2020年09月14日
温泉考座 (28) 「清掃時間の確認」
<温泉旅館で60代男性死亡 レジオネラ菌で肺炎>
<基準値の1800倍のレジオネラ菌を検出>
2011年11月、新聞は一斉にショッキングな記事を報じました。
群馬県内で発生したレジオネラ菌による死亡事故です。
この舌をかんでしまいそうな細菌の名前が知られるようになったのは、02年の夏に宮崎県の温泉施設で起きた集団感染からでした。
感染者数は約300人、死者7人という未曽有の大惨事となりました。
レジオネラ菌による死亡事故は以前から発生していたのですが、件数が少なかったため全国レベルでの対策が遅れていました。
また事故の多くが 「循環式風呂」 で発生していました。
循環式風呂とは、温泉を何度も再利用する方式のことです。
ろ過、殺菌、加熱をしながら湯を浴槽の中で循環させ続ける “魔法の装置” と言ってもいいかもしれません。
この装置が登場したおかげで、湧出量の少ない温泉でも大型の入浴施設を造ることが可能になりました。
ところがレジオネラ菌にとっては、これが絶好の繁殖の場となったのです。
レジオネラ菌は、土中や河川に生息します。
従来の放流式(かけ流し)の浴槽なら、たとえ菌が入っても流されてしまうので問題ありませんでした。
しかし、その菌が繁殖に適温とされる湯の中で循環し続けると、爆発的に増殖し、飛沫から人間の肺に入り込み感染するのです。
もちろん、多くの循環式風呂は、きちんと衛生管理がされています。
それに循環式だけが危険というわけではありません。
かけ流し風呂でも、清掃が行き届いていなければ同じことです。
温泉旅館に泊まって、夜中や朝方に風呂に入ろうとしたら、清掃中だったという経験はありませんか?
「なんだ、24時間入れないのか!」 と立腹される人もいますが、実は、こうやって毎日、湯を抜いて清掃している宿が、いい湯守(ゆもり)のいる宿なのです。
宿によっては、客のいないチェックアウトからチェックインの間に清掃を行っている宿もあります。
温泉宿に行ったら、ぜひ清掃時間の確認をしてください。
<2013年11月6日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:03│Comments(0)
│温泉考座