2018年06月12日
TENGU伝説
<もし一連の事件の舞台が沼田でなかったとしたら、誰もあの男のことを “天狗” とは呼ばなかっただろう。> ( 柴田哲孝著 『TENGU』 より)
僕は、高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」(ライフケア群栄) に、『民話と伝説の舞台』 という伝奇エッセーを連載しています。
来月の掲載で、第25話を数えます。
過去には、カッパや大蛇、龍神、巨人、化身、妖怪、地獄、竜宮伝説を追いかけてきました。
今回は、天狗です。
<沼田は天狗の町である。駅周辺や、市内のいたる所に天狗の文字やその図柄が描かれ、この街を訪れる者を伝説の世界へと誘ってやまない。北関東随一の荒祭として名を誇った祇園祭は、いまも沼田の天狗祭として面影を残し、巨大な天狗面の神輿が市内を練り歩く姿が夏の風物詩となっている。> (同書より)
JR上越線、沼田駅には、大きな天狗様の像が立っている。
あれ、昔は、こんな大きな像は、あったかしらん?
はたして沼田市は、いつからこんなにも “天狗の町” になったのだろうか?
天狗と町の関係を知りたくて、市役所を訪ねました。
経済部産業振興課商工振興係によれば、毎年8月に行われる 「沼田まつり」 で巨大な天狗面を担ぐ天狗みこしが登場したのは、意外と新しく昭和47年(1972) からだといいます。
それ以前は、「沼田祇園祭」 と 「沼田まつり商工祭」 という2つの祭りがあり、昭和45年に統合され、市民総参加の 「沼田まつり」 が誕生したとのことです。
で、その2年後に大天狗面を担ぐ 「天狗みこし」 が初めて登場するのですが、昭和45年に大天狗奉賛会が交通安全を祈願して迦葉山(かしょうざん) に奉納した張子の大天狗面 「交通安全身代わり大天狗」(顔4m、鼻2.7m) をみこしに仕立てて担いでいました。
現在祭りに参加している2基は、昭和58年(1983) に奉納された張子の大天狗面と、平成11年(1999) に奉納された強化プラスチック製の大天狗を、それぞれみこしに仕立てたものです。
やはり、沼田市の天狗のルーツは、霊峰・迦葉山にあり!
ということで昨日は、台風が接近した雨模様の中、その足で関東三大天狗の御山と知られる迦葉山龍華院弥勒護国禅寺を目指しました。
すると、ある事実が浮かび上がってきたのです。
それは、弥勒寺が開創された嘉祥元年(848) 当時は、まだ天狗伝説は存在していなかったこと。
600年以上のちの康正2年(1456) のある日、旅の坊さんが、小僧さんを一人連れて迦葉山に登って来ました。
この小僧さんが、摩訶不思議な神通力を使い、数々の奇行をしたといいます。
彼は、何者なのでしょうか?
謎学の旅は、つづくのです。
Posted by 小暮 淳 at 11:55│Comments(0)
│取材百景