2012年02月03日
想い出の玉手箱
居酒屋とは、まるで想い出が詰まった玉手箱のような所です。
昨晩は、仕事も一段落ついたし、人恋しくもあり、美味しい料理にもありつきたいし、久々に浴びるほど酒も飲みたいし、という理由から、日の沈みきらないうちに家を出て、いつもの溜まり場、酒処 「H」 へと出かけて行きました。
思えば、今年初めての往訪であります。
ママと常連さんたちに 「おめでとうございます」 のあいさつを済ませて、まずは生ビールから飲み始めであります。
まだ7時前だというのに、ご繁盛の様子。
カウンターの奥から3番目の席に、かろうじて着席。
初対面のお隣のカップルとあいさつをしつつ、料理に手を付け始めました。
でも、どーしても奥の女性が気になって仕方がありません。
僕の本を持っているとかで、会うなり 「先生、先生」 と言いながら温泉の質問を次から次へとしてくるのですが、彼女の “顔” が気になって、気になって、話に集中できないのです。
そう、どこかで見たことある顔なんですよ。
でも、どこだか分からない。
どう思い出しても、最近見た顔じゃない。
これは、すごく古い記憶だ!
うんうん、中学生の頃に、この女性と似た女の子がいた。
でも、同級生じゃない。
そーだ、1つ下の学年にいた女の子だよ。
でも、それにしては若過ぎるような気もするけど・・・
えいっ! 聞いちゃえ!
「もしかして○○中学校じゃありません?」
そうだ、と言う。
「えーーーーと、うーーーーんと、・・・Hさん?」
「そーです!」
彼女もビックリしてたけど、聞いた僕のほうがもっとビックリしました。
この記憶力は、なんだ!
中学卒業してから38年も経っているのに、しかも学年も違うし、口もきいたことないのに、どーして分かったのだろう?
「どーして?」
と問われれば、
「今と同じように、あの頃も、校内で有名な美人だったから」
としか答えようがありません。
そんなこんなで、いきなり中学時代へタイムスリップしてしまい、温泉の話はそこそこで、懐かし話に花が咲いてしまったのであります。
彼女たちが帰り、その入れ替えにトレンチコートをダンディに着こなした初老の紳士が入って来ました。
この人も、見覚えがあります。
「小暮さん、ご活躍じゃない。四万温泉の本、見ましたよ」
と、握手を求めてきました。
忘れもしません。
今から20年くらい前にお世話になった、アートギャラリーのB社長です。
「ご無沙汰しています。その節は、大変お世話になりました。あの時、僕は社長の言葉に、本当に救われました」
と、こちらからも深々とごあいさつをさせていただきました。
当時、僕はタウン誌の編集者をしていました。
編集者といっても、タウン誌ですから、当然、広告営業も同時に行います。
社長の店にも毎月、通っていました。
でも、一度として会えたことがありませんでした。
その都度、従業員に名刺と見本誌を渡して、帰ってきていました。
ある日のこと。
いつものように店に寄ると、たまたま社長がいました。
初めてお会いする社長は、僕にこんなことを言ったのです。
「どうして車のタイヤはパンクするか知っているかい? 1度や2度、クギをひいたくらいじゃ、タイヤはパンクしない。何度も何度もひかれるうちにクギが立ってくる。そして、次にひいたタイヤがパンクするんだよ」
最初、僕は、社長が何を言っているのだか分かりませんでした。
社長は、話を続けます。
「毎月毎月、あなたが足しげく通って来ていたことは知っていましたよ。もし今日、他の雑誌が来ていたら、その雑誌に広告を出していたでしょう。でも、あなたは今日も、こうやって通ってきた。私も若い頃に営業をやってましたから、その姿勢に共感いたします」
と言って、即決で広告の契約をしてくださったのです。
そして、昨晩も、
「ええ、覚えていますよ。その会話・・・」
もう、なんだかそれだけで、胸の奥のほうが熱くなってしまいましたよ。
社長、お元気で何よりです。
あの頃の若造も、なんとか年を重ねて、こうやっていっぱしに酒を飲めるようになりました。
月日が経つのは早いものです。
でも、その月日の中には、たくさんの想い出が詰まっているのですね。
まるで玉手箱のように・・・
でも、玉手箱ですから、うかつにフタを開けてしまうと、大変です。
夕べは、大事な玉手箱を抱えるようにして、家路に着きました。
Posted by 小暮 淳 at 18:55│Comments(2)
│酔眼日記
この記事へのコメント
たびたびすんません、クマタンヨの夫です。
あ、その女性わかりました。隣にいた男性も、私の同級生ですね。
その女性は「○高のアイドル」と言われてました。
B社長も存じ上げてます、奥様がその女性と中高の同級生ですね。
奥様は貴兄と同じ小学校だったはず。貴兄と同じ町内だったかな??
あ、その女性わかりました。隣にいた男性も、私の同級生ですね。
その女性は「○高のアイドル」と言われてました。
B社長も存じ上げてます、奥様がその女性と中高の同級生ですね。
奥様は貴兄と同じ小学校だったはず。貴兄と同じ町内だったかな??
Posted by ノブとツナ at 2012年02月04日 06:18
ノブとツナさんへ
そうです、あなたの義兄の同級生たちです。
それにしても 「○高のアイドル」 は、健在ですな!
今でも充分アイドルしていましたよ。
久しぶりに青春の香りに酔いしれてきました。
そうです、あなたの義兄の同級生たちです。
それにしても 「○高のアイドル」 は、健在ですな!
今でも充分アイドルしていましたよ。
久しぶりに青春の香りに酔いしれてきました。
Posted by 小暮 at 2012年02月04日 14:22