(ジャーン)

 僕は深田さんを “熱愛” しています。
 深田さんは僕を “愛している” ことになります。


 いかがでしたか?
 半世紀ぶりにやってみましたが、なんだかワクワクしました!

 ぜひ、みなさんも童心に帰って、意中の人との相性を占ってみてください。
  


Posted by 小暮 淳 at 14:09Comments(0)つれづれ

2021年02月08日

温泉考座 (67) 「にごり湯いろいろ」


 成分の濃い 「にごり湯」 は、それ自体が全国でも約10%しかなく希少ですが、色や匂い、味、肌触りなど五感で楽しめるところが人気の秘密のようです。
 温泉をにごらせる成分は様々で、代表的なものに硫黄分、鉄分、モール質があります。

 温泉に含まれる主な硫黄分、硫化水素イオンと遊離硫化水素のうち、遊離硫化水素が乳白色に色づくといわれています。
 湧出時は無色透明で、空気に触れて酸化すると硫黄の微粒子ができ、にごり出します。
 群馬県内では草津温泉 (草津町) や万座温泉 (嬬恋村) が有名ですが、みなかみ町の高原千葉村温泉も乳白色ににごる硫黄泉としてマニアに知られています。
 ただ、草津や万座の湯が酸性なのに対し、高原千葉村の湯はアルカリ性で、硫化水素イオンを含むため、季節や天候、光の加減によっては緑色に見えることもあります。

 鉄分を含む温泉は濃度が低いと緑色、高いと黄土色や茶褐色、さらに高濃度になると赤褐色になります。
 県内では伊香保温泉 (渋川市) や赤城温泉 (前橋市)、梨木温泉 (桐生市) などが代表的ですが、私の記憶の限りでは相間川温泉 (高崎市) の湯が一番濃いレンガ色でした。
 また相間川の湯は高濃度の塩分を含むため、湯舟で体が不安定に浮き上がり、難儀をするほどでした。

 3つ目のモール質は県内では見かけない温泉です。
 他のにごり湯は湧出後に色づきますが、モール質の温泉は地層の中の腐植質が温泉水に混ざった状態で湧出します。
 ですから湯口から注がれる時、すでに色が付いています。
 ほうじ茶色、紅茶色、コーヒー色、真っ黒と色は様々です。

 モール質ではありませんが、県内には黒く湯がにごる温泉があります。
 応徳温泉 (中之条町) や奥嬬恋温泉 (嬬恋村) の湯は、煤(すす)のような湯の花が沈殿します。
 この湯の花が入浴すると舞い上がり、湯が墨のように黒くにごることがあります。


 モール質などの例外を除き、湧き立ての新鮮な温泉は無色透明です。
 にごり湯とは、湯が空気に触れて酸化したために起こる劣化現象です。
 新鮮なのが一番ですが、湯の色や匂いを楽しむのも温泉の魅力といえます。


 <2014年10月29日付>
  


Posted by 小暮 淳 at 16:51Comments(0)温泉考座

2021年02月07日

「アンコール口演」 開催日変更のお知らせ


 先月、30日と31日の両日に群馬県伊勢崎市の伊勢崎神社境内にて開催された 「神社かみしばい」。
 新作の郷土民話として初お披露目した 『いせさき宮子の浦島太郎』 でしたが、予想以上の反響があり、地元のテレビや新聞にも取り上げられました。

 ご来場された方々には、改めて、お礼を申し上げます。
 寒い中、ありがとうございました。


 さて、過日、このブログでもお伝えしましたが、あまりの盛況ぶりに気を良くした主催者から 「2日間に来られなかった人たちのために、もう1回やろう!」 という提案があり、当初、今月の21日にアンコール口演の開催を企画いたしました。
 ※(当ブログの2021年1月31日 「来社来演、御礼申し上げます」 を参照)
 一部、ネット等で、すでに告知されてしまいましたが、のっびきならぬ事情により、勝手ながら開催日を変更させていただきます。

 その、“のっびきならぬ事情” とは?

 すでにニュース等で、ご存じの方も多いと思いますが、今月に入り、伊勢崎市に新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発令され、外出の自粛要請が出てしまいました(2月22日まで)。
 このことを踏まえ、1週間延期し、28日(日) に開催することになりました。
 ※(緊急事態宣言が延長された場合は、中止いたします)

 よろしくお願いいたします。



      向春 「神社かみしばい」
        アンコール口演
     『いせさき宮子の浦島太郎』

 作/小暮 淳 (フリーライター)
 画/須賀りす (画家、イラストレーター)
 演/石原之壽 (壽ちんどん宣伝社座長)

 ●日時  2021年2月28日(日)
        10時、11時、12時、13時
 ●会場  伊勢崎神社 境内 (伊勢崎市本町)
        ※悪天候の場合中止
 ●入場  無料 (投げ銭制)
 ●問合  壽ちんどん宣伝社 TEL.090-8109-0480
  


Posted by 小暮 淳 at 12:44Comments(0)神社かみしばい