2019年03月17日
風に吹かれて
<がんばらないよ!>
過日、届いたDMに、直筆のコメントが添えられていました。
現在、前橋文学館(前橋市千代田町) で開催中の絵本原画展 『おばあちゃんのほっこりごはん 野村たかあき展』 の案内ハガキです。
※4月7日(日) まで。観覧無料。水曜休館。
差出人は、木彫家で版画家で絵本作家の野村たかあき氏、ご本人です。
氏との付き合いは、かれこれ30年以上になります。
でも今回、初めて直筆のコメント入りのDMをいただきました。
なぜ氏は、こんなコメントを書いたのでしょうか?
氏と出会って、数年が経ったある日。
酒の席だったと記憶しています。
氏が、しみじみと、こんなことを言いました。
「要は、川原の風に吹かれるように生きることよ」
川原の風? 吹かれる?
まだ青二才だった僕には、なんのことだか、さっぱり分かりませんでした。
ただ10年、20年と歳を重ねても、あの日あの時の言葉は忘れることができませんでした。
時は流れて、昨年僕は、めでたくも “還暦” を迎えました。
同級生は、定年を迎える年齢になりました。
でも、僕のようなフリーランスの職業には、定年はありません。
でも、なにか僕の人生にも、節目が欲しいと思ったのです。
そして考えた挙句、たどり着いたのが 「心の定年」 でした。
「そうだ、60年を節目に、心を解放してあげよう!」
と思ったわけです。
「もう、がんばらない」 と。
今年の正月、年始のあいさつに、氏を訪ねたときのことです。
今年を “がんばらない元年” にした旨を伝えると、
「そうか、そうか、それは、いいね。がんばらないの、いいね」
と、痛く喜んでくださったのです。
いつからでしょうか、川原へ行くと、風を気にするようになったのは?
50歳も半ばを過ぎたあたりだと思います。
一斉に同じ方向に揺れるススキの穂を見て、ハッとしたことがありました。
風が北から吹けば、南になびき、西から吹けば、東にたなびく。
決して、あらがうことなく、風に吹かれているのです。
「いつか自分も、こんなふうに生きてみたい」
と思うようになりました。
<がんばらないよ!>
氏の言葉を、今、改めて噛みしめています。
Posted by 小暮 淳 at 14:06│Comments(0)
│つれづれ