2021年04月13日
温泉考座 (81) 「東上州の名薬湯」
「歴史に名高い 新田義貞」
『上毛かるた』 の札で知られる武将ゆかりの温泉といえば、やぶ塚温泉 (太田市) です。
湯の歴史は古く、1300年以上前の天智天皇の時代に発見されたと伝わっています。
元弘3(1333)年に新田義貞が鎌倉に攻め入ったとき、傷ついた兵士をこの湯で癒やしたという言い伝えがあることから、「新田義貞の隠し湯」 とも呼ばれています。
やぶ塚温泉には、こんな伝説があります。
昔、八王子山のふもと、藪塚(やぶづか)の地に 「湯の入」 というところがあり、小さな社の下の岩の割れ目から、こんこんと湯が湧き出していました。
ある日、この温泉に1頭の馬が飛び込み、一声高くいななくと、雲を呼び、雨を起こして、天高く舞い昇って行きました。
すると温泉は、たちどころに冷泉に変わってしまいました。
ところが、何年か経ったある日のこと。
村人の夢枕に薬師如来が現れ、
「この冷泉を温めて入浴すれば、百病を治す霊泉になる」
とのお告げがあったため、温めて入浴したところ、身体の痛みはことごとく消え、さまざまな病が治ってしまったといいます。
以来、やぶ塚温泉は冷泉ながら沸かし湯として、多くの人々に親しまれてきました。
温泉街北の小高い丘に神社があり、伝説に登場する薬師如来像が納められています。
神社のふもとから湧き出す源泉は 「巌理水」 といい、何百年もの間、村人たちにより大切に守られてきました。
「昔から 『おできは、やぶ塚へ行けば治る』 と言われています」
そう話すのは、創業180年の老舗旅館 「開祖 今井館」 の9代目主人、今井和夫さん。
「皮膚病に特効があり、草津や伊香保で治らなかった人が、この湯に入ったら治った」
という話もあるそうです。
保湿効果のあるメタけい酸を含むアルカリ性の湯は、うっすらと生成り色をしていて、トロンと肌にまとわりつく独特の浴感があります。
まさに東上州を代表する名薬湯です。
<2015年3月4日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:24│Comments(0)
│温泉考座