2024年05月04日
飛んで耳に入る夏の虫
「それって、キャサリンのこと?」
「キャサリン?」
「違うの? うちらキャサリンって言ったよ」
たまたま居合わせた人たちと、“蚊柱” の話になりました。
夏になると、道の端や街灯の下で、小さな虫の大群 (主にユスリカ) が柱状に飛んでいる現象のことです。
このことを関西出身の婦人は、「キャサリン」 と呼んだのです。
「なんでキャサリンなの?」
「知らない、でも子どもの頃から、そう言っていたよ」
でも僕は知っていました。
以前、テレビ番組で紹介していました。
大阪の一部のエリアでは、蚊柱のことを 「キャサリン」 ということを。
なんでも、昭和22(1947)年に日本を襲ったキャサリン台風に由来するそうです。
この時の映像をテレビで観た子どもたちが、蚊柱に似ていることから名づけたようです。
「へー、そうなんだぁ~」
なんて、話している時でした。
僕に、一通のメールが届きました。
<チョッピリ 羽虫との戦いで 寝てなくて明日 大丈夫かなぁ…。明日起きたらメールするね>
発信者は、行きつけの酒処 「H」 のママです。
「羽虫との戦い?」
いったい何のことでしょう?
まさに、“虫の知らせ” とはこのことです。
意味不明なメールではありますが、とりあえず一晩、待つことにしました。
翌朝、ママからメールが届きました。
<何とか 羽虫戦い 終戦なり お店 開店なり>
おおー!
何が起きて、何がどうなったのかは知らんが、無事、店を開けられるとのこと。
ならばと、まだオープン前の陽の高いうちに、陣中見舞いへと出かけました。
「ねえちゃん、大丈夫だったか!?」
(僕ら常連は、ママのことを 「ねえちゃん」 と呼びます)
「どうした? 蚊の大群が出たって? 店か自宅か?」
僕の頭の中には、一晩中、キャサリンと寝ずに悪戦苦闘するママの姿があったのです。
するとママは、笑いながら……
「そうじゃないのよ、耳の中」
「耳の中?」
「そう、昨晩、寝ようとしたら突然、虫が左の耳の中に入っちゃったのよ」
「虫って、羽のある?」
「一晩中、ブーンブーン耳の中で鳴っていて、うるさいやら、怖いやら、一睡もできなかったのよ」
まれに聞く話ではあるけど、実際に身近な人の耳の中に羽虫が入った話は初めてです。
興味津々!
「で、今も耳の中にいるの?」
「いるわけないじゃん、駆除したわよ」
聞けば、朝イチで耳鼻科へ行き、虫を取ってもらったとのこと。
ただ、医者には怒られたようであります。
なんでもママは、綿棒で突いて、羽虫を耳の奥まで押し込んでしまったようで、医者も難儀をしたようです。
「でも、良かったね。中耳炎とかならなくてさ」
「もう、怖くて怖くてさ。これからは耳にガードして寝ようかしら(笑)」
本当に良かった。
大事に至らず、その程度の笑い話で終わってさ。
でも不幸だったのは、運悪くママの耳に飛び込んでしまった羽虫です。
すぐに出ようと思っていたに違いない。
なのにママったら、綿棒で突いて、余分なことをするものだから、奥へ奥へと追いやられてしまい、終いには、医者に器具を使ってかき出されて、ハイ、御臨終!(アーメン)
「ねえちゃん、その虫、見た?」
「怖くて、見れるもんか!」
飛んで耳に入る夏の虫
これからの季節、みなさんもご注意くださいませ。
Posted by 小暮 淳 at 11:28│Comments(0)
│酔眼日記