2024年04月21日
死に酒を探して
歌人・若山牧水終焉の地、静岡県沼津市を訪ねた目的は2つ。
1つは、墓参り。
(2024年4月19日 「あくがれの墓参り」 参照)
もう1つが、記念館を観覧することでした。
駿河湾に臨む風光明媚な千本浜公園からほど近い、閑静な住宅地に 「沼津市若山牧水記念館」 はありました。
昭和62(1987)年に開館した小さな記念館です。
館内には、年譜をはじめ、直筆の歌を書いた短冊や色紙、原稿などが展示されています。
興味のない人には、一周10分程度で観終わってしまう展示物ですが、牧水ファンにとっては小さなディズニーランドのよう。
1時間以上もかけて、何度も何度も観返してしまいました。
もちろん、帰りには、ここでしか購入できない貴重な関連資料を爆買いさせていただきました。
で、展示物の中で、1つ、気になった表記がありました。
それは、末期の酒について。
臨終した際、遺族が牧水の口に含ませたのは水ではなく、酒だったとありました。
さすが、牧水!
「死に水」 ならぬ 「死に酒」 をとらせたのであります。
となれば、その酒が知りたい。
いや、現存するなら、ぜひ、我も口に含んでみたいと思うのが、ファンの本音であります。
ということで、現地での聞き取り調査を開始しました。
午後5時。
沼津駅前の居酒屋に、初老の男たちが集まりました。
今回の旅を企画して、群馬から同行してくれたSさん。
Sさんは青年時代、ここ沼津市の高校に通っていたことがあり、土地勘があったのです。
そして、彼の同級生4人が、晩餐に駆けつけてくれました。
みなさん現役の沼津市民です。
自己紹介もそこそこに、いきなり質問を投げかけました。
「沼津市内に酒蔵はあるか?」
「牧水が沼津に暮らした大正~昭和初期にあった老舗は、どこか?」
「もし現存するなら、何という銘柄の酒なのか?」
矢継ぎ早の質問に、ズバリ回答してくださったのは、地元で建築会社を経営するWさん。
「髙嶋酒造の 『白隠正宗』 でしょう」
髙嶋酒造は、江戸時代中期の創業。
代表銘柄である 『白隠正宗』 は、明治17年から醸造されている銘柄でした。
「では、牧水にカンパイ!」
店にも地酒 『白隠正宗』 は置いてありました。
感慨無量であります。
牧水が生前に呑んだかもしれない酒、牧水の 「死に酒」 かもしれない酒。
口に含むと、ほのかな甘みと芳醇な香りが鼻へ抜けていきました。
≪人の世にたのしみ多し然れども 酒なしにしてなにのたのしみ≫ 牧水
Posted by 小暮 淳 at 10:57│Comments(2)
│取材百景
この記事へのコメント
私も沼津や近辺にいった際には
白隠正宗をいただいてみますね(*^_^*)
さぁて、昼呑みから昼寝もしたし
また呑みはじめるかな(^_-)
白隠正宗をいただいてみますね(*^_^*)
さぁて、昼呑みから昼寝もしたし
また呑みはじめるかな(^_-)
Posted by みわっち at 2024年04月21日 16:05
みわっちさんへ
目指せ、牧水!
牧水は、朝2合、昼2合、夜6合=計一升を毎日たしなんだといいます。
みわっちさんも “令和の牧水” として(なとなく風貌が似ているような)、破天荒に生きてください。
ただし、お体は大切にね。
目指せ、牧水!
牧水は、朝2合、昼2合、夜6合=計一升を毎日たしなんだといいます。
みわっちさんも “令和の牧水” として(なとなく風貌が似ているような)、破天荒に生きてください。
ただし、お体は大切にね。
Posted by 小暮 淳
at 2024年04月21日 21:32
