2023年06月12日
ジイジの紙芝居
「ジイジ、また来たよ」
「おう、よく来たな!」
そう言って、僕はKくんの頭をなでました。
Kくんは、僕の長女の息子です。
今春から中学生になりました。
世間一般から見て、決して僕の家族は仲が良いとはいえません。
独立独歩、自由尊重が僕のモットーなので、3人の子どもたちは家を出て、思い思いの人生を送っています。
長女が家を出たのは、もうかれこれ17年前のこと。
やがて結婚をして、出産。
孫が小さい頃は、ときどき家族で顔を出していましたが、孫の成長とともに回数は減っていきました。
顔を合わせるのは一年に1回か2回、盆と正月くらいです。
それが……
僕は2021年1月から毎月、友人の石原之壽(いしはらのことぶき)君の手伝いで、街頭紙芝居の興行に参加しています。
会場は、伊勢崎神社(伊勢崎市) です。
偶然にも長女夫婦が伊勢崎市内に住んでいるということもあり、2年半前の初日に家族で見に来てくれました。
でも、まだKくんは小学生でした。
「またジイジに会いたい」
と言っていたようですが、親の都合もあり、その後はコロナ禍ということもあり、会えずに2年の時が流れました。
今年4月、「神社かみしばい」 の会場に、ひょっこりとKくんが姿を現しました。
「お父さんとお母さんは?」
「一人で来た」
「一人でって、どうやって?」
「自転車」
言われてみれば、彼は手にヘルメットを持っています。
「自転車って、大丈夫なのか? お母さんは知ってるの?」
聞けば、中学生になり自転車通学を始めたとのこと。
小学生の頃より、グーンと行動範囲が広くなったようです。
1カ月後、5月の「神社かみしばい」 開催日。
あいにく朝から雨でした。
すると長女から1通のメールが届きました。
「Kが、また会いに行きたがっているけど、今日は雨なのでやめさせました」
そして昨日の 「神社かみしばい」 開催日。
やはり前日に長女より、メールが届いていました。
「明日も雨みたい。天気が良ければKが行くかも」
と……。
しかし、またしても朝から雨でした。
当然、Kくんは来ないものだと、あきらめていました。
ところが彼は、やって来たのです。
「一人で来たのか?」
「うん」
「どうやって?」
雨の日の自転車は、まだ慣れていないからと、彼の母親 (長女) が許すわけがありません。
「傘さして」
「傘? 危ないじゃないか!」
と僕は、彼が自転車に乗って来たとばかり思い込んでいたのです。
「大丈夫だよ、歩いてきたから」
「えっ、この雨の中をか? 何時間かかったんだ!?」
と僕は、わざと大げさに驚きましたが、市内なので20~30分だったようです。
それから僕らは、たくさん話をしました。
「部活は何に入ったんだい?」
「電気工作部」
「でんきこうさくぶ? そりゃなんだい?」
「あのね……」
彼は部活のこと、授業のこと、友だちのことなど、まるで堰を切ったように淀みなく、次から次と学校のことを話し出しました。
まるで疎遠だった2人の空白を埋めるように……
Kくん、ありがとうね。
また、おいで。
ジイジは、いつでも待っているよ。
僕と彼の友情は、まだ始まったばかりです。
Posted by 小暮 淳 at 11:40│Comments(0)
│神社かみしばい