2021年04月22日
温泉考座 (84) 最終回 「入って残そう群馬の温泉」
「なぜ温泉ライターになったのですか?」
と、よく聞かれます。
「県外の温泉は取材しないのですか?」
とも。
どちらも答えに窮してしまいます。
なぜなら温泉ライターになろうと思ったこともなく、群馬の温泉にこだわっているわけでもありません。
ただ、群馬の温泉に魅了されたことは確かです。
私は長年、県内のタウン誌や情報誌、フリーペーパーの編集に携わってきました。
紅葉や雪見のシーズンになると、決まって温泉の特集を組みます。
ところが掲載される温泉地は同じところばかり。
広告収入を優先しますから、大きな温泉地の有名旅館やホテルが顔を揃えます。
全国誌ならいざしらず、地元誌がこれでは編集人としてのプライドが許しません。
「いったい群馬に温泉は、いくつあるのだろう?」
そう思って調べのが始まりでした。
現在、群馬県には大小100余りの温泉地 (宿泊施設のある温泉) があります。
その一つ一つに源泉が湧き、その源泉を守っている人たちがいます。
「設備や料理の宣伝ではなく、代々湯を守り継いでいる人たちを紹介したい」
そんな思いから私は県内の温泉地を訪ね、宿の主人や女将から話を聞いて回るようになりました。
とりわけ魅せられたのが、たった一軒で源泉と温泉地名を守り続けている “源泉一軒宿” の存在です。
戦後、日本の温泉地は、どこも急速に変化していきました。
高度経済成長の波に乗り、団体客が観光バスでなだれ込み、湯量に見合わない大浴場と露天風呂を造り、宴会客中心の大型旅館やホテルが増え続けました。
しかし、大きな温泉地が集客に奔走している間も、一軒宿の温泉は変わることなく、かたくなに湯を守り続けていたのです。
ところが、そんな昔ながらの小さな温泉地は、観光地化による営利競争の中で取り残されてしまいました。
経営不振、後継者不在などの理由で、年々姿を消しているのが現状です。
「一軒でも多くの温泉宿を残したい」
そんな思いが、私を温泉ライターという手段 (仕事) へ導いたのだと思います。
“入って残そう群馬の温泉”
を合言葉に、これからも取材活動を続けて行くつもりです。
長い間、ご愛読いただいた読者のみなさんに、心よりお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
<2015年3月25日付>
このカテゴリーでは、ブログ開設10周年 (2020年2月) を記念した特別企画として、2013年4月~2015年3月まで朝日新聞群馬版に連載された 『小暮淳の温泉考座』(全84話) を紹介いたしました。
Posted by 小暮 淳 at 11:08│Comments(2)
│温泉考座
この記事へのコメント
はじめまして。
西園寺と申します。
「入って残そう」と言うフレーズに惹かれました。
小生はただの温泉好き野郎ですが、それでも温泉地では極力立ち寄り湯して、小さな饅頭屋では何かしらお土産を買い、スマートボールと射的ではその存在にお代を払うようにしてきております。
「入って残そう」は素敵なすばらしい表現です。
西園寺と申します。
「入って残そう」と言うフレーズに惹かれました。
小生はただの温泉好き野郎ですが、それでも温泉地では極力立ち寄り湯して、小さな饅頭屋では何かしらお土産を買い、スマートボールと射的ではその存在にお代を払うようにしてきております。
「入って残そう」は素敵なすばらしい表現です。
Posted by 西園寺 at 2022年06月24日 19:55
西園寺さんへ
はじめまして。
コメント、ありがとうございます。
NPO法人を立ち上げたのも、僕と同じ考えの人たちが賛同してくださったからです。
西園寺さんのような人が増えることを願い、微力ながら活動を続けていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
はじめまして。
コメント、ありがとうございます。
NPO法人を立ち上げたのも、僕と同じ考えの人たちが賛同してくださったからです。
西園寺さんのような人が増えることを願い、微力ながら活動を続けていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by 小暮 淳
at 2022年06月25日 10:50
