2013年12月02日
坂口温泉 「小三荘」⑤
“西上州に名薬湯あり”
僕は講演やセミナーで、そう話しています。
旧吉井町(現・高崎市) の坂口温泉は、昔から 「薬師の湯」 と呼ばれ、湯治客から親しまれてきた西上州を代表する薬湯の1つ。
そのトロンと肌を滑り落ちる独特な湯は、神経痛やリウマチ、皮膚病に特効があり、医学が発達した現代でも評判を聞きつけた人たちが、遠方よりやってきます。
「いつもありがとうございます。先日も、小暮さんの講演を聴きに行ったという方が、来てくださいましたよ」
と開口一番、フロントにいた娘さんに声をかけられました。
坂口温泉の一軒宿、小三荘(こさんそう) を訪ねるのは、半年ぶりです。
前回は、僕が講師を務める温泉講座で、大勢の受講生たちとお邪魔しました。
小三荘は、4代目主人の山崎孝さんと女将の照代さん、そして娘さんの3人で切り盛りしている小さな温泉宿です。
旅館の創業は昭和25(1950) ですが、すでに戦前から湯屋があり、戦後になり主人の伯父が立ち寄り湯を営業。
その後、現主人が旅館の経営をはじめました。
開湯は300年前と伝わり、古くは 「玉子湯」、明治時代には 「塩ノ入鉱泉」 と呼ばれていました。
塩気があり、トロンと玉子の白身のように肌にまとわるような濃厚な浴感から、そう名付けられたようです。
「農閑期になると近在の農家の人たちで、いっぱいになりました。重曹を含んでいるので、おまんじゅうを作るのに源泉を分けてほしいと言う人も来ましたよ」
と、昭和39年に嫁いだ女将さんは、当時を振り返って話してくれました。
とにかく、ここの湯は、不思議な湯なんです。
天気により、色が変わります。
晴れならば、無色透明。
曇りなら、薄黄色や淡緑色の薄にごり。
雨だと、白濁します。
そして、なによりも、湯がトロリと重い!
すくってみると分かりますが、ズッシリとした手ごたえがあります。
「たまには私も、よその温泉へ行くことがあるんだけど、やっぱり、うちの湯とは濃さが違うんだよね。まるで水道水に入っているようなんだもの」
と、また、ご主人の自慢話が始まりました。
いいですねぇ。
僕は大好きなんです。
湯守の “湯自慢” が!
いい湯守は、みんな自分ちの湯に、自信をもっているものです。
これからも、その自慢の湯を大切に守り続けてくださいね。
微力ながら、僕も応援させていただきます。
Posted by 小暮 淳 at 22:34│Comments(0)
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